- 著者: Jonathan D Spicer, Marina C Garassino, Heather Wakelee, Moishe Liberman, Terufumi Kato, Masahiro Tsuboi, Se-Hoon Lee, Shugeng Gao
- Corresponding author: Jonathan D Spicer (Department of Surgery, McGill University Health Centre, Montreal, QC, Canada)
- 雑誌: The Lancet
- 発行年: 2024
- Epub日: 2024-09-14
- Article種別: Original Article
- PMID: 39288781
背景
1994年の2つの無作為化臨床試験により、切除可能なステージIII非小細胞肺癌(NSCLC)患者において、術前化学療法または周術期化学療法と手術の併用が、手術単独と比較して全生存期間(OS)を有意に改善することが示された。この結果は、局所進行切除可能NSCLCに対する集学的治療の時代を切り開いたが、その後30年間、OSを有意に改善する術前または周術期治療レジメンは出現していなかった。
近年、PD-1/PD-L1阻害薬を用いた周術期治療に関する複数の第3相臨床試験(KEYNOTE-671の初回中間解析、AEGEAN、CheckMate 77T、Neotorch、RATIONALE-315)が実施され、主要病理学的奏効(MPR)、病理学的完全奏効(pCR)、および無イベント生存期間(EFS)の改善が報告された。例えば、Forde et al. NEnglJMed 2022は、術前ニボルマブと化学療法の併用がEFSを改善することを示し、Heymach et al. NEnglJMed 2023も同様に周術期デュルバルマブの有効性を報告している。また、Felip et al. Lancet 2021やOBrien et al. LancetOncol 2022は、術後補助療法としてのPD-1/PD-L1阻害薬の有効性を示している。
しかし、これらの試験のほとんどは、intention-to-treat(ITT)集団においてOSの統計的有意な改善を証明するには至っておらず、健康関連QoL(HRQoL)に関するデータも限定的であった。KEYNOTE-671試験の初回中間解析では、周術期ペムブロリズマブがEFS(ハザード比 [HR] 0.58, 95%信頼区間 [CI] 0.46–0.72)、MPR(30% vs 11%)、およびpCR(18% vs 4%)を有意に改善することが既に報告されているが、OSの有意な改善は示されていなかった。切除可能NSCLC患者における治療の究極的な目標は、HRQoLを損なうことなく生存期間を延長することであり、この点において、これまでのPD-1/PD-L1阻害薬ベースのレジメンではOSの有意な改善が不足しており、その臨床的意義を確立するためにはさらなるエビデンスが必要であった。特に、周術期免疫チェックポイント阻害薬がOSを改善するかどうかは未解明な課題として残されていた。
目的
本研究の目的は、KEYNOTE-671試験の第2回中間解析として、切除可能なステージII、IIIA、またはIIIB(N2)の非小細胞肺癌(NSCLC)患者における周術期ペムブロリズマブと化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)、健康関連QoL(HRQoL)、および長期安全性に与える影響を評価することである。
具体的には、ネオアジュバント(術前)ペムブロリズマブとシスプラチンベースの化学療法、その後の手術、そしてアジュバント(術後)ペムブロリズマブのレジメンが、ネオアジュバントプラセボと化学療法、その後の手術、そしてアジュバントプラセボのレジメンと比較して、OSを有意に改善するかどうかを主要評価項目として検証する。また、副次評価項目として、HRQoLの変化(EORTC QLQ-C30およびQLQ-LC13に基づく)および長期的な安全性プロファイルを評価し、周術期ペムブロリズマブの臨床的有用性を多角的に検討することを目的とする。
結果
患者背景: 2018年5月11日から2021年12月15日の間に、1364例がスクリーニングされ、797例が本試験に無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ群 n=397、プラセボ群 n=400)。両群の患者背景は均衡が取れていた(図表1)。中央値追跡期間は36.6ヶ月(四分位範囲 [IQR] 27.6–47.8)であった。患者の年齢中央値は63~64歳、男性が71%、東アジア地域からの参加者が31%、扁平上皮癌が43%、ステージIIIが70%、N2リンパ節転移が45%を占めた。EGFR変異陽性患者は4~5%、ALK転座陽性患者は2~3%であり、PD-L1 TPS ≥50%の患者は33~34%、PD-L1 TPS <1%の患者は35~38%であった。
全生存期間(OS)の有意な改善: ペムブロリズマブ群では397例中110例(28%)、プラセボ群では400例中144例(36%)が死亡した。36ヶ月時点でのOS推定値は、ペムブロリズマブ群で71%(95% CI 66–76)、プラセボ群で64%(95% CI 58–69)であった(HR 0.72, 95% CI 0.56–0.93, 片側p=0.0052)。このp値は事前に設定された優越性閾値(片側p=0.0054)を満たし、統計的に有意なOSの改善が示された。OS曲線は、約16ヶ月の時点でペムブロリズマブ群に有利に乖離し始めた(図表2A)。ペムブロリズマブ群のOS中央値は未到達であったのに対し、プラセボ群では52.4ヶ月(95% CI 45.7–未到達)であった。60ヶ月時点での制限付き平均生存時間(RMST)は、ペムブロリズマブ群で46.6ヶ月、プラセボ群で42.5ヶ月であり、その差は4.2ヶ月(95% CI 1.1–7.3)であった。
無イベント生存期間(EFS)の持続的改善: ペムブロリズマブ群では397例中174例(44%)、プラセボ群では400例中248例(62%)でEFSイベントが発生した。EFS中央値は、ペムブロリズマブ群で47.2ヶ月(95% CI 32.9–未到達)、プラセボ群で18.3ヶ月(95% CI 14.8–22.1)であった(HR 0.59, 95% CI 0.48–0.72)(図表3A)。36ヶ月時点でのEFS推定値は、ペムブロリズマブ群で54%(95% CI 49–59)、プラセボ群で35%(95% CI 30–41)であった。
サブグループ解析における治療効果の一貫性: OSのHRは、年齢65歳未満で0.51(95% CI 0.39–0.67)、65歳以上で0.70(95% CI 0.52–0.92)であった。病期別では、ステージIIで0.59(95% CI 0.40–0.88)、ステージIIIAで0.57(95% CI 0.44–0.74)、ステージIIIBで0.57(95% CI 0.36–0.90)であった。PD-L1 TPS ≥50%の患者ではHR 0.48(95% CI 0.33–0.71)と特に良好な傾向を示し、PD-L1 TPS <1%の患者ではHR 0.75(95% CI 0.56–1.01)であった。非扁平上皮癌ではHR 0.51(95% CI 0.38–0.69)、扁平上皮癌ではHR 0.66(95% CI 0.51–0.86)であった。EGFR変異陽性患者ではHR 0.32(95% CI 0.11–0.91)であった。これらのサブグループ解析では、ペムブロリズマブの治療効果の一貫性が示された(図表2B)。
後続治療の状況: ペムブロリズマブ群の30%(118/397例)に対し、プラセボ群の52%(208/400例)が後続治療を受けた。後続のPD-1/PD-L1阻害薬の投与は、ペムブロリズマブ群で8%(30例)、プラセボ群で29%(114例)であった。疾患進行または再発を経験した患者のうち、ペムブロリズマブ群の80%(99/124例)とプラセボ群の86%(178/208例)が少なくとも1つの後続抗がん治療を受け、そのうちPD-1/PD-L1阻害薬を投与されたのはそれぞれ21%(26例)と50%(104例)であった。
健康関連QoL(HRQoL)の維持: ベースラインの平均GHS/QoLスコアは両群ともに約73点であった。ネオアジュバント期間の11週時点でのGHS/QoLスコアのベースラインからの最小二乗平均変化は、ペムブロリズマブ群で-9.3点(95% CI -11.7 to -6.9)、プラセボ群で-10.7点(95% CI -13.1 to -8.4)であり、両群間に有意差は認められなかった(差1.4点, 95% CI -1.6 to 4.5)。アジュバント期間の10週時点では、ペムブロリズマブ群で-1.5点(95% CI -3.7 to 0.6)、プラセボ群で-3.7点(95% CI -6.0 to -1.5)であり、ここでも有意差はなかった(差2.2点, 95% CI -0.6 to 5.0)。改善または安定したGHS/QoLの割合は、ペムブロリズマブ群で59%(232/395例)、プラセボ群で52%(206/398例)であり、差は7パーセンテージポイント(95% CI <1–14)であった。ペムブロリズマブの追加によるHRQoLの臨床的に意味のある持続的な低下は認められなかった(図表4)。
安全性プロファイル: as-treated集団において、治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群の97%(383/396例)およびプラセボ群の95%(381/399例)で発生した。グレード3以上のTRAEは、ペムブロリズマブ群で45%(179例)、プラセボ群で38%(151例)に認められた。重篤なTRAEは、それぞれ18%(73例)と15%(58例)であった。TRAEによる死亡は、ペムブロリズマブ群で4例(1%)、プラセボ群で3例(1%)であった。治療中止に至ったTRAEは、ペムブロリズマブ群で14%(54例)、プラセボ群で5%(21例)であった。最も頻繁に報告されたTRAE(いずれかの群で30%以上)は、悪心(ペムブロリズマブ群55% vs プラセボ群51%)、好中球数減少(43% vs 42%、グレード3以上は21% vs 20%)、貧血(36% vs 34%)であった(図表2)。免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で26%(103例)、プラセボ群で9%(36例)に発生し、グレード3以上はそれぞれ7%(26例)と2%(6例)であった。新たな安全性シグナルは認められなかった。
考察/結論
KEYNOTE-671試験は、切除可能なステージII~IIIB(N2)NSCLC患者において、周術期ペムブロリズマブと化学療法の併用が、化学療法単独と比較して全生存期間(OS)を有意に改善した最初の第3相臨床試験である。この結果は、周術期ペムブロリズマブをこの患者群における新たな標準治療として確立する強力な根拠となる。
新規性: 本研究で初めて、周術期免疫チェックポイント阻害薬が、無作為化比較試験のITT集団においてOSの有意な改善を示すことに成功した。これは、これまでの周術期PD-1/PD-L1阻害薬に関する試験(AEGEAN、CheckMate 77T、Neotorch、RATIONALE-315など)がEFSの改善は示していたものの、OSの統計的有意な改善には至っていなかった点と対照的である。
先行研究との違い: OSのハザード比(HR)0.72(95% CI 0.56–0.93, 片側p=0.0052)とEFSのHR 0.59(95% CI 0.48–0.72)は、36ヶ月時点でOSで7パーセンテージポイント、EFSで19パーセンテージポイントの絶対差に繋がり、このEFSの改善が、再発後の疾患コントロールの遅延または改善を介してOS利益に翻訳された可能性が考えられる。また、HRQoLの評価では、ネオアジュバント期間中に化学療法関連の一過性の悪化が見られたものの、アジュバント期間では両群ともに安定しており、ペムブロリズマブの追加による持続的なHRQoLの悪化は認められなかった。これは、Forde et al. NEnglJMed 2022のCheckMate 816試験やCheckMate 77T試験のHRQoLデータとも整合する所見である。
臨床応用: 本試験の結果は、切除可能な早期NSCLC患者に対する周術期ペムブロリズマブの臨床的有用性を明確に支持するものである。管理可能な安全性プロファイルとHRQoLの維持を伴うOSおよびEFSの有意な改善は、このレジメンが標準治療の選択肢として広く適用されるべきであることを示唆する。特に、プラセボ群の29%が後続治療としてPD-1/PD-L1阻害薬を投与されたにもかかわらずOSベネフィットが示されたことは、初回曝露としての周術期ペムブロリズマブの重要性を強調する。
残された課題: サブグループ解析において、年齢65歳以上、東アジア人、非喫煙者、PD-L1 TPS <1%の患者では、OSのHR点推定値が他のサブグループよりも控えめであったが、95% CIは全体集団と重なっており、これは検出力不足による可能性が高い。これらのサブグループにおける治療効果のさらなる明確化には、より長期の追跡期間や大規模なデータが必要となる。また、ネオアジュバントとアジュバントそれぞれの治療フェーズが全体的なベネフィットにどの程度寄与しているかを明確に判別するためには、異なる試験デザインが必要である。本試験のランドマーク解析では、アジュバント療法を受けた症例でOSベネフィットがより明瞭であったが、これはポストランダム化因子に基づく探索的解析であり、慎重な解釈が求められる。
方法
KEYNOTE-671は、ClinicalTrials.govにNCT03425643として登録された、世界189施設で実施された無作為化、二重盲検、プラセボ対照の第3相臨床試験である。対象患者は、18歳以上、AJCC第8版分類による切除可能なステージII、IIIA、またはIIIB(N2)NSCLC、ECOGパフォーマンスステータス0-1、およびPD-L1評価のための腫瘍組織提出が可能な患者であった。
患者は、疾患ステージ(II vs III)、PD-L1腫瘍細胞比率(TPS; <50% vs ≥50%)、組織型(扁平上皮 vs 非扁平上皮)、および地理的地域(東アジア vs その他)で層別化され、1:1の比率で無作為に2群に割り付けられた。ペムブロリズマブ群の患者は、ネオアジュバントとしてペムブロリズマブ200 mgを3週間ごとに4サイクル、シスプラチン75 mg/m²と(扁平上皮癌にはゲムシタビン1000 mg/m²をサイクル1日目と8日目に、非扁平上皮癌にはペメトレキセド500 mg/m²を3週間ごとに)併用投与された。その後、手術が実施され、アジュバントとしてペムブロリズマブ200 mgを3週間ごとに最大13サイクル投与された。プラセボ群の患者は、ネオアジュバントおよびアジュバント期間中に生理食塩水プラセボが投与された。
主要評価項目は、ITT集団における無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)であった。EFSは、無作為化から、予定手術を妨げる局所進行、手術時の切除不能腫瘍、RECIST v1.1に基づく病勢進行または再発、あるいはあらゆる原因による死亡のいずれかの最初の発生までの期間と定義された。OSは、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。副次評価項目には、主要病理学的奏効(MPR)、病理学的完全奏効(pCR)、HRQoL(EORTC QLQ-C30およびQLQ-LC13を用いて評価)、および安全性が含まれた。HRQoLの評価では、ベースラインからの10ポイント以上の変化を臨床的に意味のある変化と定義した。
統計解析では、ファミリーワイズタイプIエラー率0.025(片側)をMaurer-Bretz法によりEFS、OS、MPR、pCRの仮説および中間解析と最終解析全体で厳密に制御した。第2回中間解析におけるOSの優越性を示す閾値は片側p=0.0054であった。EFSおよびOSのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は、層別Cox回帰モデルを用いて算出された。HRQoLのベースラインからの最小二乗平均変化は、制約付き縦断データ解析モデルを用いて推定された。本試験は、事前に設定されたサンプルサイズ計算に基づき、416件のEFSイベント発生と386件の死亡発生で、EFSおよびOSの検出力はそれぞれ90.1%および90%と見積もられた。