- 著者: Daniela Bruni, Helen K. Angell, Jérôme Galon
- Corresponding author: Jérôme Galon (INSERM, Laboratory of Integrative Cancer Immunology, Centre de Recherche des Cordeliers, Paris, France)
- 雑誌: Nature reviews. Cancer
- 発行年: 2020
- Epub日: 2020-08-04
- Article種別: Review
- PMID: 32753728
背景
AJCC/UICC TNM分類は、1950年代から現在に至るがんの標準ステージングシステムとして広く用いられてきた。しかし、同一ステージ内であっても患者間の臨床アウトカムに大きな差異が見られるという本質的な限界を抱えていることが、複数の研究で示されている (Cadiz et al. 2018, Hattori et al. 2019)。この限界を克服するため、腫瘍バイオマーカーの免疫組織化学的評価、フローサイトメトリーによる細胞集団解析、分子シグネチャー、プロテオミクス、遺伝学的特徴など、様々な追加パラメータの導入が試みられてきたが、これらは主に腫瘍細胞の特性に焦点を当てており、腫瘍微小環境 (TME) や免疫成分の複雑な影響を見過ごす傾向があった。
2006年、Galon et al. Science 2006は、結腸直腸がん (CRC) においてCD3+、CD8+、CD45RO+ T細胞の密度がTNM分類よりも優れた予後予測能を持つことを初めて報告した。この研究は、腫瘍微小環境における免疫浸潤の質、量、機能状態、解剖学的分布ががんの自然経過を修飾するという「免疫コンテクスチャー (immune contexture)」の概念を確立した。その後の15年間で、この概念は単一マーカーから複合マーカーへと発展し、CD3+およびCD8+ T細胞を腫瘍中心部 (CT) と浸潤辺縁部 (IM) の2部位で定量するImmunoscore (IS0-IS4の5段階) として国際的に標準化された。
近年、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) の臨床導入により、既存の腫瘍内適応免疫応答が治療効果の予測に極めて重要であることが認識されるようになった (Gong et al. 2018)。これにより、免疫コンテクスチャーのパラメータは、従来の予後バイオマーカーとしての役割に加え、治療応答を予測するバイオマーカーとしての役割も拡大しつつある。しかし、個々の免疫細胞サブタイプががんの進行に与える影響は複雑であり、その予後および予測的意義については、がん種や微小環境の文脈によって異なることが示唆されており、依然として多くの側面が未解明である。特に、NK細胞、NKT細胞、マスト細胞、好中球といったこれまで十分に評価されてこなかった免疫細胞の役割については、さらなる体系的な解析が不足していた。また、複数の免疫パラメータを組み合わせた統合的なバイオマーカーフレームワークの必要性も高まっているのが現状である。これらの知識ギャップが、個別化された治療戦略の策定を妨げる要因となっていた。
目的
本レビューの目的は、約300の研究、70,000人以上の患者データを統合し、15種類の主要免疫細胞サブタイプおよび関連する免疫構造(例:三次リンパ構造 (TLS))が17種類のがん種にわたって持つ予後的意義を系統的に解析・更新することである。また、Immunoscoreの予後的および予測的価値を確立し、その臨床的有用性を強調する。さらに、予後、予測、機序、免疫逃避の4つのカテゴリーを包括する新たな統合的バイオマーカーシグネチャーフレームワークを提示し、がんの個別化治療戦略の策定に貢献することを目指す。本レビューは、これまで十分に評価されてこなかった免疫細胞(NKT細胞、マスト細胞、好中球など)の予後への影響についても詳細に検討し、単一の因子だけでなく、複数の免疫パラメータの組み合わせが予後および予測能力を向上させる可能性を提示する。これにより、がんの診断、予後予測、治療選択をより精密化するための基盤を提供することを目指す。
結果
15種免疫細胞サブタイプの予後的意義の体系化 (17がん種・70,000患者以上): 本レビューは、約300の研究から17種類のがん種、70,000人以上の患者データを統合し、15種類の主要免疫細胞サブタイプ(CD8+ T細胞、CD4+エフェクターT細胞、Treg、TH1、TH17、TH2、TFH、B細胞、NK細胞、NKT細胞、DC、M1マクロファージ、M2マクロファージ、PMN-MDSC/TANs、マスト細胞)の予後への影響を体系的に図示した (Fig. 2)。全体的な傾向として、CD8+ T細胞、M1マクロファージ、B細胞(三次リンパ構造 (TLS) 文脈)、TFH細胞、NK細胞、DC、TLS構造が大多数のがん種で良好な予後と関連することが示された。一方で、Treg細胞(一部例外あり)、M2マクロファージ、TH2細胞、TH17細胞、PMN-MDSC/TAN(肺転移促進の文脈)、マスト細胞が概して不良予後と関連した。ただし、がん種依存の逆説的知見も複数存在することが強調された。例えば、明細胞腎細胞がん (ccRCC) では、高CD8+ T細胞密度が逆説的に短い無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) と関連し、これは血管新生因子高値例でのCD8+ T細胞疲弊(高PD-1/TIM-3発現)が原因と推察された。
CD8+ T細胞: 17がん種・18,700人以上で予後改善と関連する最強の免疫細胞: CD8+ T細胞の腫瘍内高密度は、メラノーマ、肺がん、CRC、膀胱がん、卵巣がんなど多くのがん種で一貫して予後改善と関連し、17がん種18,700人以上のデータで最も強力かつ広範な予後予測免疫細胞であることが確認された (Fig. 2)。しかし、ccRCCでは、高CD8+ T細胞密度が逆説的に短いPFSおよびOSと関連し、これは血管新生因子高値例でのCD8+ T細胞疲弊(高PD-1/TIM-3発現)が原因と推察された。前立腺がんでも同様に、CD8+ T細胞密度とPD-L1発現が臨床的進行リスクの高さと関連することが示された。これらの知見は、腫瘍浸潤リンパ球の数だけでなく、その機能的状態の評価が不可欠であることを強調している。例えば、ccRCCでは、低血管新生因子レベルの患者におけるオリゴクローナルCD8+ T細胞は完全に機能的であり、その高密度は良好な予後と相関した (Giraldo et al. 2015)。
Treg・TFH・TH細胞の複雑な予後的意義: FOXP3+ Treg細胞は免疫抑制的役割のため一般的に不良予後と関連すると考えられているが、その予後への影響はがん種、腫瘍部位(上皮内 vs. 間質)、サブポピュレーションによって大きく異なることが示された (Fig. 2)。CRCでは、2つのFOXP3+サブ集団が異なる予後的意義を持つことが報告された (Saito et al. 2016): FOXP3高発現抑制性細胞 (FOXP3hi) は予後悪化と関連し、FOXP3低発現非抑制性CD45RA-細胞は予後改善と関連した。TFH細胞(CXCL13産生)はTLS形成を介してCRCや乳がんで生存延長と関連し、TH1細胞とともに良好予後の免疫コンテクスチャーの重要構成要素となる (Fig. 3)。TH17細胞の影響は腫瘍種や微小環境の文脈に依存し、一定ではない。例えば、CRCでは不良予後と関連するが、食道がん、胃がん、卵巣がん、子宮頸がんでは生存改善と関連する。
NK細胞・NKT細胞・DCの役割と機能的状態の重要性: 腫瘍内NK細胞(特にCD56+)は肝細胞がん (HCC)、CRC、ccRCC、前立腺がんで生存改善と関連するが、HCCではCD96+疲弊NK細胞が短い無病生存期間 (DFS) と関連するなど、機能的状態が重要であることが示された (Sun et al. 2019)。NKT細胞は神経芽腫やCRCで予後改善と関連する。樹状細胞 (DC) については、特に従来のタイプ1 DC (cDC1) の存在が良好予後マーカーとして位置付けられている。形質細胞様DC (pDC) はがん種に依存する二面性を持ち、乳がん原発巣では機能障害型pDCがTreg細胞拡大促進に関与して不良予後と関連するが、血中pDCは良好予後指標となりうる。
MDSC・好中球 (TAN) の一貫した不良予後マーカーとしての役割: 循環骨髄由来抑制細胞 (MDSCs)(多形核MDSC (PMN-MDSC) および単核球性MDSC (M-MDSC))の増加は、固形腫瘍および血液腫瘍で一貫した不良予後バイオマーカーとなることがメタ解析で示された (Fig. 2)。Bronte et al. NatCommun 2016によって提唱されたMDSCの均一な同定基準の必要性が強調されている。OLR1 (lectin-type oxidized LDL receptor 1) がMDSCと好中球を区別する新規マーカーとして同定された (Condamine et al. 2016)。腫瘍関連好中球 (TAN) についても、好中球/リンパ球比 (NLR) >4でOS、PFS、DFSが低下することが複数のがん種で報告されており、好中球は概して不良予後免疫細胞と位置付けられる。NLR>5の高値は非小細胞肺がん (NSCLC) のアテゾリズマブ治療でのPFS悪化と関連するというICB治療での予測的意義も報告されている。
TLS (三次リンパ構造) の成熟度依存的予後的意義: TLSはNSCLC、CRC、乳がん、メラノーマ、軟部肉腫などで予後改善と関連する重要な免疫組織学的構造である。TLSの胚中心 (germinal center; GC) 含有などの成熟度が予後的価値を規定し、MSI-HまたはBRAF変異CRCではTLSがより成熟・豊富であることが確認された。一方、HCCでは逆説的にTLSが不良予後と関連する例外的知見があり、これはHCC特有の腫瘍促進性TGF-βやWnt/β-catenin活性化環境下でのTLS機能不全によると考察される。TLSを構成するB細胞、TFH細胞、DCの協働が局所適応免疫応答の中心を担う (Fig. 3)。
Immunoscoreの確立: CRC全ステージでTNM分類を上回る予後予測力: Immunoscore (CD3+・CD8+を腫瘍中心部と浸潤辺縁の2部位で定量、IS0〜IS4の5段階) は、CRCのステージI-IIIにおいてDFS、疾患特異的生存、OSについてTNM分類を多変量解析で上回ることが3つの独立コホート(n=2,681名の国際多施設コホート)で確認された (HR per IS単位上昇 = 0.54; 95% CI 0.43-0.68; p<0.0001)。IS4(両マーカー・両部位すべて高密度)はIS0(低密度)と比較して再発リスクが最低となり、5年DFSはIS0の約50%からIS4の約90%へと大幅に改善した。MSI状態、分化度、脈管浸潤、リンパ管浸潤などの標準的病理パラメータと多変量解析で比較した場合もImmunoscoreが最強の独立予後因子であることが確認され、特にCRCではMSI状態とのp<0.001の有意差でImmunoscoreが優位を示した。転移性CRC(ステージIV; n=350名)でも評価が拡大され、「最小浸潤転移巣においてImmunoscoreが最低の転移巣が患者転帰を決定する」という知見が得られた。この発見は、免疫逃避が最も低い転移細胞クローンが臨床的転帰のボトルネックであることを意味する。ImmunoscoreはWHO消化器系腫瘍分類第5版 (CRC) において「必須・望ましい診断基準 (essential and desirable diagnostic criterion)」に採用された。Immunoscoreの汎がん種への拡張検証として、本レビューは大腸がん以外のがん種でも免疫浸潤スコアが標準予後因子を凌駕するケースを概説しており、例えばNSCLC (n=1,000名以上) でCD8+ T細胞・CD3+ T細胞の複合密度スコアがTNM分類よりも優れた術後再発予測能を示すという報告を引用している。また、Immunoscoreの画像解析自動化 (デジタルパソロジー + AI) によるスコア標準化が臨床実装の鍵となることも論じられ、単施設スタディで観察された観察者間変動をデジタル解析プラットフォームが大幅に低減させることが示されている。さらに、ケモカインの予後的意義についても本レビューは網羅的に議論しており、T細胞・NK細胞動員ケモカイン (CX3CL1/CXCL9/CXCL10/CXCL11) の腫瘍内高発現が複数のがん種で良好な予後と正相関することが示される。CXCL13はB細胞・TFH細胞を二次リンパ構造およびTLSに誘導し、単一バイオマーカーとしてもCRC・乳がん・卵巣がんなど複数のがん種で予後予測能を持つことが報告されている。一方でCXCL5は好中球・血管新生促進因子として機能し、その高発現はほぼ一貫して複数のがん種で不良予後と関連する。こうした知見から、「良好な免疫コンテクスチャー (hot tumor) を確立するためには特定のケモカインカクテルが必要であり、同時にCXCL5のような不良予後ケモカインとその誘引する細胞集団 (好中球) の低減が求められる」という統合的な視点が提唱されている。
4種のバイオマーカーシグネチャー統合フレームワークとICB予測への応用: 本レビューが提案する概念的枠組みとして、がん免疫バイオマーカーを4カテゴリーに分類した (Fig. 4)。(1) 予後シグネチャー: 治療前の免疫状態から生存を予測(例: Immunoscore IS4 vs. IS0でHR = 0.54 (95% CI 0.43-0.68, p<0.0001)、CD8+高密度がOS延長と関連)。(2) 予測シグネチャー: 特定治療への応答を予測(例: PD-L1発現≥1%でアテゾリズマブの客観的奏効率 (ORR) が約14%から25%へ上昇、腫瘍変異負荷 (TMB) ≥10 mut/MbでICB奏効率上昇、MSI-HでペムブロリズマブのORR 約40%)。(3) 機序シグネチャー: 奏効時に変化する免疫応答の分子機序を示す(例: CPI治療後のCD8+ T細胞増殖・クローン拡大、IFN-γシグナルの活性化、TLS成熟化)。(4) 逃避シグネチャー: 再発・抵抗性時に消失する良好免疫指標(例: JAK1/JAK2機能喪失変異によるPD-1遮断耐性、B2M変異によるMHC-I発現消失)。4シグネチャーに共通するコアエレメントは腫瘍特異的細胞傷害性T細胞、T細胞リクルートケモカイン (CXCL9/10/11)、MHC-I発現、TH1サポート (IFN-γ・IL-12軸) であり、これらが治療応答vs. 非応答を決定する共通基盤として機能する (Fig. 5)。特にPD-1+CD8+ T細胞プールの中でも「TIM-3陰性・TCF7陽性」の幹細胞様疲弊前駆体サブセットがICB奏効の予測因子となることが、NSCLCの複数コホートで確認されており (n>100の前向きコホート; HR for OS = 0.40)、機序シグネチャーと予測シグネチャーの収束点として重要な発見である。
考察/結論
本レビューは、がん免疫コンテクスチャー研究の第一人者であるGalon et al.による集大成的論文であり、その主要な貢献は3点に集約される。第1に、17がん種・70,000人以上という前例のない規模で15種免疫細胞の予後的意義を体系化し、免疫浸潤の種類、密度、位置、機能状態が腫瘍ごとに異なる複雑な影響を持つことを包括的に提示した。第2に、Immunoscoreが腫瘍中心部と浸潤辺縁の両部位でのCD3+・CD8+定量によりCRC全ステージでTNM分類を多変量解析で上回ることを複数コホートで確立し、臨床実装(WHO分類採用)に結びつけた。第3に、予後、予測、機序、逃避の4カテゴリーバイオマーカーシグネチャーという新たな統合的フレームワークを提示し、免疫バイオマーマー研究の概念整理に貢献した。
本研究は、従来のTNM分類が腫瘍細胞中心的な性質を持つという限界に対し、免疫コンテクスチャーこそが予後の主要決定因子であるという強いメッセージを提示している点で、これまでの研究とは異なる視点を提供している。特に、「最も免疫スコアが低い転移巣が患者全体の転帰を決定する」という知見は、腫瘍内免疫不均一性と転移の免疫逃避を結びつける重要な洞察であり、新規性が高い。また、ccRCCや前立腺がんでCD8+ T細胞高密度が予後悪化と関連するという逆説的な結果は、腫瘍浸潤T細胞の数だけでなく、その機能的状態の評価が不可欠であることを示し、単純なTIL定量の限界を指摘している。これは、Fridman et al. NatRevCancer 2012などの先行研究で示唆されてきた免疫細胞の機能的異質性の重要性をさらに強調するものである。
本レビューの知見は、がんの個別化医療、特に免疫療法の分野において臨床応用への大きな含意を持つ。ImmunoscoreのWHO分類への採用は、免疫バイオマーカーが臨床現場で標準的な診断基準として活用される道を開くものであり、bench-to-bedsideの成功例と言える。また、4つのバイオマーカーシグネチャーフレームワークは、治療選択、治療効果モニタリング、および抵抗性メカニズムの理解に役立ち、より効果的な治療戦略の策定に貢献する。
残された課題としては、第1にImmunoscoreの汎がん種での前向き大規模検証が今後の検討課題である。第2に、ICB治療効果の前向き予測バイオマーカーとしての臨床実装をさらに進める必要がある。第3に、シングルセルRNAシーケンス (scRNA-seq) や空間トランスクリプトミクスといった最新技術を活用し、免疫細胞種の精密化(例: mregDC、プレ疲弊CD8+ T細胞等の新亜集団の組み込み)と、その機能的・空間的相互作用の解明が求められる。第4に、循環免疫細胞(液体生検)と腫瘍内免疫コンテクスチャーの統合により、非侵襲的なバイオマーカーの開発も今後の研究方向性となる。TLSの成熟度評価や個々のがん種でのTreg細胞の逆説的知見のさらなる解明も重要な課題であり、免疫コンテクスチャーの精密化による個別化免疫療法の実現が最終目標となる。
方法
本論文はレビュー記事であるため、特定の実験方法や患者コホートを用いた研究は実施されていない。代わりに、既存の科学文献を広範に渉猟し、がんの予後と治療効果における免疫コンテクスチャーおよびImmunoscoreの役割に関する包括的な分析と統合が行われた。
具体的には、約300の研究論文から、17種類のがん種にわたる70,000人以上の患者データが収集・分析された。文献検索は、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて行われたと推察される。検索期間は明記されていないが、最新の知見まで網羅されていることから、広範な期間を対象としたものと考えられる。論文の選択基準としては、がん患者における免疫細胞サブタイプまたは免疫構造の予後・予測的意義を評価した原著論文が主に含まれたと推察される。
対象となった免疫細胞サブタイプは、CD8+ T細胞、CD4+エフェクターT細胞、Treg細胞 (FOXP3+ Treg細胞を含む)、TH1細胞、TH17細胞、TH2細胞、TFH細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞 (DC)、M1マクロファージ、M2マクロファージ、多形核骨髄由来抑制細胞 (PMN-MDSC)/腫瘍関連好中球 (TAN)、マスト細胞の計15種類である。これらの免疫細胞の腫瘍内浸潤のタイプ、密度、機能的指向性、および局在が患者の生存に与える影響について、各がん種における予後関連性が評価された。
Immunoscoreに関しては、結腸直腸がん (CRC) を中心に、CD3+およびCD8+リンパ球の腫瘍中心部 (CT) と浸潤辺縁部 (IM) における密度を定量するデジタル病理学に基づくアッセイとしての有効性が検証された。特に、国際多施設共同研究のデータを用いて、ImmunoscoreがCRCのステージI、II、IIIにおける無病生存期間 (DFS)、疾患特異的生存期間、および全生存期間 (OS) の予測において、従来のAJCC/UICC TNM分類よりも優れていることが確認された。統計解析には多変量Cox回帰分析が用いられ、ハザード比 (HR) と95%信頼区間 (CI) が算出された。
さらに、免疫バイオマーカーを「予後シグネチャー」「予測シグネチャー」「機序シグネチャー」「免疫逃避シグネチャー」の4つのカテゴリーに分類する新しい概念的枠組みが提案された。このフレームワークは、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) などの免疫療法に対する応答や抵抗性をより包括的に理解し、個別化された治療戦略を導くことを目的としている。各カテゴリーのバイオマーカーについて、その定義、関連する免疫学的特徴、および臨床的意義が詳細に議論された。本レビューでは、各免疫細胞サブタイプやImmunoscoreの予後・予測的意義を評価する際に、メタ解析や多変量解析の結果が重視された。