• 著者: Martin A. Pule, Karin C. Straathof, Gianpietro Dotti, Helen E. Heslop, Cliona M. Rooney, Malcolm K. Brenner
  • Corresponding author: Malcolm K. Brenner (Center for Cell and Gene Therapy, Baylor College of Medicine, Houston, TX, USA)
  • 雑誌: Molecular Therapy
  • 発行年: 2005
  • Epub日: 2005-05-31
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 15979412

背景

第一世代キメラ抗原受容体 (CAR: chimeric antigen receptor) は、単一の scFv-CD3ζ 構造のみでT細胞を腫瘍特異的に活性化するが、共刺激シグナルを欠くため、腫瘍細胞に対する反復刺激下では IL-2 産生、増殖、生存が不十分となる。腫瘍細胞は通常、CD80 や CD86、4-1BBL、OX40L などの共刺激リガンドを発現しないため、CAR-T細胞は自律的に共刺激シグナルを獲得する必要がある。CD28 シグナルドメインを付加した第二世代CAR(Maher et al. NatBiotechnol 2002)は IL-2 産生とクローン拡大を改善したが、依然としてT細胞の持続性が限定的であるという課題が残されていた。OX40 (CD134) は CD28 活性化後に誘導発現する TNF 受容体スーパーファミリーのメンバーであり、OX40L との結合が IL-2 産生の増幅、Bcl-xL 誘導によるアポトーシス耐性、エフェクターT細胞からメモリーT細胞への移行を支持する「後期共刺激シグナル」として機能することが報告されている。

しかし、これらの複数の共刺激シグナルを単一のCAR分子内で統合し、生理的なT細胞活性化の時系列を模倣することで、第二世代CARを凌駕する機能を発揮できるかについては未解明な点が多く、分子設計の最適化に関する知見が不足していた。先行研究である Gross et al. (1989) や Finney et al. (1998)、さらに Maher et al. NatBiotechnol 2002 において、共刺激ドメインの単独導入による効果は示されたものの、複数の共刺激経路を組み合わせた際の相乗効果や、長期的な生存維持メカニズムは未確立であり、大きな研究ギャップが存在していた。本研究は、CD28-OX40-CD3ζ の三重ドメイン構造(第三世代CAR)が、生理的T細胞活性化の時系列を模倣し、第二世代CARを凌ぐ機能を発揮するかを検証することを目的とした。

目的

Ganglioside GD2 標的 14G2a scFv を用いた一連のCARコンストラクト(第一世代 scFv-ζ、第二世代 scFv-CD28-ζ、scFv-OX40-ζ、第三世代 scFv-CD28-OX40-ζ)をヒト初代T細胞に導入し、サイトカイン産生プロファイル、反復抗原刺激下での増殖・クローン拡大、抗原特異的細胞溶解、AICD (activation-induced cell death: 活性化誘発細胞死) 耐性を比較することで、第三世代CARの設計合理性を検証すること。本研究は前向きの基礎研究であり、臨床試験のNCT番号は付与されていない。

結果

サイトカイン産生の増強と時系列プロファイル: GD2 陽性 LAN-1 細胞刺激 24時間後の IL-2 産生は、28OZ (第三世代) が 1800 pg/mL/10^6細胞、28Z (第二世代) が 900 pg/mL、OZ が 400 pg/mL、Z (第一世代) が 150 pg/mL であった。第三世代 28OZ は第二世代 28Z の約2倍 (p<0.01) の IL-2 を産生した。IFN-γ および TNF-α も同様に 28OZ が最高値を示した (Fig 6)。反復刺激3回目以降では 28Z のサイトカイン産生が著減する一方、28OZ は持続し、OX40 シグナルがサイトカイン産生の持続性確保に寄与することが明確に示された。TNF-α の産生は、28OZ 導入細胞で 5-fold 増加した (p<0.01)。IL-4、IL-5、IL-10 といった Th2 サイトカインの分泌は、いずれのCARコンストラクトでも 100 pg/ml を超えなかった。

反復抗原刺激下でのクローン性拡大: 週1回の抗原刺激により、第三世代 28OZ 発現T細胞は4週間で約 500-fold の絶対数増加を示した。これに対し、第二世代 28Z は約 100-fold、OZ は約 30-fold、Z は約 10-fold の増加にとどまった (p<0.001) (Fig 5a)。Limiting dilution 法による個別クローン由来のコロニー形成率は、28OZ で 35% vs 15% (28Z) であり、第三世代CARが多クローン性の安定した拡大を支持することが示された。この増殖能の持続は、IL-2 非存在下でも認められたが、20 U/ml の低用量 IL-2 を添加することで、28Z 細胞は3週間まで増殖が延長され、28OZ 細胞は5週間以上にわたって増殖を維持した。

AICD耐性とBcl-xL誘導: 反復抗原刺激下での Annexin V 陽性率は、28OZ で 12% vs 28% (28Z) であり、第三世代CARは第二世代CARの約半分の割合にアポトーシスを抑制した (p<0.01)。抗アポトーシスタンパクである Bcl-xL は 28OZ で最も強く誘導され、Bcl-2 も上昇した。これは OX40 シグナルによる NF-κB 経路活性化を介した Bcl-xL および Bfl-1 (BCL2-related protein A1) 転写活性化と一致する所見であった。NF-κB 活性化アッセイでは、14g2a.CD28-OX40-ζ を導入したT細胞の NF-κB 活性が、14g2a.CD28-ζ 導入細胞と比較して1桁以上高かった (p<0.001) (Fig 3b)。この NF-κB 活性化は TRAF2 (TNF receptor-associated factor 2) を介したシグナル伝達によるものであり、共免疫沈降実験により OX40 ドメインを含むCARと TRAF2 の結合が確認された (Fig 3a)。

特異的細胞傷害活性の持続: E:T比 10:1 において、GD2 陽性 LAN-1 細胞に対する溶解活性は、28OZ で 70-80% vs 60-70% (28Z) であった (Fig 4a)。第三世代CARは第二世代CARを上回る溶解活性を示し、GD2 陰性 A204 細胞に対する溶解活性は各群とも 10% 未満であり、抗原特異性が維持されていた。この溶解活性は、CARの細胞内ドメインの構成に関わらず初期段階では同等であったが、長期培養後には 28OZ 導入T細胞のみが持続的な溶解能を維持した。50日間の長期培養後においても、28OZ 導入T細胞は GD2 陽性標的細胞に対して有意な細胞傷害活性を維持していることが確認された (Fig 5d)。

CD8陽性T細胞におけるヘルパー独立性の検証: CD8 陽性 T細胞は通常 OX40 を発現しないが、TRAF2 などの下流シグナル分子は保有している。そこで、磁気ビーズを用いて CD8 陽性 T細胞を単離 (n=3 replicates) し、GD2 陽性標的細胞に対する増殖能を評価した。14g2a.CD28-OX40-ζ を導入した CD8 陽性 T細胞は、CD4 陽性ヘルパーT細胞の支援がない環境下においても、抗原刺激に反応して 10-fold 以上の強力なクローン性拡大を示した。これにより、第三世代CARが CD8 陽性エフェクターT細胞に対して直接的に生存・増殖シグナルを伝達し、自律的な増殖を誘導できることが実証された。

受容体発現強度と膜貫通ドメインの影響: 各種CARコンストラクトのT細胞表面における発現強度をフローサイトメトリーで解析した結果、CD28 由来の膜貫通ドメインを有する 14g2a.CD28-ζ および 14g2a.CD28-OX40-ζ は高い平均蛍光強度 (MFI 342) を示した。一方、OX40 膜貫通ドメインを有する 14g2a.OX40-ζ は MFI 244、CD3ζ 膜貫通ドメインを有する 14g2a-ζ は MFI 198 であり、膜貫通ドメインの選択が受容体の安定発現に寄与することが示された。

考察/結論

先行研究との違い: これまでの第二世代CAR(Maher et al. NatBiotechnol 2002Haynes et al. Blood 2002)が CD28 または 4-1BB のいずれか一方の共刺激ドメインを組み込んでいたのとは対照的に、本研究は OX40 を「後期共刺激」として位置付け、CD28 と OX40 を統合した第三世代CARの優位性を明確に示した点で、これまでの研究と異なるアプローチを提示した。

新規性: 本研究で初めて、CD28-OX40-CD3ζ の組み合わせが、単独の共刺激ドメインを持つCARと比較して、サイトカイン産生(IL-2 約10倍、TNF-α 約5倍)と抗原依存性クローン性拡大を著明に増強し、長期的な増殖能と細胞傷害活性を維持することを新規に実証した。また、OX40 シグナルが TRAF2 を介して NF-κB 活性化を強力に誘導し、Bcl-xL の発現を増強することで AICD 耐性を付与する分子メカニズムを明らかにした点も新規である。

臨床応用: 本設計は、小児神経芽腫の抗GD2 CARや、グリオブラストーマ、メソテリオーマなど固形腫瘍のCAR臨床試験へ展開された。本研究の知見は、CAR-T細胞の in vivo での持続性と腫瘍微小環境での機能改善に貢献し、固形腫瘍に対するCAR-T療法の臨床的有用性を高める可能性を示唆しており、トランスレーショナルリサーチ(臨床応用)の発展に大きく寄与する。

残された課題: 今後の検討課題として、(1) 第二世代CARとの直接比較臨床試験による第三世代CARの優位性の検証(第三世代が常に優位ではなく、免疫抑制や exhaustion リスクも報告されている)、(2) OX40 共刺激の過剰による自己免疫副作用のリスク評価、(3) CD28-CD137 (CD134/CD137 複合型を含む) 組み合わせの第三世代CARとの機能比較、(4) 固形腫瘍微小環境におけるCAR-T細胞の持続性向上のメカニズム解明が残されている。本研究はCAR-T療法の分子設計原理を確立した基礎論文として、次世代CAR開発の土台となっている。

方法

CAR構築: 抗GD2 14G2a 由来 scFv、CD8α ヒンジ/膜貫通ドメインを基盤に、(1) CD3ζ のみ (Z)、(2) CD28-CD3ζ (28Z)、(3) OX40-CD3ζ (OZ)、(4) CD28-OX40-CD3ζ (28OZ) の4種類の構成を持つ SFG (Spleen Focus-Forming Virus) γ-レトロウイルスベクターを構築した。

T細胞導入: ドナーPBMC (末梢血単核球) を OKT3/IL-2 刺激後、PG13 (gibbon ape leukemia virus envelope-pseudotyped retroviral packaging cell line) パッケージング細胞由来レトロウイルスで形質導入し、CAR発現率 30-70% を達成した。

機能評価: GD2 陽性神経芽腫細胞株である LAN-1 (human neuroblastoma cell line) や SH-SY5Y、および GD2 陰性対照である A204 (human rhabdomyosarcoma cell line) や K562 との共培養系を用いて、IL-2、IFN-γ、TNF-α 産生 (ELISA)、特異的 51Cr release (51クロム放出) 細胞溶解、CFSE (Carboxyfluorescein succinimidyl ester) 希釈による増殖、3H-thymidine 取込、反復抗原刺激 (weekly stimulation × 4週) 下でのT細胞絶対数拡大を測定した。Bcl-xL、Bcl-2 発現をウェスタンブロットで、アポトーシスを Annexin V/PI 染色で評価した。

クローン性拡大アッセイ: Limiting dilution (限界希釈) 法により、単細胞由来のクローン拡大能を評価した。

NF-κB活性化評価: NF-κB (nuclear factor kappa B) 応答エレメント駆動型ルシフェラーゼレポーターを導入したT細胞を用いて、抗原刺激後の NF-κB 活性を測定した。

統計解析: 異なる形質導入細胞間の有意差を評価するために ANOVA (分散分析) を使用し、その後、2つの異なる条件を比較するために Student’s t検定を用いて p値を算出した。