- 著者: Chong Deng, San-Gang Wu, Ye Tian
- Corresponding author: San-Gang Wu (Cancer Hospital, First Affiliated Hospital of Xiamen University, China); Ye Tian (Second Affiliated Hospital of Soochow University, China)
- 雑誌: Medical Science Monitor
- 発行年: 2019
- Epub日: 2019-05-16
- Article種別: Original Article
- PMID: 31095532
背景
肺大細胞神経内分泌癌 (LCNEC) は全肺癌の約3%を占める稀な悪性度の高い腫瘍であり、1991年に独立疾患概念として提唱された。WHO 2015年分類では、小細胞肺癌 (SCLC)、非定型カルチノイド、定型カルチノイドと並んで神経内分泌腫瘍群に分類されている Travis et al. JThoracOncol 2015。LCNECは光学顕微鏡下で大型細胞、神経内分泌形態、高核分裂像、低核/細胞質比、広範な壊死、著明な核小体を特徴とする。予後は不良で5年生存率は15〜57%と報告されており、研究間の差が大きいことが指摘されている Naidoo et al. ClinLungCancer 2016。局所再発と遠隔転移が主要な治療失敗様式である。LCNECの発生率に関する報告は少なく、大規模なpopulation-based研究によるLCNECの臨床病理学的特徴、予後因子、治療成績の系統的評価が不足しており、特に進行期における最適な治療戦略は依然として未解明であった。
目的
本研究の目的は、NCI SEER (Surveillance, Epidemiology, and End-Results) データベースを用いたpopulation-based retrospective cohort解析により、肺LCNECの発生率推移、臨床病理学的特徴、予後因子、および治療別転帰を明らかにすることである。特に、各病期における手術の生存への影響を詳細に評価することを目的とした。
結果
患者背景と発生率の上昇傾向:2097例のSEERコホート:本研究では2000年から2013年までに診断された2097例の肺LCNEC患者が特定された。中央年齢は65歳 (範囲18-94歳) であった。男性が1155例 (55.1%)、白人が1747例 (83.3%)、既婚者が1130例 (53.9%) を占めた (Table 1)。病期の内訳はStage Iが442例 (21.1%)、IIが111例 (5.3%)、IIIが340例 (16.2%)、IVが800例 (38.1%) であった。手術は832例 (60.3%) に施行され、Stage Iの88.7%、IIの88.3%、IIIの32.6%、IVの8.4%の患者が含まれた。化学療法は957例 (45.6%)、放射線治療は857例 (40.9%) の患者に施行された。全年齢調整罹患率は0.3/10万人年であり、男性で0.4/10万人年、女性で0.3/10万人年であった。研究期間中にLCNECの発生率は上昇傾向を示した (Figure 1)。2000年には2例のみの診断であったが、2001年には105例、2013年には232例と増加した。
生存成績:5年OS 16.7%と不良な予後:中央観察期間は24.4ヶ月 (範囲1-179ヶ月) であった。5年LCSSは20.7%、5年OSは16.7%と予後不良であることが示された。LCSS中央値は12ヶ月、OS中央値は11ヶ月であった。病期別の5年OSは、Stage Iで43.9%、IIで24.1%、IIIで12.7%、IVで2.6%と、病期が進行するにつれて急速に低下した (Figure 2B)。病期別のOS中央値は、Stage Iで44ヶ月、IIで19ヶ月、IIIで14ヶ月、IVで6ヶ月であり、進行例での予後不良が明確に示された。
多変量解析での独立予後因子:手術と化学療法が良好因子:LCSSの多変量解析において、手術施行 (HR 0.286, 95% CI 0.249-0.329, p<0.001) および化学療法施行 (HR 0.630, 95% CI 0.561-0.708, p<0.001) が有意な予後良好因子として同定された (Table 2)。OSの多変量解析でも、手術施行 (HR 0.328, 95% CI 0.289-0.374, p<0.001) および化学療法施行 (HR 0.615, 95% CI 0.552-0.687, p<0.001) が独立した予後良好因子であった (Table 3)。一方、高齢 (65歳以上、OS HR 1.162, 95% CI 1.057-1.278, p=0.002)、男性 (OS HR 0.879, 95% CI 0.800-0.966, p=0.008)、進行T病期 (T4 vs. T1: OS HR 1.544, 95% CI 1.317-1.810, p<0.001)、進行N病期 (N3 vs. N0: OS HR 1.915, 95% CI 1.598-2.294, p<0.001)、およびStage IV (Stage IV vs. I: OS HR 2.602, 95% CI 2.099-3.225, p<0.001) が独立した予後不良因子として示された。放射線治療は多変量解析で有意差を認めなかった (LCSS HR 0.946, p=0.326; OS HR 0.965, p=0.506)。
病期別手術効果のサブグループ解析:Stage IVでも手術が生存に寄与:各病期における手術効果のサブグループ解析では、Stage I (LCSS HR 0.245, 95% CI 0.144-0.418, p<0.001)、Stage III (LCSS HR 0.500, 95% CI 0.355-0.702, p<0.001)、Stage IV (LCSS HR 0.440, 95% CI 0.331-0.587, p<0.001;OS HR 0.456, 95% CI 0.346-0.600, p<0.001) のいずれにおいても、手術施行が有意な予後改善と関連することが示された (Table 4, Figure 3A-3D)。Stage IIのみ有意差は認められなかった (LCSS HR 0.670, p=0.336; OS HR 0.738, p=0.432)。この結果は、進行期 (Stage III・IV) においても手術が独立した予後良好因子として機能する可能性を示唆するが、手術を受けられる全身状態の良好な患者が選択されている可能性という選択バイアスの影響を完全に除外することはできない。
考察/結論
本研究はSEERデータベースを用いたLCNECの大規模population-based解析として、発生率、臨床病理学的特徴、治療成績を包括的に明らかにした。最も重要な新規知見は、手術施行が病期を問わず (I〜IV期) 独立した予後良好因子であることであり、特にStage IVの遠隔転移例においても手術が生存延長と関連することを示した点である。本研究で初めて、LCNECの発生率が2000年から2013年にかけて上昇傾向にあることを示した。これは、CTスクリーニングの普及や病理医のLCNEC診断に対する認識向上に起因すると考えられる Derks et al. EurRespirJ 2016の報告と一致する。
本研究の結果は、これまでのStage IV肺癌に対する治療戦略と異なり、LCNECにおいては積極的な局所治療の臨床応用を検討する意義があることを示唆する。特に、オリゴ転移性非小細胞肺癌 (NSCLC) における局所治療の有効性を示唆する先行研究 Gomez et al. LancetOncol 2016 と同様に、LCNECにおいてもStage IV患者の一部が手術から恩恵を受ける可能性が示された。化学療法施行も独立した予後改善因子として確認されたが、放射線治療は多変量解析で有意差がなく、LCNECにおける放射線治療の役割は依然として不明確である。先行研究では、SCLCに準じた化学療法レジメンがLCNECに有効である可能性が示唆されているが、標準的なレジメンは確立されておらず、今後の検討課題である LeTreut et al. AnnOncol 2013。
残された課題として、本研究はSEER登録の後方視的データに基づくため、選択バイアス (手術を受けられる全身状態の良好な患者が選ばれている可能性) の影響を完全に除外できない。また、SEERデータベースには化学療法や放射線治療の詳細な内容、治療順序、再発パターンなどの情報が不足しており、これらの要因が結果に与える影響を評価できなかった。LCNEC治療最適化に向けた大規模前向き試験の実施と、分子サブタイプに基づく個別化治療の検討が今後の重要な研究方向性である。特にStage IV LCNECにおける手術の役割については、オリゴ転移患者など特定のサブグループにおける有効性を検証する前向き研究が必要である。
方法
本研究は、米国NCI SEERプログラムからICD-O-3コード8013/3 (LCNEC) を有する2000年から2013年までに診断された患者を対象としたretrospective cohort studyである。SEERデータベースへのアクセスは認証コード13425-Nov2017を用いて取得した。患者情報は匿名化されているため、施設内倫理委員会の承認は不要であった。主要アウトカムは肺癌特異的生存率 (LCSS) と全生存率 (OS) と定義した。年齢、性別、人種/民族、婚姻状況、Tステージ、Nステージ、病期、分化度、手術、化学療法、放射線治療の情報を収集した。年齢調整罹患率は米国2000年標準人口を用いて10万人年あたりで評価した。患者背景および治療群間の比較にはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いた。生存曲線はKaplan-Meier法により推定し、log-rank検定で比較した。単変量および多変量解析はCox比例ハザードモデルを用いて実施し、多変量Cox回帰モデルは後方Wald法で実行した。統計解析はSPSS v22およびSEER*Stat v8.3.5ソフトウェアを用いて行った。すべてのP値は両側検定であり、p<0.05を統計学的有意水準とした。本研究はNCT番号を有さない。