• 著者: Turtle CJ, Hanafi LA, Berger C, Gooley TA, Cherian S, Hudecek M, Sommermeyer D, Melville K, Pender B, Budiarto TM, Robinson E, Steevens NN, Chaney C, Soma L, Chen X, Yeung C, Wood B, Li D, Cao J, Heimfeld S, Jensen MC, Riddell SR, Maloney DG
  • Corresponding author: Cameron J. Turtle (cturtle@fhcrc.org)
  • 雑誌: Journal of Clinical Investigation
  • 発行年: 2016
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 27111235

背景

CD19標的キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法は、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)患者に高い寛解率をもたらす画期的な治療法として注目されている。しかし、これまでの臨床試験では、CAR-T細胞製品が表現型的に不均一なT細胞集団から製造されており、その有効性や毒性を規定する因子を明確に特定することが困難であった。例えば、Lee et al. Lancet 2015Maude et al. NEnglJMed 2014Davila et al. SciTranslMed 2014などの先行研究では、患者末梢血中のCD4+およびCD8+ T細胞サブセットの構成比が大きく異なり(CD4+:CD8+比: 0.27〜8.89)、特にT EM/EMRA (effector memory/effector memory RA) 分画の割合が7.8%〜87.4%と高度に多様であることが報告されている。このような製品の不均一性は、CAR-T細胞の体内動態、毒性発現メカニズム、および再発の規定因子に関する詳細な解析を妨げる要因となっていた。

先行する前臨床研究では、精製したCD8+ T CM (central memory) 細胞とCD4+ T細胞から製造したCAR-T細胞が優れた抗腫瘍活性を示し、両サブセットの相乗効果が確認されている(Sommermeyer et al. Leukemia 2016)。この知見に基づき、定義されたCD4+:CD8+組成でCAR-T細胞製品を標準化し投与することで、再現性の高い有効性と毒性相関の解析が可能になると想定されたが、その臨床的検証は未解明な点が多かった。特に、CAR-T細胞の体内動態、毒性発現メカニズム、および再発の規定因子については、さらなる詳細な検討が不足していた。また、CAR-T細胞の増殖と持続性、および毒性発現を最適化するためのリンパ球除去レジメンや投与戦略についても、明確な指針が確立されていなかった。これらの課題を解決し、CAR-T細胞療法の治療成績を向上させるためには、均一な製品を用いた大規模な臨床試験を通じて、これらの未解明な点を明らかにする必要があった。

目的

本研究の目的は、定義されたCD4+:CD8+ CAR-T細胞組成の製品を成人再発/治療抵抗性B-ALL患者に投与し、その製造可能性、体内増殖・持続性、有効性、および毒性規定因子を解明することである。具体的には、以下の点を明らかにすることを目指した。第一に、定義された組成のCAR-T細胞製品が、多様な前治療歴を持つB-ALL患者において安定して製造可能であるかを確認する。第二に、CAR-T細胞の体内動態、特に増殖ピークと持続性が、細胞用量や腫瘍量とどのように相関するかを評価する。第三に、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性などの重篤な有害事象の発現メカニズムを解明し、そのリスク因子を特定する。第四に、腫瘍量に基づくリスク適応型投与戦略と、リンパ球除去レジメンへのフルダラビン(Flu)併用の有用性を検討し、毒性軽減と治療効果の長期化に資する最適化戦略を確立する。最終的に、CARトランスジーンに対する免疫応答がCAR-T細胞の持続性や再発リスクに与える影響を評価し、CAR-T細胞療法のさらなる改善に向けた知見を得ることを目的とする。

結果

定義組成CAR-T製品は全患者で製造可能であり、高い寛解率を達成した: 32例全員でCAR-T細胞製品の製造が可能であった。CD8+ T CM細胞の選択は19例中18例で成功し、残りの14例では骨髄抑制によるリンパ球減少のためbulk CD8+ T細胞を選択した。CD4+:CD8+比の1:1は30例中27例で達成された。30例がリンパ球除去とCAR-T細胞投与を受け、21日以上生存し評価可能であった29例のうち、全例 (100%) が形態学的に骨髄で白血病消失を達成した。さらに、29例中27例 (93%) がフローサイトメトリーで骨髄寛解 (MRD陰性) を達成した (Table 1)。フローサイトメトリー、細胞遺伝学、FISH、QPCR (quantitative PCR) (同定可能な分子マーカーを持つ患者全員で) によるMRD陰性CRは25/29例 (86%) であった。IGHシーケンシングで評価できた17例のうち10例 (59%) は、100万個の有核細胞中に1個の悪性細胞も検出されなかった。PET-CT上での髄外病変の消失は7例中6例で確認された (Supplemental Figure 3)。同種HCT後再発の11例においてもCAR-T細胞を製造・投与でき、10/11例がCRを達成した。11例中急性GVHDの発症は1例もなかった。

毒性は腫瘍量と用量に依存し、リスク適応型投与で軽減された: DL3 (2×10^7 cells/kg) を投与された最初の2例は重篤な毒性を示し、1例が重症CRS (sCRS) と多臓器不全で投与3日後に死亡、もう1例が不可逆的神経毒性で122日後に死亡した。このためDL3は使用中止とされた。DL1 (2×10^5 cells/kg)・DL2 (2×10^6 cells/kg) 投与の28例中25例にCRSが発症 (投与後6時間〜9日) し、うち7例がsCRSとしてICU管理を要した。sCRS患者は高腫瘍量 (骨髄芽球>20%)、高CAR-T細胞ピーク値 (CD4+ EGFRt+ ≥9.8 cells/μl)、高血清IFNγ・IL-6レベルと相関した (Figure 2, A-D)。投与後1日目の血清IL-6濃度 (>30 pg/ml) は、重症神経毒性 (NCI CTCAE grade≥3) の独立予測因子であることがロジスティック回帰で示された (odds ratio 11.0 [95% CI: 1.4-84.3]、p=0.02) (Figure 3F)。Grade≥3の神経毒性は30例中15例に発症し、脳症・局所神経障害・けいれん (3例) として発現した。神経毒性はCRS解消後に発現する遅延パターンを示し、トシリズマブやステロイドへの反応性はCRSと比較して限定的であった。重症高フェリチン血症 (>20,000 ng/ml) はsCRSと発熱の鑑別マーカーとして有用性が示唆された (Figure 2E, F)。リスク適応型投与 (骨髄芽球>20%にはDL1を投与) 導入後は、高腫瘍量B-ALL患者でのICU入院率が6/6 (100%) から1/10 (10%) に劇的に低下し、神経毒性の重症度も中央値grade 4からgrade 3へと改善した。同種HCT既往の11例では毒性発現率・重症度に差はなく、GVHDの新規発症も1例のみであった。

CAR導入遺伝子への免疫応答が持続性を制限し、フルダラビン添加が改善した: 2回目のCAR-T投与を行った5例 (持続白血病または再発) では、いずれも再投与後のCAR-T細胞増殖・持続・抗腫瘍活性が認められなかった (Figure 6)。^51Cr放出アッセイにより、これら5例全員で自家CAR-T細胞を標的とするCD8+ T細胞免疫応答が投与前後で確認された (1例ではエピトープマッピングでマウス由来FMC63 scFv内に免疫原性エピトープを同定、Supplemental Figure 4)。Cy単独またはCy+エトポシドでリンパ球除去した患者では8/12例でday 90までに正常B細胞が回復し、7例が再発した (うちCD19+再発が6例で、5例ではCAR-T細胞の持続性消失と同時、全員でCAR導入遺伝子特異的免疫応答が確認された)。Cy/Flu投与患者17例ではCy単独患者と比較してCD4+・CD8+ CAR-T細胞のピーク値と28日目の持続性が有意に高く (DL2同士の比較:p<0.05)、DFS (disease-free survival) はCy/Flu群で有意に優れていた (log-rank p=0.001、中央値追跡期間300日でCy/Flu群のCD19+再発は1/17例[6%]) (Figure 7, B-D)。

CAR-T細胞の体内動態と用量・腫瘍量との相関: CAR-T細胞は全患者で投与後1回以上の時点で血中から検出された (Figure 4A)。27例中22例の骨髄検体、および8例中6例のCSF検体からもCAR-T細胞が検出された (Figure 4B)。定義されたCD4+:CD8+比のCAR-T細胞製品を投与することで、細胞用量とCAR-T細胞のピーク増殖との間に相関が認められた。リスク適応型投与導入前のデータでは、DL2投与患者はDL1投与患者と比較して、血中CD4+およびCD8+ EGFRt+ CAR-T細胞のピーク値が早期かつ高かった (Figure 4C)。また、腫瘍量もCAR-T細胞の増殖に影響を与え、骨髄芽球が5%以上の患者では5%未満の患者と比較して、CD4+およびCD8+ CAR-T細胞の増殖が約100倍高く、28日目の持続性も良好であった (Figure 5A)。CAR-T細胞の増殖は多クローン性であり、輸注製品中に同定された複数のTCRB (T cell receptor β) クローンタイプが患者体内でも検出された (Figure 5B)。

考察/結論

本試験は成人B-ALL患者への定義組成CD19 CAR-T細胞の最大規模の報告であり、CAR-T細胞療法の最適化に向けた以下の重要な知見を提供した。

先行研究との違い: これまでのCAR-T細胞臨床試験では、T細胞製品の表現型が不均一であったため、細胞用量と有効性・毒性の明確な相関関係を特定することが困難であった (例: Lee et al. Lancet 2015Maude et al. NEnglJMed 2014Davila et al. SciTranslMed 2014)。本研究は、定義されたCD4+:CD8+比のCAR-T細胞製品を標準化して投与することで、細胞用量と増殖ピークの用量相関関係を初めて明確化し、93%という優れた寛解率を達成した点で、これまでの報告と対照的である。

新規性: 本研究で初めて、CAR導入遺伝子に対するCD8+ T細胞免疫応答がCAR-T細胞持続性喪失の新規メカニズムとして同定された。これは、マウス由来FMC63 scFvの免疫原性によるものと考えられ、CAR-T細胞の長期的な有効性を制限する新たな耐性機序としてこれまで報告されていない。また、腫瘍量と毒性の相関を定量的に示し、骨髄芽球>20%の患者では低用量 (DL1) 投与によりICU入院率が6/6 (100%) から1/10 (10%) へと劇的に低下することを実証した点も新規である。さらに、投与後1日目の血清IL-6濃度 (>30 pg/ml) が重症神経毒性 (NCI CTCAE grade≥3) の独立予測因子であることも新規の発見であった (odds ratio 11.0 [95% CI: 1.4-84.3], p=0.02)。

臨床応用: 本知見は、CAR-T細胞療法の臨床応用における投与戦略と毒性管理に直接的な影響を与える。腫瘍量に基づくリスク適応型投与戦略は、重篤な毒性を軽減しつつ高い有効性を維持するための実践的なアプローチを提供する。また、フルダラビン含有リンパ球除去レジメンがCAR-T細胞の持続性と無病生存期間 (DFS) を有意に改善することは、治療効果の長期化に貢献する。CAR-T細胞消失→正常B細胞回復→CD19陽性再発という連鎖パターンは、「CAR-T免疫監視の終了」がCD19陽性再発の直前シグナルとなることを示唆し、B細胞回復モニタリングによる早期再介入 (追加輸注または同種HCT) の戦略的根拠を提供する。

残された課題: 今後の検討課題として、ヒト化CD19-scFv採用による免疫原性低減、長期追跡によるDFSおよび全生存期間 (OS) の評価、および他のリンパ腫・慢性リンパ性白血病 (CLL) 等への適応拡大が挙げられる。また、低腫瘍量患者における最適なCAR-T細胞用量や、CAR-T細胞の増殖を駆動するための十分な抗原刺激の必要性についてもさらなる研究が必要である。本研究のLimitationとして、単一施設での実施であること、および一部のコホートにおける追跡期間が比較的短いことが挙げられる。

方法

本研究は、Fred Hutchinson Cancer Research Center (FHCRC) で実施されたフェーズI/II非盲検臨床試験 (ClinicalTrials.gov: NCT01865617) である。対象患者は、再発または治療抵抗性のCD19陽性B-ALL成人患者32例で、中央値年齢は40歳 (範囲20〜73歳) であった。患者は中央値3レジメン (範囲1〜11) の前治療化学療法を受けており、11例は同種造血細胞移植後に再発していた。

CAR (chimeric antigen receptor)-T細胞の製造においては、まずCD4+ T細胞をCliniMACS陽性選択で精製した。CD8+ T CM (central memory) 細胞は、2段階のCliniMACS選択 (CD4/CD14/CD45RA陰性細胞の除去後にCD62L陽性細胞を選択) により独立して精製された。ただし、骨髄抑制によるリンパ球減少が著しい患者では、bulk CD8+ T細胞が選択された。CAR構造は、FMC63由来のCD19-scFv (single-chain variable fragment)、IgG4ヒンジスペーサー、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB、およびCD3ζシグナルドメインから構成され、レンチウイルスを用いて導入された。CARトランスジーンの発現は、T2Aリボソームスキップ配列を介して共発現するtruncated human epidermal growth factor receptor (EGFRt) をセツキシマブ染色で追跡することで評価した。最終製品では、CD4+:CD8+ CAR-T細胞比を1:1に設定して調製された。

CAR-T細胞の投与は、3つの用量レベル (DL1: 2×10^5 EGFRt+ cells/kg、DL2: 2×10^6 EGFRt+ cells/kg、DL3: 2×10^7 EGFRt+ cells/kg) で用量漸増方式で行われた。リンパ球除去レジメンは、シクロホスファミド単独 (Cy; 2〜4 g/m²、n=11)、Cy+エトポシド (n=2)、またはCy+フルダラビン (Cy/Flu; 60 mg/kg Cy + 25 mg/m²/d Flu、n=17) のいずれかが用いられた。試験途中からは、腫瘍量に基づくリスク適応型投与戦略が導入され、骨髄芽球が20%を超える患者にはDL1、20%以下の患者にはDL2が投与された。

治療効果の評価は、フローサイトメトリーによる骨髄寛解評価 (限界検出感度1:10,000) およびIGH (immunoglobulin heavy locus) ディープシーケンシング (Adaptive Biotechnologies) による微小残存病変 (MRD) 評価で行われた。サイトカイン (IFNγ、IL-6、TNFα) はLuminexアッセイで定量された。毒性評価はNCI CTCAE (v4.03) に基づいて行われた。CARトランスジーンに対する免疫応答は、^51Cr放出アッセイを用いて評価された。統計解析にはWilcoxon rank-sum test、線形回帰、ロジスティック回帰、およびlog-rank testが用いられ、P<0.05を有意とした。本研究はFHCRC Institutional Review Boardの承認を得て実施され、全患者から書面によるインフォームドコンセントを取得した。