• 著者: Ready NE, Ott PA, Hellmann MD, Zugazagoitia J, Hann CL, de Braud F, Antonia SJ, Ascierto PA, Moreno V, Atmaca A, Salvagni S, Taylor M, Amin A, Camidge DR, Horn L, Calvo E, Li A, Lin WH, Callahan MK, Spigel DR
  • Corresponding author: Ready NE (Duke University Medical Center, Durham, NC)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2019-10-17
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31629915

背景

小細胞肺癌 (SCLC) は悪性度が高く、診断時には約3分の2の患者が進展型SCLCと診断される。初回治療として白金製剤ベースの化学療法が標準であるが、奏効してもほとんどの患者で再発し、再発SCLCに対する治療選択肢は極めて限られており、予後は不良である。特に、二次治療以降の再発SCLCでは、有効な治療法が不足しており、新たな治療戦略の開発が喫緊の課題であった。免疫チェックポイント阻害薬は、様々な癌腫で有望な結果を示しており、SCLCにおいてもその可能性が模索されてきた。

ニボルマブは抗PD-1抗体であり、イピリムマブは抗CTLA-4抗体である。これらは異なる作用機序を持つ免疫チェックポイント阻害薬であり、併用することで相補的な抗腫瘍効果が期待される。CheckMate 032試験 (NCT01928394) は、進行固形癌患者を対象とした多施設共同オープンラベル第1/2相試験であり、SCLCコホートも含まれていた。非無作為化コホートの初期結果では、白金製剤ベース化学療法後に増悪したSCLC患者において、ニボルマブ単剤療法 (客観的奏効率 [ORR] 10〜12%、2年全生存期間 [OS] 17%) およびニボルマブ 1 mg/kg + イピリムマブ 3 mg/kg併用療法 (ORR 21〜23%、2年OS 30%) が臨床活性を示し、忍容性も確認されたことが報告された (Antonia et al. LancetOncol 2016、Hellmann et al. J Thorac Oncol 2017)。これらの有望な結果に基づき、米国食品医薬品局 (FDA) は、ニボルマブ単剤を3次治療以降の転移性SCLCに対する治療薬として承認した。

しかし、これらの初期報告は主に非無作為化コホートからのデータであり、ニボルマブ単剤とニボルマブ+イピリムマブ併用療法の直接比較データは不足していた。そのため、CheckMate 032試験には、両治療法の有効性と安全性を直接比較することを目的とした無作為化コホートが追加された。この無作為化コホートの初期報告では、最短3ヶ月の追跡期間において、ORRはニボルマブ+イピリムマブ併用療法群でニボルマブ単剤療法群よりも高かった (21% vs 12%) が、OSの差は不明瞭であった (Hellmann et al. J Clin Oncol 2017)。SCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬の長期的な有効性、特にOSに対する影響、および安全性プロファイルについては、さらなる長期追跡データが必要とされていた。また、腫瘍変異負荷 (TMB) などのバイオマーカーが、SCLCにおける免疫療法の効果予測に役立つかどうかも未解明な点が残されていた。本報告は、最短29ヶ月の追跡期間を含む長期更新解析であり、再発SCLCにおけるニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法の長期的な有効性と安全性を詳細に評価することを目的としている。特に、初期報告ではORRの差がOSに結びついていなかったため、その乖離の原因を考察することも重要な課題の一つである。

目的

本研究の目的は、CheckMate 032試験の無作為化SCLCコホートにおいて、再発SCLCに対するニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性および安全性を長期追跡データを用いて評価することである。主要評価項目は、独立中央評価 (BICR) による客観的奏効率 (ORR) であった。副次評価項目として、奏効期間 (DOR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、および安全性を評価した。さらに、探索的解析として、腫瘍変異負荷 (TMB) と治療効果との関連についても検討することを目的とした。特に、初期報告ではORRの差がOSに結びついていなかったため、長期OSデータを用いてその乖離の原因を考察することも重要な目的の一つである。本研究は、再発SCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬の最適な治療戦略を確立するための重要な情報を提供することを目指す。

結果

患者背景: 無作為化SCLCコホートには合計243名の患者が登録され、ニボルマブ単剤群に147名、ニボルマブ+イピリムマブ併用群に96名が割り付けられた。両群間でベースラインの患者特性はバランスが取れていた (Table 1)。年齢中央値はニボルマブ群で63.0歳、併用療法群で65.0歳であった。ECOG PS 1の患者が両群ともに約7割を占めた (ニボルマブ群 66.7%、併用療法群 70.8%)。前治療ライン数は、両群ともに1ラインが約66〜68%であった。白金製剤感受性 (一次治療完了後90日以上増悪なし) の患者は、ニボルマブ群で49.7%、併用療法群で57.3%であった。TMB評価が可能であった患者は、ニボルマブ群で99例 (67.3%)、併用療法群で65例 (67.7%) であり、TMB低値、中値、高値の分布も両群で類似していた。

奏効率 (ORR) および奏効期間 (DOR): 主要評価項目であるORRは、ニボルマブ単剤群で11.6% (95% CI: 6.9〜17.9) であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ併用群では21.9% (95% CI: 14.1〜31.5) と有意に高かった (Table 2)。両群間のORRの絶対差は10.3% (95% CI: 0.6〜20.1) であり、オッズ比は2.12 (95% CI: 1.06〜4.26, p=0.03) であった。この結果は、主要評価項目が達成されたことを示す。奏効期間中央値は、ニボルマブ単剤群で15.8ヶ月 (95% CI: 7.4〜NR) であったのに対し、併用療法群では10.0ヶ月 (95% CI: 6.7〜NR) であった。奏効した患者のうち、6ヶ月以上奏効が持続した割合は、ニボルマブ単剤群で70.6% (17例中12例)、併用療法群で71.4% (21例中15例) であった (Fig. 1)。12ヶ月以上奏効が持続した割合は、ニボルマブ単剤群で35.3% (17例中6例)、併用療法群で33.3% (21例中7例) であった。

無増悪生存期間 (PFS): PFS中央値は、ニボルマブ単剤群で1.4ヶ月 (95% CI: 1.3〜1.4)、併用療法群で1.5ヶ月 (95% CI: 1.4〜2.2) と、両群間で大きな差は認められなかった。3ヶ月PFS率は、ニボルマブ単剤群で19.8% (95% CI: 13.7〜26.8)、併用療法群で31.6% (95% CI: 22.6〜41.0) であった。6ヶ月PFS率は、ニボルマブ単剤群で15.9% (95% CI: 10.3〜22.5)、併用療法群で22.1% (95% CI: 14.4〜30.9) であった。12ヶ月PFS率は、ニボルマブ単剤群で9.5% (95% CI: 5.2〜15.2)、併用療法群で11.9% (95% CI: 6.3〜19.5) であった (Fig. 2)。ORRの有意な改善は、PFSの有意な延長には繋がらなかった。

全生存期間 (OS) の長期追跡結果: 長期OSのデータロック (2019年4月12日) 時点での最小追跡期間は、ニボルマブ単剤群で29.0ヶ月、併用療法群で28.4ヶ月であった。OS中央値は、ニボルマブ単剤群で5.7ヶ月 (95% CI: 3.8〜7.6)、併用療法群で4.7ヶ月 (95% CI: 3.1〜8.3) であり、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった (HR 0.99, 95% CI: 0.75-1.31)。12ヶ月OS率は、ニボルマブ単剤群で30.5% (95% CI: 23.1〜38.3)、併用療法群で30.2% (95% CI: 21.2〜39.6) であった。24ヶ月OS率は、ニボルマブ単剤群で17.9% (95% CI: 11.9〜24.9)、併用療法群で16.9% (95% CI: 10.1〜25.3) であり、両群で類似した長期生存率が示された (Fig. 3A)。

サブグループ解析におけるOS: 年齢、性別、前治療ライン数、白金感受性、肝転移の有無、喫煙状況、ベースラインTMBなどの主要なサブグループ解析においても、OSにおける治療群間の有意な差は認められなかった (Fig. 3B)。TMB高値の患者群では、ニボルマブ+イピリムマブ併用群のOS中央値が10.7ヶ月 (95% CI: 1.8〜23.6) であったのに対し、ニボルマブ単剤群では6.6ヶ月 (95% CI: 3.2〜12.0) と、併用療法群でOSが長い傾向が示されたが、統計学的に有意ではなかった (HR 0.74, 95% CI: 0.39〜1.40)。TMB低値および中値の患者群では、両治療群間でOSに明確な差は認められなかった。

安全性プロファイル: 治療関連有害事象 (TRAE) は、ニボルマブ単剤群の53.7%で発現したのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ併用群では68.8%で発現した (Table 3)。特に、Grade 3〜4のTRAEは、ニボルマブ単剤群で12.9%であったのに対し、併用療法群では37.5%と約3倍高頻度であった。TRAEによる治療中止は、ニボルマブ単剤群で2.7%であったのに対し、併用療法群では13.5%と約5倍高かった。治療関連死は、ニボルマブ単剤群で1例 (肺炎) 報告されたのに対し、併用療法群では3例 (肝炎、肺炎、脳炎各1例) 報告された。併用療法群で頻度の高かったGrade 3〜4 TRAEは、下痢 (5.2%)、AST上昇 (5.2%)、リパーゼ上昇 (5.2%)、大腸炎 (4.2%)、肺炎 (3.1%) などであった。治療中止の主な理由は、両群ともに病勢進行であったが、併用療法群ではTRAEによる中止が有意に多かった。後続の全身性癌治療を受けた患者の割合は、ニボルマブ単剤群で32.0%であったのに対し、併用療法群では16.7%と低かった。これは、併用療法群でTRAEによる治療中止が多かったことが一因であると考えられる。

考察/結論

本CheckMate 032試験の無作為化コホートにおける長期追跡解析の結果、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、ニボルマブ単剤療法と比較して、主要評価項目であるORRを有意に改善した (21.9% vs 11.6%, p=0.03)。しかし、このORRの優位性は、PFSや長期OSの延長には翻訳されなかった。両治療群のOS中央値はそれぞれ5.7ヶ月と4.7ヶ月であり、24ヶ月OS率はニボルマブ単剤群で17.9%、併用療法群で16.9%と類似していた (HR 0.99, 95% CI: 0.75-1.31)。

先行研究との違い: このORRとOSの乖離は、いくつかの要因によって説明されると考えられる。第一に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群では、Grade 3〜4のTRAEの発現率がニボルマブ単剤療法群と比較して有意に高く (37.5% vs 12.9%)、TRAEによる治療中止率も高かった (13.5% vs 2.7%)。これにより、併用療法群では治療継続期間が短くなり、早期の奏効が得られてもその持続性が損なわれた可能性がある。実際、奏効期間中央値はニボルマブ単剤群で15.8ヶ月であったのに対し、併用療法群では10.0ヶ月と短かった。第二に、併用療法群ではTRAEによる治療中止が多いため、後続の全身性癌治療を受ける機会が減少した可能性も考えられる (併用療法群 16.7% vs 単剤療法群 32.0%)。これらの要因が複合的に作用し、ORRの改善がOSの延長に結びつかなかったと考察される。これは、非小細胞肺癌 (NSCLC) におけるニボルマブとイピリムマブの併用療法 (ニボルマブ 3 mg/kg + イピリムマブ 1 mg/kg) がOSを延長したという先行研究の報告 (Hellmann et al. NEnglJMed 2019) とは対照的である。

新規性: 本研究におけるニボルマブ単剤療法の有効性データ (ORR 11.6%、DOR中央値 15.8ヶ月、12ヶ月OS率 30.5%) は、CheckMate 032試験の非無作為化コホートおよびプールされたデータから報告された先行研究の結果 (Ready et al. JThoracOncol 2019) と一致しており、データの再現性が高いことを示している。これは、ニボルマブ単剤療法が再発SCLC患者の一部に持続的な奏効をもたらし、忍容性も良好であることを裏付けるものであり、本研究で初めて長期追跡におけるOSの類似性が示された。

臨床応用: 安全性プロファイルに関しては、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群でより高い毒性が認められた。本試験で用いられたニボルマブ 1 mg/kg + イピリムマブ 3 mg/kgのレジメンは、NSCLCで検討されているニボルマブ 3 mg/kg + イピリムマブ 1 mg/kgのレジメン (Hellmann et al. NEnglJMed 2019) とは用量設定が異なり、SCLC患者ではより高い毒性を示すことが示唆された。これは、SCLC患者における免疫チェックポイント阻害薬併用療法の至適用量および投与スケジュールの検討が、今後の臨床応用において重要な課題であることを示している。

残された課題: 探索的解析では、TMB高値の患者群において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりもOSを延長する傾向が示されたが、統計学的有意差は認められなかった (HR 0.74, 95% CI: 0.39-1.40)。これは、先行研究であるHellmann et al. CancerCell 2018の探索的解析結果と同様の傾向であるが、サンプルサイズの限界と探索的性質から、SCLCにおけるTMBのバイオマーカーとしての役割は未確立であり、さらなる検証が必要である。本研究の主な限界は、オープンラベル試験であること、およびTMB解析が探索的であったことである。また、併用療法群における高い毒性による治療中止が、OSの改善を妨げた可能性があり、SCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬併用療法の最適な用量設定や患者選択基準の確立が今後の重要な課題として残されている。CheckMate 451試験 (維持療法としてのニボルマブ±イピリムマブ) でもOSの有意な改善が示されなかったことと合わせ、SCLC診断後の免疫チェックポイント阻害薬の至適投与タイミング、患者選択、および用量の最適化が依然として未解明な点である。

方法

本研究は、多施設共同オープンラベル第1/2相試験であるCheckMate 032 (NCT01928394) のSCLC無作為化コホートのデータを用いた。

患者選択基準: 18歳以上の患者で、組織学的または細胞学的に限局型または進展型SCLCと診断され、1〜2ラインの前治療化学療法 (一次治療として白金製剤ベースのレジメンを含む) 後に病勢進行が認められた者が対象とされた。ECOGパフォーマンスステータス (PS) は0または1であった。活動性脳転移または軟膜転移を有する患者は除外されたが、治療済みで安定した中枢神経系 (CNS) 転移を有する患者は適格とされた。PD-L1発現による患者選択は行われなかった。

試験デザインと治療: 患者は、前治療ライン数 (1ライン vs 2〜3ライン) で層別化された後、3:2の比率で無作為に2つの治療群に割り付けられた。

  1. ニボルマブ単剤群 (n=147): ニボルマブ 3 mg/kgを2週間ごとに静脈内投与。
  2. ニボルマブ+イピリムマブ併用群 (n=96): ニボルマブ 1 mg/kg + イピリムマブ 3 mg/kgを3週間ごとに4サイクル静脈内投与後、ニボルマブ 3 mg/kgを2週間ごとに継続投与。 治療は病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続された。登録期間は2015年10月21日から2016年11月30日までであった。

評価項目:

  • 主要評価項目: 独立中央評価 (BICR) によるRECIST v1.1 (Eisenhauer et al. EurJCancer 2009) に基づくORR。
  • 副次評価項目: BICRによるDOR、BICRによるPFS、OS、および安全性。有害事象はNCI-CTCAE v4.0に従って評価された。
  • 探索的評価項目: 全エキソームシーケンス (WES) により腫瘍変異負荷 (TMB) を測定し、TMB低値、中値、高値の3分位に分類して、治療効果との関連を評価した。TMBカテゴリー (低、中、高) は、無作為化コホートのTMB評価可能患者プールから、ベースラインの3分位に従って定義された。

データロック: ORR、PFS、および安全性に関するデータロックは2017年11月6日であり、この時点での最小追跡期間はニボルマブ群で11.9ヶ月、ニボルマブ+イピリムマブ群で11.2ヶ月であった。長期OSに関するデータロックは2019年4月12日であり、この時点での最小追跡期間はニボルマブ群で29.0ヶ月、ニボルマブ+イピリムマブ群で28.4ヶ月であった。

統計解析: 有効性解析は、以前に報告された方法に従って実施された。ORRの群間比較には、層別Cochran-Mantel-Haenszel法が用いられ、オッズ比 (OR) と95%信頼区間 (CI) が算出された。PFSおよびOSの解析には、カプラン・マイヤー法が用いられ、ハザード比 (HR) と95% CIが算出された。サブグループ解析も実施された。