- 著者: Zheng Gong, Qing Li, Jiayuan Shi, Peishan Li, Li Hua, Leonard D. Shultz, Guangwen Ren
- Corresponding author: Guangwen Ren (Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, USA)
- 雑誌: Science Immunology
- 発行年: 2023
- Epub日: 2023-02-17
- Article種別: Original Article
- PMID: 36800412
背景
乳がんの肺転移形成には、腫瘍細胞が遠隔臓器に定着するための「転移前ニッチ」の形成が不可欠である。このニッチには、骨髄由来の免疫細胞、特に好中球が集積し、転移細胞の定着と増殖を支援することが広く認識されている。好中球は、その多様な機能の中でも、腫瘍局所において骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) の一種であるPMN-MDSCとして免疫抑制機能を発揮することが報告されてきた Veglia et al. NatRevImmunol 2021。しかし、転移先の肺という特定の組織微小環境において、好中球がどのようにして免疫抑制性の表現型に変換されるのか、その詳細なメカニズムはこれまで未解明であった。好中球の免疫抑制機能が、骨髄での分化プログラムに内在するものなのか、あるいは転移臓器の組織微小環境によって後天的に獲得されるものなのかという根本的な問いも未解答であった。
先行研究では、全身性または腫瘍局在性の機序が好中球の機能に影響を与えることが示唆されてきた。例えば、GM-CSF、FATP2、フェロプトーシスなどが好中球の機能変調に関与することが報告されているが Albrengues et al. Science 2018、これらは主に全身性または腫瘍局所での作用に焦点を当てていた。しかし、転移目的地の組織に常在する細胞が、好中球を局所的に「再教育」する具体的な機序については、これまで十分に検討されておらず、知識のギャップが残されていた。肺には、CD140a+ (PDGFRα+) 間葉系細胞 (MCs) のような豊富な組織常在細胞が存在するが、これらの細胞が好中球の機能的再プログラミングにどのように関与するかは不明であった。
本研究は、この知識のギャップを埋めることを目指し、肺間葉系細胞が好中球の免疫抑制的再プログラミングに果たす役割と、その分子メカニズムを詳細に解析した。特に、肺好中球の免疫抑制能が組織特異的であり、腫瘍条件下で増強されるという初期観察に基づき、肺の常在細胞がこの現象にどのように寄与しているのかを明らかにすることが重要であった。この理解は、転移性疾患に対する新たな治療戦略の開発に繋がる可能性がある。また、転移性疾患における好中球の役割は、Massague et al. Nature 2016 や Coffelt et al. NatRevCancer 2016 など、近年注目を集めている。
目的
本研究の目的は、乳がんの肺転移モデルマウスを用いて、肺間葉系細胞 (CD140a+MC) が好中球を免疫抑制性に再プログラムするメカニズムと、その責任因子を分子レベルで解明することである。さらに、この間葉系細胞による好中球の再プログラミングが、乳がんの肺転移形成に果たす機能的役割を明らかにすることも目的とした。具体的には、以下の点を明らかにすることを目指した。
- 好中球の免疫抑制能が組織特異的であること、特に肺においてその能力が腫瘍条件下でどのように増強されるかを評価する。
- 肺好中球の免疫抑制能が特定のサブポピュレーションに限定されるのか、あるいは組織微小環境によって誘導される汎用的な現象であるのかを明らかにする。
- 肺間葉系細胞が好中球の免疫抑制的再プログラミングを誘導する主要な組織常在細胞であることを同定し、その分子メカニズム、特に可溶性因子プロスタグランジンE2 (PGE2) の役割を解明する。
- PGE2シグナル伝達経路の遺伝的または薬理学的阻害が、肺好中球の免疫抑制能および乳がん肺転移に与える影響を評価する。
- PGE2シグナル伝達阻害が、養子T細胞療法などの既存の免疫療法の治療効果をどのように改善するかを検討し、併用療法の可能性を探る。
これらの目的を達成することで、転移性疾患における好中球と組織微小環境の相互作用に関する新たな概念を確立し、肺転移に対する革新的な治療戦略の開発に貢献することを目指した。
結果
肺好中球の免疫抑制能は組織特異的で腫瘍条件下で増強される: 4T1担癌マウスにおいて、肺好中球は骨髄および末梢血好中球と比較して、CD4+T細胞増殖抑制能 (p<0.0001) およびNK細胞傷害性抑制能が著明に高かった (Fig. 1A, B)。RNA-seq解析 (n=3 mice) により、肺好中球はPtgs2、Il1b、Il10、Arg1、Arg2、Nos2、Cd274などの免疫抑制関連遺伝子の発現が骨髄および末梢血好中球よりも有意に高いことが示された (Fig. 1C, D)。この組織特異的な免疫抑制プロファイルは、ナイーブマウスにおいても確認され、腫瘍の有無にかかわらず肺に内在する現象であることが示唆された。蛍光標識骨髄好中球の移入実験では、肺に到達した細胞は4時間後から他臓器 (骨髄、血液、脾臓、肝臓) と比較して免疫抑制遺伝子発現が急速に上昇し、16時間後には有意差を示した (Fig. 1F, G, n=4 mice)。プレリキサフォル (CXCR4アンタゴニスト) 投与により肺にマージネートされた好中球が血中に動員されると、循環好中球の免疫抑制遺伝子発現が1時間後に急上昇し、4時間後に低下した。これは、肺常在性の免疫抑制好中球が循環中にも移行しうることを示唆する。
特定の好中球サブポピュレーションに依存しない組織依存的再プログラミング: scRNA-seq解析 (n=1 mouse) により、ナイーブマウスの肺好中球は主にC2 (55.62%)、C7 (39.17%)、C6 (5%) の3つのクラスターで構成されることが同定された (Fig. 2B)。4T1担癌マウスでは、腫瘍由来のG-CSFにより未熟好中球 (CD101-) が増加し、C6クラスターが10倍以上に拡大し、C2およびC7クラスターは約2倍減少した (Fig. 2B)。しかし、免疫抑制関連遺伝子 (Ptgs2、Arg2、Trem1、Nfe2l2、Cd14) は、ナイーブおよび担癌の両条件下で3つのクラスター全てに分布しており、C6クラスターでの発現は相対的に最低であった (Fig. 2C)。CD101+成熟好中球とCD101-未熟好中球を分離し、肺MCと共培養すると、両者ともに免疫抑制活性を獲得した (成熟好中球の方が高い応答性を示した)。この結果は、肺MC由来のシグナルによって誘導される組織特異的な機能変換であることを裏付ける。
宿主好中球性炎症が肺好中球の免疫抑制能を強化する: 4T1モデルは強い宿主好中球性炎症を誘導することが報告されている。AT3腫瘍細胞株 (MMTV-PyMT由来) は比較的軽度な炎症を誘導するが、G-CSFを過剰発現するAT3gcsf細胞株は強力な好中球性炎症を刺激する。scRNA-seq解析 (n=1 mouse) では、AT3担癌マウスの肺好中球は免疫抑制関連遺伝子発現が軽度に増加したが、AT3gcsfモデルではさらに有意な上方制御が見られた (Fig. 3D)。この転写レベルの変化は、T細胞 (Fig. 3E) およびNK細胞 (Fig. 3F) 抑制能の機能的変化にも反映され、宿主好中球性炎症が肺好中球の免疫抑制能を増強することを示した。改変実験的肺転移モデル (n=複数 mice) では、強力な宿主炎症条件 (原発AT3gcsf腫瘍) が、弱い炎症条件 (原発AT3腫瘍) よりもAT3-Luc細胞の肺定着を促進した (Fig. 3H, left)。好中球の枯渇は、この転移促進効果をほぼ消失させた。さらに、LPS誘発全身性炎症モデル (n=複数 mice) でも、肺好中球の免疫抑制能が強化され、乳がん肺転移が悪化した。これらの結果は、腫瘍関連好中球性炎症と全身性炎症の両方が、肺好中球の免疫抑制特性を強化し、乳がん肺転移を促進することを示唆する。
ヒト好中球においても組織特異的な免疫抑制能が認められる: ヒト化NSG-SGM3マウス (n=1 mouse) を用いたscRNA-seq解析により、ヒト好中球でもマウス好中球と同様の組織特異的クラスタリングパターンが確認された (Fig. 4C)。PTGS2、IL1B、TREM1、NFE2L2、VEGFA、C5AR1、OLR1などの免疫抑制関連遺伝子は、骨髄や末梢血由来のヒト好中球ではほとんど発現しておらず、肺浸潤ヒト好中球に主に濃縮されていた (Fig. 4D)。MDA-MB-231担癌ヒト化マウス (n=1 mouse) でも、肺浸潤ヒト好中球の免疫抑制関連遺伝子発現レベルは、骨髄、末梢血、原発腫瘍由来の好中球よりも顕著に高かった (Fig. 4E)。公開されているTabula Sapiensデータセット (n=複数 donors) の解析でも、ヒトドナー由来の肺好中球は、骨髄や末梢血好中球と比較して、PTGS2、IL1B、TREM1、NFE2L2、CD14、CLEC4Eなどの免疫抑制関連遺伝子の発現が有意に高かった (Fig. 4F, Kruskal-Wallis検定でp<0.0001)。さらに、ヒト乳がんデータセットの機能濃縮解析では、肺転移が好中球移動、活性化、リンパ球およびT細胞活性化の負の制御に関連する経路で濃縮されていることが示された (Fig. 4G)。これらのデータは、肺浸潤好中球の組織特異的な免疫抑制特性がヒトにも当てはまることを強く示唆する。
CD140a+肺間葉系細胞がPGE2を介して好中球を免疫抑制性に再プログラム: 様々な肺常在細胞種 (CD31+内皮細胞、CD326+上皮細胞、CD140a+MC) と骨髄好中球の共培養実験 (n=4 replicates) において、CD140a+肺MCのみが骨髄好中球のPtgs2、Il1b、Arg2、Trem1 mRNA発現を有意に上昇させた (Fig. 5B)。肺MCは、他臓器 (骨髄、脾臓、肝臓) 由来のCD140a+MCと比較して、Ptgs2発現とPGE2産生が最も高かった。RNA-seqデータ (n=3 replicates) のIPA上流調節因子スクリーニングにより、PGE2が肺好中球の免疫抑制遺伝子発現を誘導する主要な候補因子として同定された (Fig. 6A, B)。in vitroスクリーニング (n=4 replicates) では、PGE2が免疫抑制関連遺伝子の上方制御に最も効果的であることが示された (Fig. 6C)。Ptgs2-/-MCとの共培養では、MC誘発の免疫抑制遺伝子発現が著明に低下し (Fig. 6D, n=4 replicates)、T細胞およびNK細胞抑制能の逆転が確認された。肺MCによって教育された好中球と肺好中球のDEGsに大きな重複が認められ (Fig. 5E)、肺MCが骨髄好中球を肺好中球様の表現型に変換することが示された。PGE2、IL-1β、IL-6の3種組み合わせは、MC単独と同等の免疫抑制再プログラミング効果 (転写および機能レベル) を示し (Fig. 6F-I, n=3-5 replicates)、これらの因子が協調して好中球の再プログラミングを誘導することが示唆された。
Ptgs2ΔMCマウスまたはEP2/EP4デュアル阻害で肺転移が抑制: Pdgfra-Cre; Ptgs2flox/flox (Ptgs2ΔMC) マウスでは、肺好中球数は変化しないが、免疫抑制遺伝子発現が著明に低下し、T細胞およびNK細胞抑制能が有意に減弱した (Fig. 8A-C)。改変実験的転移モデルにおいて、Ptgs2ΔMCマウスはWT対照と比較して肺転移が有意に低く、E0771モデルでも同様の効果が確認された (原発腫瘍の成長は変化なし)。EP2およびEP4デュアルアンタゴニスト投与は、ex vivo MC-好中球共培養系において、MC誘発の免疫抑制遺伝子発現をEP2単独、EP4単独、IL-1β中和、IL-6中和よりも強力に抑制した (Fig. 8D)。in vivoでも、デュアル阻害により肺好中球の免疫抑制遺伝子発現が有意に低下し、AT3担癌およびE0771モデルで肺転移が有意に抑制された。デュアル阻害の転移抑制効果は、CD8+T細胞およびNK細胞除去、またはNSGマウスを用いた実験で大幅に消失し、T細胞およびNK細胞機能の回復が効果の主要機序であることが確認された。
EP2/EP4阻害と養子T細胞移入の相乗効果: AT3gcsf担癌マウスへの蛍光標識CD8+T細胞移入実験では、強い宿主炎症条件下 (AT3gcsf) ではAT3条件よりも有意に少ない移入T細胞が肺に検出され (Fig. 8F, n=4 mice)、移入T細胞のIFN-γ発現も低下しており (Fig. 8G)、養子T細胞療法の治療効果がAT3gcsf条件下では消失した (Fig. 8H)。EP2/EP4デュアル阻害と養子OT-I CD8+T細胞移入の併用では、T細胞単独と比較して肺転移が10倍以上に低下した (Fig. 8I, n=複数 mice, p<0.001)。MC特異的Ptgs2 cKOも、確立された肺転移に対するCD8+T細胞ベース療法の治療効果を可能にした。これらの結果は、Ptgs2-PGE2-EP2/EP4シグナル伝達経路の阻害が、養子T細胞ベースの免疫療法と相乗効果を発揮する有望な併用療法であることを示している。
考察/結論
本研究は、転移先臓器である肺の常在間葉系細胞 (CD140a+MC) が、プロスタグランジンE2 (PGE2) を介して骨髄由来の好中球を局所的に免疫抑制性に再プログラムし、乳がんの肺転移を促進するという新規の細胞間相互作用メカニズムを解明した。この知見は、「PMN-MDSCの免疫抑制活性が骨髄での分化プログラムだけでなく、転移臓器の微小環境によっても後天的に決定される」という新たな概念を提示しており、好中球と腫瘍微小環境の研究分野に、局所的な「再教育」という重要な視点を加えるものである。
先行研究との違い: これまでの研究では、好中球の免疫抑制機能は主に全身性または腫瘍局在性の因子によって制御されると考えられてきた。しかし、本研究は、肺間葉系細胞という特定の組織常在細胞がPGE2を介して好中球を免疫抑制的に再プログラムするという、これまで報告されていない組織特異的なメカニズムを明らかにした点で、先行研究とは対照的である。また、COX-2阻害薬であるセレコキシブが乳がん臨床試験で期待された効果を示さなかった理由として、COX-1による代償効果が示唆されていたが、本研究はPGE2受容体 (EP2/EP4) の下流での遮断がより有効なアプローチとなる可能性を示した。
新規性: 本研究で初めて、肺間葉系細胞がPGE2を介して好中球の免疫抑制能を誘導する主要な組織常在細胞であることを新規に同定した。さらに、このPGE2シグナル伝達経路が、好中球の免疫抑制的表現型を確立する上で中心的な役割を果たすことを明らかにした。また、EP2/EP4デュアル阻害と養子T細胞療法の組み合わせが、肺転移を10倍以上抑制するという強力な相乗効果を示すことも本研究で初めて実証された。これは、免疫療法抵抗性の原因となる好中球免疫抑制を解除することで、既存の免疫療法の有効性を劇的に回復できる可能性を示す新規な知見である。
臨床応用: 本研究の知見は、乳がん肺転移の治療における新たな臨床応用戦略に直結する。PGE2受容体EP2/EP4のデュアル阻害は、好中球の免疫抑制能を抑制し、肺転移を減少させる効果的な方法であることが示された。このアプローチは、既存の免疫チェックポイント阻害剤や養子T細胞療法と組み合わせることで、治療効果を大幅に向上させる可能性を秘めている。特に、免疫抑制的な肺微小環境が免疫療法の効果を減弱させる状況において、PGE2シグナル伝達を標的とすることは、臨床現場での治療成績改善に大きく貢献する臨床的意義を持つと考えられる。
残された課題: 今後の検討課題として、肺MC固有のPGE2高産生を規定する分子メカニズム (肺MCが他臓器MCと異なる理由) のさらなる解明が残されている。また、本研究は乳がん肺転移モデルに焦点を当てたが、大腸癌や腎細胞癌など、他の種類の腫瘍の転移における本機序の普遍性を検証する必要がある。さらに、脳、骨、肝臓など、他の転移部位における類似のメカニズムが存在するかどうかの検討も今後の研究方向性として重要である。これらの課題に取り組むことで、転移性疾患に対するより広範な治療戦略の開発に繋がるだろう。
方法
本研究では、乳がんの肺転移モデルとして、4T1同所性移植モデル、AT3およびG-CSF過剰発現AT3 (AT3gcsf) 同所性移植モデル、MMTV-PyMT自然発症モデル、E0771同所性移植モデルを含む複数のマウスモデルを使用した。これらのモデルマウスから、骨髄 (BM)、末梢血 (PB)、肺の好中球 (CD45+CD11b+Ly6ClowLy6G+) をフローサイトメトリーにより分離し、その表現型および機能的特性を解析した。
好中球の免疫抑制能評価: 分離した好中球は、CD4+T細胞増殖抑制アッセイおよびNK細胞傷害性抑制アッセイに供され、その免疫抑制能が定量的に評価された。
遺伝子発現解析: 好中球の免疫抑制関連遺伝子発現プロファイルを評価するため、RNAシーケンス (RNA-seq) および定量的PCR (qPCR) を実施した。特に、4T1、AT3、AT3gcsf、およびナイーブ条件下のBM、PB、肺好中球 (n=3 mice) を対象にRNA-seq解析を行い、免疫抑制関連遺伝子の発現差を比較した。また、蛍光標識した骨髄好中球を静脈内移入し、各組織に到達後4時間および16時間での免疫抑制遺伝子発現の経時的変化をqPCRで追跡した (n=4 mice)。
単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq): ナイーブおよび4T1担癌マウスのBM、PB、肺好中球 (n=1 mouse、プールなし) をscRNA-seqで解析し、tSNEプロットを用いて10個のクラスターを同定した。同様に、ナイーブ、AT3、AT3gcsf担癌マウスのBM、PB、肺好中球 (n=1 mouse、プールなし) もscRNA-seqで解析した。これにより、好中球サブポピュレーションの組織特異的な分布と遺伝子発現プロファイルを詳細に解析した。scRNA-seqデータ解析にはSeuratソフトウェアパッケージ (version 4.0.2) を使用した。
組織間葉系細胞との共培養実験: 肺、脾臓、骨髄、皮膚、肝臓の各組織からCD140a+間葉系細胞 (MC) を分離し、骨髄好中球と共培養した (n=4 replicates)。共培養後の好中球におけるPtgs2、Il1b、Arg2、Trem1などの免疫抑制遺伝子の発現をqPCRで定量し、MCによる好中球再プログラミング能を評価した。また、Ptgs2-/-MCおよびPtgs2ΔMC (Pdgfra-Cre; Ptgs2fl/fl) 条件付きKOマウス由来のMCを用いて、PGE2の好中球再プログラミングにおける役割を遺伝学的に検証した。
PGE2の役割の検証: IPA (Ingenuity Pathway Analysis) 上流調節因子スクリーニングによりPGE2を主要な候補因子として同定した後、PGE2単独、またはIL-1β、IL-6との組み合わせで骨髄好中球への効果をin vitroで検証した (n=4 replicates)。
in vivo転移モデル: 4T1、AT3gcsf、E0771モデルの改変実験的転移モデル (ルシフェラーゼ標識腫瘍細胞静注) を用いて、Ptgs2ΔMCマウスおよびEP2/EP4アンタゴニスト (デュアル阻害) 投与マウスにおける肺転移抑制効果を定量的に評価した。EP2/EP4阻害の転移抑制効果が免疫細胞に依存するかを確認するため、CD8+T細胞およびNK細胞除去実験、ならびに免疫不全NSGマウスを用いた実験を実施した。
併用療法: AT3gcsf担癌マウスにOT-I CD8+T細胞の養子移入とEP2/EP4阻害を併用し、肺転移量に対する相乗効果を評価した (n=複数 mice)。
ヒト好中球の検証: ヒト化NSG-SGM3マウスモデルおよび公開されているTabula Sapiensデータセットを用いて、ヒト好中球における組織特異的な免疫抑制プロファイルを検証した。
統計解析: 全ての実験結果は平均±SEMで示され、GraphPad Prismソフトウェア (バージョン8.2.1) を用いて統計解析を行った。2群間の比較にはStudent’s t検定またはMann-Whitney検定を、多群間の比較には一元配置分散分析 (ANOVA) または二元配置分散分析 (ANOVA) 後にTukey’sまたはSidak’sの多重比較検定を用いた。統計的有意性はp<0.05と定義した。