- 著者: Rocha P, Zhang J, Laza-Briviesca R, Cruz-Bermúdez A, Bota-Rabassedas N, Sanchez-Espiridon B, Yoshimura K, Behrens C, Lu W, Tang X, Pataer A, Parra ER, Haymaker C, Fujimoto J, Swisher SG, Heymach JV, Gibbons DL, Lee JJ, Sepesi B, Cascone T, Solis LM, Provencio M, Wistuba II, Kadara H
- Corresponding author: Humam Kadara, Ignacio I. Wistuba (MD Anderson Cancer Center, Houston, TX)
- 雑誌: Clinical Cancer Research
- 発行年: 2022
- Epub日: 2022-04-08
- Article種別: Original Article
- PMID: 35394499
背景
非小細胞肺がん (NSCLC) は依然としてがん関連死亡の主要な原因であるが、近年、死亡率は減少傾向にある。早期スクリーニングと診断の進歩により、早期NSCLCの症例数が増加している。切除可能NSCLCの治療戦略は急速に進化しており、特にネオアジュバント (術前) 治療の分野で顕著な進展が見られる。術前化学免疫療法 (チェックポイント阻害薬 [ICI] とプラチナ系化学療法の併用) は、高い主要病理学的奏効率 (MPR: viable tumor cells [VTC] ≤10%) を達成することが複数の臨床試験で示されている。例えば、NADIM試験 (NCT03081689: ニボルマブとプラチナ系化学療法による術前化学免疫療法) では、MPR率86%、病理学的完全奏効 (pCR) 率71%という画期的な結果が報告された。さらに、CheckMate 816 Phase III試験では、ネオアジュバント化学免疫療法が化学療法単独と比較して有意に高いMPR率 (36.8% vs 8.6%) を示したことが報告されている Forde et al. NEnglJMed 2018。また、アジュバント設定でのICI使用も、PD-L1発現が1%以上のStage IIからIIIAのNSCLC患者において臨床管理として確立されつつある Felip et al. Lancet 2021。
しかしながら、化学免疫療法がどのような免疫学的メカニズムを通じてMPRを達成するのか、その詳細な解明は依然として不足している。腫瘍免疫微小環境 (TIME) の構成要素(例:PD-L1、CD8+T細胞、B細胞、制御性T細胞、マクロファージなど)は、自然腫瘍免疫、化学療法、免疫療法によって質的に異なる修飾を受ける可能性がある。これまでの研究では、PD-L1発現がICIへの奏効予測因子として用いられてきたが、PD-L1陽性腫瘍の患者の一部はICIに奏効せず、逆にPD-L1陰性腫瘍の患者でも奏効が得られる場合があることが報告されており Reck et al. JClinOncol 2021、より信頼性の高いバイオマーカーの必要性が指摘されている。また、T細胞浸潤の程度や空間パターン(腫瘍内または腫瘍周囲)が宿主免疫およびICIへの奏効に影響を与えることも示唆されている Bruni et al. NatRevCancer 2020。
これら3つの異なる治療文脈(未治療、術前化学療法、術前化学免疫療法)における体系的な比較免疫遺伝子プロファイリングはこれまで行われておらず、この知識のギャップが残された課題であった。特に、各治療モダリティがTIMEに与える特異的な影響や、病理学的奏効を予測する免疫学的バイオマーカーの同定は未解明な点が多かった。このギャップを埋めることは、ネオアジュバント免疫療法への患者選択を精緻化し、新たな治療標的を同定するために極めて重要である。
目的
本研究の目的は、切除可能NSCLCの3つの異なるコホート(未治療、術前化学療法、術前化学免疫療法 [NADIM試験])において、免疫遺伝子プログラムの包括的な解析を実施し、以下の点を明らかにすることである。(1) PD-L1発現と関連する免疫プログラムの特性を解明する。(2) 3つの主要なTIME表現型(炎症型、排除型、cold型)の免疫学的特徴を詳細に記述する。(3) 術前化学療法および術前化学免疫療法後の病理学的奏効と関連する免疫シグナチャーを同定する。(4) これら3つの治療コホート間における免疫遺伝子プログラムの差異を比較検討し、各治療法がTIMEに与える影響を評価する。これらの知見を通じて、切除可能NSCLCにおける宿主腫瘍免疫およびネオアジュバント治療への応答を規定する免疫学的基盤の理解を深めることを目指す。
結果
免疫遺伝子プロファイリングの技術的検証: 標的免疫遺伝子シーケンシングの妥当性を確認するため、IHCで評価されたCD4+、CD8+、CD45RO+、FOXP3+、CD68+細胞密度と、対応する遺伝子シグナチャースコアとの相関を解析した (n=177患者)。その結果、それぞれr=0.58、r=0.67、r=0.35、r=0.32、r=0.22と、全ての免疫細胞密度で対応する遺伝子スコアとの間に有意な相関が認められた (全てp<0.0001)。また、PD-L1 IHC発現とCD274遺伝子発現の間にも高い相関 (r=0.55、p<0.0001) が確認された (Supplementary Fig. S1A, S1B)。さらに、CD8 T細胞およびCD8メモリーエフェクターT細胞シグナチャーは、既報の細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) シグナチャー (r=0.7761、p<0.0001) および細胞傷害性シグナチャー (r=0.8037、p<0.0001) と高い正の相関を示した (Supplementary Fig. S2)。これらの結果は、本研究で採用した標的免疫遺伝子シーケンシングアプローチが、早期NSCLCの腫瘍免疫微小環境 (TIME) における免疫細胞サブセットを定量化する上で堅牢であることを示している。
PD-L1発現と免疫遺伝子プログラム (未治療コホート): PD-L1陽性 (≥1%) の肺腺がん (LUAD) は、PD-L1陰性 (<1%) のLUADと比較して、抗原提示 (HLA-DRA、CD86)、IFN-γシグナリング、免疫細胞傷害活性、CTL、Tエフェクター細胞、B細胞 (p=0.0005)、CD4 T細胞 (p=0.0029)、制御性T細胞、エフェクターメモリーCD8 T細胞、好中球シグナチャーなど、多様な免疫活性化プログラムにおいて有意に高い発現を示した (全てp<0.05) (Fig 1A, 1B, 1C)。これらの知見は、The Cancer Genome Atlas (TCGA) LUADコホート (n=481) のバリデーションでも同様に確認され、PD-L1高発現群で抗原提示、IFN-γ、免疫細胞傷害活性、M1マクロファージ、Tエフェクターシグナチャーの上昇が認められた (Supplementary Fig. S3A, S3B)。興味深いことに、PD-L1陰性LUADの中にも高い免疫活性化シグナチャーを示すサブセットが存在し、PD-L1陰性例でもICI奏効が得られる可能性を示唆する免疫学的根拠が示された。一方、肺扁平上皮がん (LUSC) では、PD-L1陽性群でマクロファージおよびM1マクロファージシグナチャーの上昇とプラズマ細胞の低下のみが認められ、LUADとは異なる免疫生物学的プログラムの存在が示唆された (Supplementary Fig. S4B-S4D)。上皮成長因子受容体 (EGFR) 変異またはSTK11変異を有するLUADでは、PD-L1陰性化と免疫不活性化が同時に認められた (既報と一致) (Supplementary Fig. S4A)。
TIME表現型と免疫遺伝子プログラム (未治療コホート): 未治療LUADをCD8+T細胞の浸潤パターンに基づいて炎症型、cold型、排除型に分類した (Fig 2A)。炎症型LUADは全LUADの37%を占めた。病期進行とともに排除型の頻度が増加する傾向が認められた (p=0.0273) (Fig 2B)。PD-L1陽性LUADでは炎症型が66.7%とPD-L1陰性腫瘍 (38.1%) より有意に高頻度であった (p=0.0207)。高腫瘍変異負荷 (TMB) 群では炎症型が58.6%と高かった (p<0.0001)。EGFR変異LUADの13例中9例がcold表現型に分類された (既報と一致) (Supplementary Fig. S6A)。 免疫シグナチャーの差違では、炎症型LUADはCD8 T細胞 (p<0.0001)、エフェクターメモリーT細胞 (p<0.0001)、ナイーブB細胞、B細胞 (両p<0.0001) が有意に高値を示した (Fig 2C)。マクロファージおよびM1マクロファージもcold型より高値であった。Cold型は全ての免疫シグナチャーで最低値を示し、増殖・血管新生促進因子 (MTOR、FGFR3、IL6R) が相対的に高発現していた。排除型は炎症型とcold型の中間状態を示し、M2マクロファージシグナチャーが他2型より有意に高値であった (p=0.0219)。これは、M2マクロファージがT細胞排除に寄与する可能性を示唆する。94個の差次発現遺伝子 (DEG) が3表現型間で同定され、炎症型では免疫細胞浸潤 (CD3E、CD3G、CD8A、CD8B)、細胞傷害活性 (GZMA、GZMB、GZMK、NKG7)、免疫細胞ケモタキシス (CXCL9、CXCL10、CXCL13)、抗原提示 (TAP1、TAP2) に関連する遺伝子が高発現していた (Fig 2D)。CXCL9およびCXCL13はICI奏効予測因子としてメタアナリシスで確認されており Litchfield et al. Cell 2021、本結果と整合する。PD-L1/TILs 4群分類では、PD-L1+/TILs+群が炎症型と排除型に多く分布し、PD-L1-/TILs-群がcold群に多く分布した (Supplementary Fig. S8B)。免疫チェックポイントの発現パターンでは、CTLA4、TIGIT、LAG3が炎症型で高発現し、HAVCR2、ICOSLGが排除型で高発現していた (Supplementary Fig. S9A)。
術前化学療法後の免疫遺伝子プログラムと病理学的奏効: 術前化学療法を受けたLUAD (n=38) において、VTCの低下 (奏効) と正の相関を示した遺伝子として、自然免疫関連 (CD14、TLR4、MAF) およびB細胞関連 (CD79A、JCHAIN、CXCL12、BLNK) 遺伝子が同定された (全てp<0.01)。一方、VTCが高値 (不応) の腫瘍では、DNA複製、細胞周期、アポトーシス抑制に関連する遺伝子 (MCM6、FOXM1、FOXA1) の発現上昇が認められた。VTCとDEGの相関はr=0.84 (p<0.001)、上皮細胞シグナチャーとの相関はr=0.62 (p=0.0065) であった (Fig 3A, 3B)。CTLシグナチャーが高値のLUADは有意に良好な全生存期間 (OS) を示した (p=0.0055) (Fig 3C)。再発したLUADでは、アデノシンシグナチャーが有意に高値であり (p=0.0085)、これはアデノシン経路がICI抵抗性および腫瘍免疫回避と関連するという既報を支持する (Fig 3D)。再発LUADでは、マクロファージ、M2マクロファージ、CD4メモリーT細胞シグナチャーも上昇傾向にあった (全てp<0.09)。LUSC (n=18) では、VTCがナチュラルキラー (NK) 細胞疲弊シグナチャーと正の相関 (r=0.61、p=0.022) を示し、M2マクロファージシグナチャーとは逆相関した (r=-0.61、p=0.0187) (Supplementary Fig. S11A, S11B)。
術前化学免疫療法 (NADIM試験) と免疫遺伝子プログラム: 病理学的奏効 (MPR/pCR vs 不完全奏効) との関連では、pCR/MPR達成例 (VTC≤10%) がCD8 T細胞 (p=0.0293) およびB細胞 (p=0.0110) シグナチャーで有意に高値を示した (Fig 4A)。不完全奏効例 (VTC>10%) では、Th1型細胞および上皮細胞シグナチャーが有意に高値であった (p<0.05)。多重免疫蛍光 (mIF) 検証により、CD3+CD8+細胞密度はRNAシーケンシング (RNA-seq) のCD8 T細胞シグナチャーと有意に相関し、pCR/MPRとの関連も同様に確認された (Supplementary Fig. S12A)。病理学的奏効と関連した遺伝子プログラムとして、223遺伝子がVTCと有意に関連した (p adjusted<0.05)。VTC低値 (奏効) と正相関した遺伝子には、免疫活性化・ケモタキシス関連 (IL1R1、CCL14、IL33、IL7R、IRF8、CXCR4)、T細胞・NK細胞関連 (TARP、CD226、CD69、KLRD1)、骨髄系細胞関連 (CLEC9A、MARCO) が含まれた。VTC高値 (不応) と関連した遺伝子には、DNA複製・細胞周期関連 (BRCA1、CDK4、TOP2A、AURKA) および免疫抑制性転写因子FOXP3が認められた (Fig 4B)。 治療前後でペア検体が得られた13例の縦断的解析では、128個のDEGが治療前後で有意に変動した。化学免疫療法により、制御性T細胞 (p=0.0479)、M2マクロファージ (p=0.0398)、炎症・ケモタキシス関連遺伝子 (IL1R1、CXCR4、CCL14、CXCL12) のシグナチャーが増加した (Fig 4C, 4D)。一方、Th1型細胞 (p<0.0001) および上皮細胞 (p<0.0001) のシグナチャーは低下した。M2マクロファージの増加は、ICI後にCD68+PD-L1+細胞が増加するという先行研究と一致し、骨髄系プロ腫瘍プログラムとの共標的化の合理性を示唆する。
3コホート間の比較 (Stage I除外後の横断解析): Stage I NSCLCを除外した上で、3群間で532個のDEGが同定された (Fig 5A)。化学免疫療法コホートは、ナイーブB細胞 (p=0.0022)、B細胞 (p<0.05)、プラズマ細胞 (p<0.05)、CD4メモリーT細胞 (p<0.0001)、CD4 T細胞 (p=0.0031)、細胞傷害性CD8 T細胞 (p<0.0001)、マクロファージ (p<0.0001) など、多くの免疫細胞サブセットシグナチャーで最高スコアを示した (Fig 5B)。治療未介入→術前化学療法→化学免疫療法の順に、多くのシグナチャーで免疫細胞サブセットスコアが漸増的に上昇するパターンが確認された。化学免疫療法群では特にT細胞、B細胞、骨髄系細胞浸潤を反映する遺伝子 (CD3G、CD8A、MS4A1、CD19、CD22、CD68、CD163) が上昇し、細胞周期・DNA修復遺伝子 (CDK4、BRCA1、PKM) は低下した (Fig 5A)。
考察/結論
本研究は、切除可能NSCLCにおいて、未治療、術前化学療法、術前化学免疫療法 (NADIM試験) の3コホートを対象に、免疫遺伝子プログラムの包括的横断解析を行った初の体系的研究である。
新規性: 本研究で初めて、3つの異なる治療文脈における免疫遺伝子プログラムの包括的な比較解析を実施し、各治療法が腫瘍免疫微小環境 (TIME) に与える影響を詳細に記述した。特に、化学免疫療法がT細胞およびB細胞サブセットの浸潤を最も強く誘導することを新規に同定した。また、PD-L1陰性LUADの中にも高い免疫活性を示すサブセットが存在することを示し、PD-L1単独では捉えきれないICI奏効の免疫学的根拠を提示した点も新規の知見である。
先行研究との違い: これまでの研究ではPD-L1発現がICI奏効の主要な予測因子とされてきたが、本研究はPD-L1陰性LUADの中にも高い免疫活性を示すサブセットが存在することを示し、従来のPD-L1単独の評価とは異なる視点を提供した。これは、Herbst et al. Nature 2014 などの先行研究とは対照的に、PD-L1陰性腫瘍におけるICI奏効の可能性を免疫遺伝子レベルで裏付けるものである。また、M2マクロファージが排除型TIMEに豊富であるという知見は、T細胞排除機序へのM2マクロファージの関与を示唆し、これは Lavin et al. Cell 2017 の報告とも整合する。さらに、術前化学免疫療法後のM2マクロファージ増加という逆説的な知見は、Forde et al. NEnglJMed 2018 やCascone et al. (Nat Med 2021) の報告とも一致しており、治療後の骨髄系細胞の変化がICI奏効に影響を与える可能性を示唆する。
臨床応用: 本知見は、術前化学免疫療法前のTIME評価(CD8+T細胞密度、B細胞、PD-L1発現など)が術前療法奏効を予測するバイオマーカーとして活用される可能性を示唆し、ネオアジュバント免疫療法の患者選択精緻化に貢献しうる。B細胞の役割が化学免疫療法奏効の重要な構成要素として同定されたことは、三次リンパ組織 (TLS) とB細胞の腫瘍免疫における重要性を示す近年の知見と整合する。また、治療後のM2マクロファージ増加という逆説的な知見は、myeloid成分との共標的化(例:CSF-1R阻害薬、CD47遮断)が化学免疫療法の有効性をさらに向上させる可能性を示唆し、臨床現場での新たな治療戦略開発に繋がる。
残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationが存在する。第一に、後ろ向き研究であること。第二に、術前治療コホートの患者数が比較的少数 (n=38およびn=21) であり、多施設間の差異が存在する可能性があること。第三に、コホート間で病期分布が不均一であること。特にStage I NSCLCは未治療コホートに多く、治療群では少なかった。第四に、空間的免疫プロファイリングが不十分であったことが挙げられる。これらの限界を克服するためには、より大規模な前向きコホートでの検証、および高解像度の空間的免疫解析が今後の検討課題として必要である。
方法
患者コホートと研究デザイン 本研究は、3群の切除可能NSCLCコホートを対象とした後ろ向き・多施設研究として実施された。
- 未治療コホート: The University of Texas MD Anderson Cancer Center (MDACC) で上皮前手術切除を受けた249例中190例を対象とした。内訳は肺腺がん (LUAD) 107例、肺扁平上皮がん (LUSC) 83例で、病期はStage Iが38%、IIが26%、IIIが36%であった。年齢中央値は67歳であった。
- 術前化学療法コホート: MDACCの患者38例を対象とした。LUAD 20例、LUSC 18例で、病期はStage Iが2.6%、IIが18.4%、IIIが79%であった。
- 術前化学免疫療法コホート: スペインのHospital Puerta de Hierroが主導したNADIM試験 (NCT03081689) に登録された21例を対象とした。内訳はLUAD 11例、LUSC 10例で、全例がStage IIIであり、ニボルマブとプラチナ系化学療法の併用による術前化学免疫療法を受けた。病理学的奏効は、viable tumor cells (VTC) の割合に基づいて、不完全奏効 (>10% VTC)、主要病理学的奏効 (MPR; ≤10% VTC)、病理学的完全奏効 (pCR; 0% VTC) に分類された。
免疫遺伝子プロファイリング HTG EdgeSeq Precision Immuno-Oncology Panel (HTG Molecular) を用いて、標的RNAシーケンシングを実施した。このパネルは、腫瘍と免疫系の相互作用に焦点を当てた1,392遺伝子を網羅している。HTG EdgeSeq Revealソフトウェアを用いて、各遺伝子発現データをin silicoで細胞集団および表現型シグナチャーに脱畳み込み (deconvolution) した。さらに、従来の免疫細胞浸潤および機能状態を予測する遺伝子プログラムのスコアを算出した。この手法の妥当性は、The Cancer Genome Atlas (TCGA) のLUADコホート (n=481、Stage I-III) でバリデーションされた。
免疫組織化学 (IHC) 解析 未治療コホートのサブセット177例において、CD4+、CD8+、CD45RO+、FOXP3+、CD68+細胞密度をデジタル画像解析により評価した。PD-L1発現はIHCにより、腫瘍細胞に占める陽性細胞の比率 (<1% vs ≥1%) として評価された。
TIME表現型分類 CD8+T細胞のIHC定量に基づいて、腫瘍を以下の3つのTIME表現型に分類した。
- 炎症型 (inflamed): 腫瘍内CD8+T細胞密度が1,000/mm²以上かつ、腫瘍周囲/腫瘍内CD8+T細胞比率が2.75未満(均一な浸潤を示す)。
- Cold型 (cold): 腫瘍内CD8+T細胞密度が1,000/mm²未満かつ、比率が2.75未満(免疫砂漠状態)。
- 排除型 (excluded): 腫瘍周囲/腫瘍内CD8+T細胞比率が2.75超(腫瘍辺縁にのみCD8+T細胞が存在し、腫瘍実質内には少ない)。 また、PD-L1発現(<1% vs ≥1%)と腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) (CD3+T細胞密度の中央値で高低を分類) に基づく4群分類も実施した: PD-L1-/TILs-、PD-L1-/TILs+、PD-L1+/TILs-、PD-L1+/TILs+。
多重免疫蛍光 (mIF) 検証 術前化学免疫療法コホートのサブセット (n=27) において、Opal 7-Color fIHC Kitを用いてCD3、CD8、FOXP3、パンサイトケラチンを同時染色し、CD3+CD8+ (細胞傷害性T細胞) およびCD3+FOXP3+CD8- (制御性T細胞) の細胞密度をRNA-seqシグナチャーと照合検証した。
統計解析 連続変数の比較にはMann-Whitney U検定またはKruskal-Wallis検定を用いた。相関分析にはSpearman検定を適用した。生存解析にはCox比例ハザードモデルを用いた。多重比較補正にはBenjamini-Hochberg法を適用した。