• 著者: Xiaotian Zhao, Weiqiang Jing, Ganyu Wang, Zhanyan Liu, Xinxin Xu, Maosen Han, Zhipeng Fu, Yulin Zhang, Zuolin Zheng, Jing Zhang, Longyu Bo, Xianghui Dong, Caiping Li, Yanhua Sun, Junfeng Zhang, Fabao Zhao, Nianzeng Xing, Kun Zhao, Xinyi Jiang
  • Corresponding author: Weiqiang Jing (Shandong University); Junfeng Zhang (Nanjing University); Fabao Zhao (Shandong University); Nianzeng Xing (Chinese Academy of Medical Sciences); Kun Zhao (Shandong University); Xinyi Jiang (Shandong University)
  • 雑誌: Nature Biotechnology
  • 発行年: 2026
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 41826511

背景

免疫細胞エンゲージャー (immune cell engager; ICE) は腫瘍細胞と免疫エフェクター細胞を架橋する多腕型分子として登場し、CD19/CD3 二重特異性抗体 blinatumomab をはじめとする T 細胞エンゲージャーは血液悪性腫瘍において臨床的有効性が実証されている。しかし固形腫瘍では密な間質と免疫抑制性の腫瘍微小環境 (tumor microenvironment; TME) が ICE の組織浸透と免疫細胞活性化を著しく制限し、より広範な臨床応用の妨げとなっている。免疫細胞の活性化はチェックポイント遮断とシグナル統合が鍵であり、活性化と抑制シグナルの比率的バランスが効果的な細胞傷害応答を決定することが示されている (Pardoll et al. NatRevCancer 2012)。このことから、単一免疫細胞内で複数の活性化関連シグナルを統合する Boolean AND ロジックゲートを ICE に実装することが、固形腫瘍治療において不可欠と考えられている (Chen et al. Nature 2017)。

マクロファージは固形腫瘍の 50% を占める主要な免疫細胞であり、高い浸潤能・固有の細胞傷害能・自然免疫と適応免疫の橋渡し機能を兼ね備えることから次世代 ICE の有望な標的である。マクロファージの貪食開始はプロファゴサイトーシスシグナル — LRP1 (low-density lipoprotein receptor-related protein 1) の活性化リガンドである CRT (calreticulin) — とアンチファゴサイトーシスシグナル — SIRPα (signal regulatory protein alpha)-CD47 (cluster of differentiation 47) 軸 — の比率により厳密に制御される。先行研究では、抗 SIRPα/FcγR (Fc gamma receptor)/CD70 (cluster of differentiation 70) 多重特異性抗体がマクロファージエンゲージャーとして設計されたが、前臨床試験でその in vivo 有効性は抗体併用療法を上回らず、trans 結合によるマクロファージ架橋という副作用も問題となった。また、PD1/CTLA4 を同一 T 細胞上で cis 標的化するカドニリマブ (cadonilimab) も、trans 結合を介した T 細胞架橋が活性化効率を低下させることが示された。T 細胞の共刺激・共抑制の統合が適応免疫において fundamental であることが認識されており (Chen et al. NatRevImmunol 2013)、マクロファージにおける活性化・抑制シグナルの比率的 AND ロジックゲート制御への応用は gap in knowledge として残っていた。このような背景から、同一免疫細胞上の 2 受容体を安定して cis 標的化する技術的手法が不足しており、その確立が次世代 ICE 設計における重要課題であった。

目的

同一マクロファージ上で LRP1 活性化 (CRT モジュール) と SIRPα 阻断 (anti-SIRPα scFv (single-chain variable fragment)) を協調的に cis 達成する AND ロジックゲート型の三重特異性マクロファージエンゲージャー (trispecific macrophage engager; TrME) を計算科学的リンカー設計で開発し、腫瘍関連抗原 (tumor-associated antigen; TAA) 依存的な固形腫瘍殺傷能および mRNA-脂質ナノ粒子 (lipid nanoparticle; LNP) in situ 発現による治療有効性を複数マウスモデルで評価すること。

結果

計算科学的三段階スクリーニングによる FRF リンカー同定と cis 標的化検証:252 種のキメラリンカーライブラリーに対し三段階計算スクリーニングを適用した。第一段階 (AlphaFold + 3.5 Å カットオフ) で立体障害候補を除外、第二段階 (角間角度 <90°) で trans 配向候補を除去、第三段階 (200 ns MD シミュレーション) で FRF 連結 (GGGGS-EAAAK-GGGGS) anti-SIRPα-CRT がシミュレーション全時間 (100%) にわたり cis 配向 (90° 未満の角間角) を維持し、最高の配座安定性を示すことを確認した (Fig. 1h)。対照として、FFFF リンカー (第一段階で除外)、RRR リンカー (第二段階で除外)、FF/RF/FFR リンカー (第三段階で不安定) が使用された。

cis vs. trans 定量アッセイでは、抗 SIRPα scFv で前遮断した CFSE 標識マクロファージに FRF 連結構造を処理した場合、MFI (mean fluorescence intensity) LRP1-act の最大低下が誘導され、CRT 単独処理と同等レベルに達した (Fig. 1i)。RRR 連結構造は SIRPα 前遮断後も LRP1-act の低下をほとんど示さず、trans 標的化が確認された。SIRPα ノックアウト・LRP1 ノックアウトマクロファージ混合実験でも FRF リンカーが最低レベルの trans 誘導 LRP1 活性化を示した。CD47 コンジュゲートビーズを用いた貪食アッセイでは FRF 連結 anti-SIRPα-CRT が MFI LRP1-act/MFI SIRPα-act 比を有意に上昇させ、AND ロジックゲートによる比率的シグナル制御を実証した。TrMEB7H3 の最終構造は anti-SIRPα scFv を CRT の N 末端に FRF リンカーで、anti-B7H3 scFv を C 末端 alpha ヘリックスの後に RF リンカーで連結した三重特異性構造として確定し、RF リンカー連結型が GL261 細胞への最大マクロファージ貪食を誘導することが確認された (Fig. 1l)。

TrMEB7H3 による CD47-SIRPα 軸突破と TAA 依存的貪食増強:n=3 の独立実験で精製 TrMEB7H3 タンパク質 (~99 kDa) をウエスタンブロッティング (抗 CRT・抗 6×His 抗体) で確認した (Fig. 2a)。B7H3 (B7 homology 3 protein; CD276) 高発現 GL261 細胞に対して選択的結合と、B7H3 ノックアウト GL261 細胞 (GL261B7H3-) に対する最小限の結合を示した (Fig. 2b)。TrMEB7H3 (0.05 μg/mL) 処理 4 時間後に BMDM の約 90% が腫瘍細胞と共役体を形成することが共焦点イメージングで示された (Fig. 2d; n=3、two-sided unpaired t 検定 p<0.0001)。

B7H3/CD47 二重コンジュゲートビーズ (B7H3:CD47 = 1:2) を用いた貪食用量反応アッセイでは、TrMEB7H3 が 0.1 nM の濃度で最大貪食応答に達した (Fig. 2g)。対照の活性 Fc ドメイン付き Y 字型抗 SIRPα/B7H3 二重特異性抗体 (bispecific antibody; bsAb) は TrMEB7H3 比 10 倍高い濃度でようやく最大応答を示したが、その最大応答は TrMEB7H3 の 64% に留まった (Fig. 2g; n=3)。CD47 をビーズから除去すると群間差が消失し、TrMEB7H3 が CD47-SIRPα 軸を効果的に無効化することが確認された。RRR 連結 trans 偏向 TrMEB7H3 は CD47 コンジュゲートビーズ添加後に貪食効率が 59% に低下したのに対し、FRF 連結 TrMEB7H3 は貪食効率を維持した (Fig. 2e,f; n=3、two-way ANOVA)。B7H3 低発現 4T1 細胞や GL261B7H3- 細胞では TrMEB7H3 による有意な貪食増強は認められず、抗 SIRPα-CRT 単独でも腫瘍細胞貪食増強は起きず、TAA 依存的メカニズムが確認された (Fig. 2h; n=5、two-way ANOVA)。ヒト化 TrMEB7H3 (抗ヒト B7H3・SIRPα scFv、ヒト CRT) でも THP-1 細胞による U87 細胞の特異的貪食誘導が確認された (Fig. 2j,k)。

マクロファージ M1 リプログラミングと適応免疫活性化:TrMEB7H3 処理後マクロファージ (n=3 独立実験) の大部分は M1 (classically activated) マクロファージに特徴的な「目玉焼き型」形態 (LPS+IFNγ 誘導 M1 と同様) を示した。フローサイトメトリーでは CD86 (M1 マーカー) の有意な上昇と CD206 (M2 マーカー) の低下が確認され、平均 M1/M2 比は 4.43 であった (Fig. 2l)。RNAseq (RNA sequencing) 解析では TrMEB7H3 処理 BMDM で M1 関連遺伝子 (Cxcl9、Gbp5、Ccl5) の有意な上昇と M2 (alternatively activated) 関連遺伝子 (Arg1、Chil3、Irf4) の有意な低下が確認された (n=3、Fig. 2m,n; DESeq2、Benjamini-Hochberg FDR 補正)。TrMEB7H3 処理 BMDM は MHC II (H2-Ab1)・共刺激分子 4-1BBL (4-1BB ligand)・OX40L (OX40 ligand) を上方制御し、共抑制分子 PDL2 (programmed death-ligand 2)・CLEC1 (C-type lectin domain family 1) を下方制御した。GL261-cOVA 細胞との共培養系では MHC I 上の OVA ペプチド提示増強が示され、ELISpot (enzyme-linked immunospot) 解析で OTI (OVA-specific T-cell receptor transgenic) T 細胞の IFNγ 産生増加が確認され、TrMEB7H3 が自然免疫と適応免疫を橋渡しすることが実証された。

BCT-A5 mRNA-LNP の開発と薬物動態優位性:cis/trans 型イオン化脂質の立体化学が mRNA 送達効率に与える影響を検討し、cis 型 BC-9 LNP が trans 型 BT-9 LNP より組成 A・B において有意に高いトランスフェクション効率を示した。さらに BC-12/BC-14/BC-16 の 3 種の cis 型脂質と 4 組成を追加合成し、計 256 種 LNP をスクリーニングした結果、BC-12 ベースの BCT-A5 (BC-12:コレステロール:C14 PEG2K:DOPE (1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine) = 15:30:0.5:40 モル比) が最高輝度を示した (Fig. 3e)。BCT-A5 の発光強度は商用 MC3 LNP 比で約 5-fold 高かった。GBM モデルへの比較薬物動態では TrMEB7H3-BCT-A5 (約 1.5 mg/kg 腫瘍内注射) が TrMEB7H3 タンパク質 (約 2.5 mg/kg) と比べて高い脳内保持を示した: BCT-A5 で Cmax = 53.78 ± 2.09 μg/mL、terminal t1/2 = 34.04 h、6 日後には約 0.005 μg/mL; タンパク質直接投与では Cmax = 47.13 ± 4.04 μg/mL、terminal t1/2 = 0.52 h、3 日後に約 0.005 μg/mL。静脈内反復投与 (0.5 mg/kg、5 日毎 3 回) では BCT-A5 が MC3 比 1.69-fold 高い血中ピーク濃度を達成した (Fig. 3k; n=3)。また、TrMEB7H3-MC3 の腫瘍内投与は GBM マウスの median survival を 38.5 日から 46.5 日に延長した。安全性評価では mRNA 濃度 20 μg/mL まで有意な赤血球溶血なし、0.5 mg/kg 静脈内投与で臨床症状・臓器障害なし、CBC で貧血・血小板減少・白血球減少なし、IL-6 の一過性軽度上昇 (72 時間以内にベースライン復帰) 以外の全身性サイトカイン誘導なしが確認された。

複数固形腫瘍モデルにおける in vivo 抗腫瘍効果と TAA 依存性:GBM モデル (各群 n=10 匹) では TrMEB7H3-BCT-A5 の腫瘍内反復投与 (day 7 開始、5 日毎 3 回) が腫瘍増殖を有意に抑制し、60 日時点で約 90% のマウスが生存した (Fig. 4d; log-rank 検定)。TrMEB7H3 タンパク質群では 56 日以内に全例死亡した。TrMEB7H3-BCT-A5 処理腫瘍では CD11b+F4/80+ マクロファージ浸潤と M1 分極化増加 (CD86+ 上昇・CD206+ 低下)、CD8+ T 細胞浸潤増加と活性化マーカー CD69・CD44 の上昇、グランザイム B・IFNγ 産生増加、ELISpot での IFNγ+ スポット数増加が確認された (Fig. 4e-k)。さらに Treg (regulatory T cell; CD4+CD25+Foxp3+) 細胞と MDSC (myeloid-derived suppressor cell; M-MDSC [monocytic-MDSC] および PMN-MDSC [polymorphonuclear-MDSC]) の腫瘍内減少が n=6 匹の解析で確認された (Fig. 4l; two-way ANOVA)。

膀胱がんモデルでは n=6 匹の MB49 同系マウスに対し TrMEB7H3-BCT-A5 の静脈内投与 (day 5 開始、5 日毎 3 回) が腫瘍増殖を有意に抑制し、60 日観察期間中の死亡は 2 例のみであった (Fig. 5f; log-rank 検定)。超音波で腫瘍サイズ・重量・断面積の有意な減少が確認された (Fig. 5b-e)。乳がんモデルでは抗 HER2 scFv に置換した TrMEHER2-BCT-A5 が HER2 高発現 4T1-HER2 腫瘍で有意な増殖抑制と生存延長を示したが、HER2 陰性 4T1 腫瘍では 50 日以内に全例がエンドポイントに達し、TAA 依存的メカニズムが確認された (Fig. 5h-j; n=6)。両側乳腺移植 (HER2+/HER2-) モデルでは TrMEB7H3 治療が HER2+ 腫瘍のみならず対側 HER2- 腫瘍の抑制 (アブスコパル効果) も誘導し、システミックな抗腫瘍免疫の誘導が示された。

考察/結論

本研究は、免疫細胞エンゲージャー設計における根本的課題である「単一免疫細胞内での比率的活性化・抑制シグナル統合」を、計算科学的 cis 標的化戦略によって解決した点で、これまでの研究と異なる革新的アプローチを提示した。従来の抗 SIRPα/FcγR/CD70 多重特異性抗体では in vivo 有効性が抗体併用療法を上回らず、cadonilimab では trans 結合による T 細胞架橋が活性化効率を損なうという既報の課題があったのに対し、TrME の FRF リンカーは MD シミュレーション全期間で cis 配向を維持し、bsAb 比 1/10 の濃度 (0.1 nM) で最大貪食活性を達成した。この結果はこれまでの研究とは対照的な、リンカー柔軟性の精密計算制御によるロジックゲート AND 回路の実装が ICE 設計における構造制約を克服できることを示す。

本研究で初めて示された知見として、以下の三点が新規な科学的貢献となる。第一に、252 種のキメラリンカーに対する三段階計算スクリーニング (AlphaFold + 角度計算 + 200 ns MD) によって最適 cis 標的化構造を系統的に同定できることを示し、このアプローチは T 細胞や NK 細胞エンゲージャー (NKG2D-PD1、CD16-TIGIT、CD3-LAG3 等) にも拡張可能な新規な設計フレームワークを確立した。第二に、CRT の C 末端 alpha ヘリックスが rigid スペーサーとして機能し、マクロファージ活性化モジュールと TAA 標的化モジュールの干渉を防ぐことが新規に明らかとなった。第三に、cis 型イオン化脂質 BC-12 ベースの BCT-A5 が trans 型比で 5-fold 高い mRNA 送達効率と 1.69-fold 高い血中ピーク濃度を達成するという novel な LNP 設計を提示した。

臨床応用として、TrME は T 細胞療法が効きにくい免疫砂漠型・免疫除外型固形腫瘍に対する自然免疫ベースの代替免疫療法として臨床的意義が大きい。TAA 依存的メカニズムにより systemic CD47-SIRPα 遮断に伴うオンターゲット毒性 (赤血球貪食) と、マクロファージによる腫瘍反応性 T 細胞の意図しない貪食を回避できる点で、既存の抗 CD47 抗体と比較した臨床的有用性は明らかである。mRNA-LNP 送達は in situ 発現による薬剤安定性問題の回避と t1/2 延長 (34.04 h vs 0.52 h) をもたらし、bench-to-bedside の橋渡しとして実用性が高い。また TrME が M1 分極化・抗原提示増強・CD8+ T 細胞浸潤・IFNγ 産生を誘導する所見は、養子 T 細胞療法や免疫チェックポイント阻害剤との相乗戦略における橋渡し的役割を示唆する。

残された課題として、以下の limitation を認識する必要がある。第一に、同系マウスモデルはヒト腫瘍の複雑性と不均一性を完全には再現できず、ヒト化 TrME の臨床試験での検証が今後の研究として不可欠である。第二に、TrME の有効性は TAA および LRP1/SIRPα の発現レベルと空間分布に依存するため、対象腫瘍の分子プロファイリングに基づく patient selection 戦略の確立が今後の検討として必要である。第三に、全身投与時の LNP 生体分布と TrME 発現動態の腫瘍種・部位依存的変動は future research として系統的に評価する必要があり、さらに cis 標的化戦略を他の受容体ペアに拡張する際には各受容体特有の空間的・動的制約に対応した追加の計算スクリーニングが更なる検討を要する。

方法

分子設計と計算科学的スクリーニング: GGGGS (Gly-Gly-Gly-Gly-Ser; flexible linker, F) モチーフと EAAAK (glutamate-alanine-alanine-alanine-lysine, rigid helical linker R) モチーフを 2-7 個組み合わせた 252 種のキメラリンカーライブラリーを設計した。三段階計算スクリーニングワークフローとして、(1) AlphaFold による anti-SIRPα-CRT-SIRPα 複合体の空間配置予測 (SIRPα-CRT 最小原子間距離 3.5 Å カットオフ)、(2) 最安定構造における SIRPα 結合部位・リンカー重心・LRP1 結合部位の角間角度計算 (90° 未満を cis 候補として選別)、(3) Desmond モジュール (Schrödinger 2023-4) による 200 ns 分子動力学 (MD) シミュレーション (OPLS4 [Optimized Potentials for Liquid Simulations version 4] 力場、NPT [constant Number, Pressure, Temperature] アンサンブル、温度 300 K、圧力 1 bar) を順次適用した。cis vs. trans 定量アッセイでは carboxyfluorescein succinimidyl ester (CFSE) 標識マクロファージ (一部を飽和濃度の抗 SIRPα scFv で前処理) と Cell Tracker Red (CTR) 標識マクロファージを 1:1 で共培養し、in situ 近接連結アッセイ (proximity ligation assay; PLA) にて LRP1-GULP1 (engulfment adapter protein 1) 複合体 (活性化 LRP1; LRP1-act の指標) および SIRPα-SHP1 (Src homology region 2 domain-containing phosphatase 1) 複合体 (活性化 SIRPα; SIRPα-act の指標) をフローサイトメトリーで定量した。

細胞・動物実験: 使用細胞株は GL261 / GL261-Fluc / GL261-cOVA (マウス膠芽腫; glioblastoma; GBM)、U87MG (ヒト GBM)、MB49 (マウス膀胱がん)、4T1 / 4T1-HER2 (マウス乳がん)、RAW264.7、THP-1 (ヒト単球系)。マウス骨髄由来マクロファージ (bone marrow-derived macrophage; BMDM) は C57BL/6J または BALB/c マウス (6-8 週齢) の大腿骨・脛骨より採取した。同系同所性 GBM モデルは GL261-Fluc 細胞 (1×10^5 個 / マウス) の定位固定脳内注射 (C57BL/6J)、膀胱がんモデルは MB49 細胞の膀胱壁接種 (C57BL/6J)、乳がんモデルは 4T1 / 4T1-HER2 細胞 (5×10^5 個 / マウス) の第 4 鼡径乳腺脂肪体接種 (BALB/c) で確立した。貪食アッセイはフローサイトメトリー (Gallios、Beckman Coulter) および共焦点レーザー走査顕微鏡 (confocal laser scanning microscopy; CLSM; Dragonfly 200、Andor) で評価した。腫瘍増殖は luciferase イメージング (IVIS)、超音波撮影、MRI で追跡し、組織学的評価は H&E 染色・TUNEL 染色で行った。抗薬物抗体 (anti-drug antibody; ADA) 産生は ELISA で評価した。

LNP 合成と薬物動態: cis 型イオン化脂質 BC-9/BC-12/BC-14/BC-16 および trans 型 BT-9/BT-12 を合成し、4 種組成 × 16 モル比 = 計 256 種 LNP を GL261 細胞への mLuc (firefly luciferase mRNA) トランスフェクション効率 (Luciferase-Glo アッセイ) でスクリーニングした。TrMEB7H3 の in vivo 薬物動態は ELISA で血清・脳均質化物中濃度を経時測定し、Cmax・terminal t1/2 を算出した。

統計解析: two-way ANOVA、one-way ANOVA、two-sided unpaired t 検定、log-rank 検定 (Kaplan-Meier 生存解析)、DESeq2 (Benjamini-Hochberg 偽発見率 [false discovery rate; FDR] 補正、p_adj <0.05 かつ |log2 fold change| ≥1 を有意発現変動と定義) を使用した。