• 著者: Maude SL, Frey N, Shaw PA, Aplenc R, Barrett DM, Bunin NJ, Chew A, Gonzalez VE, Zheng Z, Lacey SF, Mahnke YD, Melenhorst JJ, Rheingold SR, Shen A, Teachey DT, Levine BL, June CH, Porter DL, Grupp SA
  • Corresponding author: Stephan A. Grupp (grupp@email.chop.edu)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2014
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 25317870

背景

再発急性リンパ性白血病 (acute lymphoblastic leukemia: ALL) は成人では予後極めて不良であり、小児においても依然としてがん関連死亡の主要原因の一つである。2回以上の骨髄再発を来した小児に対するサルベージ化学療法による寛解率は40%程度に留まり、長期生存は非常に不良である (Raetz 2012)。HCT (hematopoietic cell transplantation; 同種造血幹細胞移植) 後再発患者の転帰は特に不良であり (Poon 2013)、また blinatumomab (CD3/CD19二重特異性抗体) 等の新規CD19標的療法に不応となった患者に対して有効な選択肢は乏しかった。

CD19はB-ALL (B-cell acute lymphoblastic leukemia) 細胞のほぼ全例に発現する表面抗原であり、CD3ζ+4-1BB (CD137) コスティムレーションドメインを組み込んだCTL019 (CD19-BBζ CAR-T細胞; 4-1BB-based CD19 chimeric antigen receptor T cells) はレンチウイルスベクターを介してT細胞を遺伝子改変し、CD19陽性細胞を標的とする治療戦略である。CLL (chronic lymphocytic leukemia) を対象とした先行試験では4-1BBコスティムレーション型CAR-T細胞が長期記憶T細胞形成と持続寛解をもたらすことが示され (Kalos 2011)、続く少数例試験でも深い完全寛解が得られた (Porter et al. NEnglJMed 2011)。成人refractory B-ALLにおいても高い分子寛解率が報告され (Brentjens 2013)、続いて行われた小規模な小児B-ALL試験でも2例に著明な奏効が確認されていた (Grupp et al. NEnglJMed 2013)。しかしながら、大規模コホートにおける寛解率・CTL019細胞の長期持続性・寛解の耐久性に関するデータは手薄であり、30例規模での系統的評価が不足していた。加えて、サイトカイン放出症候群 (CRS) の管理戦略も確立されていないという gap in knowledge があり、CAR-T療法を安全かつ広く適用するためにはこれらの課題解決が急務であった。

目的

再発/治療抵抗性CD19陽性ALL患者30例 (小児25例・成人5例) を対象に、CTL019の有効性 (完全寛解率・無イベント生存率・全生存率)、安全性 (CRSの特性・重症度予測因子・tocilizumabによる管理戦略)、ならびにCTL019細胞の体内動態 (増殖・持続性・B細胞無形成) を最長2年の追跡で評価すること。

結果

完全寛解率90%と持続寛解の達成

30例中27例 (90%) が投与1ヶ月時点の形態学的完全寛解を達成した (Fig. 1)。このうち22例はフローサイトメトリーによるMRD陰性、3例は軽微なMRD陽性 (それぞれ0.1%・0.09%・0.22%)、2例は未施行であった。注目すべき点として、blinatumomab不応の3例中2例 (67%) でCRが得られ、CD19標的療法への前治療不応が必ずしも予後不良を意味しないことが示された。CNS-2 (central nervous system disease grade 2; CSFに芽球を認めるCNS浸潤状態) を有する2例でも最終追跡時 (6ヶ月) にCNS浸潤は消失し、評価可能19例中17例でCSF (cerebrospinal fluid; 脳脊髄液) へのCTL019細胞浸透が確認された。

追跡中央値7ヶ月 (範囲1-24ヶ月) において、CTL019群の完全寛解率90% vs 標準救済化学療法 <25%、6ヶ月EFSは67% (95% CI 51-88%)、6ヶ月OS 78% (95% CI 65-95%) であった (Fig. 1)。当時の救済単剤 (クロファラビン・ネララビン・リポソームビンクリスチン) は寛解持続期間中央値4-9週であり、CTL019の成績が著しく優れていた。CR達成27例中19例が寛解維持し、うち15例は追加治療なしに持続寛解中、4例は他治療目的で試験を離脱した (うち3例がHCT施行後7-12ヶ月も寛解持続)。なお、試験関連死は認められず、7例が疾患進行/再発後死亡した (うち1例はMDS (myelodysplastic syndrome) 進展)。

CTL019の強力な体内増殖と長期持続性

奏効した27例では末梢血CD3陽性細胞中のCTL019陽性細胞比率が著明に上昇し、フローサイトメトリーによるピーク中央値は39.8% (範囲4.4-69.3%) に達した (Fig. 2A)。非奏効3例のピーク値はそれぞれ0.2%・0.6%・8.2%に留まった。qPCRでは奏効全例においてピーク値>5,000 copies/μg DNA、26例が>15,000 copies/μg DNAという高い増殖が確認された (Fig. 2C)。CTL019細胞はフローサイトメトリーで最大11ヶ月、qPCRでは持続寛解例において最長2年 (2年時点でも1例に23 copies/μg DNA検出) まで追跡された。6ヶ月時点でのCTL019持続確率は68% (95% CI 50-92) であった (Fig. 2B)。患者17は3・6ヶ月時点での早期CTL019消失+正常B細胞回復のため追加投与を行い、その後CTL019持続が確立された。

B細胞無形成 (CD19陽性細胞の消失; 薬力学的マーカー) は奏効全例に発現し、CTL019がフローサイトメトリーで不検出となった後も最長1年間持続した例があり、フロー感度以下での機能的CTL019持続を示唆した (Fig. 3)。6ヶ月での再発のないB細胞無形成持続確率は73% (95% CI 57-94) であった。再発7例のうち3例はCTL019消失後のCD19陽性再発 (正常B細胞回復がシグナル)、3例はCD19陰性escape変異による再発 (CTL019は残存)、1例はMRD陽性のまま早期CD19陽性再発であった。

重症CRSの腫瘍量依存性とtocilizumabによる迅速制御

全30例にCRSが発現した (100%)。22例 (73%) は軽-中等症 (発熱・筋痛が主体で自然軽快し広域抗菌薬・鎮痛薬で管理)、8例 (27%) が重症CRS (sCRS; severe CRS requiring ICU management for hypotension or respiratory failure) であった (Fig. 4)。sCRSの発現時期は投与後中央値1日、非sCRSは中央値4日と有意に早期であった (P=0.005)。sCRS群での血清IL-6ピーク値は非sCRS群と比較して有意に高く (P<0.001)、同様にCRP (P=0.02)、フェリチン (P=0.005)、IFNγ (P<0.001)、可溶性IL-2受容体 (P<0.001) もsCRS群で高値であった (Fig. 4A)。投与前骨髄芽球比率 (腫瘍量) とsCRS重症度には有意な正相関が認められ (P=0.002)、腫瘍量が高いほどsCRSリスクが上昇した (Fig. 4B)。CTL019陽性CD8+ T細胞数 (P=0.012) およびCTL019陽性CD3+ T細胞数 (P=0.026) もsCRS群で有意に高値であった。

sCRS患者9例全員にtocilizumabを投与した結果、1-3日以内に解熱と血圧安定化が達成され、全9例で症状・検査値の完全正常化が得られた (Davila et al. SciTranslMed 2014)。6例に短期ステロイド追加、4例に2回目のtocilizumab投与を要したが、tocilizumabを受けた9例全員がCTL019の強力な増殖とCRを達成し、IL-6受容体遮断が治療有効性を損なわないことが示された。神経毒性 (encephalopathy) は13例に認められたが、うち6例は発熱解熱後の遅発性発現であり、いずれも2-3日以内に自然軽快し後遺症は認めなかった。B細胞無形成を来した全患者に免疫グロブリン補充を行い (IgG>500 mg/dL維持)、深刻な感染合併症は認められなかった。

考察/結論

本試験は再発/治療抵抗性ALLに対するCAR-T細胞療法として本研究で初めて30例規模での系統的評価を行い、90% CR率・6ヶ月EFS 67%・2年持続寛解・tocilizumabによる重症CRS管理の有効性を示した。これまでの研究との相違として、同様にCD19を標的とするが28z型コスティムレーションを用いた19-28z CAR (Davila 2014、持続期間中央値30日、長期寛解は全例HCT移行例に限定) と対照的に、4-1BB型CTL019では2年間の持続性が示され、HCT非実施例においても長期寛解が維持された。既報の化学療法単剤 (CR率<25%、寛解期間4-9週) と比較して顕著に優れた成績であり、CD19標的療法不応のblinatumomab既治療例でもCRが得られたことは臨床的に重要な知見である。

本研究において新規に示された重要な点として、4-1BBコスティムレーションが臨床レベルでのCAR-T細胞長期持続性と長期寛解に不可欠であること、B細胞無形成が薬力学的マーカーとして機能しCTL019のフロー不検出後も機能的免疫監視が持続することが、これまで報告されていない規模で実証された。また、投与前腫瘍量がsCRSの重症化を予測する独立因子であることが本コホートで初めて示され、個別化リスク管理の基盤となる。

臨床応用の観点では、腫瘍量に基づくsCRS予測とtocilizumabの標的療法的管理プロトコルを確立したことが実際の臨床現場におけるCAR-T療法の安全性改善に直接寄与する。免疫グロブリン補充によるB細胞無形成の安全な管理も示した。本研究のエビデンスはその後2017年のtisagenlecleucel (Kymriah) FDA承認に直結する中心的データとなり、B細胞性悪性腫瘍に対するCAR-T細胞療法の臨床応用の礎を築いた。

残された課題として、CD19陰性escape変異 (本試験でも3例) の詳細機序解明と対策 (タンデムCAR、二重標的戦略など)、tocilizumab先制投与の安全性・有効性の前向き検証、神経毒性 (encephalopathy) の予測因子同定と発症機序の解明、最適細胞投与量・前処置レジメンの確立、HCT不要な患者層の選別基準、が今後の検討課題として残されている。また、正常B細胞回復を再発の予兆として活用するモニタリング戦略の確立や、長期追跡 (2年超) におけるOS・感染合併症・QOLの詳細な評価も今後の研究に委ねられている。

方法

Children’s Hospital of Philadelphia (小児試験: 5-22歳、n=25) とHospital of the University of Pennsylvania (成人試験: 26-60歳、n=5) での二施設並行Phase I/IIA試験 (ClinicalTrials.gov: NCT01626495、NCT01029366)。患者背景は小児25例のうち22例 (88%) が2回以上の再発、全体の18例 (60%) が同種HCT後再発例、3例がblinatumomab不応例、3例が初発治療抵抗性であった (Table 1)。

CTL019製造は白血球アフェレーシス産物をCD3/CD28抗体コートパラマグネティックビーズで刺激した後、CD19-BBζ CAR導入レンチウイルスベクターで遺伝子改変する方法で行った。製造目標 (総細胞数1.5×10^7-5×10^9) は全患者で達成され、形質導入効率は5.5-45.3%、投与量は0.76×10^6-20.6×10^6 CTL019細胞/kgであった。投与1週前にリンパ球除去化学療法を施行 (持続性血球減少3例は省略)、CTL019は0.1×10^8-1×10^8細胞/kgを1-3日間にわたり分割投与した。

有効性評価はフローサイトメトリー (minimal residual disease [MRD] 感度1:10,000) とqPCR (quantitative PCR; 定量的ポリメラーゼ連鎖反応、下限定量値 5 copies/μg DNA) による体内動態追跡で行った。毒性評価はCRS症状・重症度の事前定義グレーディング (重症CRS: 昇圧薬2剤以上を要する低血圧または機械換気を要する呼吸不全) と血清IL-6・CRP (C-reactive protein)・フェリチン・IFNγ・可溶性IL-2受容体の測定により実施した。統計解析はlog-rank検定 (EFS・OS・CTL019持続性のKaplan-Meier曲線比較) およびMann-Whitney U検定 (CRS群間の連続変数比較) を使用した。重症CRS管理プロトコルとしてtocilizumab (抗IL-6受容体抗体) をGrade 4毒性の第一選択薬として組み込んだ。