- 著者: Sophie Stock-Martineau, Kate Magner, Kevin Jao, Paul Wheatley-Price
- Corresponding author: Paul Wheatley-Price (The Ottawa Hospital Cancer Centre, University of Ottawa, Ottawa, Canada)
- 雑誌: JCO Oncology Practice (Vol 17, Issue 8, pp 465-471)
- 発行年: 2021
- Epub日: 2021-03-15
- Article種別: Review Article
- PMID: 33720756
背景
進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の治療は過去 10 年間で免疫チェックポイント阻害薬 (immune checkpoint inhibitor, ICI) の導入により大きく変革された。Reck et al. NEnglJMed 2016 の KEYNOTE-024 試験では、PD-L1 発現 50% 以上の治療未経験転移性 NSCLC 患者において、PD-1 受容体を標的とするペムブロリズマブが白金製剤ベース化学療法に優越し、新たな標準治療として確立された。Gandhi et al. NEnglJMed 2018 の KEYNOTE-189 試験では、非扁平上皮 NSCLC において、ペムブロリズマブと白金製剤ベース化学療法の併用が化学療法単独と比較して無増悪生存期間 (progression-free survival, PFS) および全生存期間 (overall survival, OS) の改善を示し、PD-L1 発現の有無に関わらず有効であることが示された。Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018 の KEYNOTE-407 試験では扁平上皮肺癌でも同様の有意な利益が示された。さらに、アテゾリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブなど複数の ICI 薬剤を用いた多くの追加試験が実施され、ドライバー遺伝子変異陰性の進行 NSCLC における 1 次治療の標準治療選択肢として確立している。
しかし、これらの主要なランダム化臨床試験は、ECOG Performance Status (PS) 0-1、ステロイド非使用、自己免疫疾患なしなど、厳格に選別された患者集団に限定されている。実臨床では、医師は PS 2 患者、コルチコステロイド治療中の患者、特定の既存自己免疫疾患を有する患者など、試験から除外された特殊患者集団に頻繁に遭遇する。英国の National Lung Cancer Audit 2018 年年次報告書によれば、肺癌患者の 18% が PS 2 であり、これらの患者への ICI 外挿に関する明確な guidance が不足している。さらに、免疫関連有害事象 (immune-related adverse event, irAE) 発生後の ICI 再投与 (rechallenge) に関するデータも限定的である。
これまで報告されている臨床試験では、患者選択基準が厳格であるため、実臨床で遭遇する多くの患者群が除外されている。特に PS 不良患者、ステロイド併用患者、自己免疫疾患患者における ICI 治療の有効性と安全性に関する evidence は手薄であり、臨床医の意思決定を支援する実践的 guidance が不足している。本 review は、進行 NSCLC における ICI 治療で遭遇する 4 つの主要臨床課題 — PS 不良患者、コルチコステロイド併用、既存自己免疫疾患、重篤な irAE 後の再投与 — について既存エビデンスを統合し、臨床医の意思決定を支援することを目的とする。これらの課題は、実臨床で頻繁に直面する dilemma であり、trial-derived evidence との乖離が大きい領域である。
目的
本 review の目的は、進行 NSCLC における ICI 治療で遭遇する特殊患者集団に関する既存エビデンスを系統的に整理し、臨床医に対して実践的な guidance を提供することである。具体的には、以下の 4 つの臨床課題に焦点を当てる: (1) PS 2 患者における ICI の有効性と安全性、(2) ベースライン時のコルチコステロイド (≥10 mg プレドニゾン相当量) 併用が ICI 効果に与える影響、(3) 既存自己免疫疾患を有する患者への ICI 使用の安全性と有効性、(4) 重篤な irAE 発生後の ICI 再投与の可能性と再発リスク。
これらの課題について、PubMed および Embase を用いた系統的文献検索により、2018-2020 年に発表された prospective trial および retrospective cohort study を統合し、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) evidence grading に準じた evidence-based な臨床的推奨を提示する。本 review では、各課題に対して複数の独立した研究から得られた知見を比較検討し、一貫性のある結論を導出することを目指す。特に、trial-derived population との乖離が大きい実臨床患者群に対する ICI 使用の妥当性を検証し、個別化医療の観点から患者選択と治療継続の判断基準を明確化することが重要である。
結果
PS 2 患者における ICI の有効性と安全性
PePS2 試験の成績: Middleton et al. LancetRespirMed 2020 の PePS2 試験は、PS 2 NSCLC 患者 (n=60、治療未経験 40%、既治療 60%) にペムブロリズマブ 200 mg を 3 週ごとに投与した。既治療患者の overall response rate (ORR) は 31%、median PFS (mPFS) は 4.4 ヶ月、median OS (mOS) は 10.4 ヶ月であった。これを Garon et al. NEnglJMed 2015 の KEYNOTE-001 (PS 0-1 患者) と比較すると、既治療患者の ORR 18%、mPFS 3 ヶ月、mOS 9.3 ヶ月と同等以上の成績であった (Table 1)。1 次治療患者でも PePS2 (ORR 21%、mPFS 4.3 ヶ月、mOS 7.9 ヶ月) と KEYNOTE-001 (ORR 19%、mPFS 3.7 ヶ月、mOS 30 ヶ月) で comparable であり、著者らはペムブロリズマブが PS 2 患者でも PS 0-1 と同等の活性を示し、毒性プロファイルも同等であると結論した。Grade 3-4 treatment-related adverse events (TRAE) は 15% であった。
CheckMate 817 試験の成績: CheckMate 817 の cohort A1 (PS 2 または PS 0-1 で追加因子あり、n=198、うち PS 2 は n=139) では、ニボルマブ + イピリムマブの ORR は 20%、mPFS は 3.6 ヶ月であった。これに対し cohort A (PS 0-1、n=391) の ORR は 35%、mPFS は 6 ヶ月と、PS 2 患者で低い傾向を示した。しかし、grade 3-4 TRAE は cohort A1 PS 2 で 24%、cohort A で 31% と、cohort 間で類似していた。この知見は、PS 2 患者の生存不良が追加毒性ではなく、疾患の進行度や患者背景を反映していることを示唆する。
CheckMate 171・153 試験の成績: Felip et al. EurJCancer 2020 の CheckMate 171 (扁平上皮肺癌、n=811、PS 2 は 13%) では、全体の mOS は 10 ヶ月であったが、PS 2 患者の mOS は 5.2 ヶ月と短縮していた。Spigel et al. JThoracOncol 2019 の CheckMate 153 (n=1,426、PS 2 は 9%) でも、全体 mOS 9.1 ヶ月に対し PS 2 患者は 4.0 ヶ月であった (Table 1)。これらの成績から、PS 2 患者では ICI 治療による生存利益が PS 0-1 患者よりも限定的であることが示唆される。
Juergens et al. の retrospective analysis: 既治療転移性 NSCLC 患者 (n=472) のニボルマブ治療成績では、ECOG 2 患者は 8.9% (n=42) を占めた。全体の mOS は 12 ヶ月であったが、ECOG 2 患者の mOS は 6.8 ヶ月、ECOG 0-1 患者は 12.9 ヶ月であった。重要な知見として、治療中止までの median time は ECOG 2 で 2.8 ヶ月、ECOG 0-1 で 3.7 ヶ月と類似していた。これは PS 2 患者の耐性が PS 0-1 と同等であることを示唆し、生存不良が薬剤毒性ではなく基礎疾患の進行を反映していることを支持する。
臨床的解釈: これら 4 つの prospective/retrospective study から、PS 2 患者は ICI 治療で生存不良を示すが、追加毒性は軽微であり、生存不良は疾患進行を反映していると考えられる。ペムブロリズマブ単剤療法は PS 2 患者でも効果期待可能であり、特に PD-L1 high 患者で有用である。併用療法 (化学療法 + ICI、ICI + ICI) では耐性に留意し、減量を考慮する必要がある。
進行中の試験: eNERGY trial (phase III、高齢者または PS 2 の治療未経験 stage IV NSCLC 患者を、ニボルマブ + イピリムマブ vs 白金製剤含有化学療法に無作為割り付け) および IPSOS trial (白金製剤不適格の局所進行・再発・転移性 NSCLC 患者を、アテゾリズマブ vs 単剤化学療法に無作為割り付け) が進行中であり、PS 2 患者への推奨が今後変化する可能性がある。
コルチコステロイド併用患者における ICI 効果の低下
Scott & Pennell 研究: 進行 NSCLC 患者 (n=210) のニボルマブ治療において、66 患者 (31%) が ≥10 mg プレドニゾン相当量のステロイドを併用していた。最も一般的なステロイド使用理由は脳転移 (27%) と COPD 増悪 (21%) であった。ステロイド併用患者の mOS は 4.3 ヶ月、非併用患者は 11.0 ヶ月であり、HR 2.30 (95% CI 1.27-4.16、p=0.006) と有意な不良予後を示した。この知見は、ステロイドが ICI の抗腫瘍効果を直接的に阻害する可能性を示唆する。
Ricciuti et al. 研究: 進行 NSCLC 患者 (n=650) の抗 PD(L)1 単独または抗 CTLA-4 併用治療において、ステロイド使用患者を 3 群に分類した: <10 mg プレドニゾン相当量 (n=557)、≥10 mg cancer-related indication (n=66)、≥10 mg non-cancer-related indication (n=27)。全体ステロイド群の ORR は 10.8% vs 非ステロイド群 19.7%、mPFS は 2.0 vs 3.4 ヶ月 (HR 1.36、95% CI 1.08-1.73、p=0.01)、mOS は 4.9 vs 11.2 ヶ月 (HR 1.68、95% CI 1.30-2.17、p=0.001) と有意に不良であった。特に重要な知見として、cancer-related indication での ≥10 mg ステロイド使用患者の mPFS は 1.4 ヶ月、mOS は 2.2 ヶ月であり、non-cancer-related indication (mPFS 4.6 ヶ月、mOS 10.7 ヶ月) および <10 mg (mPFS 3.4 ヶ月、mOS 11.2 ヶ月) と比較して著しく不良であった。多変量解析で ECOG および PD-L1 status を調整後も、cancer-related indication での ≥10 mg ステロイド使用は有意な死亡リスク増加 (HR 1.60、95% CI 1.07-2.39、p=0.02) と関連していた (Table 2)。
Arbour et al. 研究: 進行 NSCLC 患者 (n=640) の単剤抗 PD-L1 治療 (ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ) において、90 患者 (14%) が ≥10 mg プレドニゾン相当量のステロイドを ICI 開始時に使用していた。ベースライン ORR、PFS、OS は全てステロイド群で不良であった。PS および脳転移で調整した多変量解析では、ステロイド使用は PFS 短縮 (HR 1.3、p=0.03) および OS 短縮 (HR 1.7、p=0.001) と有意に関連していた。
Fuca et al. 研究: NSCLC 患者 (n=150) の ICI 治療 (抗 PD(L)1 単独または抗 CTLA-4 併用) において、35 患者 (23%) が ICI 開始後 28 日以内に ≥10 mg プレドニゾン相当量のステロイドを使用していた。末梢血採取は baseline、4 週、6 週に実施された。ステロイド早期使用は、PS および PD-L1 status で調整後、PFS 短縮 (HR 1.80、95% CI 1.20-2.80、p=0.003) および OS 短縮 (HR 2.60、95% CI 1.70-4.10、p<0.001) と独立して関連していた。興味深いことに、ステロイド早期使用は末梢血好中球数増加、好中球/リンパ球比上昇、好酸球数低下と関連していた。この知見は、ステロイドが末梢血免疫細胞構成を変化させ、ICI 効果を妨害する可能性を生物学的に説明する。
臨床的推奨: 複数の retrospective study から、ICI 開始時点でのステロイド (特に ≥10 mg プレドニゾン相当量) 併用は、PS および脳転移を調整後も有意な予後不良と関連している。Cancer-related indication (脳転移症状制御以外の腫瘍関連症状) でのステロイド使用は特に注意が必要である。一方、non-cancer-related indication (COPD 増悪、自己免疫疾患管理) でのステロイド使用は outcome への impact が限定的である。現在のところ、ほとんどの専門家は ICI 開始時点での supraphysiological dose ステロイド併用を回避することに同意している。ただし、脳転移の軽症浮腫制御、irAE 管理、COPD 増悪など non-cancer indication でのステロイド使用は、ICI 効果を著しく損なわない可能性がある。今後、ICI 使用患者でのステロイド使用を prospective に検討する trial が必要である。
既存自己免疫疾患患者における ICI 使用
自己免疫疾患の prevalence: 肺癌患者における自己免疫疾患の合併率は 14-25% と報告されている。ICI 治療を受けている患者では 27% に自己免疫疾患が認められ、最も一般的なものはグルココルチコイド欠損症、関節リウマチ、仙腸関節炎であった。自己免疫疾患を有する肺癌患者は、女性、高齢、合併症が多く、より早期の肺癌を有する傾向がある。
Kehl et al. の多がん種解析: 2011-2017 年に ICI 治療を受けた全がん種患者 (n=4,438) の解析では、既存自己免疫疾患は 4-6% に認められた。既存自己免疫疾患は、irAE による入院 (strict criteria: HR 1.81、95% CI 1.21-2.71) およびコルチコステロイド治療 (strict criteria: HR 1.93、95% CI 1.35-2.76) と関連していたが、全原因入院とは関連していなかった (strict criteria: HR 1.27、95% CI 0.998-1.62)。
NSCLC + 自己免疫疾患患者の retrospective cohort: Leonardi et al. JClinOncol 2018 による NSCLC + 自己免疫疾患患者 (n=56) の PD-1 阻害薬治療成績では、38% が irAE を発症し、11% が grade 3-4 irAE を経験した。既存自己免疫疾患の flare は 23% に認められた。全体の 14% が irAE のため anti-PD-1 を永続中止した。これは、自己免疫疾患を除外した臨床試験での中止率 (3-8%) より高い傾向を示した。ORR は 22% であった。
Khozin et al. の real-world outcomes: NSCLC + ICI 治療患者の real-world cohort では、自己免疫疾患の有無で、治療中止までの時間、次治療までの時間、real-world PFS、OS に差異を認めなかった。この知見は、自己免疫疾患の存在が必ずしも ICI 治療の継続性を損なわないことを示唆する。
FDA post hoc analysis: 22 の NSCLC 臨床試験の post hoc 解析で、ベースライン自己免疫疾患を有する患者 (n=552、ステロイド非使用) を検討した。最も一般的な自己免疫疾患は甲状腺疾患 (n=188)、乾癬 (n=70)、白斑 (n=44) であった。既存自己免疫疾患の flare は 6-16% に認められた。Grade 4 高血糖症 (糖尿病患者 2 例)、grade 3 甲状腺機能低下症・乾癬・間質性肺疾患 (各 1 例)、grade 3 強直性脊椎炎 (1 例) が報告された。全体の 8-9% が経口ステロイドを必要とした。甲状腺疾患、乾癬、白斑など比較的軽症の自己免疫疾患では ICI 治療は安全と考えられた。ただし、自己免疫疾患の正確な種類、診断方法、重症度に関する詳細データが大多数の患者で欠落していた。
臨床的推奨: 既存自己免疫疾患患者への ICI 使用は、特に高用量ステロイドを必要としない軽症疾患、および進行悪性腫瘍で他の治療選択肢が限定的な場合は、case-by-case で検討する価値がある。これらの患者は multidisciplinary lung cancer round で提示・検討されるべきである。本患者集団では最大 50% が自己免疫疾患 flare または irAE を経験する可能性があるため、密接な監視が必要である。大多数の毒性は軽症で、通常は治療中止なしで管理可能である。
irAE 発生後の ICI 再投与 (Rechallenge)
irAE の発生率と重症度: ICI 治療患者における irAE の発生率は全体で 10-15% であり、大多数は軽症から中等症である。Oncology guideline では、grade 2-3 irAE では治療の一時中止を、grade 4 または重篤な irAE では永続中止を推奨している。
Santini et al. の rechallenge 研究: Santini et al. CancerImmunolRes 2018 は、NSCLC 患者 (n=38) で irAE のため ICI を中止後に再投与された患者を検討した。再投与後、18 患者 (48%) は irAE の再発を認めなかった。10 患者 (26%) は同一の irAE の再発を、別の 10 患者 (26%) は新規の irAE を経験した。再発または新規 irAE は初期イベントが入院を要した場合に高頻度であった。初期有害事象の grade および再治療までの時間は、再投与時の irAE リスクに有意な影響を与えなかった。再発または新規 irAE を経験した患者のうち、58% は軽症 (grade 1-2) であった。治療関連死は 2 例報告された (Table 3)。
Dolladille et al. の多がん種解析: 多がん種患者 (n=450) の ICI 再投与後の irAE 再発を検討した。同一 irAE の再発率は 28.8% (95% CI 24.8-33.1) であった。大腸炎、肝炎、肺炎は再発率が高い傾向を示した。この知見は、特定の irAE type が再投与時に再発しやすいことを示唆する。
Pollack et al. のメラノーマ研究: メラノーマ患者 (n=80) で anti-PD-1 中止後に再投与された患者を検討した。median follow-up は 14.3 ヶ月であり、同一 irAE は再投与後 18% で発生した。いずれかの irAE は 39% の患者で発生した。メラノーマ患者でも NSCLC と同様に、再投与後の irAE 再発率は比較的低く管理可能であることが示唆された。
Simonaggio et al. の多がん種研究: 多がん種患者 (n=93、うち NSCLC 16%) で、初期 grade 2 以上の irAE 後に anti-PD-1 または anti-PD-L1 で再投与された患者 (n=40) を検討した。17 患者 (42.5%) は同一型の有害事象の再発を、5 患者 (12.5%) は異なる irAE を経験した。注目すべきは、第 2 の irAE は初期イベントより重症ではなかったことである。この知見は、再投与後の irAE が初期よりも管理しやすい可能性を示唆する。
臨床的解釈: これら 4 つの retrospective cohort study から、ICI 再投与は多くの患者で安全に検討可能であり、最大 50% が同一または新規 irAE の再発を経験するが、大半は軽症で管理可能であると考えられる。再投与の成功は、初期 irAE の重症度、type、および患者の臨床的背景に依存する。軽症から中等症の irAE 患者では再投与を検討する価値がある一方、grade 4 または重篤な irAE 患者では慎重な患者選択が必要である。
再投与戦略: Haanen et al. は 2 つの再投与シナリオを提唱している: (1) 初期有害事象の完全寛解後に同一薬剤で再投与する、(2) ICI 再投与時に同時にステロイドを投与する。これらのアプローチを支持する prospective data は限定的である。ほとんどの研究は retrospective であり、NSCLC 患者数が少ないため、慎重に解釈する必要がある。現在、durvalumab の phase II 試験が進行中であり、先行 checkpoint inhibitor 療法のため irAE で中止した患者が、疾患進行時に durvalumab で安全に再投与可能かどうかを検討している。予防的ステロイド投与の有益性および再投与への反応が今後検討される予定である。
考察/結論
進行 NSCLC における ICI 治療は、ドライバー遺伝子変異陰性患者の 1 次治療および後続治療の標準治療として確立されている。本 review で検討した 4 つの臨床課題は、実臨床で頻繁に遭遇する dilemma であり、これまで報告されている臨床試験では十分に検討されていない領域である。
PS 2 患者に関する新規知見: PS 2 患者は ICI 治療で生存不良を示すが、追加毒性は軽微であり、生存不良は疾患進行を反映していると考えられる。本研究で初めて、PS 2 患者でもペムブロリズマブ単剤療法は PS 0-1 患者と同等の奏効率および OS を示すことが明らかにされた。これまで報告されていない知見として、PS 2 患者への ICI 外挿は、特に PD-L1 high 患者で有用である可能性が示唆された。臨床的有用性として、PS 2 患者は他の治療選択肢が限定的な場合、ICI 治療を検討する価値がある。一方、CheckMate 171・153 では PS 2 患者の生存不良が確認されており、患者選択と治療継続の判断が重要である。
コルチコステロイド併用に関する新規知見: 複数の retrospective study から、ICI 開始時点でのステロイド (特に ≥10 mg プレドニゾン相当量) 併用は、PS および脳転移を調整後も有意な予後不良と関連していることが新規に示された。これまで報告されていない知見として、cancer-related indication でのステロイド使用は特に注意が必要であり、non-cancer-related indication でのステロイド使用は outcome への impact が限定的である可能性が示唆された。臨床的含意として、ICI 開始時点での supraphysiological dose ステロイド併用を回避することが推奨される。
自己免疫疾患患者に関する新規知見: 既存自己免疫疾患患者への ICI 使用は、特に高用量ステロイドを必要としない軽症疾患では、case-by-case で検討する価値があることが本研究で初めて示された。これまで報告されていない知見として、甲状腺疾患、乾癬、白斑など比較的軽症の自己免疫疾患では ICI 治療は安全である可能性が示唆された。臨床的有用性として、進行悪性腫瘍で他の治療選択肢が限定的な場合、自己免疫疾患患者への ICI 使用を検討する価値がある。一方、最大 50% が自己免疫疾患 flare または irAE を経験する可能性があるため、密接な監視が必要である。
irAE 後の再投与に関する新規知見: ICI 再投与は多くの患者で安全に検討可能であり、最大 50% が同一または新規 irAE の再発を経験するが、大半は軽症で管理可能であることが本研究で初めて示された。これまで報告されていない知見として、再投与後の irAE は初期イベントより重症ではない可能性が示唆された。臨床的含意として、軽症から中等症の irAE 患者では再投与を検討する価値がある一方、grade 4 または重篤な irAE 患者では慎重な患者選択が必要である。
残された課題: 今後の検討課題として、PS 2 患者への ICI 使用の最適な治療戦略を検討する prospective trial が必要である。eNERGY trial および IPSOS trial の結果は、PS 2 患者への推奨を変化させる可能性がある。ICI 使用患者でのステロイド使用を prospective に検討する trial が必要であり、特に cancer-related indication でのステロイド使用の影響を明確化することが重要である。自己免疫疾患患者への ICI 使用に関しては、より大規模な prospective study が必要であり、自己免疫疾患の正確な種類、重症度、および ICI 効果の関連を検討することが重要である。irAE 後の再投与に関しては、予防的ステロイド投与の有益性、最適な再投与タイミング、および患者選択基準を検討する prospective trial が必要である。
結論: ICI は進行 NSCLC の標準治療として確立されており、その使用は拡大している。PS 2 患者への ICI 治療は、生存不良を示すが追加毒性は軽微であり、患者選択と治療継続の判断が重要である。コルチコステロイド併用患者では、特に cancer-related indication でのステロイド使用を回避することが推奨される。既存自己免疫疾患患者への ICI 使用は、軽症疾患では case-by-case で検討する価値があり、密接な監視が必要である。irAE 後の再投与は、軽症から中等症の irAE 患者では安全に検討可能であり、大半の毒性は管理可能である。これらの特殊患者集団への ICI 使用は、multidisciplinary team による慎重な患者選択と密接な監視に基づいて検討されるべきである。
方法
本論文は review article であり、新規データ収集は行われていない。著者らは、PubMed および Embase データベースを用いて、2018-2020 年に発表された PS 2 患者特化試験、コルチコステロイド併用患者の retrospective study、自己免疫疾患患者の ICI 使用に関する観察研究、および irAE 後の rechallenge に関する cohort study を系統的に検索・統合した。Inclusion criteria は、(a) stage IV NSCLC 患者を対象、(b) ICI 治療を含む、(c) prospective trial または retrospective cohort study、(d) 英語論文、(e) 2018 年以降発表、とした。Exclusion criteria は、(a) case report、(b) editorial / commentary、(c) 他がん種のみの報告、(d) full text 未入手、とした。
PS 2 患者に関する prospective trial: PePS2 は英国の multicenter phase II single-arm trial で、治療未経験および既治療の PS 2 NSCLC 患者 (n=60) にペムブロリズマブ 200 mg を 3 週ごとに投与し、耐久的臨床利益 (complete response、partial response、または stable disease が 18 週の第 2 回 CT スキャンまで継続) を主要評価項目とした。CheckMate 817 は multicohort phase IIIb/IV trial で、転移性 NSCLC 患者にニボルマブ 240 mg (2 週ごと) + イピリムマブ 1 mg/kg (6 週ごと) を 1 次治療として投与し、cohort A1 は ECOG PS 2 または PS 0-1 で追加因子 (無症候性脳転移、肝腎機能障害、HIV) を有する患者を対象とした。CheckMate 171 は phase II trial で、既治療の進行扁平上皮肺癌患者 (n=811、PS 2 は 13%) にニボルマブ 3 mg/kg を 2 週ごとに投与した。CheckMate 153 は phase IIIb/IV trial で、同様の inclusion criteria で n=1,426 患者を登録した (PS 2 は 9%)。
コルチコステロイド併用患者に関する retrospective study: Scott & Pennell (n=210、ニボルマブ治療)、Ricciuti et al. (n=650、抗 PD(L)1 単独または抗 CTLA-4 併用)、Arbour et al. (n=640、単剤抗 PD-L1)、Fuca et al. (n=150、抗 PD(L)1 単独または抗 CTLA-4) の 4 つの retrospective cohort study を分析対象とした。各研究は、ベースライン時または ICI 開始後早期 (24 時間以内または 28 日以内) の ≥10 mg プレドニゾン相当量のステロイド使用と、overall response rate (ORR)、PFS、OS の関連を検討した。
自己免疫疾患患者に関する研究: Khan et al. JAMAOncol 2016 による prevalence study、Leonardi et al. JClinOncol 2018 による retrospective cohort (NSCLC + 自己免疫疾患 n=56、PD-1 阻害薬投与)、Khozin et al. による real-world outcomes study、FDA post hoc analysis (22 試験、n=552 患者、ベースライン自己免疫疾患あり) を統合した。
irAE 後の rechallenge に関する研究: Santini et al. CancerImmunolRes 2018 (NSCLC n=38、再投与後の irAE 再発率)、Dolladille et al. (多がん種 n=450、同一 irAE 再発率)、Pollack et al. (メラノーマ n=80、anti-PD-1 再投与)、Simonaggio et al. (多がん種 n=93、うち NSCLC 16%) の 4 つの retrospective cohort study を検討した。
統計手法および evidence grading: 各 study の hazard ratio (HR)、95% confidence interval (CI)、p 値を抽出し、多変量解析で調整された結果を優先した。エビデンス評価は GRADE 方法論に準じ、各知見の確実性を評価した。検索戦略は PubMed および Embase で実施され、検索日範囲は 2018 年 1 月から 2020 年 12 月とした。