RAGE (AGER, Receptor for advanced glycation end products)
一行要約
RAGE (遺伝子名 AGER) は immunoglobulin superfamily に属する multi-ligand pattern recognition receptor で、advanced glycation end products (AGE) に加え HMGB1、S100 ファミリー、ヒストン、amyloid-β など多様な DAMP を認識し、NF-κB を介した持続的炎症シグナルを駆動する。肺は RAGE 発現が生理的に最も高い臓器で、肺胞上皮 (AT1 細胞) のマーカーかつ受容体として機能する。腫瘍では RAGE-DAMP 軸が腫瘍促進性炎症・NET・転移ニッチ形成に関与する。
主要エビデンス
- 肺胞上皮の RAGE と再生: 肺胞 AT1 細胞マーカー / 受容体としての RAGE が肺傷害後の再生・マクロファージ動態に関与 (Ruscitti et al. SciImmunol 2024)
- N2 好中球極性化と RAGE 軸: 腫瘍由来 exosome / DAMP が RAGE を介して好中球を腫瘍促進性 N2 へ極性化 (Zhang et al. MolCancer 2018)
- NET 炎症の制御: ヒストン / DNA / シトルリン化が NET 関連炎症を増幅する文脈で RAGE-DAMP センシングが関与 (Tsourouktsoglou et al. CellRep 2020)
- 好中球 collective の DAMP センシング: 好中球集団行動における DAMP 受容体としての RAGE (Ballesteros et al. Cell 2025)
メカニズム
RAGE は 3 個の細胞外免疫グロブリン様ドメイン (V / C1 / C2)、膜貫通領域、短い細胞質尾部を持つ。V ドメインを中心に AGE、HMGB1、S100A8/A9/A12、amyloid-β、ヒストン、核酸など構造的に多様なリガンドを結合する multi-ligand 性が特徴である。リガンド結合で受容体がオリゴマー化し、細胞質尾部が adaptor DIAPH1 を介して NF-κB、MAPK、PI3K、Rho-GTPase 経路を活性化する。重要な点として RAGE シグナルは RAGE 自身の発現を NF-κB 依存的にアップレギュレートする正のフィードバックを形成し、慢性・自己増幅的な炎症を生む。腫瘍微小環境では DAMP-RAGE 軸が好中球の腫瘍促進性極性化 (N2)、NETosis、myeloid 動員、血管透過性亢進を介して腫瘍促進性炎症と転移前ニッチ形成を駆動する。可溶型 RAGE (sRAGE) はリガンドを捕捉する decoy として働き保護的に作用する。
臨床位置づけ
RAGE は慢性炎症・糖尿病合併症・神経変性で確立した治療標的で、低分子拮抗薬 (azeliragon) や decoy sRAGE が開発されてきた。肺領域では RAGE が肺胞上皮マーカーかつ急性肺傷害 / ARDS / 線維化のバイオマーカー (血清 sRAGE) として用いられる。腫瘍では RAGE-DAMP 軸が腫瘍促進性炎症・NET・転移を駆動する標的として前臨床で探索されるが、multi-ligand 性と正常組織発現ゆえ選択的阻害と治療域確保が課題。
Open Questions
- 腫瘍促進性 RAGE-DAMP シグナルを選択的に遮断しつつ生理的肺胞機能を温存できるか
- RAGE 拮抗が NET / 好中球極性化を介した転移・治療抵抗性を臨床的に抑制するか