• 著者: Christopher C. Goodnow, Jonathon Sprent, Barbara Fazekas de St Groth, Carola G. Vinuesa
  • Corresponding author: Christopher C. Goodnow (John Curtin School of Medical Research and Australian Phenomics Facility, The Australian National University, Canberra, Australia)
  • 雑誌: Nature
  • 発行年: 2005
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 15931211

背景

哺乳動物の免疫系はV(D)J組換えと体細胞超変異 (somatic hypermutation) という2段階のゲノム再編成によって理論的にあらゆる化学構造に対する受容体を産生できる。しかしこの意図的にランダムな受容体生成プロセスの副産物として、BCRとTCRの20〜50%が体内の何らかの自己成分に危険な親和性で結合し得ることが複数の実験系から示されていた (Ignatowicz et al. Cell 1996; Zerrahn et al. Cell 1997; Wardemann et al. Science 2003)。それにもかかわらず自己免疫疾患を発症するのは人口の3〜8%に過ぎないことが疫学研究から確認されており (Jacobson et al. ClinImmunolImmunopathol 1997)、大部分の個体では自己反応性受容体が巧みに制御されていた。

「免疫学的自己寛容」の細胞・分子機序については、遺伝子改変マウス・トランスジェニックマウスを用いた実験動物研究とヒト免疫不全症 (AIRE (autoimmune regulator) 欠損による自己免疫性多内分泌症候群1型 = APECED (autoimmune polyendocrine syndrome type 1)) の解析から急速に知見が蓄積していた (Zou et al. NatRevImmunol 2008)。一方で、ヒトにおいて自己反応性受容体を担う細胞は頻度が低く多様すぎて、細胞性メカニズムを直接可視化することは実験動物のようには困難であり、実験動物で定義された機序がヒト自己免疫疾患に対応するかどうかの gap in knowledge が存在した (Jhunjhunwala et al. NatRevCancer 2021)。また、自己免疫疾患の遺伝的基盤として、AIRE等の単一遺伝子の完全欠損による強い表現型は解析が先行していたが、複数遺伝子の軽微な変異が累積してどのように一般的な自己免疫感受性を生じるかについての統合的理解が手薄であり、これが本Reviewの出発点となった (Liu et al. NatMed 2021)。

目的

BCR・TCRを担う自己反応性リンパ球を制御する複数の細胞性チェックポイント (Figure 2に示す21のメカニズム) の分子基盤を体系化し、各チェックポイントの遺伝的欠損がどのように自己免疫疾患につながるかを論じるとともに、実験動物とヒト臨床の間の橋渡しを行い、自己免疫治療への含意を提示する。

結果

4つの細胞性自己寛容戦略と21チェックポイントの全体像:自己反応性受容体への対処として確立された4つの細胞戦略がFigure 1に示される。(1) クローン欠失 (deletion):自己反応性受容体を発現する細胞をアポトーシスで除去するBurnetのクローン選択説に基づく機序。(2) 受容体編集 (receptor editing):V(D)J組換えまたは体細胞超変異によって自己反応性の低い受容体に置換。(3) アネルギー/生化学的チューニング (anergy/tuning):内因性の生化学的・遺伝子発現変化によって自己反応性受容体の活性化能を減弱。(4) 外因性抑制 (extrinsic suppression):成長因子・共刺激分子・炎症メディエーターの供給制限と、制御性T (Treg) 細胞による能動的抑制。これら4戦略に基づきFigure 2には骨髄・胸腺・末梢リンパ組織・胚中心・最終エフェクター相における21の細胞性チェックポイントが体系的にマッピングされており、自己反応性受容体の自己抗原への親和性に応じて異なる様式で機能する多重バックアップ機構が大部分の個体での自己免疫疾患抑制を説明する。

B細胞中枢寛容:骨髄でのBCR編集・欠失 (チェックポイント1-3):骨髄内の未熟B細胞が自己反応性BCRを発現した際、BCR架橋シグナルが閾値を超えると一連の連鎖反応が生じる (Fig. 3c)。まずBCRが細胞表面から内在化され成熟プログラムが一時停止する。その結果、(i) リンパ節ホーミングに必要なCD62Lが発現されず、(ii) 末梢B細胞生存サイトカインBAFF (B cell-activating factor) の受容体BAFFR (BAFF receptor) が低発現となってBAFF競争で不利となり、(iii) V(D)J組換えの中核酵素をコードするRAG1/RAG2の発現が継続して軽鎖の置換 (receptor editing) が可能となる。自己反応性の低い受容体への編集に失敗したB細胞は1〜2日以内に細胞死を起こす。この欠失にはBAFF受容体低発現による生存因子競争での不利加えて、BCR誘導性のBIM (BCL-2-interacting mediator of cell death) 発現増加が主要に関与する。BIM欠損マウスでは潜伏期を経た後に自発的な抗DNA自己抗体産生が観察される (Strasser & Bouillet ImmunolRev 2003)。ヒト骨髄内でも未熟B細胞サブセットが抗核抗体・抗DNA抗体をBCRほぼ非発現状態で保有することが観察されており (Wardemann et al. Science 2003)、BCR内在化・成熟停止機構のヒトへの保存が示唆される。ただし全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus, SLE) 様の全身性自己抗原に対するBCR (チェックポイント1-3で制御可能) とは異なり、Graves病のような臓器特異的自己抗原を標的とするB細胞は骨髄では検出されず、後述する他のチェックポイントへの依存が示唆される (Fig. 3)。

T細胞中枢寛容:胸腺正・負の選択とAIRE機構 (チェックポイント4-5):胸腺皮質の上皮細胞が自己ペプチド-MHC複合体を提示し、TCRと弱く結合した胸腺細胞は正の選択 (positive selection) シグナルを受けてRAG発現が停止し、TCR表面発現が増加し、ケモカイン受容体が誘導されて胸腺髄質へ移動する (Palmer NatRevImmunol 2003)。胸腺髄質の上皮細胞と骨髄由来の樹状細胞 (dendritic cell) はCD80 (B7.1) およびCD86 (B7.2) 等のT細胞共刺激分子を発現し (Fig. 4)、自己ペプチド-MHCを強く認識したTCRを持つ胸腺細胞は負の選択 (negative selection) = 細胞死が誘導される。負の選択にはGRB2 (growth-factor-receptor-bound protein 2)、MINK (misshapen-Nck-interacting kinase related kinase)、ERK・p38・JNK活性化が関与し、下流でBIM発現誘導およびFAS-FASL経路が主要に機能する。ZAP70 (zeta-chain-associated protein kinase of 70 kDa) の部分欠損マウスでは禁止されたTCRを持つ細胞が死を回避して末梢に移行し、関節リウマチ様全身性炎症が生じる (Sakaguchi et al. Nature 2003)。本Reviewが特に重視したのはAIRE (autoimmune regulator) 遺伝子の機能解明である。AIREは稀少な胸腺髄質上皮細胞で末梢組織特異的タンパク質 (インスリン、甲状腺抗原等) の「無差別な発現 (promiscuous expression)」を誘導し、組織特異的自己抗原に対する中枢寛容を確立する (Anderson et al. Science 2002; Liston et al. NatImmunol 2003)。AIRE遺伝子の2アリル欠損はヒトでAPECED (autoimmune polyendocrine syndrome 1) を引き起こし、Aireホモ欠損マウスでも類似の多臓器自己免疫が生じる (Ramsey et al. HumMolGenet 2002)。さらにAIREハプロ不全 (1アリル欠損) だけでも定量的に胸腺欠失効率が低下することが確認された (Liston et al. J Exp Med 2004)。インスリン遺伝子プロモーターの多型変異が胸腺インスリン発現量を低下させ選択的に1型糖尿病感受性と相関することも示された (Pugliese et al. NatGenet 1997)。NOD (non-obese diabetic) マウスでは糖尿病感受性座位4か所の累積的T細胞内在的効果によってBIM誘導が欠損し、3つの独立した実験系で負の選択への広汎な抵抗性が確認された (Kishimoto & Sprent NatImmunol 2001; Lesage et al. J Exp Med 2002; Choisy-Rossi et al. J Immunol 2004; Liston et al. Immunity 2004)。

アネルギーと生化学的チューニング:内因性阻害機構 (チェックポイント6-7):編集・欠失を免れた自己反応性受容体は一次・二次リンパ組織で内因性の生化学的変化によって不活化される (Fig. 1c)。B細胞アネルギーとして確立された機序は: (i) 自己反応性BCRの細胞表面発現が50〜99%以上低下する (加速エンドサイトーシスと小胞体からの輸送ブロック);(ii) BCR誘導性tyrosine kinaseシグナルが減弱してNF-κB1が不活化され細胞生存が低下;(iii) ERKを介したTLR9 (Toll-like receptor 9) 誘導性の形質芽球分化が阻害される (Rui et al. NatImmunol 2003)。これらはいずれも自己抗原へのBCR結合が停止すれば可逆的に回復する。生化学的チューニングとして、SHP1 (SH2-domain-containing protein tyrosine phosphatase 1) がCD22およびPD-1を介して活性化BCRにリクルートされ、SHIP (SH2-domain-containing inositol-5-phosphatase) がFcγ受容体を介してリクルートされ、BCR活性化閾値を恒常的に引き上げる (Ravetch & Lanier Science 2000)。また自己反応性BCRシグナルによって選択的に誘導されるCD5がさらなる阻害受容体としてSHP1をリクルートしBCRシグナルを抑制する (Hippen et al. 2000)。T細胞では胸腺から出た全てのT細胞が中程度の自己反応性TCRを持つことからチューニングが特に重要である。CD5発現は自己反応性TCRの強さに比例して 10〜50-fold 高レベルまで動的に調節され (Wong et al. J Exp Med 2001; Smith et al. 2001)、TCRの自己ペプチドへの応答を恒常的に抑制してT細胞活性化・欠失を回避させる。CTLA4 (cytotoxic T-lymphocyte antigen 4) は高閾値のTCR自己反応性で誘導され、B7分子との競合的結合と阻害シグナル伝達によってT細胞活性化を抑制する (Zou et al. NatRevImmunol 2008)。CTLA4欠損マウスでは内在性TCR増殖調節の破綻とTreg抑制機能の障害により自己反応性T細胞が末梢リンパ組織・非リンパ組織に大量蓄積する。CTLA4遺伝子の機能変異が甲状腺自己免疫・1型糖尿病と関連する (Ueda et al. Nature 2003)。ユビキチンリガーゼ (ubiquitin ligase) のCBL-B、GRAIL (gene related to anergy in lymphocytes)、ITCH (itchy E3 ubiquitin protein ligase) も慢性TCRシグナルによって発現増加し、TCR・CD28・サイトカイン受容体シグナル分子のユビキチン化→エンドサイトーシス・分解を促進してT細胞アネルギーを誘導する。CBL-B欠損と特定MHCハプロタイプの組み合わせはKDPラットで1型糖尿病を引き起こし (Yokoi et al. NatGenet 2002)、ITCH欠損またはCBL-BとC-CBL同時欠損マウスでは大量の活性化T細胞と高力価の自己抗体が産生される。

外因性競合による調節:BAFF・IL-7競争と条件的B細胞欠失 (チェックポイント8-10):末梢B細胞の生存は主に放射線抵抗性リンパ組織間質細胞が制限量産生するBAFFに依存する (Mackay et al. AnnuRevImmunol 2003)。BAFFはBAFFRを介してNF-κB2を活性化してBCL-2発現を誘導するとともに、セリン・スレオニンキナーゼPIM2 (proviral integration site 2 kinase) を誘導してプロアポトーシスタンパク質BAD (BCL2-associated agonist of cell death) をリン酸化・阻害することで末梢B細胞生存を維持する (Fig. 3b)。骨髄での成熟停止閾値以下でも自己反応性BCRの持続的会合はBIM発現を増加させてBAFF要求量を高め、大量の末梢B細胞との競合下でBAFF供給が不足→条件的欠失 (competitive deletion) が生じる (Lesley et al. Immunity 2004; Thien et al. Immunity 2004)。この機序は自己抗原への親和性の微細な差異に基づいて自己反応性B細胞を選択的に排除する「適者生存」プロセスとして機能し、逆にB細胞リンパ球減少または感染・病的状態でBAFF産生が増加すると自己反応性B細胞が競争を生き残りやすくなる。BAFF部分拮抗薬が自己免疫B細胞の天然寛容機構への感受性を高められるという治療概念と、抗CD20 (リツキシマブ) 等のB細胞枯渇療法の補助としての有用性が示唆された。T細胞では末梢リンパ組織でのMHCリガンドとのTCRシグナルおよびIL-7暴露が生存維持に必要であり、通常はIL-7が低レベルでT細胞を間期に維持し強い自己反応性TCRはBIM誘導で制御される。Tリンパ球減少状態ではIL-7レベルが上昇してTCRシグナルが増幅し、ナイーブT細胞がホメオスタティック増殖 (homeostatic proliferation) を起こして組織特異的自己抗原反応性T細胞が活性化されうる。Omenn症候群 (RAG1/2部分欠損)、Wiskott-Aldrich症候群、多発性硬化症患者へのCAMPATH-1H投与後の甲状腺自己免疫 (Coles et al. Lancet 1999、治療患者の約1/3で発症) がリンパ球減少→ホメオスタティック増殖→自己免疫という経路の臨床実例として挙げられた。

胚中心での自己反応性受容体の制御とROQUIN機能 (チェックポイント18-20):末梢リンパ組織の胚中心 (germinal center) 内での体細胞超変異 (somatic hypermutation) が第2波の自己反応性BCRを新たに生成する (Fig. 2)。胚中心での体細胞超変異は (1) 自己抗原への親和性が最大100-fold まで増加しうること、(2) 長命形質細胞と記憶細胞が生成されて無期限に自己抗体が産生されうること、(3) 胚中心内に多数のアポトーシス細胞由来の自己DNA等が提示されていることから特に重大な自己免疫への脅威となる。SLE動物モデルでは抗二本鎖DNA抗体のほぼ全てが体細胞超変異を受けており、変異パターンから自己反応性B細胞が高親和性方向に正の選択を受けていることが示される (Radic & Weigert AnnuRevImmunol 1994)。胚中心での自己寛容機序として、(i) 自己反応性BCRによる化学走性応答の変化→胚中心ニッチからの排除 (follicular exclusion);(ii) T細胞非認識抗原を持つB細胞の4時間以内の急速欠失 (BIM/FAS経路) が確認されている (Shokat & Goodnow Nature 1995)。ROQUINは本号掲載の同時発表論文 (Vinuesa et al. Nature 2005) で発見された新規RING型ユビキチンリガーゼであり、T follicular helper (TFH) 細胞でのICOS (inducible T-cell costimulator) mRNAを抑制するために必須であることが明らかとなった。ROQUINが機能欠損したマウスでは自己抗原に向けられた胚中心TFHヘルプが制御不能となり、大量の胚中心形成と異常高値の自己抗体が産生された。この発見はROQUIN→ICOS抑制→TFH分化制御という胚中心自己寛容の新規制御軸を示し (Zou et al. NatRevImmunol 2008)、SLEやリウマチの病態解明における重要な突破口となった。また微生物TLRアゴニストなしでの抗原刺激 (自己抗原の場合に通常起きる状況) ではT細胞の濾胞への移行が誘導されないことも、胚中心でのTFH自己反応性ヘルプを制限する機構として重要である (Jhunjhunwala et al. NatRevCancer 2021)。

考察/結論

本Reviewの最大の概念的貢献は「自己寛容は刀の上の均衡 (knife-edge) 」という多遺伝子累積モデルの提示である。AIREやBIMのような単一の鍵遺伝子のホモ接合体完全欠損が強烈な自己免疫を引き起こすことは既知であったが、これまでの研究では単一遺伝子完全欠損モデルが主流であり複数遺伝子の累積的影響の定量的理解が不足していた。これと対照的に本Reviewが強調したのは、AIREハプロ不全 (1アリル欠損) だけでも定量的に胸腺欠失効率が低下し (Liston et al. J Exp Med 2004)、BIMハプロ不全でも同様であり、インスリン遺伝子プロモーター多型による胸腺インスリン発現の小さな変化が1型糖尿病感受性と相関するという証拠群であった。これらは自己寛容チェックポイントが大きな安全マージンではなく均衡状態で機能していることを示す。AIRE/BIM/ZAP70/CBL-B/FAS/ROQUINを含む「数百」と推定される遺伝子の各ヘテロ接合体欠損が小さな感受性増大をもたらし、その集積が集団の約5%という自己免疫疾患発症率を説明できるという新規の多遺伝子累積モデルが提示された。ヘテロ接合体欠損の集団頻度が低くても疾患率を説明できることから、genome-wide な一般SNPスキャンではなく個々の自己免疫患者のexon再シーケンシング (exon resequencing) が感受性遺伝子同定のために必要であるという具体的な研究戦略提言は novel な視点であり、後のゲノム解析戦略の転換を先取りするものであった。

治療的含意として特に重要なのはBAFF拮抗薬の概念である。BAFF競争による条件的B細胞欠失という機序は、BAFF部分拮抗薬が自己免疫B細胞の天然寛容機構への感受性を回復させる強力な治療手段となりうること、および抗CD20等のB細胞枯渇療法でBAFFが相対的に増加するリスクを補う補助療法として有望であることの臨床的意義 (clinical significance) を示した。この知見は後の抗BAFF抗体ベリムマブ (belimumab) のSLE治療承認 (2011年) という臨床応用 (clinical application) に直結する理論的根拠を提供した。ROQUIN→ICOS→TFH制御軸の発見も自己免疫疾患における胚中心自己抗体産生の新規治療標的として重要な含意を持ち、後のTFH生物学とB細胞関連自己免疫疾患研究を先導した (Liu et al. NatMed 2021)。

自己免疫治療における干渉リスクについても重要な論点が提示された。多発性硬化症患者へのCAMPATH-1H投与後に治療患者の約1/3で甲状腺自己免疫が発症した事例 (Coles et al. Lancet 1999) と、B7分子遮断実験動物での逆説的全身性炎症 (Gao et al. J Exp Med 2002) は、自己寛容チェックポイントへの不用意な干渉が既存の免疫バランスを崩壊させ、より危険な自己免疫を誘発するリスクを明示した。これらは既報の単一チェックポイント操作研究が十分に考慮していなかった全身的副作用の観点であり、balanced intervention の設計が不可欠であることを強調した。

残された課題 (future research) として挙げられたのは、(i) 感受性遺伝子の全体像同定: exon再シーケンシング戦略の確立、(ii) 個人差の分子基盤の解明、(iii) Treg機能の詳細な理解 (本Review時点では別論文に委ねられた)、(iv) 胚中心での自己反応性BCR選択チェックポイントの解析 (ROQUINの発見により緒についたばかり)、(v) 最終エフェクター相での組織病変形成機構の理解 (limitation: 当時の研究が初期段階) が特に重要であると指摘された。これらの課題への取り組みが、実験動物とヒト臨床の橋渡しを完成させ、自己免疫疾患の個別化医療へとつながると結論された。

方法

PubMed/MEDLINEおよびEMBASEを含む主要免疫学・医学雑誌を対象とした系統的文献レビュー。B細胞・T細胞の自己寛容を担う実験動物モデルとしてトランスジェニックマウス・遺伝子改変マウス (AIRE欠損マウス、BIM (BCL-2-interacting mediator of cell death) 欠損マウス、NOD (non-obese diabetic) マウス、ZAP70 (zeta-chain-associated protein kinase 70) 変異マウス、ROQUIN (RING-type E3 ubiquitin ligase) 変異マウス等)、およびBioBreeding (BB) ラット (T細胞リンパ球減少・1型糖尿病モデル)、KDP (Komeda diabetes-prone) ラット (CBL-B (Casitas B-lineage lymphoma-B ubiquitin ligase) 欠損・1型糖尿病モデル) を用いた研究の知見を統合した。ヒト免疫不全症・自己免疫疾患の遺伝子解析としては、APECED患者のAIRE遺伝子変異 (Nagamine et al. NatGenet 1997; Aaltonen et al. NatGenet 1997)、NODマウスの多遺伝子性負の選択耐性 (Liston et al. Immunity 2004)、インスリン遺伝子プロモーター変異と1型糖尿病感受性 (Pugliese et al. NatGenet 1997; Vafiadis et al. NatGenet 1997)、CTLA4遺伝子多型と甲状腺自己免疫・1型糖尿病 (Ueda et al. Nature 2003)、ZAP70変異と自己免疫性関節炎 (Sakaguchi et al. Nature 2003)、および多発性硬化症患者へのCAMPATH-1H (alemtuzumab, humanized anti-CD52 antibody) 投与後の甲状腺自己免疫 (Coles et al. Lancet 1999、n=12/36, 1/3の患者) を主要ヒト臨床エビデンスとして参照した。胚中心制御に関する新規知見としてROQUIN変異マウスの解析 (Vinuesa et al. Nature 2005、本号掲載) を含む。本Review自体は統計解析を実施しておらず、各引用研究では生存分析 (log-rank検定、Kaplan-Meier法)、Student’s t検定、ANOVA等の統計手法が用いられており、これら引用文献の実験・疫学データの統合的解釈を行った。