• 著者: Zhenfang Du, Christine M. Lovly
  • Corresponding author: Christine M. Lovly (Vanderbilt University Medical Center)
  • 雑誌: Molecular Cancer
  • 発行年: 2018
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 29455648

背景

RTK (receptor tyrosine kinase、受容体型チロシンキナーゼ) はヒトゲノムに58種が存在し、細胞増殖・運動・分化・代謝を制御する膜貫通タンパク質である。全RTKはECD (extracellular domain、細胞外リガンド結合ドメイン)・単一膜貫通ヘリックス・JMD (juxtamembrane domain、ジャクスタメンブランドメイン)・TKD (tyrosine kinase domain、チロシンキナーゼドメイン)・C末端テールという共通構造をもち、リガンド結合による受容体ダイマー形成・trans-自己リン酸化・下流シグナル活性化という段階的制御のもとに機能する。RTKシグナリングの細胞内経路としてRAS/MAPK・PI3K/AKT・JAK2/STATが主要であり、受容体型チロシンキナーゼの構造生物学的基盤は古典的な生化学研究によって解明されてきた。

NGS (next-generation sequencing、次世代シークエンシング) の普及により、ほぼ全ての固形腫瘍でRTK遺伝子の変異景観が明らかとなった。EGFR・HER2/ERBB2・MET・FGFRなどのRTK遺伝子に機能獲得変異・ゲノム増幅・染色体再編成が高頻度で認められ、これらが発癌ドライバーとして機能することが大規模ゲノム研究で確立された。その臨床的成果として、EGFR変異陽性NSCLCに対するEGFR-TKIの化学療法に対する優越性 (Mok et al. NEnglJMed 2009)、NSCLCにおけるEML4-ALK融合遺伝子の発見 (Soda et al. Nature 2007)、crizotinibのALK融合陽性NSCLCへの有効性 (Kwak et al. NEnglJMed 2010) が相次いで確立され、RTK異常活性化は分子標的治療の最重要標的となっている。

しかしながら、個々のRTKや特定の変異種に関する知見が蓄積された一方で、複数の活性化メカニズムを統一的枠組みで体系化し、分子機序と治療感受性の関係を包括的に論じた文献は手薄であった。特に、KDD (kinase domain duplication、キナーゼドメイン重複) という新規活性化機序の存在とその臨床的意義については、既存のレビューにgap in knowledgeが生じていた。各活性化機序の詳細な分子理解なしには、なぜ同一のRTK遺伝子の変異がドメインの位置によって治療感受性に差異を生じるか — あるいは新規の構造変化がいかなる治療応答を示すか — を予測することが不足していたと言える。

目的

がんにおけるRTK異常活性化の分子メカニズムを5カテゴリー — (1) 機能獲得変異、(2) ゲノム増幅、(3) 染色体再編成、(4) オートクリン活性化、(5) キナーゼドメイン重複 (KDD) — に体系化すること。さらに正常RTKシグナリングの分子機序を解説した上で、各活性化メカニズムに対応する抗腫瘍治療戦略への示唆を提供すること。

結果

正常RTKシグナリングの分子機構:全RTKは細胞外ECD・単一膜貫通ヘリックス・JMD・TKD・C末端テールの共通構造をもつ。リガンド結合によって受容体間のダイマーまたはオリゴマーが形成され (Fig 1a)、trans-自己リン酸化によりTKDのcis-自己抑制が解除されて活性型コンフォメーションが確立する。下流には SH2 (Src homology-2) ドメインまたはPTB (phosphotyrosine-binding) ドメインをもつシグナル分子が動員され、RAS/MAPK・PI3K/AKT・JAK2/STATの経路が順次活性化する。リガンド誘導ダイマー化には4つのモードが構造生物学的に確立されている: (i) 完全リガンド依存型で受容体間に直接接触なし (TrkA/NGF受容体)、(ii) 完全受容体依存型でリガンド間物理的接触なし (ErbBファミリー)、(iii) リガンドホモダイマーが2分子の受容体に結合してダイマー界面を形成 (KIT/SCF受容体)、(iv) 二価リガンド結合・直接受容体-受容体接触・補助分子参加の複合型 (FGFR・ヘパリン/ヘパラン硫酸を補助分子として使用)。ErbBファミリーでは、ECD subdomain II内のダイマリゼーションアームが通常はsubdomain IVとの分子内相互作用により埋め込まれ (tethered configuration・非活性型)、リガンド結合によってコンフォメーション変化が誘導されダイマリゼーションアームが露出する (extended configuration・活性型)。ErbBのTKD活性化はC-lobeの非対称ダイマー機構によって駆動され、「activator kinase」のC-lobeが「receiver kinase」のN-lobeに物理的に接触することでreceiver kinaseが活性化コンフォメーションを獲得する。この際、activation loopのリン酸化は不要であるという特異な点が他のRTKサブファミリーと際立って異なる。各RTKサブファミリーの自己抑制機序も多様で: activation loopによるcis-自己抑制 (FGFR・インスリン受容体 IR・IGF-1R)、JMDによる自己抑制 (KIT・Eph受容体)、C末端テールによる自己抑制 (TEK・MET・RON; MST-1R) が結晶構造解析により詳細に解明されている。ネガティブレギュレーターであるMIG6 (ERRFI1エンコード) は77アミノ酸のsegment 1/2でEGFRの非対称ダイマーのactivator kinaseに結合してキナーゼ活性を抑制するが、EGFR変異体 (L858R等) はより低エネルギーで非対称ダイマーを形成するため、MIG6によるC-lobe接触が制限されて抑制効率が低下することが構造解析で示された。

機能獲得変異 (Gain-of-function mutations) によるRTK活性化:ドライバー変異はキナーゼドメイン内の進化的に保存されたDFGモチーフやATP結合ポケット周囲に集中し、リガンド非依存的な恒常的活性化を誘導する (Fig 1b)。EGFRを代表例として、TKD全体はexon 18-24でエンコードされ、変異はexon 18-21 (ATP結合ポケット周囲) に集中する。全EGFR変異の約90%はexon 19内の短い欠失またはexon 21のL858R点変異であり、大規模国際ランダム化試験によってgefitinib・erlotinib・afatinib・osimertinibへの顕著な感受性が確立されている (IPASS試験 EGFR変異群: PFS HR 0.48, 95% CI 0.36-0.64; FLAURA試験: OS HR 0.80, 95% CI 0.64-1.00) (Mok et al. NEnglJMed 2009; Soria et al. NEnglJMed 2018)。ECD変異も報告されており、GBM (glioblastoma、神経膠芽腫) のEGFR P596L・G598V・A289Vはリガンド非存在下でのリン酸化増加を誘導するが、非活性型コンフォメーションを取るためTKD変異とは治療感受性が異なり、erlotinib・gefitinibへの感受性が低いことが第II相試験で示されている。一方、不活性型コンフォメーションに結合するタイプの治療が有効である可能性が示唆されている。子宮頸癌のFGFR3 S249Cは不対システイン残基による分子間ジスルフィド結合形成を介した異常な受容体ダイマー化を誘導する。TMD (transmembrane domain) 変異では、HER2 G660D・V659EがNSCLCのドライバー変異として同定され、TMD内の受容体ホモ/ヘテロ二量体化を安定化させることでキナーゼを恒常的に活性化し、in vitroモデルでlapatinib・afatinibへの感受性を示した。JMD変異ではKIT V560G・PDGFRA V561D (GIST, gastrointestinal stromal tumor) がJMDの自己抑制相互作用を解除してキナーゼを過活性化し、imatinibへの感受性を示すが、変異が存在するドメインの違い (ECD/TMD/JMD vs TKD) によって治療応答パターンが異なることが臨床的に重要である。

ゲノム増幅 (Genomic amplification) とRTK過剰発現:遺伝子コピー数増加はRTKの過剰発現を介した恒常的活性化を引き起こす (Fig 1c)。増幅はdouble minutes (25コピー超の高度増幅) またはdistributed insertions (5-25コピーの中等度増幅) として生じ、GBMのEGFR研究では高度EGFR増幅例の88%でEGFRタンパク質過剰発現が認められた一方、低度増幅例では36%に留まり、増幅レベルと過剰発現には強い相関があることが示された。HER2/ERBB2増幅は乳癌・NSCLC・膀胱癌・胃癌に認められ、trastuzumab・pertuzumab等の抗HER2治療の分子基盤となる。EGFR増幅はGBM・肺癌・食道癌・甲状腺癌に認められ、EGFR変異肺癌では変異アレル側に優先的に増幅が生じることが示されており、変異と増幅の相乗的発癌促進が示唆される。MET増幅は155例のEGFR変異肺癌の解析でEGFR-TKI獲得耐性の主要機序として確認されており、HER2増幅も同様に耐性機序として機能する。さらに、FGFR1 (肺癌・乳癌)・FGFR3 (乳癌・膀胱癌)・ERBB4 (乳癌・胃癌)・FLT3 (大腸癌)・KIT (メラノーマ・GIST)・PDGFRA (GBM) の増幅が多様ながん種で報告されている。遺伝子増幅以外のRTK過剰発現機序として、転写/翻訳増強・腫瘍ウイルス (EGFR食道癌)・ホスファターゼ等のネガティブレギュレーターの喪失が関与する。

染色体再編成とキナーゼ融合 (Chromosomal rearrangements):転座・逆位・欠失等によりRTKの融合タンパク質が形成され、リガンド非依存的な恒常的活性化をもたらす。最初に同定された融合はt(9;22)によるBCR-ABLであり、imatinibによるCML (chronic myelogenous leukemia、慢性骨髄性白血病) 治療の革命的成功の分子基盤となった。続いてt(2;5)によるNPM-ALK (ALCL (anaplastic large cell lymphoma) の約50%)、EML4-ALK (NSCLCの約3-7%・IMT (inflammatory myofibroblastic tumor) の約50%) が同定され、ALK-TKI (crizotinib等) が有効であることが示された (Kwak et al. NEnglJMed 2010)。EML4-ALKの構造的特徴として、EML4由来のcoiled-coilドメインによるホモダイマー形成がリガンド非依存的活性化に必須であり、このcoiled-coilドメインを破壊するとEML4-ALKの形質転換能が消失することが示された (Soda et al. Nature 2007)。ROS1融合はNSCLCの約1%・IMT・胆管癌・GBMで認められ、少なくとも9種の融合パートナー (SLC34A2・CD47・TPM3・SDC4・EZR・LRIG3・FIG・KDELR2・CCDC6) がNSCLCで確認されている。RET融合はNSCLC・甲状腺癌に、NTRK1/2/3融合は肉腫・メラノーマ・神経膠腫・甲状腺・肺・大腸・乳癌・頭頸部癌等の9つのがん種に横断的に認められ、larotrectinibが成人・小児でのTRK融合陽性がんに有効であることが示された。融合タンパク質の共通構造的特徴として (Fig 2a): (1) TKDは保存されること、(2) ゲノム破断点の位置によりECD保存型のmembrane-bound融合 (例: EGFR-RAD51) またはECD欠失型のcytoplasmic融合 (例: EML4-ALK) に分かれること、(3) ほとんどの融合パートナーがoligomerization domain (多くはcoiled-coil) を提供してリガンド非依存的な恒常的活性化を誘導すること、(4) 融合パートナーのプロモーター下で融合キナーゼの発現が制御されること、(5) パートナーの細胞内局在が融合タンパク質の細胞内分布とシグナル伝達特性を規定すること — の5点が示されている。

キナーゼドメイン重複 (KDD) — 新規活性化機序:染色体内の部分重複によりTKDが直列に2コピー生成するKDDは、新規RTK活性化機序として提唱されている (Fig 2b)。本論文の著者グループ (Lovlyら) がEGFR-KDDをNSCLCで初めて報告し、神経膠腫・肉腫・Wilms腫瘍にも認められることを明らかにした。n=114,200腫瘍を対象とした大規模ゲノムプロファイリング解析では、KDD全体の頻度は0.62% (598例) であり、ErbBファミリー (EGFR・ERBB2・ERBB4)・FGFRファミリー (FGFR1/2/3)・NTRKファミリー (NTRK1/2)・PDGFRファミリー (PDGFRA・PDGFRB)・その他 (BRAF・RET・MET・ROS1・ALK・KIT) に及ぶことが示された。脳腫瘍ではEGFR・BRAF・PDGFRA・FGFR3に多く、頭蓋外腫瘍ではRET・MET・ALKに多い。EGFR-KDDの活性化機序は、2つのタンデムキナーゼドメインによる分子内非対称ダイマー形成によりリガンド非依存的にシグナルが活性化されると推定されており、in silicoおよびin vitro前臨床モデルで検証された。この活性化機序はEGFR exon 19 del・L858Rとは根本的に異なるが、afatinibへの臨床的感受性が報告されており、また後に行われた後天的TKI耐性の機序としてもEGFR-KDD増幅が確認されている。BRAF-KDDはBRAF intron 9での破断によりRAS非依存的二量体化を示し、EGFR-KDDとは異なる活性化機序をとる。BRAF阻害薬治療後のメラノーマでBRAF-KDDが獲得耐性機序として同定されており、治療圧力下でのKDDの選択的獲得が示唆される。各KDDは固有の活性化機序をもつ可能性があり、系統的な機能解析が今後必要である。

オートクリン/パラクリン活性化:腫瘍細胞が自ら増殖因子などのリガンドを産生してRTKを恒常的に活性化するオートクリン機構も重要な発癌メカニズムである (Fig 2c)。代表的なオートクリンループとして、TGFα (transforming growth factor alpha)-EGFR (EGFR変異肺癌においてEGFR-TKI感受性を低下させることが示された)、HGF (hepatocyte growth factor)-MET (急性骨髄性白血病・肺腺癌)、SCF (stem cell factor)-KIT (SCLC) が詳細に解析されている。SCLCにおけるSCF-KITループはIGF-1 (insulin-like growth factor 1) およびbombesinの2種の別のオートクリンループとの協調作用 (synergy) により腫瘍発生を促進することが示され、多重オートクリン経路の相互作用が腫瘍発生に関与することが明らかにされた。

新興メカニズム — microRNAと腫瘍微小環境:microRNAはRTKの発現を直接調節し、腫瘍抑制因子またはオンコジーンとして機能する。miR-145はEGFR・NUDT1を直接標的として肺腺癌の増殖を抑制し、miR-219-5pは3’-UTRへの直接結合によりEGFR発現を抑制してGBMの増殖を抑制する。miR-21/EGFRフィードバックループ阻害はGBMにおける抗EGFR治療の増強効果を示し、microRNAコンビネーションバイオマーカー (MiR-99a/Let-7c/miR-125b) が大腸癌における抗EGFR抗体治療の予後予測マーカーとなりうることが示されている。腫瘍微小環境においてはEph受容体ファミリー (腫瘍血管・腫瘍間質での細胞間相互作用)・AXL (腫瘍関連マクロファージでの免疫抑制的役割・前腫瘍形成性フェノタイプ促進)・VEGFR・PDGFRが重要な役割を果たし、治療標的としての可能性が示されている。ネガティブレギュレーターとしてPTEN・LRIG1・ERRFI1 (MIG6) が腫瘍抑制因子として機能し、ERRFI1は染色体1p36.1-3に位置し乳癌・肝癌・腎癌等の広範ながん種で欠失する。

考察/結論

本レビューは、RTK活性化機序を機能獲得変異・ゲノム増幅・染色体再編成・オートクリン活性化・KDDの5カテゴリーに体系化し、各メカニズムの分子機序と治療感受性の関係を包括的に整理した点で重要な意義をもつ。既報の研究において個別のRTKや特定変異に関する知見は蓄積されていたが、これまでの研究では複数の活性化機序を統一的枠組みで横断的に比較・整理した包括的文献は限られており、本稿はその空白を埋める貢献をしている。

機序間の比較として際立つのは、変異が存在するドメインの位置によって治療感受性が大きく異なることである。EGFR TKD変異 (exon 19 del・L858R) はEGFR-TKIに対して高い感受性を示すのに対照的に、GBMにおけるEGFR ECD変異 (P596L・G598V等) は不活性型コンフォメーションを取るためTKIへの感受性が低い。さらにKDD変異はEGFR L858Rとは根本的に異なる分子内ダイマー形成機序を持つが、afatinibへの感受性を示す点では部分的に重複する — この事実はTKIの結合様式 (ATP競合型阻害剤) が変異ドメインの位置に依らずTKD活性化を抑制しうることを示す。染色体再編成による融合タンパク質では、リガンド非依存的活性化・subcellular localization変化・新規シグナル経路活性化の3点が通常の点変異とは根本的に相違する特徴として際立ち、融合特異的なTKIが奏効する基盤となっている。

新規の学術的貢献として特に重要なのはKDDの提示である。本論文著者グループが本研究で初めてNSCLC においてEGFR-KDDを報告し、2タンデムキナーゼドメインによる分子内非対称ダイマー形成という新規に解明された活性化メカニズムをin silicoおよびin vitro実験で検証した。114,200腫瘍解析によりKDDが0.62%の頻度でErbB・FGFR・NTRK・PDGFRをはじめとする多様なRTKファミリーに横断的に認められることを示したことは、KDDが希少ながらも治療可能な標的として全固形腫瘍に存在する可能性を示すこれまで報告されていない知見である。

臨床応用の観点から、本レビューはNGSによる包括的ゲノムプロファイリングが各活性化機序の特定に不可欠であることを体系化した。変異にはTKI (EGFR-TKI・ALK-TKI・ROS1-TKI・NTRK-TKI・RET-TKI)、増幅にはモノクローナル抗体 (trastuzumab・pertuzumab・cetuximab等)、融合には融合パートナー構造を考慮したTKI選択が有効であることが整理されており、臨床的意義として各機序に最適な薬剤クラスを選択する「機序ベースの精密医療」の実装根拠が提供されている。KDDの0.62%という頻度は希少であるが、臨床現場における包括的NGS検査の実施によって同定可能な治療標的であり、臨床応用へのbench-to-bedside転換を支持するエビデンスが蓄積されつつある。

残された課題は多岐にわたる。オートクリン活性化の予測バイオマーカーの確立は現在も不十分であり、どの患者でオートクリンループがEGFR-TKI感受性を低下させるかを前もって識別する手段が残された課題として存在する。TKI耐性時の機序転換 (例:変異から増幅・融合への移行、あるいはKDD獲得) の動的変化をliquid biopsyで追跡するアプローチは今後の検討に値する重要課題である。KDDを含む各新規活性化機序に対する最適なTKI戦略の解明、およびRTK阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の組合せにおける相互作用の理解も更なる検討が必要である。またMIG6等のネガティブレギュレーターをがん治療に応用するアプローチや、microRNA・腫瘍微小環境を介したRTK調節の治療的利用は、将来のfuture researchの方向性として有望である。

方法

本論文は系統的レビューではなく包括的文献レビュー (narrative review) である。PubMed・MEDLINEに収録された英文文献を対象に、RTK正常シグナリングの構造生物学・生化学的研究、大規模ゲノムプロファイリング研究 (TCGA等のコンソーシアムデータを含む)、細胞株・マウスモデルを用いた前臨床研究、および国際共同臨床試験のデータを統合した。臨床試験としては、EGFR-TKI第III相試験 (IPASS・WJTOG3405・NEJ002・EURTAC・OPTIMAL・LUX-Lung 3・AURA3・FLAURA等) およびALK-TKIを検証した第III相試験の成果を主要な臨床エビデンスとして採用した。RTKゲノム増幅・KDDに関しては、114,200腫瘍を対象とした大規模コホート研究 (Gay et al. Ann Oncol 2017) の結果を参照した。RTK融合の全体的景観に関してはStransky et al. Nat Commun 2014によるがんゲノムのキナーゼ融合解析を参照した。主要参照論文における統計解析手法はKaplan-Meier法 (生存時間曲線推定)・log-rank検定 (群間生存差の比較)・Cox比例ハザード回帰 (ハザード比・95%信頼区間算出) によるものであり、本レビュー自体での独立統計解析は行っていない。構造生物学的データはX線結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡・in silico構造モデリングの文献から引用した。文献検索対象期間は2018年初頭までとし、RTK活性化の主要4機序に加えてmicroRNA・腫瘍微小環境・ネガティブレギュレーターといった新興調節因子についても関連文献を網羅的にレビューした。