• 著者: Vincenzo Bronte, Sven Brandau, Shu-Hsia Chen, Mario P. Colombo, Alan B. Frey, Tim F. Greten, Susanna Mandruzzato, Peter J. Murray, Augusto Ochoa, Suzanne Ostrand-Rosenberg, Paulo C. Rodriguez, Antonio Sica, Viktor Umansky, Robert H. Vonderheide, Dmitry I. Gabrilovich
  • Corresponding author: Vincenzo Bronte (University of Verona), Dmitry I. Gabrilovich (The Wistar Institute)
  • 雑誌: Nature Communications
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-07-06
  • Article種別: Review
  • PMID: 27381735

背景

MDSC (myeloid-derived suppressor cell;骨髄由来抑制性細胞) は、がんや慢性炎症などの病態において免疫応答を強力に制御する主要な骨髄系細胞集団として注目されてきた。2007年に「骨髄起源 (myeloid origin)・免疫抑制機能・全身性拡大 (systemic expansion)」を包括する概念として命名されて以来、本分野の研究は急速に進展し、2015年単年だけでも4500報を超える論文が発表された。特にがん微小環境においては、MDSCがT細胞活性化を阻害することで抗腫瘍免疫から逃れる機構や、血管新生促進、転移前ニッチ (pre-metastatic niche) の形成といった非免疫学的機序を通じて腫瘍進行を直接促進することが、基礎・臨床の双方で示されてきた。

しかし、MDSC研究の急速な拡大に伴い、異なる研究グループ間でMDSCの定義・同定マーカー・サブセット命名法に深刻な混乱が生じていた。多形核球系の集団に対して「G-MDSC (granulocytic MDSC)」「PMN-MDSC」「LDG (low-density granulocyte)」といった用語が混在し、統一的な分類法が不在であった。また、MDSCの本質的定義である「T細胞抑制能」の機能評価を省略したまま、フローサイトメトリーの表面マーカー解析のみに基づいて細胞集団をMDSCと呼称する不適切な報告が増加し、研究間の再現性と比較可能性を著しく損なっていた。TGF-beta (transforming growth factor-beta) が腫瘍随伴好中球の表現型を抗腫瘍性のN1型から腫瘍促進性のN2型へ分極誘導することは報告されていたが (Fridlender et al. CancerCell 2009)、PMN-MDSCとこれらのTAN (tumor-associated neutrophil;腫瘍随伴好中球) を区別する特異的マーカーは未解明のまま同定されておらず、表現型のみでは鑑別が不可能であった。

がん微小環境の遺伝子発現プロファイルや浸潤免疫細胞の組成が複数のがん種にわたって予後と密接に関連することも大規模解析で示されていたが (Gentles et al. NatMed 2015)、これらの研究で観察された「好中球/MDSC」の機能的実態を統一基準で再検証する枠組みが不足していた。さらに、メラノーマ腫瘍微小環境におけるPD-L1 (programmed death-ligand 1) やIDO (indoleamine 2,3-dioxygenase) の発現上昇機序の解明 (Spranger et al. SciTranslMed 2013) を含め、免疫制御分子とMDSCの関係を正確に評価するためにも、MDSCを他の骨髄系細胞と厳密に区別する基準の確立が急務であった。加えて、ヒトで報告されていた未熟骨髄系前駆細胞集団 (immature MDSC) の定義や、マウスにおける等価集団の同定についても基準が曖昧なままであり、MDSC研究全体の信頼性を損ない、MDSCを標的とした治療薬やバイオマーカーの臨床開発を阻害する大きな障壁となっていた。

目的

本レビューの目的は、MDSC研究における命名法および同定基準の混乱を解消するため、国際的なコンセンサスに基づく推奨ガイドラインを提示することである。具体的には、マウスおよびヒトにおけるMDSCの3主要サブセットであるPMN-MDSC・M-MDSC・eMDSCについて、最低限必要なフローサイトメトリー表面マーカーパネル・細胞形態・機能的定義を明確化する。また、T細胞抑制活性を実験的に証明できていない段階の細胞集団を「MDSC-like cell (MDSC-LC)」として区別する新規概念を導入し、学術報告の透明性と再現性を担保する実践的な段階的判定アルゴリズムとチェックリストを提供することで、クロススタディ比較と臨床トランスレーションを加速させることを目指す。

結果

MDSCサブセットの再定義と命名法の統一: 本コンセンサスにより、MDSCは形態・表現型・機能的特徴に基づいて3主要サブセットに明確に整理された。第一に、従来「G-MDSC (granulocytic MDSC)」と呼ばれていた多形核球系集団の用語を廃止し、PMN-MDSC に統一することが決定された。PMN-MDSCは定常状態の好中球と異なり、細胞内顆粒の減少・浮力低下・CD16およびCD62Lの発現低下・ARG1/ペルオキシナイトライト/CD11b/CD66bの発現上昇を示す、病理学的に活性化された集団として定義された。第二に、M-MDSC は単球様の形態を示し、ヒトでは CD14+ HLA-DR-/lo CD15-、マウスでは CD11b+ Ly6G- Ly6Chi (Ly6C (lymphocyte antigen 6C) high) の表現型を持つ集団として定義された。第三に、より未熟な骨髄系前駆細胞の混合集団に対して eMDSC (early-stage MDSC) の名称が与えられ、ヒトでは Lin- (CD3/CD14/CD15/CD19/CD56陰性) HLA-DR- CD33+ CD11b+ として定義された。これら3サブセットの最低限の表現型基準はTable 1に集約された。脾臓MDSCの割合は定常状態の 1-2% からがんで 10-15% 以上へと増加し、骨髄・末梢血での増加は約2-fold と相対的に小さいことが整理された。

マウスにおける推奨マーカーパネルとゲーティング戦略: 実験的検証モデルとして、MCA203線維肉腫を担持したC57BL/6マウスの骨髄・末梢血・脾臓におけるMDSCサブセットのフローサイトメトリーゲーティング例が提示された (Fig 1)。生細胞かつCD11b陽性分画を親ゲートとし、PMN-MDSCを CD11b+ Ly6G+ Ly6Clo (Ly6C-low)、M-MDSCを CD11b+ Ly6G- Ly6Chi (Ly6C-high) として厳密に分別する。腫瘍非担持マウスの脾臓ではPMN-MDSCの割合は 2.56% と極めて低値であるのに対し、腫瘍担持マウスの脾臓では 39.2% から 64.2% へと著しく拡大し、骨髄では定常状態でも 49.5% 前後の高割合を示した。従来多用されていたGr-1抗体 (clone RB6-8C5; anti-Ly6G/Ly6C cross-reactive antibody) はLy6GとLy6Cの双方に交差反応するためサブセットの厳密な分画には不適であり、Ly6GとLy6Cそれぞれの特異的抗体を用いた二色染色が必須とされた。生細胞ゲート後にCD11b陽性を確認してからLy6C/Ly6G二軸プロットを行う標準化されたゲーティング手順が国際的な比較を可能にするとして推奨された。また、腫瘍非担持マウスとの絶対的な比較のため、対照群として同週齢の腫瘍非担持同系マウスを常に並行して解析することが義務付けられた。

ヒトにおける推奨マーカーパネルとFicoll分離技術: 健常ドナーおよびメラノーマ患者の末梢血を用いたヒトMDSCのゲーティング戦略が提示された (Fig 2)。ヒトPMN-MDSCは CD11b+ CD14- CD15+ または CD11b+ CD14- CD66b+、M-MDSCは CD11b+ CD14+ HLA-DR-/lo CD15-、eMDSCは Lin- HLA-DR- CD33+ CD11b+ として定義される。PMN-MDSCと通常の高密度好中球を分離するには比重 1.077 g/L のFicoll勾配遠心分離が必須であり、通常好中球は高密度画分 (沈殿) に移行するが浮力の変化したPMN-MDSCは低密度画分 (PBMC層) に回収される。メラノーマ患者のPBMC層ではM-MDSCが平均 38.6% に増加しているのに対し、健常ドナーでは 1.7% と極めて低値であった。凍結保存PBMCではPMN-MDSCが選択的に死滅し回収率が著しく低下するため、新鮮サンプルを用いた迅速解析が必須とされた。組織切片を用いた免疫組織化学 (IHC) 単独でのMDSC同定は現時点では不可能であり (MDSCと好中球・単球の識別基準が無い)、フローサイトメトリーが唯一の標準化された同定手法として規定された。

機能的定義の必須化とT細胞抑制アッセイの基準: 細胞集団を「MDSC」と確定して報告するためには、ex vivoにおけるT細胞増殖抑制能の実証が絶対条件とされた (Table 2)。アッセイ系としては、抗原特異的刺激 (同種MLR、またはTCR導入T細胞と特異的ペプチドの共培養) または非特異的刺激 (抗CD3/CD28抗体刺激) が指定された。MDSCとT細胞の混合比率は、抗原特異的アッセイで 1:2〜1:4、非特異的アッセイで 1:2〜1:8 の範囲が推奨された。単一の混合比率のみでの評価では細胞生存性低下による擬陽性を排除できないため、MDSCの添加数を段階的に減らした滴定実験を行い、T細胞の増殖抑制効果が用量依存的に消失することを確認することが義務付けられた。各アッセイは n=3 以上の独立反復実験で実施し、群間比較にはStudent’s t-testまたはMann-Whitney U testを適用、p<0.05 を有意水準として設定することが推奨された。T細胞増殖の評価には 3H-チミジン取り込み法またはCFSE (carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester) 希釈法、機能評価にはIFN-gamma (interferon-gamma) のELISPOTまたは細胞内染色が用いられる。対照細胞として、同一の表現型を持つ健常ドナーまたは腫瘍非担持マウス由来の細胞を必ず含めることが義務付けられた。ARG1活性の上昇、NOX2 (NADPH oxidase 2) 依存性のROS産生、iNOSによるNO産生、Treg (regulatory T cell) 誘導能などの生化学指標は抑制機序の補助的解析として位置付けられ、機能アッセイの代替にはならないとされた。

分子・生化学的マーカーの4分類: MDSCの病理学的活性化状態を特徴づける分子群が4つの生化学的カテゴリーに体系化された (Table 3)。(1) 転写因子およびアポトーシス調節因子:STAT3 (signal transducer and activator of transcription 3) のリン酸化活性化、C/EBPbeta (CCAAT/enhancer-binding protein beta)、IRF8 (interferon regulatory factor 8) の発現低下、S100A8/A9ヘテロ二量体、Rb1 (retinoblastoma 1) のエピジェネティックなサイレンシング。(2) 炎症性サイトカインおよび受容体:IL-6・IL-10・TGF-beta・VEGF (vascular endothelial growth factor) の産生、IL-4Ralpha (interleukin-4 receptor alpha chain) の発現上昇。(3) 走化性因子および受容体:組織浸潤に関与する CXCR2・CCR2・CXCR4。(4) 代謝酵素および副産物:ARG1・iNOS・NOX2 (NADPH oxidase 2)・活性窒素種ペルオキシナイトライト。PMN-MDSCは高いROS産生能とARG1活性を示すのに対し、M-MDSCはiNOSによるNO産生とARG1の双方を高発現するという機能的役割分担が明らかにされた。また、低酸素環境 (HIF-1alpha (hypoxia-inducible factor 1-alpha) 経路) や炎症性サイトカインによる刺激によりMDSC表面上のPD-L1発現が誘導され、免疫チェックポイント経路を通じたT細胞抑制がさらに増強されることが整理された。mRNA・タンパク質レベルの検出のみではARG1やiNOSの活性を確認できず、下流代謝産物 (NO・キヌレニン・オルニチン・尿素・ポリアミン) の生化学的解析を補助アッセイとして用いることが推奨された。

MDSC-LC概念と報告用アルゴリズム: T細胞抑制活性が実験的に実証されていない、あるいは抑制能を欠く細胞集団に「MDSC」の用語を使用することを禁じ、MDSC-like cell (MDSC-LC) として区別する厳格なルールが導入された (Fig 4)。同定アルゴリズムは以下の3ステップで構成される。Step 1 (表現型評価):Table 1に規定された表面マーカーパネルを満たすか確認する。Step 2 (機能評価):ex vivoでのT細胞増殖抑制アッセイを行い、用量依存的な抑制能が確認されれば「MDSC」と確定する。抑制能が認められないかアッセイ未実施の場合はStep 3へ進む。Step 3 (分子・生化学的評価):2つ以上の重要な転写因子 (p-STAT3・C/EBPbeta・S100A8/A9・IRF8・Rb1 のうち2種以上の変化) および少なくとも1つ以上の免疫調節分子 (ARG1・NOS2・NOX2・ペルオキシナイトライト・PGE2 (prostaglandin E2) のうち1種以上の発現上昇) が確認された場合、「MDSC-LC」として報告が許容される。論文投稿時のチェックリストとして、使用した抗体クローン・詳細なゲーティング戦略・Ficoll遠心の有無・機能アッセイの共培養比率・対照細胞の出所の明記が義務付けられた。このアルゴリズムは、早期がんや慢性炎症の初期段階で抑制活性が未発達な細胞集団、あるいは高度進行がんでも表現型陽性だが抑制能を持たない細胞の存在を適切に概念化することを可能にする。

PMN-MDSCと腫瘍関連細胞の鑑別における限界: 腫瘍組織内に浸潤したPMN-MDSCとTAN (tumor-associated neutrophil) は、現行の表面マーカー (マウス: CD11b+ Ly6G+、ヒト: CD11b+ CD66b+) を完全に共有するため、表現型のみによる両者の鑑別は不可能であると明記された。TANには抗腫瘍性のN1型と腫瘍促進性のN2型が存在するが (Fridlender et al. CancerCell 2009)、N2型TANの機能的・分子特性はPMN-MDSCと極めて類似しており、両者が同一の骨髄系分化スペクトルにおける異なる活性化段階を反映している可能性が指摘された。全トランスクリプトーム解析では脾臓PMN-MDSC・脾臓好中球・骨髄好中球の間に有意な遺伝子発現差が認められているが、腫瘍内のPMN-MDSCとTANを分離するマーカーが発見されない限り、真のPMN-MDSCのトランスクリプトーム解析は困難なままである。TAMとM-MDSCの鑑別については、TAMがF4/80・IRF8・CD115 (M-CSF receptor) を高発現し、S100A9を低発現する点で区別可能である。早期肺がんにおいて腫瘍随伴好中球がT細胞応答を刺激することも示されており (Eruslanov et al. JClinInvest 2014)、PMN-MDSC・TAN・好中球の三者を区別する細胞表面マーカーの同定が最優先の未解決課題として挙げられた。

考察/結論

本コンセンサス声明は、MDSC研究分野における長年の課題であった命名法の混乱と不十分な機能評価に対して、国際的な最低限の基準を提示したガイドラインである。「G-MDSC」から「PMN-MDSC」への用語統一、機能未実証の集団を区別する「MDSC-LC」の導入、T細胞抑制能の証明を必須としたアルゴリズムの策定は、学術報告の再現性と信頼性を高める契機となった。

先行研究との違い: 本ガイドラインは、フローサイトメトリーの表現型のみに依存していたこれまでの多くの研究と異なり、機能的抑制アッセイの義務化、Ficoll低密度分画によるPMN-MDSCの濃縮、IHC単独でのMDSC同定の不可能性、および抑制能未実証集団をMDSC-LCとして明確に分類するルールを初めて国際的に規定した点で既報の提案を大幅に超える。これにより、単なる細胞マーカーの羅列にとどまらず、病理学的活性化状態を証明するための新規の段階的同定アルゴリズムが確立された。表現型・機能・分子特性を統合した3段階判定フローを国際コンセンサスとして明文化した取り組みであり、本研究で初めて包括的なチェックリスト付きフローチャートが提示された。

臨床的意義: 本ガイドラインに準拠したMDSCの正確な同定は、がん免疫療法の臨床現場において極めて重要な意義を持つ。メラノーマ微小環境におけるPD-L1発現とTreg誘導の関連を示した研究 (Spranger et al. SciTranslMed 2013) の知見と呼応するように、MDSC上のPD-L1発現は免疫チェックポイント阻害薬に対する治療抵抗性や予後予測のバイオマーカーとしての臨床応用が進められている。本標準化プロトコルを用いることで、異なる臨床試験間でのデータの直接比較が可能となり、MDSCを標的とした新規複合療法 (チェックポイント阻害薬との併用、ARG1/iNOS阻害薬など) の開発が加速される。さらに、末梢血MDSCの定量的評価を標準化することで、がん患者の免疫モニタリングや治療応答予測のための橋渡し的ツールとしての活用が期待される。

残された課題: 本コンセンサス声明が誠実に認めた残された課題として、以下の制限事項が今後の展望において重要である。第一に、PMN-MDSCと腫瘍随伴好中球をフローサイトメトリーや組織解析で完全に区別できる単一の特異的表面マーカーは依然として同定されておらず、両者の境界線は曖昧なままである。第二に、ex vivoにおけるT細胞抑制アッセイの定量的閾値 (何パーセント抑制すればMDSCと呼べるか) の統一がなされていない。第三に、マウスとヒトにおけるMDSCサブセット間の種間差を埋める共通の遺伝子シグネチャーの確立が不十分である。第四に、eMDSCのマウスにおける等価集団が2016年時点では未同定のままであり、種間の比較研究を制約している。これらの課題解決には、今後の研究において単一細胞レベルのオミクス解析や生体内での系統追跡 (lineage tracing) 技術を用いた動的骨髄系細胞分化プロセスの解明が不可欠であり、更なる検討が求められる。また、エピジェネティック修飾やmicroRNA発現シグネチャーなど新規のMDSC同定指標が将来的な基準拡張の候補として明示された (Table 3)。

方法

本論文は、MDSC分野をリードする15名の国際的研究者によるコンセンサス声明をまとめたレビューであり、新規実験データの創出を主目的とするものではないが、推奨基準の策定にあたり厳密な文献調査と合意形成プロセスが用いられた。

文献検索とデータ統合: エビデンスに基づく推奨事項を構築するため、PubMed を用いた包括的な文献検索が実施された。検索対象は、MDSCの命名・表現型・機能評価・臨床的意義・骨髄系細胞分化に関連する、2015年10月までに発表された全英語論文とした。検索キーワードには「myeloid-derived suppressor cells」「granulocytic MDSC」「monocytic MDSC」「T-cell suppression assay」などが使用され、収集された数千報の文献から各サブセットの同定マーカー・機能解析プロトコル・生化学的パラメーターに関するデータが抽出・統合された。

コンセンサス形成と推奨基準の策定: 抽出データに基づき複数回のディスカッションを通じて、研究グループ間で不一致のあった用語の整理と標準化が行われた。再現性が極めて高いと合意された項目のみが「最低限必要な基準 (minimal requirements)」として採用された。具体的には以下の4工程が踏まれた。

(1) 表現型同定基準の標準化:マウスおよびヒトの各組織 (血液・脾臓・骨髄・腫瘍) からMDSCサブセットをフローサイトメトリーで検出するゲーティング戦略を策定した。末梢血中でPMN-MDSCと成熟好中球を物理的に分離するため、比重 1.077 g/L のFicoll勾配遠心分離法による低密度分画 (low-density fraction) の使用を推奨基準として規定し、凍結保存によるPMN-MDSCの選択的死滅を防ぐため新鮮サンプルでの解析を義務付けた。

(2) 機能的抑制アッセイの厳格化:「T細胞増殖抑制能」を評価するための標準プロトコルを指定した。抗原特異的刺激 (同種MLR (mixed leukocyte reaction) やTCR (T-cell receptor) 導入T細胞とコグネイトペプチドの共培養) および非特異的刺激 (抗CD3/CD28抗体刺激) の双方を対象とし、MDSCとT細胞の共培養比率を段階的に変化させる滴定実験 (titration; 1:2〜1:8の比率) と用量依存的な抑制効果の証明を必須基準として定義した。

(3) 分子・生化学的プロファイルの分類:MDSCの病理学的活性化状態を証明する補助指標として、ARG1 (arginase 1)、iNOS (inducible nitric oxide synthase)、ROS (reactive oxygen species)、NO (nitric oxide)、ペルオキシナイトライト、関連転写因子・シグナル分子の評価方法を整理し、Table 3として体系化した。

(4) 報告アルゴリズムの構築:表現型・機能・分子特性の3段階からなるステップバイステップの判定フローチャートを作成し、抑制能が未実証の細胞をMDSC-LCと分類するルールを策定した (Fig 4)。