• 著者: Takeshi Isobe, Amir Onn, Daniel Morgensztern, Jörg J. Jacoby, Wenjuan Wu, Tomoaki Shintani, Satoshi Itasaka, Keiko Shibuya, Peter J. Koo, Michael S. O’Reilly, Roy S. Herbst
  • Corresponding author: Roy S. Herbst (Division of Medical Oncology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT, USA)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2013
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 23328546

背景

小細胞肺癌 (SCLC) は、米国における全肺癌の約13%を占める悪性度の高い疾患である。SCLCは急速な増殖、早期の全身播種、そして化学放射線療法への高い初期感受性を特徴とするが、その予後は極めて不良である。診断時に約2/3の患者が進展型 (extensive disease) であり、局限型 (limited disease) であっても5年生存率はStage IIIBで9%、Stage IAで38%に留まることがShepherd et al. JThoracOncol 2007で報告されている。

SCLCの標準治療は、過去30年間大きな変化がなく、シスプラチンとエトポシド (PE) の併用療法が主流であった。Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) データベースの解析では、進展型SCLC患者の全生存期間中央値 (MST) は1973-1974年の6.5か月から1993-1994年の8.2か月へとわずかに改善したに過ぎないことがGovindan et al. JClinOncol 2006により示されている。さらに、1992年から2007年までの68,611例を対象とした最近の解析でも、有意な生存改善は認められていない。この治療停滞の状況を打破するためには、SCLCの腫瘍生物学、特に転移機構や微小環境との相互作用に関する深い理解と、臨床像を忠実に再現できる適切な前臨床モデルの開発が不可欠である。

日本のJCOG 9511試験では、イリノテカンとシスプラチン (IP) の併用療法がPE療法と比較して全生存期間 (OS) の延長を示したが、Hanna et al. JClinOncol 2006Lara et al. JClinOncol 2009などの米国での大規模臨床試験ではこの結果が再現されなかった。この薬剤感受性の地域差や試験間の不一致は、SCLCの複雑な生物学的特性と、それを適切に評価できる前臨床モデルの不足を示唆している。

従来の皮下異種移植モデル (subcutaneous xenograft) は、その簡便さから広く利用されてきたが、いくつかの重大な欠点があった。具体的には、(1) 腫瘍細胞が自然な転移挙動を示さない、(2) 腫瘍と宿主微小環境との臓器特異的な相互作用が再現されない、(3) 薬剤感受性が臨床での効果と乖離することが多い、といった点が挙げられる。これらの欠点により、皮下モデルは新規治療戦略の臨床的有効性を予測する上で限界があることが指摘されてきた。

正所性 (orthotopic) モデルは、腫瘍細胞を本来の発生臓器に移植することで、臓器特異的な微小環境下での腫瘍増殖、浸潤、および転移をより忠実に再現できると期待されている。しかし、SCLCにおいては、Kuo et al. (1992) がSCIDマウスを用いたモデルを報告しているものの、ヌードマウスにおいて簡便かつ再現可能な正所性モデルはこれまで未確立であった。この技術的なギャップが、SCLCの新規治療開発における大きな課題として残されていた。

本研究では、Onn et al. (2003) が開発した非小細胞肺癌 (NSCLC) の正所性モデル樹立手法をSCLCに応用し、複数のSCLC細胞株を用いて独立した正所性モデルを樹立することを試みた。これにより、臨床使用薬剤を用いた薬剤感受性評価を通じて、本モデルの妥当性を検証し、SCLCの病態解明および新規治療戦略開発のための信頼性の高い前臨床プラットフォームを提供することを目的とした。

目的

本研究の目的は、ヒトSCLCの3種類の細胞株 (H69A、NCI-H187、NCI-N417) を用いて、信頼性、再現性、および簡便性に優れたヌードマウス正所性肺内移植モデルを確立し、以下の点を検証することである。

  1. 原発腫瘍増殖と臓器転移パターンの臨床SCLCとの類似性: 確立されたモデルが、ヒトSCLCの臨床的経過、特にリンパ節や遠隔臓器への転移挙動をどの程度忠実に再現するかを評価する。
  2. 使用薬剤に対する薬剤感受性のin vitro/in vivo相関: シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、エトポシドといった臨床で用いられる化学療法薬に対するin vitroでの感受性プロファイルと、in vivoでの抗腫瘍効果との相関関係を解析し、本モデルの薬剤評価系としての妥当性を検証する。
  3. 分子標的薬開発基盤としての有用性: 本モデルが、SCLCの新規分子標的薬や免疫療法薬などの前臨床評価プラットフォームとして、将来的な治療戦略開発にどの程度貢献しうるかを考察する。

これらの検証を通じて、SCLCの病態解明と新規治療法開発に資する、より臨床に近い前臨床モデルの確立を目指す。

結果

正所性移植後の腫瘍増殖と転移パターン: ヒトSCLC細胞の肺内注射後、全ての3細胞株 (H69ALu, H187Lu, N417Lu) において左肺の注射部位に固形腫瘍が形成された。腫瘍形成率はH69ALuでn=20匹中18匹、H187Luでn=19匹中19匹、N417Luでn=20匹中20匹と高かった。これらのモデルでは、縦隔リンパ節、腋窩リンパ節、胸壁、および対側肺 (右肺) への播種が確認され、ヒトSCLCの臨床的転移パターンと類似していた (Table 1)。縦隔リンパ節転移はH69ALuでn=18匹中8匹、H187Luでn=19匹中10匹、N417Luでn=20匹中9匹に認められた。腋窩リンパ節、胸壁、対側肺への転移も各モデルで確認された。中央生存期間はH69ALu群で16週 (範囲12-20週)、H187Lu群で8週 (範囲6-10週)、N417Lu群で7週 (範囲6-8週) と、細胞株によって異なる進行速度を再現した。手術死亡率は5%未満であり、主に注射後の肺出血が原因であった。N417LuおよびH187Luは注射後30日で腫瘍体積が100 mm³に達し、H69ALuは50日で100 mm³に達した。大腫瘍 (>200 mm³) を有するマウスは、小腫瘍 (<50 mm³) を有するマウスと比較して、縦隔リンパ節、腋窩リンパ節、および胸壁への転移が有意に多かった。

GFP標識モデルでの微小転移観察: N417Lu-GFPおよびH187Lu-GFP細胞を移植した各n=6匹のマウスにおいて、注射後15日目には全てのマウスの注射肺に小結節が蛍光顕微鏡で確認された (Figure 2A)。この時点で、各群n=3匹中1匹のマウスで縦隔 (食道傍) リンパ節への微小転移が確認された (Figure 2B)。注射後50日目には、全てのマウスで対側肺、腋窩リンパ節 (Figure 2C)、肋骨、鼻骨、副腎、肝臓への微小転移が蛍光観察により確認された (Figure 2D)。しかし、脳転移はどのマウスでも検出されなかった。

正所性 vs 皮下移植の再現性比較: 正所性移植群におけるN417Luの平均腫瘍体積 (±標準誤差) は、30日目で94±37 mm³、50日目で920±130 mm³であった。H187Luでは30日目で35±1 mm³、50日目で588±108 mm³であった。H69ALuでは50日目で12±5 mm³、120日目で593±124 mm³であった (Figure 3)。N417LuおよびH187LuはH69ALuと比較して肺内での増殖が有意に速かった (p<0.01)。皮下移植群では、N417Luの平均腫瘍体積は30日目で501±157 mm³、50日目で1764±751 mm³であり、H187Luでは30日目で160±83 mm³、50日目で1167±444 mm³であった。H69ALuの皮下腫瘍体積は50日目で225±61 mm³、120日目で834±448 mm³であった。皮下移植腫瘍の増殖速度はN417LuおよびH187LuでH69ALuよりも速かった (p<0.01)。しかし、正所性移植腫瘍における腫瘍体積の変動係数 (標準誤差/平均) は、皮下移植腫瘍と比較して有意に低く (p<0.01)、本モデルの高い再現性を示した。

In vitro化学療法感受性: SCLC細胞株に対する4種類の抗癌剤の細胞毒性効果を72時間連続薬剤曝露で評価した。IC₅₀値 (平均±標準偏差、µM) はTable 2にまとめられている。イリノテカンの活性代謝物であるSN-38に対する感受性は、N417Lu細胞 (0.05±0.02 µM) でH187Lu (0.27±0.11 µM) およびH69ALu細胞 (0.31±0.07 µM) よりも5〜6倍高かった。パクリタキセルに対する感受性は、N417Lu (6.5±1.8 µM) およびH187Lu細胞 (4.3±1.1 µM) でH69ALu細胞 (75.0±25.0 µM) よりも11〜17倍高かった。シスプラチンに対する感受性は、H69ALu群 (4.7±0.6 µM) でN417Lu (24.0±6.7 µM) またはH187Lu群 (25.7±9.8 µM) よりも5倍高かった。エトポシドに対する感受性は、N417Lu (22.0±14.0 µM) およびH187Lu群 (28.5±21.5 µM) でH69ALu群 (72.5±3.5 µM) よりも3倍高かった。これらの結果は、細胞株間で異なる薬剤感受性プロファイルが存在することを示している。

In vivo治療効果: 各腫瘍モデルにおける異なる化学療法薬の有効性を比較するため、マウス群 (n=5) を週1回の腹腔内治療に無作為に割り付けた。治療は腫瘍注射後10日目 (H187LuおよびN417Lu) または20日目 (H69ALu) に開始された。イリノテカン (25 mg/kg/週×6週) は、試験した3つのヒトSCLCモデル全てにおいて、対照群と比較して腫瘍の増殖と進行を有意に抑制した (Figure 4B, 4G)。N417Luモデルでは、イリノテカン治療群の腫瘍発生率はn=15匹中10匹であったのに対し、対照群ではn=15匹中15匹であった。総肺重量は対照群の924±163 mgに対し、イリノテカン群では256±15 mgと有意に低かった (p<0.05)。H187Luモデルでは、イリノテカン治療群の腫瘍重量は342±43 mg、腫瘍体積は57±41 mm³であり、対照群の腫瘍重量670±126 mg、腫瘍体積736±167 mm³と比較して有意な抑制効果を示した (p<0.05)。また、縦隔リンパ節転移も対照群のn=10匹中10匹に対し、イリノテカン群ではn=10匹中3匹と有意に減少した (p<0.05)。H69ALuモデルでも、イリノテカン治療群の腫瘍重量は257±9 mg、体積は13±9 mm³であり、対照群の腫瘍重量524±102 mg、体積250±112 mm³と比較して有意な抑制効果を示し、リンパ節転移も対照群のn=10匹中10匹に対し、イリノテカン群ではn=10匹中3匹と有意に減少した (p<0.05)。パクリタキセル、シスプラチン、エトポシドは、H69ALuモデルのみで有意な腫瘍抑制効果を示した (腫瘍重量245-290 mg、リンパ節転移n=1-2/10)。N417Lu正所性モデルを用いた生存試験では、イリノテカン治療群が対照群と比較して全生存期間を有意に延長した (log-rank p=0.018) (Figure 5)。治療は良好に忍容され、マウスに体重減少や下痢は認められなかった。

In vitro/in vivo相関: イリノテカンとシスプラチンについては、in vitroでの感受性結果とin vivoでの抗腫瘍効果が3つのSCLC細胞株全てで相関を示した。しかし、パクリタキセルとエトポシドでは、in vitroとin vivoの間に明確な相関は観察されなかった。このin vitro IC₅₀値と生体内効果の乖離は、薬物動態、腫瘍微小環境、および宿主免疫機構などのin vivo特異的な要因が薬剤応答に影響を与えている可能性を示唆しており、正所性in vivoモデルが臨床的予測性において優位であることを支持する所見である。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、これまでヌードマウスにおいて安定的な樹立が困難であったSCLC正所性モデルを、Onn et al. (2003) が開発したNSCLC正所性モデル技術をSCLCに応用することで克服した点で、Kuo et al. (1992) によるSCIDマウスモデルに限定されていた先行研究と異なる。本研究では、ヌードマウスで安定的に増殖する派生細胞株 (H69ALu, H187Lu, N417Lu) を樹立し、再現性の高いモデルを提供した。

新規性: 本モデルの新規性は、(1) GFP標識細胞を用いることで、造影剤や放射性物質を必要とせずに微小転移を蛍光リアルタイムで観察できる点、(2) 複数の細胞株を選択することで、異なる薬剤感受性プロファイル (例: N417LuはSN-38感受性が高いがシスプラチン感受性が低い) を持つSCLCのサブタイプを検討できる点、(3) 皮下モデルでは観察されない臓器特異的な微小環境下での薬剤応答を評価できる点にある。特に、イリノテカンが3モデル全てで有意な腫瘍増殖抑制効果を示し、N417Luモデルでは生存期間を有意に延長した (log-rank p=0.018) ことは、本モデルが薬剤評価プラットフォームとして妥当であることを本研究で初めて実証した。

臨床応用: 本モデルは、SCLCの長年の治療停滞を打破するための新規治療戦略、特に分子標的薬 (例: EGFR-TKI、VEGF阻害薬、PARP阻害薬、DLL3-ADC) や免疫腫瘍学薬の前臨床評価プラットフォームとして極めて有用である。本モデルで得られたin vivoデータは、臨床試験の設計や薬剤選択の最適化に貢献し、最終的にはSCLC患者の治療成績向上に繋がる臨床応用が期待される。

残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationが存在する。第一に、マウスが主に原発肺腫瘍の増大による呼吸不全で死亡し、臨床的に重要な肝臓や脳などの遠隔転移による死亡を必ずしも再現しない点である。第二に、脳転移が検出されなかった点も、SCLCの臨床病態を完全に模倣しているとは言えない。第三に、本モデルは細胞株由来であるため、SCLCの臨床腫瘍が持つ分子多様性 (例: ASCL1/NEUROD1サブタイプ) を完全に反映しているわけではない。最後に、ヌードマウスは免疫系が欠損しているため、免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法薬の評価には不向きである。今後の検討課題として、patient-derived xenograft (PDX) モデルや遺伝子改変マウス (Rb/p53欠損GEMM) との組み合わせ、humanized mouse modelを用いた免疫療法評価、およびSCLCサブタイプ特異的な新規標的治療の前臨床開発への応用が期待される。本研究は、SCLCの前臨床モデル整備における重要な基盤を提供した研究として位置付けられる。

方法

細胞株と培養条件: 本研究では、3種類のヒトSCLC細胞株を用いた。NCI-H187 (National Cancer Institute-H187) とNCI-N417 (National Cancer Institute-N417) はATCC (American Type Culture Collection) から入手した。NCI-H69A (National Cancer Institute-H69A) は、NCI-H69細胞株からin vitroでのアガロース浸潤性選択により樹立された細胞株である。これらの細胞株は、10%ウシ胎児血清、L-グルタミン、ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地中で浮遊凝集塊として培養された。培養は37℃、5% CO₂、95%空気の条件下で行われた。全ての細胞培養はマイコプラズマおよび既知のマウス病原ウイルスフリーであることが確認された。

試薬: シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、エトポシドはテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター薬局から購入した。イリノテカンの活性代謝物であるSN-38は、in vitro研究のために第一製薬株式会社 (東京、日本) から提供された。

動物と飼育: 雄の無胸腺ヌードマウス (athymic nude mice) は、NCIフレデリックがん研究開発センター (Frederick, MD) の動物生産エリアから購入した。マウスは、米国農務省、米国保健福祉省、国立衛生研究所の全ての現行規制および基準に従い、特定病原体フリー条件下で飼育された。8〜10週齢のマウスが実験に用いられ、全ての動物実験は施設内動物実験委員会によって承認されたプロトコルに従って実施された。

正所性モデル樹立 (肺内注射): マウスはペントバルビタールナトリウム (50 mg/kg) で麻酔され、右側臥位に置かれた。左胸壁に肩甲骨尾側約5mmの位置に小さな皮膚切開を行った。腫瘍細胞懸濁液は、1.5×10⁶個の腫瘍細胞をHBSS (Hanks’ balanced salt solution) と0.5 mg/mlの増殖因子低減マトリゲル (Matrigel) の等量混合液に懸濁して調製された。30ゲージの皮下注射針を備えた1 mLツベルクリンシリンジを用いて、75 μlの細胞懸濁液を左肺に注射した。針は胸腔内に5〜7 mm迅速に挿入され、細胞懸濁液注入後すぐに抜去された。皮膚は金属クリップで単層閉鎖され、術後14日目に除去された。腫瘍注射後、マウスは左側臥位にされ、45〜60分間観察され完全に回復したことを確認した。

in vivoでの正所性増殖細胞株の選択と腫瘍増殖特性の評価: 上記肺内注射法を用いて、NCI-N417、NCI-H187、NCI-H69A細胞を10匹のヌードマウスの肺に注射した。マウスは瀕死状態になった時点でペントバルビタールナトリウムの過剰投与により安楽死させ、最大の胸腔内腫瘍を無菌的に採取し、ピペットを用いて機械的に解離させ、RPMI 1640培地で3〜5回継代培養し、それぞれN417Lu (NCI-N417由来)、H187Lu (NCI-H187由来)、H69ALu (NCI-H69A由来) 細胞株と命名した。これらの細胞株は、その後、異なる20匹のヌードマウスの肺に注射され、正所性に増殖する腫瘍を比較した。局所腫瘍増殖と転移を評価するため、N417LuおよびH187Lu細胞を移植したマウスは、肺内注射後10、20、30、40、50日目に各n=3〜5匹ずつ安楽死させ、H69ALu細胞を移植したマウスは30、50、90、120日目に安楽死させた。腫瘍体積はπ/6 × 最大径 × (最小径)² の式を用いて算出された。皮下 (subcutis、左flank) 注射群 (n=1.5×10⁶細胞) と体積変動を比較した。

GFP標識: 緑色蛍光タンパク質 (GFP) 標識のため、N417LuとH187Lu細胞株の培養細胞にpEGFPC1プラスミド (Clontech Laboratories Inc.) をFuGene VIトランスフェクション試薬 (Roche Molecular Biochemicals) を用いてトランスフェクションした。48時間後、細胞を回収し、500〜800 µg/mlのG418 (Life Technologies Inc.) を含む選択培地に1:15の比率で播種した。ネオマイシン耐性クローンは、トリプシン-エチレンジアミン四酢酸を用いたクローニングシリンダーで単離された。in vivo研究のため、高強度のGFP蛍光を示す安定なクローンをプールし (N417Lu-GFPおよびH187Lu-GFP)、各細胞株につきn=6匹のマウスの左肺に1.5×10⁶個の細胞をマトリゲルとHBSSに懸濁して注射した。各群からn=3匹のマウスを15日目に、残りのn=3匹を50日目に安楽死させた。Leica MZ FLIII蛍光実体顕微鏡を用いて、微小転移を蛍光観察した。

In vitro増殖抑制アッセイ: シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、エトポシドのSCLC細胞株に対するin vitroでの抗腫瘍活性を測定するため、MTTアッセイ (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド) を用いた化学感受性試験を実施した。細胞は96ウェルマイクロタイタープレートに5×10³細胞/ウェルの密度で播種され、各薬剤は様々な濃度で添加された。37℃で72時間インキュベートした後、MTT溶液 (5 mg/ml) 20 μlを各ウェルに添加し、さらに4時間37℃でインキュベートした。プレートを200 gで5分間遠心分離した後、培地を各ウェルから吸引し、180 μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに加えてホルマザンを溶解した。吸光度は570 nmで測定された。各実験は各薬剤濃度につき6連で実施され、独立して3〜4回繰り返された。半数阻害濃度 (IC₅₀) 値は、生存曲線に基づいて計算された吸光度を50%減少させるのに必要な濃度と定義された。

In vivoマウス治療試験: Study 1: ヒトSCLC細胞 (N417Lu、H187Lu、H69ALu) をヌードマウスの肺に注射した。肺内注射後10日目 (H187LuおよびN417Lu) または20日目 (H69ALu) に、マウスを無作為に5つの治療群 (各群n=5匹) に割り付け、6週間週1回腹腔内投与を行った。治療群は、(1) HBSS (対照群)、(2) イリノテカン25 mg/kg、(3) パクリタキセル10 mg/kg、(4) シスプラチン1.2 mg/kg、(5) エトポシド8 mg/kgであった。マウスは毎週体重を測定し、薬剤治療による体重減少を評価した。全ての動物は6週間後に安楽死させた。この実験は1回繰り返された。 Study 2: N417Lu細胞株を肺に注射したマウスを用いて生存試験を実施した。肺内注射後15日目に、マウスを無作為に2つの治療群 (各群n=8匹) に割り付けた。(1) HBSS (対照群) または (2) イリノテカン25 mg/kgを6週間週1回腹腔内投与した。マウスは腫瘍増殖の兆候について毎日観察され、瀕死状態になった時点で安楽死させた。

病理解剖と組織調製: マウスは致死量のペントバルビタールナトリウム (100 mg/kg) で安楽死させた。胸部臓器は、全てのリンパ節と腫瘍を含めて一括して摘出した。心臓を解剖・除去した後、肺と腫瘍塊を冷PBSで洗浄し、重量を測定した。腫瘍体積はπ/6 × 最大径 × (最小径)² の式を用いて測定された。他の内臓臓器も摘出し、転移の有無を検査した。皮下腫瘍は摘出し、PBSで洗浄し、重量を測定した。ヘマトキシリン・エオシン染色のため、腫瘍の一部はホルマリン固定されパラフィン包埋された。

顕微鏡観察と画像化: GFPをトランスフェクションした腫瘍細胞の研究では、Leica MZ FLIII蛍光実体顕微鏡 (Leica Microsystems Inc.) を用いて蛍光転移を可視化した。顕微鏡には100W水銀蒸気ランプ電源が装備され、GFPフィルターセットが装着されていた。画像はImage-Pro Plus (version 4.0; Media Cybernetics LP) およびAdobe Photoshop (version 5.5; Adobe Systems Inc.) を用いて処理された。

統計解析: 治療群間の腫瘍発生率およびリンパ節転移発生率の差の統計的有意性は、Fisher’s exact testを用いて計算された。腫瘍発生率、腫瘍重量、腫瘍体積における治療群間の差の統計的有意性は、unpaired Student’s t testを用いて計算された。生存期間の差を推定するためにKaplan-Meier法が用いられ、群間の累積生存期間はlog-rank testを用いて比較された。p値が0.05未満の場合を統計的に有意と判断した。