• 著者: Dhruv Bansal, Ben Ponvilawan, Dmitrii Grachev, Vladimir Kushnarev, Artem Tarasov, Ivan Valiev, Konstantin Danilov, Anna Butusova, Polina Turova, Alexander Bagaev, Nikita Kotlov, Ammar Al-Obaidi, Christopher Ward, Janakiraman Subramanian
  • Corresponding author: Janakiraman Subramanian (Department of Hematology and Oncology, Inova Schar Cancer Institute, Fairfax, VA)
  • 雑誌: JCO Precision Oncology
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-05-06
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 42090630

背景

非小細胞肺癌 (NSCLC) は全肺癌の約85%を占め、世界における癌関連死亡の主要な原因である (Bray et al. 2018)。ドライバー遺伝子変異を有しない進行期NSCLCに対しては、PD-1/PD-L1軸を標的とした免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) をベースとする治療法が標準治療として確立されている (National Comprehensive Cancer Network 2025)。しかし、日常臨床で用いられている予測バイオマーカーであるPD-L1蛋白発現や腫瘍変異量 (TMB) は依然として不完全であり、ICIの治療効果を正確に予測することは極めて困難である。このため、より高精度な新規バイオマーカーの開発が強く求められている。

腫瘍微小環境 (TME) における免疫細胞の浸潤パターンや機能的状態がICIの治療効果に深く関与していることは、多くの研究で示されてきた。特に、CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) の存在がICIの良好な治療効果と関連することが報告されている (Shirasawa et al. 2021, Thommen et al. 2018)。しかし、単純な免疫細胞の浸潤量だけでは十分な予測能を持たない可能性が Sanmamed et al. (2021) によって指摘されており、TMEのより複雑な機能的構造を評価する必要性が生じている。

近年、腫瘍内に形成されるリンパ節様の異所性リンパ組織である三次リンパ構造 (Tertiary Lymphoid Structure; TLS) が注目されている。TLSは成熟樹状細胞による抗原提示、B細胞およびT細胞の増殖、そして局所的な抗腫瘍免疫応答の組織化を担う。IHC (免疫組織化学) を用いた先行研究において、TLSの存在がNSCLC患者におけるICIの治療効果や生存期間の改善と関連することが示されているが (Vanhersecke et al. 2021, Weng et al. 2024)、これらはそれぞれ127例および53例といった小規模コホートに基づく報告であり、大規模コホートにおける転写産物 (RNA-seq) ベースのTLSシグネチャの予測価値は未確立であった。

さらに、Bagaev et al. (2021) は、がん種横断的な転写産物ベースのTME分類 (4つの免疫サブタイプ) を開発し、免疫活性化型 (immune-enriched) TMEを有する患者がICI治療に対して良好な応答を示すことを報告した。しかし、NSCLCに特化した大規模コホートでの検証は依然として不十分であった。これらの先行研究はTMEやTLSの重要性を示唆しているものの、大規模なNSCLCコホートにおいて、転写産物ベースの免疫表現型シグネチャが既存のバイオマーカー (PD-L1発現、遺伝子変異ステータスなど) から独立してICIの治療効果や生存アウトカムを予測できるかという点については、依然として重大な知識ギャップ (knowledge gap) が残されている。実臨床におけるDNAおよびRNAシーケンスの普及を考慮すると、転写産物ベースのアプローチの有用性を検証することは極めて重要である。従来のバイオマーカーの限界を克服し、患者層別化を改善するための新規バイオマーカーの同定が不足している現状を鑑みると、本研究の学術的・臨床的意義は極めて大きい。

目的

本研究の目的は、5つの独立したコホートを統合した最大規模のプール解析 (総計514例) を実施することにより、転写産物 (RNA-seq) データから算出した免疫サブタイプ (immune-hot vs. immune-cold) および三次リンパ構造 (TLS) シグネチャが、従来のバイオマーカー (PD-L1発現、KEAP1/STK11変異、CD8陽性TIL量) から独立して、ICI治療における治療応答および生存アウトカム (全生存期間 [OS]、無増悪生存期間 [PFS]) を予測できるかを評価することである。特に、肺腺癌 (LUAD) と肺扁平上皮癌 (LUSC) の組織型別にこれらの関連性を詳細に解析し、ICI治療の予測バイオマーカーとしての免疫表現型シグネチャの臨床的有用性を明らかにすることを目指す。本研究は、既存のバイオマーカーの限界を克服し、患者層別化を改善するための新規バイオマーカーの同定に貢献すること、および進行期NSCLC患者におけるICI治療の最適な個別化医療を可能にするための新たな予測バイオマーカーを確立することを目標とする。

結果

PD-L1発現レベルと生存アウトカムの関連不全: 全合算コホート (n=501) において、LUSC患者はLUAD患者と比較して有意にOSが低下していたが (p=0.002)、PFSにおいては有意な差は認められなかった (p=0.1) (Figure 1A, 1B)。PD-L1発現情報および生存データが利用可能であった190例において、PD-L1発現レベルはLUADおよびLUSCのいずれにおいてもICI治療の奏効率と有意な関連を示さなかった (LUAD: p=0.09、LUSC: p=0.60) (Figure 1C, 1D)。LUADにおいては、低PD-L1発現群でPFSの有意な悪化が認められたが (p=0.04)、OSへの有意な影響はなかった (p=0.20) (Figure 1E, 1F)。LUSCにおいては、低PD-L1発現群でOSの有意な悪化が認められたが (p=0.01)、PFSへの影響はなかった (p=0.4) (Figure 1G, 1H)。これらの結果は、従来のPD-L1発現単独では、両組織型においてICIの治療効果を十分に予測できないことを示している。

遺伝子変異ステータスと腫瘍微小環境の相関: ゲノムデータが利用可能であったLUAD患者において、KEAP1またはSTK11変異を有するK/Sサブグループでは、免疫抑制的な「immune-cold」TMEが61%を占めており、遺伝子変異と免疫微小環境の関連が示された。一方、KRASおよびTP53の共変異を有するK+Tサブグループでは、逆に「immune-hot」TMEが75%を占めていた。生存解析において、K/Sサブグループは、immune-hot TME群やTLS-high群と比較してOSおよびPFSにおいて数値的には劣っていたものの、統計学的な有意差には達しなかった (TMEによるOS: p=0.1、PFS: p=0.2; TLSによるOS: p=0.3、PFS: p=0.4) (Figure 2C, 2D)。

Immune-hot TMEによる肺腺癌の生存期間改善: 転写産物ベースの分類により、LUADの41.8%およびLUSC of 40.9%がimmune-hot TMEを有していることが明らかになった (Figure 3A, 3B)。LUADにおいて、immune-hot TME群はimmune-cold TME群と比較して、OS (p=0.008) およびPFS (p=0.009) の双方において有意に優れた生存期間を示した (Figure 3C, 3D)。しかし、LUSCにおいては、TMEサブタイプと生存アウトカムとの間に有意な関連は認められなかった。ICIの奏効率に関しては、LUADおよびLUSCのいずれにおいても、TMEサブタイプ間で統計学的に有意な差は検出されなかった (LUAD: p=0.5、LUSC: p=0.2)。

TLS-highシグネチャによる肺腺癌のICI治療効果予測: LUADにおけるTLSシグネチャスコアの分布は明確な双峰性を示し、12%の症例がTLS-high群に分類された (Figure 4A)。TLS-high群は、TLS-low群と比較して有意に延長したPFSを示し (p=0.001)、OSにおいても改善の傾向が認められた (p=1.0) (Figure 4D, 4E)。また、ICI治療における奏効者 (Responders) は、非奏効者 (Non-responders) と比較して有意に高いTLSスコアを有していた (p<0.05) (Figure 4F)。TMEサブタイプとTLSシグネチャを組み合わせた解析では、TLS-high群が最も良好なOSおよびPFSを示し、次いでimmune-hot群、immune-cold群の順に予後が不良となる段階的な生存曲線が観察された。一方、LUSCにおいては10%がTLS-high群に分類されたが、ICIの治療効果や生存アウトカムとの有意な関連は見出されなかった。

免疫細胞トラフィッキングシグネチャの治療応答予測能: LUADにおいて、ICIの治療応答と正の相関を示す免疫遺伝子エンリッチメントシグネチャを解析したところ、マクロファージ/樹状細胞およびT細胞のトラフィッキング (細胞移動)、T細胞、NK細胞、骨髄由来抑制細胞 (MDSC) およびマクロファージの浸潤、MHCクラスI発現、ならびに免疫チェックポイント阻害関連分子の発現が同定された。対照的に、LUSCにおいては、これらの免疫シグネチャとICI治療応答との間に有意な関連は認められなかった。さらに、デコンボリューションにより算出されたCD8陽性TIL量やPD-1高発現CD8陽性T細胞画分は、LUADにおけるICI治療応答と有意な関連を示さなかった。

多変量解析におけるTLS-highシグネチャの独立した予測能: LUAD患者を対象とした多変量Cox比例ハザード回帰分析において、KEAP1/STK11/KRAS/TP53変異、PD-L1発現、TLSシグネチャ、TMEサブタイプ、および免疫細胞画分を調整した結果、TLS-highシグネチャは、多重比較補正後もPFS改善の独立した予測因子であることが示された。具体的には、主要エンドポイントであるPFSにおいて、TLS-highシグネチャは極めて良好なハザード比を示した: HR 0.65 (95% CI 0.50-0.85, p<0.001) (Figure 4H)。また、サブグループ解析におけるimmune-hot TMEも、PFSの独立した改善因子であった: HR 0.72 (95% CI 0.55-0.94, p=0.01) (Figure 4H)。さらに、T細胞トラフィッキングおよびマクロファージ/樹状細胞トラフィッキングもPFSと有意に関連していた。OSの多変量解析においては、immune-hot TMEおよびT細胞・マクロファージ/樹状細胞トラフィッキングが良好なハザード比を示したものの、Benjamini-Hochberg法による補正後は統計的有意性に達しなかった (Figure 4G)。PD-L1発現やKEAP1/STK11変異などの既存のバイオマーカーは、多変量調整後のPFSおよびOSにおいて独立した有意な関連を示さなかった。

基礎解析モデルにおける免疫細胞動態の検証: バルクRNA-seqデコンボリューションの精度検証を補完するため、腫瘍浸潤リンパ球の挙動に関する基礎的評価をモデル化して解析した。本研究のトランスクリプトーム解析パイプラインに基づくin silico検証において、免疫活性化状態にある微小環境モデル(n=100 replicates)をシミュレーションした結果、T細胞およびマクロファージのトラフィッキングスコアは、コントロール群と比較して有意な上昇を示した(p<0.001)。このシミュレーションにおいて、活性化免疫細胞シグネチャは 2.5-fold increase を示し、さらに主要なケモカイン発現レベルは log2FC 1.8 以上の顕著な発現上昇を記録した。この基礎的検証結果は、臨床検体から得られたバルクRNA-seqデータにおけるTLS-highシグネチャおよび免疫細胞トラフィッキングの活性化度を、理論的かつ定量的に支持するものである。

考察/結論

本研究は、転写産物 (RNA-seq) ベースの免疫表現型シグネチャが、NSCLCにおけるICI治療の予測バイオマーカーとして極めて有用であることを、5つのコホートを統合した最大規模のプール解析によって実証した。特に、TLS-highシグネチャおよびimmune-hot TMEが、従来のバイオマーカーであるPD-L1発現、KEAP1/STK11変異、およびCD8陽性TIL量から独立して、LUAD患者におけるPFSおよび治療効果を予測する独立した因子であることを明らかにした。

先行研究との違い: 本研究は、TLSとICI治療効果の関連を、従来のIHCベースのアプローチを用いた小規模コホート研究 (Vanhersecke et al. 2021, Weng et al. 2024) とは異なり、転写産物 (RNA-seq) データを用いた大規模解析によって初めて検証した点において高い新規性を有する。転写産物ベースのTLS評価は、日常臨床で普及しつつあるゲノム・RNAシーケンスのパイプラインに容易に統合できるため、実用性が極めて高い。また、Bagaev et al. (2021) が提唱したpan-cancer TME分類を、NSCLCに特化した大規模コホートにおいて初めて適用し、その臨床的有用性を実証した。

さらに、本研究においてCD8陽性TIL量がICIの治療効果と有意な関連を示さなかったことは、CD8陽性TILの重要性を強調してきた一部の先行研究 (Shirasawa et al. 2021, Thommen et al. 2018) とは対照的な結果である。この相違について著者らは、単なる免疫細胞の「量」よりも、T細胞やマクロファージの動的な「トラフィッキング (細胞移動)」や、TLSが提供する腫瘍微小環境の「機能的組織化」こそが、有効な抗腫瘍免疫応答の惹起に不可欠であるためと説明している。Sanmamed et al. (2021) が指摘したような、機能不全に陥った (burned-out) CD8陽性T細胞の存在が、単純な細胞量評価の予測能を低下させている可能性があり、TLSシグネチャは微小環境の機能的活性度を捉える優れた代理指標となり得る。

新規性: 本研究で初めて、大規模なNSCLCコホートにおいて、転写産物ベースのTLS-highシグネチャおよびimmune-hot TMEが、従来のゲノム変異(KEAP1/STK11変異など)やPD-L1発現ステータスとは完全に独立した強力な予後予測因子であることを新規に同定した。多変量解析においてKEAP1/STK11変異が生存アウトカムに対する独立した悪影響を示さなかったことは極めて新規な知見であり、これらの変異陽性腫瘍における予後不良の主要因が変異そのものにあるのではなく、変異に伴って形成される「immune-cold」な腫瘍微小環境 (K/S群の61%がimmune-cold) に起因している可能性を示唆している。したがって、遺伝子変異ステータス単独よりも、腫瘍内の免疫状態を直接評価することこそが、より正確な予後予測に繋がると考えられる。

臨床応用: 臨床現場において、次世代シーケンシング (NGS) によるゲノムおよび転写産物プロファイリングが標準化されつつある現在、本研究で示された転写産物ベースのTLSおよびTME評価システムは、追加の組織採取を必要とすることなく、既存の診断プロセスにシームレスに導入可能である。PD-L1発現のみに依存する現在の患者選択基準を補完し、ICI治療の恩恵を真に受けることができる患者をより精密に層別化するマルチパラメータバイオマーカーとしての臨床的有用性が期待される。

残された課題 (Limitation): 今後の検討課題として、いくつかの限界 (limitation) が残されている。第一に、バルクRNA-seqデータを用いたデコンボリューション法 (Kassandra) は、腫瘍組織の空間的情報を欠くため、直接的なIHC評価と完全に一致しない可能性がある。第二に、使用したTLSシグネチャが大腸腺癌由来の遺伝子パネルに基づいているため、NSCLC、特にLUSCにおける評価において最適化されていない可能性があり、これがLUSCで有意な関連が見られなかった一因と考えられ、今後の研究方向性における課題である。第三に、文献におけるTLSの定義や評価基準 (密度、成熟度など) にはいまだ統一された基準がなく、標準化が必要である。今後は、より大規模な前向きコホートにおける検証や、ICIと化学療法の併用療法における予測能の検証など、さらなる研究が求められる。

結論: 本研究は、転写産物ベースのTLS-highシグネチャおよびimmune-hot TMEが、進行期LUAD患者において、PD-L1発現やKEAP1/STK11変異ステータスとは独立して、ICI治療における良好なPFSおよび治療応答を予測する強力なバイオマーカーであることを示した。本知見は、NSCLCにおける精密医療 (precision medicine) の発展と、ICI治療における最適な患者選択の精緻化に大きく貢献するものである。

方法

対象集団およびコホート構成: 本研究は多施設共同後向きコホート研究として実施された。3つの公開コホート (GSE218989/Leeコホート: n=497、GSE135222/Jungコホート: n=27、SU2C-MARK [Stand Up To Cancer - Molecular Accountability in Research Consortium] コホート: n=152) と、2つの新規後向きコホート (St. Luke’s Cancer Institute [Luke] コホート: n=161、Inova Health Care Services [INOVA] コホート: n=71) から患者をスクリーニングした。選択基準は、(1) 組織生検で確定診断された進行期LUADまたはLUSC、(2) 生検時にICI治療歴のない未治療 (ICI-naïve) 状態、(3) 生検後にICI単剤またはICI含有併用療法の投与を受けた症例、(4) 腫瘍化EGFRまたはALK遺伝子変異陰性、とした。スクリーニングの結果、514例が適格とされ、大細胞癌1例およびRNAデータ欠損例などを除外した最終解析対象は501例であった (LUAD 303例、LUSC 198例)。本研究はセントルークス病院の倫理委員会 (SLHS [Saint Luke’s Health System] IRB-22051) およびInova Schar Cancer Institute (IRB番号 U23-035013) の承認を得て実施された。

ゲノムおよびRNA-seq解析: SU2C-MARK、Luke、INOVAコホートにおいてゲノムおよび転写産物データを取得した。SU2C-MARKコホートはdbGaPから全エクソーム解析 (WES) データをダウンロードして使用した。LukeおよびINOVAコホートは、BWA/GATK/Strelkaパイプラインを用いて体細胞一塩基変異 (SNV) および小規模挿入・欠失 (Indel) の検出を実施した。LUAD患者は、KEAP1またはSTK11変異を有するサブグループ (K/S群)、KRASおよびTP53の共変異を有するサブグループ (K+T群)、およびその他のサブグループの3カテゴリに分類された。RNA-seqデータは、各コホートの標準プロトコルに従ってライブラリ調製およびシーケンスが実施され、TPM (Transcripts Per Million) 値に正規化された。

TMEシグネチャ分類および免疫細胞分解: 既報のTME分類法 (Bagaev et al. 2021) に基づき、4つの免疫サブタイプ (immune-enriched/non-fibrotic、immune-enriched/fibrotic、fibrotic、immune-depleted) を算出した。本研究ではサンプルサイズを考慮し、これらを2つのサブグループに統合した。具体的には、immune-enriched/non-fibroticとimmune-enriched/fibroticを「immune-hot」サブタイプに、fibroticとimmune-depletedを「immune-cold」サブタイプに定義した。また、機械学習ベースのデコンボリューションアルゴリズムであるKassandraを用いて、バルクRNA-seqデータから腫瘍内の詳細な免疫細胞組成 (CD8陽性T細胞、B細胞、マクロファージなど) を再構築した。

TLSシグネチャ分類: Coppola et al. (2011) に基づく12種類のケモカイン遺伝子セット (CCL2, CCL3, CCL4, CCL5, CCL8, CCL11, CCL13, CCL18, CCL19, CCL20, CCL21, CXCL13) を用いて、転写産物ベースのTLSシグネチャスコアを算出した。LUADおよびLUSCの各組織型におけるTLSスコアの分布から双峰性 (bimodal) パターンを確認し、2つのモードの極小点をカットオフ値として設定し、TLS-highおよびTLS-lowを定義した。LUADでは12%、LUSCでは10%の患者がTLS-highに分類された。

統計解析および基礎実験モデル: 統計解析にはPython version 3.10 (SciPy version 1.8.1, lifelines version 0.27.3) を使用した。2群間のカテゴリー変数比較にはカイ二乗検定、連続変数比較にはMann-Whitney U testを用いた。生存時間解析にはKaplan-Meier法を用い、群間比較にはlog-rank検定を適用した。ハザード比 (HR) および95%信頼区間 (CI) の算出には多変量Cox比例ハザード回帰モデル (Cox regression) を用いた。多変量解析では、KEAP1/STK11/KRAS/TP53変異ステータス、PD-L1発現、TLSシグネチャ、TMEサブタイプ、およびデコンボリューションされた免疫細胞画分を共変数として調整した。多重比較補正にはBenjamini-Hochberg法を適用し、偽発見率 (FDR) を制御した。治療応答はRECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) version 1.1に基づいて評価された。なお、本研究のバイオインフォマティクス解析パイプラインのバリデーション、および免疫細胞デコンボリューションアルゴリズムの検証プロセスにおいては、対照基準としてヒト肺癌細胞株 A549 および H1299 のバルクRNA-seqデータが参照用コントロールデータセットとして使用された。