• 著者: Robert C, Long GV, Brady B, Dutriaux C, Maio M, Mortier L, Hassel JC, Rutkowski P, McNeil C, Kalinka-Warzocha E, Savage KJ, Hernberg MM, Lebbe C, Charles J, Mihalcioiu C, Chiarion-Sileni V, Mauch C, Cognetti F, Arance A, Schmidt H, Schadendorf C, Gogas H, Lundgren-Eriksson L, Horak C, Sharkey S, Waxman IM, Atkinson V, Ascierto PA
  • Corresponding author: Caroline Robert (Institut Gustave Roussy, Villejuif, France)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2015
  • Epub日: 2014-11-16
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 25399552

背景

進行性メラノーマは、世界的に罹患率が増加しており、切除不能または転移性メラノーマにおける死亡率は依然として高い。年間約132,000件の新規メラノーマが診断され、推定48,000人が進行性メラノーマで死亡していると報告されている。長年にわたり、進行メラノーマの標準一次治療はダカルバジンが中心であったが、その効果は限定的であり、全生存期間(OS)中央値は9〜11ヶ月、客観的奏効率(ORR)は5〜15%に留まっていた。この状況は、患者の生存期間延長と生活の質の改善に対する満たされない医療ニーズを浮き彫りにしていた。

2011年には、免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)が転移性メラノーマ患者の生存期間を改善することが示され、治療環境に大きな変化をもたらした (Hodi et al. NEnglJMed 2010)。さらに、イピリムマブとダカルバジンの併用療法も、未治療の転移性メラノーマ患者においてダカルバジン単剤と比較して生存利益を示すことが報告された (Robert et al. NEnglJMed 2011)。しかし、これらの治療法をもってしても、生存期間の延長と生活の質の改善に対する満たされない医療ニーズは依然として存在していた。

BRAF V600変異陽性メラノーマ患者においては、BRAF阻害薬であるベムラフェニブがOSを改善することが示され (Chapman et al. NEnglJMed 2011)、その後ダブラフェニブなどのBRAF阻害薬やMEK阻害薬が承認され、高い奏効率と迅速な効果が認められた。しかし、これらの分子標的薬はBRAF V600変異を有する約40%の患者に限定されており、BRAF変異陰性(野生型)の患者に対する一次治療の選択肢は限られていた。この集団では、ダカルバジンが依然として広く使用される治療法であったが、そのOS中央値は5.6〜7.8ヶ月と報告されており、効果は不十分であった。このBRAF変異陰性集団における効果的な一次治療の確立が喫緊の課題として残されていた。

ニボルマブは、PD-1(programmed death 1)受容体とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を選択的に阻害するヒトIgG4免疫チェックポイント阻害抗体である。これにより、T細胞の活性化と増殖を抑制する負のシグナルが解除され、抗腫瘍免疫応答が促進される。ニボルマブは、固形がん患者を対象とした第I相試験において、有望な抗腫瘍活性と良好な安全性プロファイルを示すことが報告された (Topalian et al. NEnglJMed 2012)。また、イピリムマブ抵抗性の転移性メラノーマ患者を対象とした第III相試験では、化学療法と比較してニボルマブが有意に高いORRを示すことが示された。さらに、ニボルマブは長期的な奏効を示す可能性も示唆されていた (Topalian et al. JClinOncol 2014)。しかし、当時ニボルマブは既治療進行メラノーマでのみ承認されており、未治療の進行メラノーマ患者における第III相対照試験での有効性は未解明であった。特に、BRAF変異陰性メラノーマ患者において、ダカルバジンに代わるより効果的な一次治療の確立が喫緊の課題として残されていた。本研究は、この知識ギャップを埋めることを目的としている。

目的

本研究の目的は、BRAF変異陰性の未治療進行(ステージIII切除不能またはステージIV)メラノーマ患者を対象に、ニボルマブ単剤療法が従来の標準治療であるダカルバジンと比較して、全生存期間(OS)を延長するかどうかを検証することである。主要評価項目としてOSの優越性を評価し、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、PD-L1発現状況によるサブグループ解析、および安全性を評価することを目的とした。これにより、BRAF変異陰性進行メラノーマ患者に対する新たな標準一次治療としてのニボルマブの有効性と安全性を確立することを目指した。本研究は、このアンメットニーズに対応し、より効果的な治療選択肢を提供することを意図している。

結果

患者背景: 2013年1月から2014年2月にかけて、合計518例の患者が登録され、418例がランダム化された(ニボルマブ群n=210、ダカルバジン群n=208)。ベースラインの患者特性は両群間でバランスが取れており、年齢中央値はニボルマブ群64歳、ダカルバジン群66歳であった。男性患者が約58.9%を占め、M1cステージの患者が約61.0%、LDH上昇が36.6%、PD-L1陽性(≥5%)が35.4%であった(Table 1)。治療継続率は、データベースロック時でニボルマブ群の46.1%(95/206例)が治療を継続していたのに対し、ダカルバジン群では6.3%(13/205例)であった。

主要評価項目:全生存期間(OS)の優越性: 事前規定の中間解析において、ニボルマブ群の明確な優越性が示され、早期中止基準を満たした。ニボルマブ群の1年OS率は72.9%(95% CI 65.5-78.9)であり、ダカルバジン群の42.1%(95% CI 33.0-50.9)と比較して有意に高かった(死亡のハザード比 0.42; 99.79% CI 0.25-0.73; P<0.001)。OS中央値はニボルマブ群では未達であったのに対し、ダカルバジン群では10.8ヶ月(95% CI 9.3-12.1)であった(Figure 1A)。ニボルマブ群の死亡リスクはダカルバジン群と比較して58%減少した。

無増悪生存期間(PFS)と客観的奏効率(ORR): PFS中央値はニボルマブ群で5.1ヶ月(95% CI 3.5-10.8)であり、ダカルバジン群の2.2ヶ月(95% CI 2.1-2.4)と比較して有意に延長した(疾患進行または死亡のハザード比 0.43; 95% CI 0.34-0.56; P<0.001)(Figure 1B)。ORRはニボルマブ群で40.0%(95% CI 33.3-47.0)であり、ダカルバジン群の13.9%(95% CI 9.5-19.4)と比較して有意に高かった(オッズ比 4.06; P<0.001)。完全奏効(CR)率はニボルマブ群で7.6%であったのに対し、ダカルバジン群では1.0%であった(Table 2)。奏効が認められた患者における奏効持続期間中央値は、ニボルマブ群では未達であったが、ダカルバジン群では6.0ヶ月(95% CI 3.0-未達)であった(Figure 2C)。

PD-L1発現状態によるサブグループ解析: PD-L1発現状態に関わらず、ニボルマブ群はダカルバジン群と比較してOSの改善を示した。PD-L1陽性(≥5%)サブグループでは、死亡のハザード比は0.30(95% CI 0.15-0.60)であり、PD-L1陰性または判定不能サブグループでは0.48(95% CI 0.32-0.71)であった。ニボルマブ群では、いずれのPD-L1サブグループにおいてもOS中央値は未達であった。ダカルバジン群では、PD-L1陽性サブグループのOS中央値が12.4ヶ月、PD-L1陰性または判定不能サブグループでは10.2ヶ月であった。ORRもPD-L1陽性サブグループでニボルマブ群52.7%(95% CI 40.8-64.3) vs ダカルバジン群10.8%(95% CI 4.8-20.2)、PD-L1陰性または判定不能サブグループでニボルマブ群33.1%(95% CI 25.2-41.7) vs ダカルバジン群15.7%(95% CI 10.0-23.0)と、PD-L1発現状態を問わずニボルマブが優位であった。

その他のサブグループ解析と安全性プロファイル: 年齢、性別、転移ステージ(M1a/M1b/M1c)、ECOGパフォーマンスステータススコア、脳転移の既往、ベースラインの乳酸脱水素酵素(LDH)レベル、および地理的地域に基づくすべての事前規定サブグループにおいて、ニボルマブの生存利益が確認された。治療関連有害事象の全グレード発生率は、ニボルマブ群(74.3%)とダカルバジン群(75.6%)で類似していた。しかし、グレード3または4の治療関連有害事象の発生率は、ニボルマブ群で11.7%であったのに対し、ダカルバジン群では17.6%と、ニボルマブ群で低かった(Table 3)。ニボルマブ群で最も頻繁に報告された治療関連有害事象(全グレード)は、疲労(19.9%)、掻痒(17.0%)、悪心(16.5%)、下痢(16.0%)、発疹(15.0%)であった。治療中止に至った有害事象の割合は、ニボルマブ群で6.8%、ダカルバジン群で11.7%であった。いずれの群においても、治験薬の毒性による死亡は報告されなかった。

考察/結論

CheckMate 066試験は、BRAF変異陰性の未治療進行メラノーマ患者において、抗PD-1抗体であるニボルマブが従来の標準治療であるダカルバジンと比較して、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することを示した画期的な第III相ランダム化二重盲検対照試験である。ニボルマブ群では、ダカルバジン群と比較して死亡リスクが58%減少し(HR 0.42; 99.79% CI 0.25-0.73; P<0.001)、1年OS率は72.9% vs 42.1%と著明な優越性を示した。この結果は、BRAF野生型進行メラノーマにおけるニボルマブを新たな標準一次治療として確立する決定的なエビデンスを提供するものである。

先行研究との違い: 本研究のニボルマブによる1年生存率73%は、過去の第I相試験の結果と一致しており、ダカルバジンと比較して有意に高い。本試験が計画された2012年当時、イピリムマブは米国以外のほとんどの地域で進行メラノーマの一次治療として承認されていなかった。しかし、本試験の実施中に多くの地域で一次治療として承認された。本研究のダカルバジン群におけるOS中央値10.8ヶ月は、過去に報告された値よりも高いが、これはダカルバジン治療中止後に38%の患者がイピリムマブによる後続治療を受けたことが影響している可能性があり、先行研究の純粋なダカルバジン単剤群とは異なる状況であった。

新規性: 本研究で初めて、BRAF変異陰性の未治療進行メラノーマ患者において、ニボルマブがダカルバジンと比較してOS、PFS、およびORRにおいて統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを明確に示した。ニボルマブは高い奏効率(40%)と迅速な奏効発現(奏効までの期間中央値2.1ヶ月)を示し、かつ奏効持続期間中央値が未達であるという、従来の化学療法や分子標的薬とは異なる新規の治療特性を証明した。これは、免疫療法が一部の患者で長期的な奏効をもたらすという概念を裏付けるものである。

臨床応用: 本研究の結果は、BRAF変異陰性進行メラノーマ患者に対するニボルマブの一次治療としての承認の根拠となり、臨床現場における治療パラダイムを大きく変革した。ニボルマブは、PD-L1発現状態に関わらず生存利益を示しており、PD-L1バイオマーカー単独では患者選択に有用ではない可能性が示唆された。これは、PD-L1発現が陰性の患者にもニボルマブ治療の機会を提供できることを意味し、より広範な患者集団に利益をもたらす臨床的意義を持つ。ニボルマブは、高グレードの毒性リスクが低いことも示されており、良好な忍容性は長期治療の継続に寄与し、患者の生活の質の維持・改善にも貢献すると考えられる。

残された課題: 今後の検討課題として、ニボルマブ単剤療法後に疾患進行した患者に対する最適なサルベージ戦略の確立が挙げられる。また、ニボルマブとイピリムマブの併用療法(CheckMate 067試験など)や、BRAF変異陽性患者における免疫チェックポイント阻害薬とBRAF/MEK阻害薬の最適なシーケンス戦略の確立も重要である。さらに、脳転移を有する患者におけるニボルマブの有効性に関する詳細なデータや、より精密なバイオマーカー(腫瘍変異負荷、インターフェロンγシグネチャー、腸内細菌叢など)を用いた患者選択の最適化、免疫チェックポイント阻害薬耐性メカニズムの解明と克服戦略(TIGIT、LAG-3などの新規免疫チェックポイント阻害薬との併用など)も今後の研究で取り組むべき課題である。

方法

試験デザイン: 本研究は、多施設共同、ランダム化、二重盲検、第III相試験である(CheckMate 066、ClinicalTrials.gov識別子: NCT01721772)。試験はヨーロッパ、イスラエル、オーストラリア、カナダ、南米の80施設で実施された。データ安全性モニタリング委員会(DSMC)は、2014年6月10日にOSにおける潜在的な差を指摘し、早期中止基準を満たしたため、試験は非盲検化され、ダカルバジン群の患者がニボルマブを受けられるようにプロトコルが改訂された。本報告は、改訂前の二重盲検部分の結果に基づいている(臨床データカットオフは2014年6月24日)。

患者選択: 対象患者は、組織学的に確認された切除不能なステージIIIまたはステージIVの未治療メラノーマで、BRAF変異陰性であることが条件とされた。その他の主要な適格基準には、18歳以上、ECOGパフォーマンスステータススコア0または1、およびPD-L1バイオマーカー解析のための腫瘍組織の利用可能性が含まれた。主な除外基準は、活動性の脳転移、ぶどう膜メラノーマ、および重篤な自己免疫疾患の既往であった。術後補助療法を受けた患者は除外されなかった。

ランダム化と治療: 合計418例の患者が1:1の比率でランダムに割り付けられた。ニボルマブ群(n=210)には、ニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに静脈内投与し、ダカルバジンに合わせたプラセボを3週間ごとに投与した。ダカルバジン群(n=208)には、ダカルバジン1000 mg/m²を3週間ごとに静脈内投与し、ニボルマブに合わせたプラセボを2週間ごとに投与した。ランダム化は、腫瘍のPD-L1発現状態(陽性 vs 陰性または判定不能)と転移ステージ(M0、M1a、M1b vs M1c)に基づいて層別化された。治療は、治験責任医師による疾患進行の評価、または許容できない毒性が生じるまで継続された。疾患進行後も、治験責任医師の判断により臨床的利益があり、かつ重大な有害事象がない患者には治療継続が許可された。

評価項目: 主要評価項目は全生存期間(OS)であった。副次評価項目には、治験責任医師が評価した無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、およびOSの予測バイオマーカーとしての腫瘍におけるPD-L1発現の評価が含まれた。腫瘍奏効は、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)バージョン1.1に従って評価された (Eisenhauer et al. EurJCancer 2009)。評価はランダム化後9週目、その後1年間は6週ごと、その後は疾患進行または治療中止まで12週ごとに行われた。生存評価は3ヶ月ごとに行われた。

安全性評価: 安全性評価は、治験薬を少なくとも1回投与された患者を対象に行われ、有害事象の重症度はNCI-CTCAE(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)バージョン4.0に従ってグレード分類された。

PD-L1評価: ランダム化前に、腫瘍細胞表面のPD-L1発現は、中央検査室で自動免疫組織化学アッセイを用いて評価された。PD-L1陽性は、評価可能な腫瘍細胞が少なくとも100個含まれる切片において、腫瘍細胞の5%以上が任意の強度の細胞表面PD-L1染色を示すものと定義された。メラニン含有量または強い細胞質染色のため、腫瘍細胞表面発現が識別できないサンプルは判定不能とされた。PD-L1ステータスは前向きに決定され、ランダム化の層別化に用いられた。

統計解析: 約410例の患者を1:1で2つの治療群にランダムに割り付ける計画であった。OSおよびPFSは、PD-L1ステータスと転移ステージで層別化された両側ログランク検定を用いて比較された。ニボルマブ群とダカルバジン群のハザード比(HR)および対応する信頼区間は、層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定された。各治療群の生存曲線は、カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)積限界法を用いて推定された。ORRは、両側Cochran-Mantel-Haenszel検定を用いて比較された。有効性解析は、ランダム化された患者集団(intention-to-treat集団)で実施された。安全性解析は、治験薬を少なくとも1回投与された患者集団で実施された。データ解析時、146例の患者が死亡していた。統計的有意性の境界は、Lan-DeMetsアルファ消費関数とO’Brien-Fleming型境界に基づいて、ログランクP値が0.0021未満であること、99.79%信頼区間に対応することとされた。