- 著者: Yates LR, Campbell PJ
- Corresponding author: Peter J. Campbell (Wellcome Trust Sanger Institute; Department of Haematology, University of Cambridge)
- 雑誌: Nature Reviews Genetics
- 発行年: 2012
- Epub日: 2012-10-09
- Article種別: Review
- PMID: 23044827
背景
がんはダーウィン進化の原理に従って体細胞変異を累積する疾患として理解されてきた。Nowell (1976) の古典的クローナル進化モデルは、連続的な選択的クローン拡大を経て腫瘍が成立する線形的な多段階発がんを提唱し、以降の半世紀にわたりがん研究の基盤パラダイムとして機能してきた。Hanahan & Weinberg によるがんの特徴 (Hallmarks of Cancer) の改訂版 (Cell 2011) でも、ゲノム不安定性がすべての悪性腫瘍に共通する根本的な特性として再確認された (Hanahan et al. Cell 2011)。しかし従来の標的シークエンシングや比較ゲノムハイブリダイゼーション (comparative genomic hybridization) は、数万個のDNA分子の集合的シグナルしか提供できないため、腫瘍内部に存在する複数のサブクローンの多様性やその時系列動態を直接把握することが困難であった。Stratton et al. によるがんゲノムの俯瞰論文 (Nature 2009) は網羅的解析の展望を示したが (Stratton et al. Nature 2009)、大規模並列シークエンシングをがん生物学に本格応用するための方法論的枠組みはなお手薄な状況にあった。特に、線形進化モデルでは説明できない急激な変異プロセス (chromothripsis・kataegis)、同一腫瘍内のクローン多様性の定量的把握、DNA損傷・修復プロセスを反映した変異シグネチャーの体系化については gap in knowledge が存在し、次世代シークエンシング時代の知見を統合した包括的な理論的枠組みが不足していた。
目的
大規模並列シークエンシングが明らかにしたがんゲノム進化の最新知見—腫瘍内遺伝的不均一性、線形から分岐への進化モデルの転換、chromothripsis・kataegisという新規変異プロセス、変異シグネチャーの時系列動態、mutator変異による変異率の上昇、エピスタシスと細胞基底状態の影響—を統合的に解説し、がん生物学の基礎的理解と抗腫瘍療法の開発に対する含意を論じること。
結果
がんゲノム研究における戦略的・方法論的革新: 大規模並列シークエンシングの本質的な利点は、各シークエンシングリードが単一のDNA分子 (すなわち個々のがん細胞ゲノム) に由来するため、腫瘍標本中の全DNA分子の無作為標本として統計的に解釈できる点にある (Fig. 1)。変異アレル頻度 (mutant allele frequency: 変異リード数÷全リード数) は特定変異を持つがん細胞の割合を直接反映し、局所コピー数・正常細胞混入率と組み合わせることで各変異がクローナル (全腫瘍細胞が保持) かサブクローナル (一部のサブクローンのみが保持) かを統計的に推定できる。コピー数増加前に生じた変異はその後重複するため変異アレル頻度が高くなり、コピー数変化と体細胞変異の時系列順序の推定が可能となった。Bayesian Dirichlet process・kernel density analysisによる変異クラスタリングにより、類似した変異アレル頻度を持つ変異群をサブクローン集団として同定できる。隣接する体細胞変異ペアのhaplotype-phasingにより、分岐進化パターンや変異の相対的出現順序の解析が可能となった。系統樹 (phylogenetic cancer tree) では、すべての悪性細胞が共有する「幹 (trunk) 」変異—MRCA (most recent common ancestor, 最近共通祖先) 以降の完全クローナル変異—と各サブクローン固有の「枝 (branch) 」変異を明確に区別することで、腫瘍の分子進化史を可視化できる。腫瘍マルチサンプリング戦略として地理的サンプリング (同一時点・複数領域) と縦断的サンプリング (診断時・再発時・転移時) が体系化され、シングルセルシークエンシングは全ゲノム増幅に伴うバイアスという課題を持ちつつも、点変異カタログおよびコピー数変化解析に概念実証 (proof-of-principle) として成功した。
腫瘍間・腫瘍内遺伝的多様性の実態: がんゲノムの変異スペクトラムは癌種間で顕著に異なる。小児がんである網膜芽細胞腫・髄芽腫は体細胞置換変異数が乳癌やAML (急性骨髄性白血病) と比べて著しく少ない。同一サブタイプ内でも変異負荷の顕著な個人差が存在し、HER2陽性乳癌においては個症例間の変異数が6-foldもの差を示した報告がある。TCGA (The Cancer Genome Atlas) は高悪性度漿液性卵巣癌n=489例を解析し、数千の体細胞変異が同定されたにもかかわらず、再発変異を持つがん遺伝子はわずか10個であり、TP53以外はすべて全症例の<10%にしか変異が存在しなかった。ER陽性乳癌77例では変異の多くが低頻度だが、腫瘍細胞生物学に中心的なパスウェイに集積していた。構造変異のパターンも癌種特異的であり、乳癌・卵巣癌はタンデム重複 (tandem duplication) が顕著に多く、膵臓癌はbreakage-fusion-bridge (BFB) サイクルによる染色体再構成が特徴的であり、前立腺癌では均衡型鎖状ゲノム再構成 (balanced chain rearrangement) が観察される (Fig. 2)。腫瘍内多様性 (intratumour heterogeneity, ITH) に関しては、Gerlinger et al. (Gerlinger et al. NEnglJMed 2012) による腎細胞癌の多部位解析において、複数の転移巣と原発巣が独立した遺伝的クレードを形成する広範な分岐進化が示された。この研究では、PTEN変異 (全腎癌の約1%にしか認められない) が同一患者の2つの独立したサブクローンで収束して発生しており、当該患者のゲノム背景がPTEN不活化に対して特別な選択圧をかけていることを示す強力な証拠とされた。
変異シグネチャーの同定と時系列動態: 21例の乳癌全ゲノムシークエンシング (Nik-Zainal et al. Cell 2012) から、96種類の塩基置換クラス (6種の塩基置換×前後塩基コンテキスト16種) に基づく変異シグネチャーが体系的に解析された。少なくとも5種類の異なるシグネチャーが同定され、それぞれが異なる生物学的プロセスを反映した: (1) 加齢関連のメチル化シトシン自然脱アミノ化 (CpGコンテキストのC→T転換、正常造血幹細胞と類似したパターン); (2) BRCA1/BRCA2機能不全関連シグネチャー; (3) APOBECシトシン脱アミノ化 (TpCコンテキストのC→T転換およびC→G転換); (4) 化学療法誘発性変換パターン (シクロホスファミドによるトランスバージョン増加); (5) 起源不明の新規プロセス由来シグネチャー。注目すべき時系列動態として、がん発生初期にはCpGコンテキストのC→T転換が主要プロセスであるのに対し、腫瘍発生後期には複数の新規プロセスが出現するという動的な変化が実証された。これはほとんどの乳癌でがん特異的な変異率の上昇が存在することを示唆する。ゲノム上での変異率は不均一に分布しており、高発現遺伝子ではTC-NER (transcription-coupled nucleotide excision repair) の活性により変異率が低下する。マイクロサテライト不安定性 (MSI) を示す大腸癌ではTGFβ受容体II型遺伝子が特定の塩基組成により特に変異を受けやすいのに対し、MSS (microsatellite stable, マイクロサテライト安定) 大腸癌ではこの遺伝子はほとんど変異しない。タバコ誘発性肺癌ではTP53とKRASの変異分布が非喫煙者の肺癌と異なり、環境曝露の変異シグネチャーへの刻印が示された。
Chromothripsis:壊滅的ゲノム危機の実体と臨床的意義: Chromothripsis (染色体断砕) は、1本または数本の染色体が単一の壊滅的イベントで大量に断片化・再結合される現象であり、2-3 copy number statesのオシレーションパターン (コピー数の二状態振動) と、1〜数本の染色体に局在する数百件のゲノム再構成を特徴とする (Fig. 3)。全がんの約2-3%で検出されており、慢性リンパ性白血病 (CLL)、神経芽腫、多発性骨髄腫、乳癌、肺癌 (小細胞・非小細胞)、腎癌、甲状腺癌、消化管悪性腫瘍など多様ながん種で報告された。特筆すべき知見として、髄芽腫ではTP53変異陽性例の100%にchromothriposisが認められたが、TP53野生型では0%であり、AMLでもTP53変異陽性例の47%に認められた一方、TP53野生型では1%にとどまり、TP53変異との強い関連が示された (Fisher’s exact test, p<0.001)。骨肉腫でも特に高頻度に見られた。Chromothriposisの局在メカニズムとして、有糸分裂後期の微小核 (micronuclei) に損傷染色体が隔離されることで局所的なDNA断片化が引き起こされる可能性が提唱された。単一の壊滅的イベントによって、E3ユビキチンタンパク質リガーゼFBXW7・CDKN2A・RecQ helicaseであるWRNという複数の腫瘍抑制遺伝子が同時に破壊された症例が報告されており、従来の段階的変異蓄積モデルでは説明できない一挙的な悪性化への「ジャンプ」を意味する。多発性骨髄腫ではchromothriposisを持つ例は新規診断時から予後不良と関連することが示された。テロメア消耗に伴うbreakage-fusion-bridge (BFB) サイクルも、数回の細胞分裂という短いタイムスケールで広範な染色体欠失と指数関数的なゲノム増幅を引き起こす急激な変異蓄積プロセスであり、自然選択が作用するタイムスケールよりも大幅に速い。前立腺癌に見られる均衡型鎖状再構成では最大10カ所のゲノム領域が関与する相互DNA交換が観察され、一部にTBK1 (TANK-binding kinase 1)・TP53・MAP2K4 (mitogen-activated protein kinase kinase 4)・ABL1などのがん関連遺伝子周辺にブレークポイントが集中していた。
Kataegis・クローナル進化の分岐モデル・エピスタシス: Kataegis (局所超変異、ギリシャ語で「雷雨」の意) は、ゲノムの限られた領域 (1-2 kb程度) に10-20個の体細胞変異が集中する現象であり、21例の乳癌全ゲノム解析 (Nik-Zainal et al. 2012) で初めて報告された。これらの変異クラスターはTpCコンテキストのシトシン変換 (C→T転換またはC→G転換) から成り、すべて同一DNAストランド上でコリニアに生じる強い鎖特異性を示す。発生位置はゲノム構造変異と顕著に共局在し、APOBECタンパク質ファミリーが一本鎖DNA露出部位を標的として連続的に脱アミノ化することで生じると推測された。がんのクローナル進化は線形モデル (successive clonal expansion) のみでは説明できず、分岐 (branching) 進化モデルが多くのがん種で実証されつつある。AML再発例 (Ding et al., Nature 2012) では再発クローンが診断時の主要クローンの直系子孫である線形進化が示されたのとは対照的に、腎癌 (Gerlinger et al. 2012) では複数の転移巣・原発巣領域が独立した遺伝的クレードを形成する広範な分岐進化が観察された。細胞の基底状態 (ground state、組織特異的エピゲノム・トランスクリプトーム) が変異の表現型発現を規定することも論じられ、BCR-ABL融合遺伝子が血液系悪性腫瘍のみを引き起こし固形腫瘍を生じさせない理由として、非血液系細胞でのBCRプロモーター転写活性の低さや、完全な癌化に必要な相互作用パートナーの欠如が挙げられた。KIT変異がGIST (gastrointestinal stromal tumor, 消化管間質腫瘍) 特異的に発がん性を持つメカニズムとして、消化管のICC (interstitial cells of Cajal) に高発現するETV1 (ETS variant transcription factor 1) がKIT活性化の癌化に必須のコファクターとして機能することが示された。エピスタシス (epistasis、遺伝子間相互作用) の重要性を示す証拠として、TP53とBRCA1/2の乳癌での共起・KRASとSTK11 (LKB1) の肺癌での共起、KRAS活性化変異によるoncogene-induced senescenceとCDKN2A不活化による回避機構が論じられた。合成致死性 (synthetic lethality) の例として、BRCA1欠失細胞のPARP阻害剤感受性が詳述された。BRCA1は相同組換え修復 (homologous recombination) に必須であるため、BRCA1欠失細胞はPARPを介した代替修復経路に致死的に依存し、PARP阻害剤により崩壊した複製フォーク由来のDNA二本鎖切断を修復できず細胞死に至る。PARP阻害剤治療下ではBRCA1/2の「reversion mutation (回復変異) 」による相同組換え機能の部分的回復がクローン逃避をもたらすことも示された。
変異率の上昇とゲノム不安定性のメカニズム: 大多数の腫瘍が数百〜数十万の体細胞変異を蓄積することが全ゲノムシークエンシングで明らかとなり、正常細胞と比較した変異率の有意な上昇が示唆された (Fig. 4)。変異率を上昇させる「mutator mutation」は3カテゴリーに分類される: (1) DNA損傷の検出・修復能の低下 (ミスマッチ修復 (MMR) 欠損: MSH2・MLH1変異; ヌクレオチド除去修復欠損: xeroderma pigmentosum関連遺伝子; 相同組換え修復欠損: BRCA1/2変異); (2) ゲノムサーベイランス機構の障害 (TP53変異、細胞周期チェックポイント: BUB1・BUBR1 (BUB1-related protein kinase 1)・MAD2変異); (3) 外因性・内因性発がん物質への脆弱性増大 (タバコ煙・紫外線・化学療法)。マイクロサテライト不安定性 (MSI) はMSH2・MLH1などのMMR遺伝子変異による高頻度置換変異・小インデルを特徴とし、大腸癌の<20%未満で見られ、胃癌・子宮内膜癌・脂漏腺癌・リンパ腫でも報告されている。一方、ほぼすべての固形腫瘍で見られる染色体不安定性 (CIN, chromosomal instability) は、有糸分裂時の紡錘体チェックポイント (BUB1・BUBR1・MAD2変異)・コヒーシン遺伝子STAG2変異・相同組換え修復欠損に由来する数的・構造的染色体異常を特徴とする。エピジェネティック不安定性として、CpGアイランドプロモーターの異常メチル化による複数の腫瘍抑制遺伝子転写抑制—CIMP (CpG island methylator phenotype) と呼ばれる表現型—が大腸癌・神経膠腫などで報告され、遺伝的変異と相補的にがん進化を駆動することが示された。AML (急性骨髄性白血病) ではEZH2 (Polycomb group遺伝子) の活性化変異が濾胞性リンパ腫で観察される一方、同じEZH2が慢性骨髄系悪性腫瘍では不活化変異として機能し、同一遺伝子が文脈依存的に対照的な役割を果たすことが示された。リンパ腫での体細胞超変異 (somatic hypermutation) は通常免疫グロブリン遺伝子に限局するが、その制御が失われるとBCL6の5’UTR・第1コーディングエクソンに集中した超変異が繰り返し生じ、局所的なサブクローン多様性を大幅に促進することが示された。
考察/結論
本レビューは次世代シークエンシング時代に明らかになったがんゲノム進化の多面性を統合した重要な文献である。先行研究では線形的な多段階クローナル選択が標準的パラダイムとされてきたが、本レビューはこれと異なり、がんゲノム進化が線形と分岐の両モードを状況依存的に採用することを、多部位サンプリング・シングルセルシークエンシング・数理アルゴリズムの複数の証拠から示した。AML再発では線形進化が主体であるのに対照的に、腎癌・膵臓癌では広範な分岐進化が観察されるという癌種による差異は、腫瘍微環境の多様性・細胞基底状態・先行変異の蓄積パターンが進化の軌跡を規定することを示唆する。
新規性の面では、chromothripsis・kataegisという新規な変異プロセスの概念的整理と、変異シグネチャーによるDNA損傷・修復プロセスの同定という新規の分析枠組みが本レビューの中心的貢献である。特にchromothriposisは、「段階的変異蓄積」という従来のパラダイムを根本的に覆す「壊滅的ゲノム危機」として本論文で初めて体系的に位置づけられ、単一の壊滅的イベントにより複数の腫瘍抑制遺伝子が同時破壊されるという多段階モデルでは説明不可能な急激な悪性化経路の実在を示した。変異シグネチャー解析は加齢・DNA修復欠損・発がん物質曝露・化学療法といった変異原性プロセスのゲノム刻印を直接読み取る新規の手法として、がん病因論に新次元をもたらした。
臨床応用の観点では、腫瘍内不均一性 (ITH) の発見は精密医療の戦略に根本的な変更を求める。系統樹の「幹 (trunk) 」に存在するクローナルドライバー変異を標的とすることが治療耐性の回避に最も合理的であり、サブクローナルな変異のみを標的とする場合、治療耐性クローンが容易に選択される。また単一部位・単一時点の生検は腫瘍進化の「スナップショット」に過ぎず、空間的・時間的な不均一性を見逃す危険性があることから、液体生検・複数部位サンプリング・縦断的モニタリングの臨床的意義が改めて強調された。合成致死性 (BRCA変異へのPARP阻害剤) の臨床応用は、エピスタシス的相互作用を利用した標的治療の成功例として示されたが、治療下でのreversion mutationによるクローン逃避という複雑な動態も示唆されており、単剤標的治療の限界を浮き彫りにした。
残された課題として、本レビューは以下の点を明示的に論じた。第一に、分岐進化を示すがんに対する複合的な治療戦略—クローナル変異とサブクローナル変異の両方を標的とする複数薬剤の組み合わせ—の設計は今後の検討が必要な困難な課題である。第二に、現行の腫瘍サンプリング戦略 (単一生検) がサブクローナル多様性を十分に捉えられない点に対する臨床的解決策—より感度の高いゲノム技術・逐次的サンプリングを組み込んだ長期臨床試験の設計—の確立が将来の研究に求められる。第三に、変異シグネチャーと臨床転帰・治療感受性を体系的に連結するためには、数万件規模の精密な臨床情報を付したがんゲノムデータベースの構築が不可欠であるとしており、その後のTCGA・ICGCの大規模拡張およびFoundation Medicine等の臨床ゲノム診断普及の方向性を先取りした議論であった。
方法
本論文はNature Reviews Genetics誌に掲載されたナラティブレビュー (narrative review) である。PubMedを用いた文献検索を基盤とし、Cancer Genome Atlas (TCGA) プロジェクトの成果、Wellcome Trust Sanger InstituteのCancer Genome Projectによる大規模がんゲノム解析、および2010〜2012年に発表された主要な全ゲノム・全エクソームシークエンシング研究を対象に文献を選定した。具体的には、腫瘍マルチサンプリング (地理的サンプリング: 同一時点での腫瘍内複数領域採取;縦断的サンプリング: 診断時・再発時・転移時の時系列採取) 研究、シングルセルシークエンシング (single-cell sequencing) を用いた腫瘍内不均一性の解析研究、および数理アルゴリズム—Bayesian Dirichlet process・kernel density analysisによる変異クラスタリング、系統樹解析 (parsimony法・maximum likelihood法・Markov chain Monte Carlo法・Bayesian inference)、digital karyotyping、haplotype-phasing—を用いたクローナル進化推定研究を重点的に取り上げた。主要事例として、21例の乳癌全ゲノムシークエンシング (Nik-Zainal et al., Cell 2012)、腎癌の多部位サンプリング (Gerlinger et al., NEJM 2012)、chromothriposisの同定 (Stephens et al., Cell 2011)、AML再発例の全ゲノムシークエンシング (Ding et al., Nature 2012)、膵臓癌の多部位解析 (Campbell et al., Nature 2010)、シングルセルシークエンシングの概念実証研究 (Navin et al., Nature 2011; Hou et al., Cell 2012; Xu et al., Cell 2012) が参照された。これらの研究を横断的に統合することで、がんゲノム進化の統一的な概念的枠組みを提示した。生存解析を含む一次研究の参照にあたっては、Kaplan-Meier法およびlog-rank検定による解析結果を重視した。体細胞変異カタログの解釈においてはCOSMIC (Catalogue of Somatic Mutations in Cancer) データベースおよびICGC (International Cancer Genome Consortium) データポータルを主要参照源とした。