• 著者: Spigel DR, McCleod M, Jotte RM, Einhorn L, Horn L, Waterhouse DM, Creelan B, Babu S, Leighl NB, Chandler JC, Couture F, Keogh G, Goss G, Daniel DB, Garon EB, Schwartzberg LS, Sen R, Korytowsky B, Li A, Aanur N, Hussein MA
  • Corresponding author: David R. Spigel, MD (Sarah Cannon Research Institute/Tennessee Oncology, Nashville, TN, USA)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-05-20
  • Article種別: Original Article (Phase 3B/4 single-arm study — CheckMate 153)
  • PMID: 31121324

背景

Nivolumabは抗PD-1 (programmed death 1) 完全ヒト型モノクローナル抗体として、白金製剤含む前治療後に進行した進行NSCLC (non-small cell lung cancer) に対するセカンドライン治療として米国・欧州・カナダで承認された。この承認の根拠となったのはPhase 3無作為化比較試験 CheckMate 017 (扁平上皮NSCLC、n=272) およびCheckMate 057 (非扁平上皮NSCLC、n=582) であり、いずれもnivolumabがdocetaxelに対してOSの優越性を示した (Brahmer et al. NEnglJMed 2015Borghaei et al. NEnglJMed 2015)。2年追跡でのOS率はnivolumab vs docetaxelで扁平上皮23% vs 8%、非扁平上皮29% vs 16%と長期利益が確認され、さらに3年時点でのOS中央値は11.1 vs 8.1ヶ月 (HR 0.70, 95% CI 0.61-0.81) であった (Horn et al. JClinOncol 2017)。また安全性の面でも、2年追跡でのGrade 3/4 TRAE (treatment-related adverse event) 率はnivolumab 10% vs docetaxel 55%と大きく差があり、優れた忍容性が確認されている。

しかしこれらの無作為化比較試験 (RCT: randomized controlled trial) のeligibility criteriaは実臨床より厳格であり、肺がん診断患者の3分の2以上が65歳以上 (平均診断年齢約70歳) であるにもかかわらず、高齢者 (70歳以上) は極めて少数しか含まれていなかった。同様に、進行NSCLC患者の20〜40%がECOG PS (Eastern Cooperative Oncology Group performance status) 2であるにもかかわらず、RCTでは典型的にPS 0〜1のみが登録対象とされていた。PD-1/PD-L1阻害薬を用いたこれら集団でのデータは手薄であり、高齢者・PS 2患者に対するnivolumabの安全性プロファイルは十分に確立されていなかった。RCTでは高齢者が代表されておらず、高齢者での免疫関連有害事象の発生率や忍容性が不明であり、PS 2患者はほとんどのRCTから除外されていたため、この集団でのnivolumab治療の有用性を支持する根拠が不足していた。CheckMate 153はこれらの未解明な問題に答えるため、地域基盤 (community-based) 施設において高齢者・PS 2患者を積極的に包含した大規模Phase 3B/4試験として計画された。

目的

地域基盤施設における白金製剤既治療進行NSCLC患者 (n=1426) を対象に、nivolumab単剤療法の安全性 (主要エンドポイント: Grade 3〜5 select TRAE発生率)・OS・患者報告アウトカム (PRO: patient-reported outcome) を評価し、特に70歳以上およびECOG PS 2サブグループでの成績を全体集団と比較して報告すること。

結果

患者背景・治療状況:全登録治療患者n=1426のうち70歳以上n=556 (39%)、ECOG PS 2 n=128 (9%)。全体の年齢中央値67歳 (範囲23〜93歳)、70歳以上の中央値75歳、PS 2の中央値69歳。組織型は非扁平上皮71% (n=1015)・扁平上皮28% (n=402)。PD-L1評価可能は全体の49% (n=696) で、評価可能例中PD-L1 ≥1%が60%・<1%が40%・≥50%が20%。患者集団はheavily pretreatmentで、3ライン以上の既治療が60% (n=855)。追跡期間中央値は全体7.9ヶ月・70歳以上8.3ヶ月・PS 2 3.9ヶ月。治療継続期間中央値は全体3.2ヶ月・70歳以上3.4ヶ月・PS 2 1.4ヶ月と、PS 2では著明に短かった (Table 1)。投与相対強度≥90%は全体81% (n=1148)・70歳以上82% (n=457)・PS 2 81% (n=104) と均等。PS 2患者では死亡による中止が22% (n=28) と全体12% (n=167) より高く、2年時点での死亡率は89% (n=114) に達した (全体71%・70歳以上72%)。

安全性 (主要エンドポイント):Grade 3〜5 select TRAE (免疫関連AE) の発生率は全体6% (n=81)・70歳以上6% (n=35)・PS 2 9% (n=11) であり、3集団間で同等であった (Table 2)。任意グレードselect TRAEは全体37% (n=523)・70歳以上38% (n=214)・PS 2 29% (n=37)。最多のselect TRAEカテゴリは皮膚14% (n=201)・内分泌12% (n=176)・消化器11% (n=159)。Grade 5 select TRAE (腸穿孔) は1例のみで、70歳以上・PS 1の患者であった。全TRAEを見ると (Table 3)、Grade 3/4全TRAEは全体12% (n=178)・70歳以上14% (n=76)・PS 2 12% (n=16) と一貫して低率。任意グレード全TRAEは全体62% (n=884)・70歳以上64% (n=356)・PS 2 48% (n=61)。最多TRAEは疲労 (fatigue) 21% (n=296)・下痢 (diarrhea) 11% (n=151)・悪心 (nausea) 9% (n=128)。重篤TRAEは全体6% (n=83)・70歳以上5% (n=30)・PS 2 5% (n=6)。TRAEによる治療中断は全体6% (n=87)・70歳以上7% (n=41)・PS 2 5% (n=7)。神経学的TRAEはいずれの群でも4〜7%と低率。新規の安全性シグナルは認められなかった。

OS (全生存期間):全体 (n=1426) のmOS (median overall survival) は9.1ヶ月 (95% CI 8.3-10.4)、1年OS率43%、2年OS率26% (Fig 1A)。70歳以上 (n=556) のmOSは10.3ヶ月 (95% CI 8.3-11.5)、1年OS率44%、2年OS率25%で、全体と同等またはやや良好な成績であった (Fig 1B)。一方ECOG PS 2 (n=128) のmOSは4.0ヶ月 (95% CI 3.1-6.2)、1年OS率24%、2年OS率9%と顕著に低値であった (Fig 1C)。70歳以上 vs ECOG PS 2群のmOS: 10.3 vs 4.0ヶ月 (95% CI 8.3-11.5 vs 3.1-6.2)、1年OS率44% vs 24%と、パフォーマンスステータスが予後に大きく影響することが確認された。組織型別では扁平上皮mOS 9.7ヶ月 (95% CI 8.1-11.5)・非扁平上皮mOS 9.0ヶ月 (95% CI 8.0-10.5) と同等。PD-L1発現別では<1% mOS 8.6ヶ月 (95% CI 7.0-10.5)・≥1% mOS 10.4ヶ月 (95% CI 8.3-12.2)・≥50% mOS 11.4ヶ月 (95% CI 8.3-14.4) で、PD-L1高発現ほど良好なOSが示された (Fig 2)。

患者報告アウトカム (PRO):PRO評価可能集団n=1099。EQ-5D VAS・LCSSのquestionnaire完了率は治療期間を通じ期待患者の80%超を維持した。EQ-5D (EuroQol 5-Dimension) VAS平均スコアはベースラインで68 (肺がん集団norm値68) であり、治療継続患者では米国一般集団norm値80.05に接近する改善を示した (Fig 3A)。LCSS ASBI (症状負担指数) はベースラインから治療継続とともに低下し (症状軽減)、臨床的意義のある最小差MID (10点の変化) に接近したが到達はしなかった (Fig 3D)。70歳以上サブグループでも全体と同様のQoL改善・症状軽減パターンが観察された (Fig 3B, 3E)。PS 2患者はベースラインでのQoL低下・症状負担増大があったものの、治療継続中の改善傾向は観察された (Fig 3C, 3F)。

考察/結論

CheckMate 153は地域基盤施設での既治療進行NSCLCを対象とした大規模Phase 3B/4試験として、nivolumab単剤療法の安全性・有効性の包括的な実臨床プロファイルを提供した。主要エンドポイントであるGrade 3〜5 select TRAE率6%はCheckMate 017・057の2年・3年追跡データと一致しており、対照的にここでは地域臨床実践というより広い患者集団でも同様の安全性が維持されることが確認されたのは新規の知見である。Grade 3/4全TRAE率12%・TRAEによる中断率6%という低値は、免疫チェックポイント阻害薬の忍容性プロファイルを支持する。

本試験の最大の臨床的含意は70歳以上 (n=556) の安全性・有効性が全体と同等であることを大規模データで実証した点である。mOS 10.3ヶ月・Grade 3〜5 select TRAE 6%はいずれも全体の9.1ヶ月・6%と同等であり、これはCheckMate 171 (欧州単群Phase 2、70歳以上でmOS 11.2ヶ月、grade 3/4 TRAE 14%) およびイタリアreal-world試験 (n=522、70歳以上mOS 11.5ヶ月) の報告とも整合していた。CheckMate 017の65〜75歳サブセットでのHR 0.56 (95% CI 0.34-0.91)、CheckMate 057の65〜75歳サブセットでのHR 0.63 (95% CI 0.45-0.89) とも一致しており、高齢者へのnivolumab投与の妥当性を強く支持する証拠が蓄積されている。

ECOG PS 2 (n=128) ではmOS 4.0ヶ月と全体の9.1ヶ月と異なり、有意に不良であった。しかしこれはCheckMate 171 (PS 2 mOS 5.4ヶ月)・CheckMate 169 (PS 2 mOS 5.9ヶ月) とも概ね一致する。重要な点として、PS 2患者の1年OS率24%は歴史的データでの1年OS率<20% (Gridelli 2004 Ann Oncol) より高く、さらにPS 2患者の9%が2年以上生存した。これはPS 2という従来予後不良と見なされる集団において、nivolumabにより一部の患者が長期生存可能であることを示している。PS 2は治療選択を問わず予後不良と関連することが既報であり、この成績はnivolumabの効果限界ではなく疾患固有の予後不良を反映していると考えられる。PD-1/PD-L1阻害薬は化学療法より忍容性が良好なプロファイルを持つため、PS 2患者の潜在的な治療選択肢として位置付けられる可能性がある。

臨床応用の観点から、本試験の結果は70歳以上の高齢者をnivolumab治療対象から除外すべきでないことを支持する実臨床エビデンスを提供する。PRO評価ではEQ-5D VASが一般集団norm (80.05) に接近する改善を示しており、PS 2患者でもQoL改善傾向が観察された。CheckMate 017でnivolumabがdocetaxelより症状負担・健康状態を改善したという知見 (Reck 2018 JThoracOncol) とも整合しており、毒性による生活の質の悪化を最小化しながら治療を継続できる可能性が示唆される。

残された課題として、本試験の制約 (単群非比較デザイン・オープンラベル・PRO解析での不完全参加・サブグループでの晩期時点における小サンプルサイズ) は考慮が必要である。PRO解析は主に治療1年目のデータに基づいており、長期治療継続の患者体験を反映していない可能性がある。また、PD-L1評価率が約49%にとどまりPD-L1発現量と効果の関係についての完全な理解には追加のfuture researchが必要である。無作為化フェーズ (nivolumab継続 vs 1年後中断) の長期成績も別途報告が必要であり、更なる検討が待たれる。

方法

CheckMate 153 (NCT02066636) はPhase 3B/4オープンラベル単群試験として米国・カナダの主に地域基盤施設で実施された。対象患者は組織学的/細胞学的に確認されたStage IIIB/IV NSCLCを持ち、ECOG PS 0〜2 (サブグループ4はPS 2専用)、少なくとも1レジメンの全身療法後に進行した18歳以上の患者。非扁平上皮組織型患者はEGFR変異またはALK遺伝子再構成の検査が必須で、これらドライバー変異陽性患者は適切な一次TKI (tyrosine kinase inhibitor) 後の病勢進行を条件とした。PD-L1発現はDako PD-L1 IHC 28-8 pharmDxアッセイで評価した。患者はNSCLC組織型 (扁平上皮/非扁平上皮) と前治療ライン数で4サブグループに分類された。治療レジメンはnivolumab 3 mg/kg静脈内投与 q2週、進行・許容不能毒性・同意撤回まで継続。RECIST v1.1による画像評価はサイクル5日1および以降q4サイクルで実施。治療1年後の患者は無作為化により nivolumab継続 vs 治療中断 (進行時再開可能) に割り付けられたが、本報告は非無作為化フェーズの結果に焦点を当てる。登録期間2014年4月16日〜2017年5月15日 (データカットオフ)。主要エンドポイントはGrade 3〜5 select TRAE (免疫学的病因を持つAE: 皮膚・内分泌・消化器・肝臓・肺・腎臓・過敏症/注射部位反応) の発生率。探索的エンドポイントに安全性・OS・PRO。PRO評価はEQ-5D-3L (EuroQol 5-Dimension, Three-Level Version) VAS (Visual Analogue Scale): 0〜100点、高値=良好健康状態、MID (minimally important difference): 7点 とLCSS (Lung Cancer Symptom Scale) ASBI (average symptom burden index: 0〜100点、高値=高い症状負担、MID: 10点) をサイクル1日1・以降q6週で実施。統計解析: OS推定はKaplan-Meier積極限法、中央値と両側95%信頼区間はBrookmeyer-Crowley法で算出。安全性・PROは記述統計量で要約。n=1426全治療患者が安全性解析対象、PRO評価可能集団はn=1099。