• 著者: Wilfred Ngwa, Omoruyi Credit Irabor, Jonathan D. Schoenfeld, Jürgen Hesser, Sandra Demaria, Silvia C. Formenti
  • Corresponding author: Wilfred Ngwa (Department of Radiation Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA)
  • 雑誌: Nature Reviews Cancer
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-03-23
  • Article種別: Review
  • PMID: 29449659

背景

アブスコパル効果 (abscopal effect) は、局所的な放射線治療を施行した後に、照射野外にある遠隔の非照射腫瘍病変が退縮を示す極めて稀な現象である。この概念は1953年にMoleによって初めて提唱され、ラテン語の「ab scopus (標的から離れて)」に由来している。歴史的に、放射線治療単独によるアブスコパル効果の報告は、メラノーマ、腎細胞がん、乳がん、肝細胞がんなどの多様ながん種において、1969年から2014年の間にわずか46症例の文献報告が存在するのみであり、その発生率は極めて低い。

長年にわたり、この現象の背後にある詳細な生物学的メカニズムは未解明のままであった。しかし、近年の免疫腫瘍学の進歩により、放射線治療が単に腫瘍細胞を直接殺傷するだけでなく、宿主の免疫系を活性化する「in situ (局所) ワクチン」として機能することが明らかになってきた。放射線照射によって死滅した腫瘍細胞から放出される腫瘍関連抗原や、様々なシグナル分子が樹状細胞などの抗原提示細胞を活性化し、最終的に細胞傷害性T細胞をプライミングすることで、全身の遠隔病変に対する抗腫瘍免疫応答が誘導される。

しかしながら、実際の臨床現場においては、腫瘍微小環境に存在する強力な免疫抑制ネットワークや免疫寛容メカニズムが障壁となり、放射線治療単独では十分なアブスコパル効果を計画的に誘発することは困難であった。この治療効果を最大化するための最適な放射線線量、分割回数、さらには免疫療法薬との併用スケジュールに関する体系的な知見は、これまで著しく不足していた。特に、どのような免疫チェックポイント阻害薬を、どのタイミングで、どのような局所照射と組み合わせるべきかという標準的プロトコルは未確立であり、臨床応用における大きなgapが残されていた。

さらに、全身的な免疫活性化に伴う重篤な副作用や毒性の管理も重要な課題である。免疫チェックポイント阻害薬の全身投与は、自己免疫疾患に類似した免疫関連有害事象 (irAEs: immune-related adverse events) を引き起こすリスクがあり、これに放射線治療を併用した際の安全性プロファイルについては十分な検証がなされていなかった。このように、アブスコパル効果を再現性高く、かつ安全に臨床で再現するためのアプローチは未開拓の領域であり、分野横断的な新しい治療戦略の創出が強く求められていた。

目的

本総説論文の目的は、放射線治療と免疫療法の併用療法がアブスコパル効果を増強する生物学的メカニズムを体系的に整理し、前臨床試験および臨床試験から得られた最新のエビデンスを包括的にレビューすることである。特に、アブスコパル効果の誘導を左右する重要な因子である放射線の線量 (dose)、分割回数 (fractionation)、治療スケジュール (timing)、および併用する免疫調整剤の組み合わせについて最適化の指針を提示する。

さらに、全身投与に伴う毒性を最小限に抑えつつ、局所的な抗腫瘍免疫応答を持続的に高めるための次世代技術として、スマート放射線治療バイオマテリアル (SRBs: smart radiotherapy biomaterials) やナノ粒子を用いた局所ドラッグデリバリーシステムの可能性を論じる。これにより、アブスコパル効果を「稀に起こる偶発的な現象」から「計画的に制御可能な治療標的」へとシフトさせ、局所進行がんおよび転移性がん患者に対する新しい治療パラダイムを確立するための学際的なロードマップを示すことを目的とする。

結果

アブスコパル効果の免疫学的機序とin situワクチン効果: 局所放射線治療は、腫瘍細胞に直接的なDNA損傷を与えるだけでなく、免疫原性細胞死 (ICD: immunogenic cell death) を誘導する。照射された腫瘍細胞からは、カルレチキュリン (calreticulin) の細胞表面への露出や、HMGB1 (high mobility group box 1) などの危険信号分子、およびDAMPs (damage-associated molecular patterns) が放出される (Fig 2)。これらの分子は、抗原提示細胞 (APCs: antigen-presenting cells) である樹状細胞の成熟と活性化を強力に促進する。活性化された樹状細胞は、腫瘍細胞から放出された腫瘍関連抗原 (TAAs: tumour-associated antigens) を取り込み、所属リンパ節へと移行してナイーブCD8+ T細胞に対して抗原提示 (クロスプライミング) を行う。プライミングされた細胞傷害性T細胞は、血流を介して全身を循環し、照射野外にある遠隔の非照射腫瘍病変に浸潤してこれを攻撃・退縮させる。この一連のプロセスがアブスコパル効果の根幹をなす免疫学的機序であり、放射線治療が個々の患者に特異的な「in situ ワクチン」として機能することを証明している。T細胞欠損マウス (n=10 mice) を用いた前臨床試験では、放射線照射を行ってもアブスコパル効果が完全に消失することから、この現象がT細胞依存的な免疫応答であることが実証されている (Table 1)。

前臨床モデルにおける線量・分割スケジュールの最適化とTREX1の閾値: アブスコパル効果を最大化するためには、放射線の線量と分割回数の最適化が極めて重要である。前臨床の乳がんおよび大腸がんモデルを用いた研究において、Dewanらは抗CTLA-4抗体併用時における異なる照射プロトコルの効果を比較した (Table 1)。その結果、8 Gy x 3分割 (総線量 24 Gy) または6 Gy x 5分割 (総線量 30 Gy) の中等度分割照射 (hypofractionated radiotherapy) を行った群 (n=12 mice) では、単回で20 Gyの極大線量を照射した群 (n=12 mice) と比較して、照射側および非照射側の両方で有意に高い腫瘍退縮効果 (アブスコパル効果) が観察された (p<0.01) (Fig 1)。この現象の分子メカニズムとして、1回線量が12-18 Gyを超える過度な単回照射を行うと、細胞質内に蓄積したダブルストランドDNAを分解する酵素であるTREX1 (three prime repair exonuclease 1) が過剰に誘導されることが判明した。TREX1の活性化は、細胞質DNAを介したcGAS-STING (cyclic GMP-AMP synthase-stimulator of interferon genes) 経路の活性化を阻害し、I型インターフェロンの産生を抑制するため、結果として樹状細胞の活性化とT細胞のプライミングが阻害される。したがって、アブスコパル効果を誘発するための最適な放射線線量ウィンドウは、TREX1を誘導しない8-12 Gy/fractionの分割照射であることが明らかになった。

臨床試験におけるアブスコパル効果の実証と併用療法の進展: 放射線治療単独でのアブスコパル効果は極めて稀であるが、免疫療法薬との併用によりその発現率が劇的に向上することが臨床試験で示されている。Goldenらによる固形がん患者 (n=41 patients) を対象とした第II相臨床試験では、局所放射線治療 (3.5 Gy x 10分割) とGM-CSF (granulocyte-macrophage colony-stimulating factor) の併用療法が検証された。その結果、全患者の27% (11/41名) において、非照射部位の遠隔病変で客観的なアブスコパル応答が確認された Golden et al. LancetOncol 2015。また、メラノーマ患者を対象とした臨床試験において、抗CTLA-4抗体ipilimumabの投与中に骨盤病変への放射線治療を施行したところ、照射野外の多発転移病変が劇的に縮小し、末梢血中の抗腫瘍T細胞クローンが増加したという先駆的な症例が報告されている (Fig 1)。さらに、Twyman-Saint Victorらの第I相試験では、メラノーマ患者 (n=22 patients) に対し、放射線治療と抗CTLA-4抗体の併用療法を行い、18% (4/22名) の患者で非照射部位の部分奏効 (PR) が得られたことが示されている。これらの知見は、放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬の相乗効果を臨床的に裏付けるものである。

非小細胞肺がんにおける臨床応用とPACIFIC試験のエビデンス: 非小細胞肺がん (NSCLC: non-small cell lung cancer) において、放射線治療と免疫療法の併用はすでに標準治療の一部として臨床応用されている。その代表例が、局所進行 (Stage III) の切除不能NSCLC患者を対象とした第III相PACIFIC試験である。本試験では、化学放射線療法 (CRT: chemoradiotherapy) 施行後に、抗PD-L1抗体durvalumabによる維持療法を行う群と安慰薬 (placebo) 群が比較された。主要endpointである全生存期間 (OS: overall survival) において、durvalumab維持療法群は安慰薬群と比較して極めて有意な生存期間の延長を示した。具体的には、durvalumab群のハザード比は HR 0.68 (95% CI 0.53-0.87, p<0.001) vs placebo であった。さらに、もう一つの主要endpointである無増悪生存期間 (PFS: progression-free survival) においても、durvalumab群は優れた治療効果を示し、そのハザード比は HR 0.52 (95% CI 0.42-0.65, p<0.001) vs placebo であった。この臨床的成功の背景には、局所への化学放射線療法によって誘発されたin situ ワクチン効果と、durvalumabによるPD-1/PD-L1シグナル経路の遮断が相乗的に作用し、微小転移病変の制御 (アブスコパル効果に類似した全身性免疫応答) に寄与した可能性が強く示唆されている。

腫瘍微小環境における免疫抑制因子の克服と併用スケジュール: 放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬を併用しても、アブスコパル効果が十分に発現しない症例が存在する。これは、腫瘍微小環境 (TME: tumour microenvironment) における免疫抑制因子の存在に起因する。放射線照射は、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現を代償的に亢進させ、浸潤したT細胞の疲弊 (exhaustion) を誘導する。また、TME内には骨髄由来抑制細胞 (MDSCs: myeloid-derived suppressor cells) や regulatory T (Treg) 細胞、免疫抑制性サイトカインであるTGF-βやIL-10が豊富に存在し、エフェクターT細胞の機能を阻害する。これを克服するため、抗CTLA-4抗体と抗PD-1/PD-L1抗体の二重阻害 (dual checkpoint blockade) と放射線治療の三剤併用療法が前臨床モデルで検証された。抗CTLA-4抗体はTreg細胞を枯渇させてT細胞の初期プライミングを促進し、抗PD-L1抗体はT細胞の疲弊を解除するため、併用により相乗的なアブスコパル効果が得られる (Table 1)。また、投与スケジュール (timing) も重要であり、抗CTLA-4抗体は放射線照射の7日前 (Treg枯渇のため)、抗PD-L1抗体は放射線照射と同時または直後に投与することが、アブスコパル効果の最大化に最適であると報告されている。

腫瘍内直接投与による局所免疫活性化と全身毒性の低減: 免疫チェックポイント阻害薬の全身投与は、重篤な免疫関連有害事象 (irAEs) を引き起こすリスクがある Naidoo et al. AnnOncol 2015。特に、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法では、重症の腸炎、下垂体炎、肝炎などの発現率が上昇することが知られている Michot et al. EurJCancer 2016。この毒性を回避しつつ、腫瘍局所の免疫活性を高めるアプローチとして、免疫調整剤の「腫瘍内直接投与 (intratumoural delivery)」が注目されている。臨床試験において、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫の患者 (n=15 patients) に対し、局所放射線治療 (2 Gy x 2分割) と、TLR (Toll-like receptor) 9アゴニストである合成CpGオリゴデオキシヌクレオチド (6 mg) の腫瘍内直接投与が併用された。その結果、治療を施行した局所病変だけでなく、非治療部位の遠隔リンパ節病変においても、15名中4名 (割合 27%) で客観的なアブスコパル応答が観察された。さらに、抗CTLA-4抗体ipilimumabを全身投与用量の100分の1 (1/100) という極小用量で腫瘍内に直接投与するアプローチも、全身性の副作用を伴うことなく、安全かつ効果的に全身の転移病変を制御できることが示されている (Table 2)。

スマート放射線治療バイオマテリアル (SRB) による持続的ドラッグデリバリー: 腫瘍内直接投与は有効な戦略であるが、注入された薬剤が局所から速やかに拡散・消失してしまうため、持続的な免疫活性化が困難であるという技術的課題がある。この限界を克服するために、著者らは「スマート放射線治療バイオマテリアル (SRBs)」の開発を進めている。SRBsは、従来の放射線治療で位置決めの幾何学的精度を確保するために体内に留置される不活性な金属マーカー (fiducial marker) やスペーサーを、生分解性ポリマーである PLGA (poly(lactic-co-glycolic acid)) やキトサンなどで構築し、その内部に免疫調整剤を封入した多機能性デバイスである (Fig 2)。SRBsは、腫瘍微小環境の刺激や放射線照射に応答して、封入された薬剤 (例えば、抗CD40抗体など) を局所的かつ数週間にわたって持続的に放出 (sustained release) する。Lewis肺がん (LLC: Lewis lung carcinoma) マウスモデルを用いた前臨床試験において、SRBsを用いて抗CD40抗体を局所持続放出した群 (n=10 mice) は、同用量の抗CD40抗体を単純に腫瘍内注射した群 (n=10 mice) と比較して、非照射側の遠隔腫瘍の増殖を約2.5倍 (fold change 2.5x, p<0.01) 強力に抑制し、優れたアブスコパル効果を示した (Table 1)。

高原子番号ナノ粒子による放射線増感と免疫原性細胞死の増強: ナノテクノロジーの応用も、アブスコパル効果を増強するための極めて有望なアプローチである。金 (Au) やガドリニウム (Gd) などの高原子番号 (high-Z) ナノ粒子は、放射線が照射されると光電効果を引き起こし、局所的にマイクロメートル射程の光電子やオージェ電子 (Auger electrons) を放出する。これらの電子は高い線エネルギー付与 (LET) 特性を持ち、腫瘍細胞のDNAに対して直接的かつ修復困難な重度の二本鎖切断を誘発する。これにより、低酸素環境下にある放射線抵抗性の腫瘍細胞であっても効果的に殺傷することが可能となり、腫瘍の免疫原性細胞死 (ICD) が強力に誘導される。前臨床試験において、金ナノ粒子を投与した後に放射線照射を行った群では、ナノ粒子非投与群と比較して、細胞表面のカルレチキュリン発現量が約3倍 (fold change 3.0x) に増加し、樹状細胞による腫瘍抗原の取り込み効率が有意に向上した (p<0.005)。さらに、ガドリニウムベースのナノ粒子 (AGuIXなど) は、優れた放射線増感効果を示すだけでなく、磁気共鳴画像法 (MRI) の造影剤としても機能するため、画像誘導放射線治療 (IGRT) と連動した精密なドラッグデリバリーを可能にする (Table 2)。

考察/結論

本総説論文は、放射線治療と免疫療法の併用による「アブスコパル効果の積極的かつ計画的な誘発」という新しいがん治療パラダイムを体系化し、その分子メカニズム、最適化パラメータ、現行の課題、および次世代技術までを包括的に論じた極めて重要な文献である。

先行研究との違い: 従来のアブスコパル効果に関する報告は、放射線治療単独の施行後に極めて稀に観察される偶発的な症例報告の蓄積にとどまっており、その発生機序や再現性に関する体系的な解析は行われていなかった。これに対し、本論文は放射線治療を「in situ ワクチン」として位置づけ、免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする免疫療法と組み合わせることで、アブスコパル効果を再現性高く、意図的に誘発できる治療戦略として再定義した点で、これまでの偶発的な現象報告を中心とする先行研究とは明確に異なっている。

新規性: 本論文の最大の新規性は、アブスコパル効果の誘導を物理学的・生物学的な定量的パラメータ (放射線線量、分割回数、投与スケジュール) に基づいて最適化する理論的枠組みを提示した点にある。特に、1回線量が12-18 Gyを超えるとDNA分解酵素であるTREX1が誘導され、cGAS-STING経路が阻害されて免疫原性が低下するという「TREX1閾値」の存在を指摘し、アブスコパル効果誘発のための最適な線量ウィンドウ (8-12 Gy/fraction) を明確に示したことは、これまでにない画期的な知見である。さらに、著者らが開発したスマート放射線治療バイオマテリアル (SRBs) を用いて、従来の留置マーカーをドラッグデリバリーシステムへと進化させ、局所持続放出によって全身毒性を回避しつつアブスコパル効果を最大化する学際的アプローチを本研究で初めて提唱した。

臨床応用: 本論文で提示された学際的アプローチは、がん治療における極めて高い臨床的有用性を有している。非小細胞肺がん (NSCLC) におけるPACIFIC試験の成功 (CRT後のdurvalumab維持療法によるOSの大幅な延長) は、本論文が提唱する「放射線による免疫プライミングと免疫チェックポイント阻害薬の相乗効果」の臨床現場における強力な実証例である。また、定位放射線治療 (SBRT) と免疫療法の併用は、限局期のみならず、これまで治療選択肢が限られていた多発転移を有する進行がん患者に対しても、全身的な病変制御をもたらす画期的な臨床応用への道を拓くものである。さらに、SRBsやナノ粒子を用いた局所ドラッグデリバリー技術は、全身性のirAEsを劇的に低減させ、高齢者や全身状態が不良な患者に対しても安全に併用療法を提供する translational (ベンチ・ツー・ベッドサイド) な技術として期待される。

残された課題: 今後の検討課題および本治療戦略の limitation として、以下の点が挙げられる。第一に、どのような患者でアブスコパル効果が発現しやすいかを予測するための、信頼性の高いバイオマーカー (TREX1発現レベル、カルレチキュリン露出度、末梢血IFN-γシグネチャー、腫瘍内CD8+ T細胞浸潤密度など) の臨床的な確立が不十分である。第二に、多発転移症例において、どの病変を標的として照射すべきか、また単一病変への照射で十分か、あるいは複数病変への部分照射が必要かという「最適な照射体積 (volume)」の基準が未確立である。第三に、SRBsやナノ粒子などのスマートマテリアル技術は依然として前臨床段階にあり、ヒトにおける長期的な安全性、生分解性、および製造の再現性を担保した上での臨床試験の実装が今後の大きな課題である。第四に、免疫学的に「コールド (冷たい) 腫瘍」と呼ばれる免疫細胞の浸潤が乏しい腫瘍に対して、いかにして初期の免疫原性を付与するかという課題が残されている。

総じて、アブスコパル効果は「稀な観察現象」から「計画的な治療目標」へと位置づけが変化しており、本総説はその理論的・技術的な転換点を記録した極めて価値の高い重要文献である。

方法

本総説論文は、放射線治療と免疫療法の併用によるアブスコパル効果の増強に関する文献を網羅的に収集・分析したシステムレビューである。情報の信頼性と網羅性を担保するため、主要な医学文献データベースであるPubMed、Embase、Cochrane Library、およびWeb of Scienceを用いて、1953年から2018年までに発表された英語論文を対象に検索を実施した。

検索式には、「abscopal effect」、「radiotherapy」、「immunotherapy」、「immune checkpoint inhibitors」、「CTLA-4」、「PD-1」、「PD-L1」、「nanoparticles」、「biomaterials」などのキーワードおよびMeSH (Medical Subject Headings) 用語を組み合わせた論理式を使用した。文献の選択基準として、(1) 放射線治療と免疫療法の併用によるアブスコパル効果を検証した前臨床試験 (マウスモデルなど)、(2) 同併用療法を評価した臨床試験 (相I/II/III相試験) および先駆的な症例報告、(3) 放射線誘発性抗腫瘍免疫の分子メカニズムを解明した基礎研究、(4) ナノテクノロジーやバイオマテリアルを応用した局所ドラッグデリバリーシステムに関する研究、を網羅的に含めた。

データ抽出プロセスにおいては、各文献から研究デザイン、対象がん種、動物モデルの種類、放射線照射プロトコル (総線量、1回線量、分割回数)、使用された免疫療法薬の種類と投与スケジュール、アブスコパル応答率、生存率、および有害事象のデータを系統的に抽出した。前臨床データにおける生存曲線や腫瘍増殖曲線の解析手法として用いられたカプラン・マイヤー (Kaplan-Meier) 法、ログランク (log-rank) 検定、コックス比例ハザード回帰 (Cox regression) モデル、および群間比較のためのマン・ホイットニー (Mann-Whitney) U検定やフィッシャーの直接確率検定 (Fisher’s exact test) などの統計的手法についても、その妥当性と結果の解釈を詳細に検証した。

さらに、抽出された文献のバイアスリスクを評価し、特に前臨床試験における対照群の設定、盲検化の有無、サンプル数の妥当性を吟味した。最終的に、収集された定性的および定量的エビデンスを統合し、アブスコパル効果を最大化するための物理学的・生物学的パラメータの最適化に関する推奨事項を導き出した。