- 著者: Jeffrey S Weber, Sandra P D’Angelo, David Minor, F Stephen Hodi, Ralf Gutzmer, Bart Neyns, Christoph Hoeller, Nikhil I Khushalani, Wilson H Miller Jr, Christopher D Lao, Gerald P Linette, Luc Thomas, Paul Lorigan, Kenneth F Grossmann, Jessica C Hassel, Michele Maio, Mario Sznol, Paolo A Ascierto, Peter Mohr, Bartosz Chmielowski, Alan Bryce, Inge M Svane, Jean-Jacques Grob, Angela M Krackhardt, Christine Horak, Alexandre Lambert, Arvin S Yang, James Larkin
- Corresponding author: Jeffrey S Weber (Moffitt Cancer Center, Tampa, FL, USA)
- 雑誌: The Lancet Oncology
- 発行年: 2015
- Epub日: 2015-03-18
- Article種別: Original Article
- PMID: 25795410
背景
PD-1 (programmed cell death 1) はT細胞上の抑制性受容体で、リガンドPD-L1/PD-L2と結合してT細胞の活性化と増殖を抑え、腫瘍関連免疫抑制を媒介する。この経路を遮断する抗PD-1抗体は進行melanomaで高い奏効率と持続的奏効をもたらすことが早期試験で示されてきた。第I相試験ではnivolumab (完全ヒト型IgG4抗PD-1抗体) が既治療melanoma 107例にORR (objective response rate) 31%、奏効期間中央値22ヶ月、OS (overall survival) 中央値17.3ヶ月を示し (Topalian et al. NEnglJMed 2012)、第I/II相ではipilimumab後進行例90例にORR 26%、生存中央値18ヶ月を達成した。さらに未治療melanomaの第III相CheckMate 066ではnivolumabがdacarbazineに対しORR 40% vs 14%、生存・PFS (progression-free survival) ともに有意改善を示した (Robert et al. NEnglJMed 2015)。同クラスのpembrolizumabもipilimumab既治療melanomaで化学療法を上回る奏効を示しており (Robert et al. NEnglJMed 2015)、抗PD-1抗体クラスの有望性は複数試験で一貫していた。一方、ipilimumab (抗CTLA-4) およびBRAF阻害薬という標準治療に不応・進行した患者では、有効な救援治療の選択肢が極めて手薄であり、化学療法後の生存改善を支持する前向きエビデンスも不足していた。この集団に特化して抗PD-1抗体と化学療法を直接比較する無作為化第III相試験は存在せず、gap in knowledgeが残されていた。
目的
Ipilimumab治療後 (BRAF V600変異陽性例はBRAF阻害薬とipilimumab治療後) に進行したunresectable stage IIIC/IV進行melanoma患者を対象に、nivolumab単剤と治験医選択化学療法 (ICC: investigator’s choice of chemotherapy) のORRおよびOSを比較し、抗PD-1抗体が予後不良の救援治療集団で臨床的に意義ある優越性を示すかを検証する。
結果
主要エンドポイント: 客観的奏効率の優越性:主要解析時点 (182例無作為化後、median follow-up 8.4ヶ月、IQR 7.0-9.8) で、独立中央判定によるper-protocol確定ORRはnivolumab群38/120例 (31.7%、95% CI 23.5-40.8)、ICC群5/47例 (10.6%、95% CI 3.5-23.1) と、nivolumab群が約3倍高かった (Table 2)。内訳はnivolumab群がCR 4例 (3.3%)・PR 34例 (28.3%)、ICC群がCR 0例・PR 5例 (10.6%) であった。intention-to-treat集団でもnivolumab群38/122例 (31.1%、95% CI 23.1-40.2) vs ICC群5/60例 (8.3%、95% CI 2.8-18.4) と一貫していた。ICC群内ではpaclitaxel/carboplatinの方がdacarbazineより奏効が多かったが比較は意図されていない。
奏効の深さ・持続性と奏効までの時間:奏効はnivolumab群で速やかかつ持続的で、解析時点で38奏効例のうち33例 (87%) が増悪なく治療を継続していた (Fig 3)。奏効期間中央値はnivolumab群で未到達 (range 1.4+ から 10.0+ヶ月) であったのに対し、ICC群では3.5ヶ月 (range 1.3+ から 3.5) と限定的だった。median time to responseはnivolumab群2.1ヶ月 (range 1.6-7.4)、ICC群3.5ヶ月 (2.1-6.1) で、waterfall plotでもnivolumab群に深い腫瘍縮小が集中した (Fig 2)。さらに37/120例 (31%) がRECIST進行後もnivolumabを継続し、うち10例 (8%) が標的病変総和の30%超縮小という非定型な免疫関連奏効パターンを示した (Fig 4)。
無増悪生存と治療曝露期間:intention-to-treat奏効解析集団 (182例) でのmedian PFSはnivolumab群4.7ヶ月 (95% CI 2.3-6.5) vs ICC群4.2ヶ月 (95% CI 2.1-6.3) で、HR 0.82 (99.99% CI 0.32-2.05、記述的比較) と統計学的有意差はなかった。6ヶ月PFS率は48% (95% CI 38-56) vs 34% (18-51) であった。治療曝露はnivolumab群でmedian 5.3ヶ月 (95% CI 3.3-6.5)、ICC群2.0ヶ月 (1.6-2.9) と長く、化学療法群では84/102例 (82%) が治療を中止したのに対しnivolumab群は139/272例 (52%) にとどまった。PFSに大差がつかなかった背景には、RECIST 1.1が免疫療法の進行後benefitを捉えきれない点と予後因子の不均衡があると考察された。
PD-L1・BRAF・ipilimumab奏効によるサブグループ解析:探索的サブグループ解析 (Fig 5) では、PD-L1陽性 (≥5%) 腫瘍でnivolumab群ORRは24/55例 (43.6%) とICC群2/22例 (9.1%) を大きく上回ったが、PD-L1陰性腫瘍でもnivolumab群13/64例 (20.3%) vs ICC群3/23例 (13.0%) と奏効が得られ、PD-L1非依存的なbenefitが示された。BRAF V600変異陽性では6/26例 (23.1%)、BRAF野生型では32/94例 (34.0%) がnivolumabで奏効した。ipilimumab過去奏効ありでは12/40例 (30.0%)、奏効なしでは26/80例 (32.5%) と、BRAF状態やipilimumab反応性によらずnivolumab群がICC群を上回った。
安全性プロファイルと免疫関連有害事象:安全性解析対象370例 (nivolumab n=268、ICC n=102) において、grade 3-4治療関連有害事象 (AE: adverse event) はnivolumab群24例 (9%) に対しICC群32例 (31%) と、nivolumabで明らかに少なかった (Table 3)。nivolumab群で頻度の高いgrade 3-4 AEはlipase上昇3例 (1%)、ALT上昇・疲労・貧血各2例 (1%) で、ICC群では好中球減少14例 (14%)、血小板減少6例 (6%)、貧血5例 (5%) であった。全gradeで多かったのはnivolumab群が疲労 (24%)・pruritus (16%)・下痢 (11%)、ICC群が悪心 (35%)・疲労 (30%)・脱毛 (27%) であった。grade 3-4の重篤な薬剤関連AEはnivolumab群12例 (5%)・ICC群9例 (9%)、免疫抑制を要する選択的 (immune-mediated) AEは少数でステロイドにより管理可能だった。両群とも治療関連死亡はゼロであった。
考察/結論
CheckMate 037は、ipilimumab治療後 (BRAF変異例はBRAF阻害薬併用後) に進行した進行melanomaにおいて、nivolumabがICCに対しORRで明確な優越性 (31.7% vs 10.6%) と良好な安全性プロファイル (grade 3-4 AE 9% vs 31%) を示した最初の無作為化第III相RCTである。これまでの研究は非無作為化の第I/II相が中心で標本サイズが小さく確証に欠けていたのに対し、本試験は2:1無作為化と独立中央判定によりbiasを最小化した点で既報と対照的であり、抗PD-1抗体の救援治療としての価値を堅牢に裏付けた。
新規性として、本研究で初めてipilimumab難治性という高度unmet needの集団で抗PD-1抗体と実地化学療法を前向きに直接比較し、化学療法後の救援治療に有効な選択肢が存在しないという臨床的空白を埋めた。これまで報告されていない知見として、RECIST進行後もnivolumabを継続した患者の8%超で標的病変の30%超縮小という非定型免疫関連奏効が観察され、従来の評価基準が免疫療法のbenefitを過小評価しうることを実証した。PD-L1陽性で奏効率がより高い一方、PD-L1陰性でも奏効が得られた点は、PD-L1をnivolumab適応の絶対的選択基準とすべきでないことを示唆する。
臨床的意義として、本結果に基づきnivolumabは2014年12月に米国FDAのaccelerated approvalを取得し、ipilimumab後進行melanomaの標準的救援治療として臨床現場に導入された。抗PD-1抗体クラスとしてはpembrolizumabのKEYNOTE-002でも同様の優越性が示され (Robert et al. NEnglJMed 2015)、本試験はそのbench-to-bedsideの橋渡しを補完した。さらに本知見はnivolumab+ipilimumab併用 (CheckMate 067、Larkin et al. NEnglJMed 2015) の開発基盤となり、NSCLCやRCC等他癌腫への抗PD-1治療展開の臨床的根拠も提供した。
残された課題として、本報告は初回計画解析でありOSが未到達で、最終生存benefitの確定は今後の検討に委ねられた。加えて、抗PD-1獲得耐性機序の解明、併用療法やシークエンス治療における最適な位置付け、TMBやIFN-γシグネチャー等の奏効予測バイオマーカーの精密化が今後の研究課題として提示された。オープンラベル設計でICC群の同意撤回が22例 (17%) と多かったことはlimitationであり、結果がICC群に有利に偏った可能性も指摘された。総じて本試験は、進行melanoma治療を免疫療法時代へ移行させる転換点となった。
方法
試験デザイン:国際多施設・無作為化・対照・オープンラベル・第III相試験 (CheckMate 037、ClinicalTrials.gov NCT01721746)。14カ国90施設で患者を登録した。対象:18歳以上、組織学的に確認されたunresectable stage IIIC/IV melanoma、ECOG (Eastern Cooperative Oncology Group) performance status 0-1。BRAF野生型はipilimumab等の抗CTLA-4治療後進行例、BRAF V600変異陽性はBRAF阻害薬と抗CTLA-4治療後進行例とした。活動性脳転移、抗PD-1/PD-L1/PD-L2既往、コントロール不良の自己免疫疾患、原発性眼melanomaは除外した。割付:interactive voice response systemにより2:1でnivolumab 3 mg/kg 2週毎 (n=272) またはICC (dacarbazine 1000 mg/m² 3週毎、もしくはcarboplatin AUC (area under the curve) 6+paclitaxel 175 mg/m² 3週毎、n=133) に無作為化した。層別因子:腫瘍PD-L1発現 (≥5% vs <5%/判定不能)、BRAF変異状態、過去のipilimumab臨床的benefit (CR/PR/SD vs PD) の3因子で、各層内でブロックサイズ6の置換ブロック法を用いた。評価:腫瘍評価は独立中央判定委員会がRECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) version 1.1に基づき盲検下で実施した。エンドポイント:主要エンドポイントはORR (nivolumab先行120例のper-protocol解析) とOS、副次はPFS、PD-L1の予測因子解析、QOL (QLQ-C30) とした。統計解析:約390例を2:1で割付ける設計とし、ORRは非比較的に推定して記述的な95% CIを付した (administrative alpha 0.1%を配分)。OSは残りのalpha 4.9%で正式比較し、hazard ratioはCox比例ハザードモデルで推定、ICC群8ヶ月に対しnivolumab群12.3ヶ月 (HR 0.65) を90%検出力で示すには最低260イベントを要すると見積もった。全解析はSAS version 9.2を用いた。