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The capture of extracellular vesicles endogenously released by xenotransplanted tumours induces an inflammatory reaction in the premetastatic niche

  • 著者: Laurence Blavier, Rie Nakata, Paolo Neviani, Khounish Sharma, Hiroyuki Shimada, Aitor Benedicto, Irina Matei, David Lyden, Yves A. DeClerck
  • Corresponding author: Yves A. DeClerck (The Saban Research Institute of Children’s Hospital Los Angeles, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA)
  • 雑誌: Journal of Extracellular Vesicles
  • 発行年: 2023
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 37194998

背景

転移はがん関連死の主要な原因であり、腫瘍細胞と転移臓器の宿主細胞との複雑な相互作用によって進行する多段階プロセスである。原発腫瘍から分泌される因子が、腫瘍細胞のホーミングに先立って転移臓器に支持的な微小環境(転移前ニッチ、PMN)を形成するという概念は広く受け入れられている Kaplan et al. Nature 2005。腫瘍由来細胞外小胞(TEV)は、細胞間コミュニケーションにおいて多様な生理学的・病理学的役割を担い、特にがんの進行において血管新生、炎症、腫瘍細胞の生存、薬剤耐性、免疫回避を促進することが知られている Becker et al。TEVは、その由来する腫瘍の主要な転移部位を反映する特異的なインテグリンベースの臓器向性(organotropism)を有し Hoshino et al. Nature 2015、PMN形成への寄与が示唆されている Peinado et al. NatMed 2012

これまでの多くの研究は、in vitroまたはin vivoでの外因性EV投与に依存しており、培養細胞から様々な技術で精製されたEVが用いられてきた。しかし、これらの精製操作はEVの構造や機能に変化をもたらす可能性があり、また脂溶性色素や膜色素などの追跡試薬はアーティファクトを引き起こすことが指摘されている Thery et al. JExtracellVesicles 2018。内腔性蛍光タンパク質によるEVタグや細胞レポーターシステムを用いた内因性EV追跡の先行研究も存在するものの、内因性TEVがPMNを形成し、その後の転移腫瘍細胞の着床(ホーミング)に先行することをin vivoで直接実証した研究はこれまで報告されていなかった。特に、「TEV捕捉が転移腫瘍細胞の着床に時間的に先行する」というPMN仮説の核心的予測は、精製・外因性投与EVでは検証が不可能であり、内因性放出系による実証が強く求められていた。また、TEV捕捉の臓器向性が内因性放出EVでも成立するかどうかは未確認であり、この点も重要な知識ギャップとして残されていた。これらの課題を克服し、TEVのPMN形成における直接的かつ時系列的な寄与を詳細に解析することが、転移の早期段階における介入戦略を開発するために不可欠である。これまでの研究では、内因性TEVの動態を正確に追跡するためのモデルが不足しており、PMN形成におけるTEVの役割に関する理解が不十分であった。

目的

本研究の目的は、ミリストイル化GFPタグ付きTEV(GFTEV)を内因性放出する腫瘍動物モデルを構築し、転移前ニッチ(PMN)におけるTEV捕捉の動態、臓器向性、およびTEV捕捉細胞における炎症遺伝子発現変化を系統的に解析することである。これにより、PMN形成へのTEVの直接的かつ時系列的な寄与を明らかにすることを目指した。具体的には、外因性EV投与に伴うアーティファクトを排除し、内因性放出されるTEVのin vivoでの挙動を正確に追跡することで、TEV捕捉が転移腫瘍細胞のホーミングに先行するというPMN仮説の核心を検証する。さらに、TEV捕捉の臓器特異性を評価し、PMNから転移ニッチ(MN)への進行に伴う宿主細胞の分子レベルでの変化を解明する。本研究は、内因性放出されるTEVの動態を詳細に解析することで、転移の早期段階における新たな治療標的の同定に貢献することを目指す。

結果

GFTEVの特性評価とin vitroマクロファージへの移行: TEM解析により、GFTEVは平均サイズ94.7 nmの二重膜を有する円形構造の小型EVとして確認された。NTAでは平均サイズ92.9 nmであった。Western blotでは、syntenin、ALIX、CD63、CD81、CD9が陽性であり、GM130(ゴルジ体マーカー)およびcalnexin(小胞体マーカー)は陰性であったことから、Thery et al. JExtracellVesicles 2018に準拠した小型EVとしての特性が確認された(Figure 1b, c, S1c)。NanoString miRNA解析では、miR-1246がTEV特異的onco-miRとして同定され、RNase処理によりmiR-1246はTEV内腔および膜表面の両者に存在することが示された(Figure 1d, S1d)。in vitro接触共培養実験では、M24met MEL細胞とRAW264.7マクロファージの共培養で4.2±2.6%のF4/80+GFP+ RAW264.7マクロファージが検出され、SK-N-BE(2) NB細胞との共培養では15.4±5.8%のF4/80+GFP+ RAW264.7マクロファージが検出された(Figure 1e)。フローサイトメトリーおよびqRT-PCRによりGFPおよびmiR-1246の移行が確認された(Figure 1e)。非接触Transwell共培養でもGFP+ RAW264.7細胞がMELで0.022%、NBで0.016%検出され、miR-1246の移行が確認されたが、接触共培養より低率であった。これは、EV以外のメカニズム(トロゴサイトーシス、アポトーシス小体)も一部寄与する可能性を示唆する。アポトーシス細胞の比率は3日間の共培養後、MELで2.9%、NBで4.0%と低率であった(Figure 1f)。

TEV捕捉は転移腫瘍細胞着床に先行する(MEL肺転移モデル): 血漿EV中のmiR-1246はDay 5からDay 25にかけて継続的に検出され、内因性TEV放出の動態が確認された(Figure 2a)。免疫蛍光顕微鏡解析では、Day 10の肺凍結切片にF4/80+GFP+マクロファージが観察されたが、GFP+腫瘍細胞は検出されなかった(Figure 2b)。フローサイトメトリー定量解析では、Day 10に肺F4/80+GFP+細胞が全肺細胞中0.099%±0.016で検出されたのに対し、CD298+GFP+腫瘍細胞はDay 15まで検出されず(Day 15: 0.0027%±0.0018、Day 25: 0.18%±0.15)、TEV捕捉が腫瘍細胞着床に明確に時間的に先行することが示された(Figure 2c)。この解析にはn=4 mice (Day 5, Day 10) および n=5 mice (Day 15, Day 20, Day 25) が用いられた。

TEV捕捉は転移腫瘍細胞着床に先行する(NB肝臓転移モデル): 血漿EV中のmiR-1246はDay 28で確認された(Figure 3a)。免疫蛍光顕微鏡では、Day 14の肝臓にF4/80+GFP+マクロファージが検出されたが、GFP+腫瘍細胞はDay 28から出現した(Figure 3b)。フローサイトメトリーでは、GFP+GD2-細胞(TEV捕捉細胞)がDay 14に0.07%±0.09で検出されたのに対し、GFP+GD2+腫瘍細胞はDay 21で0.24%±0.4、Day 28で1.85%±2.67と段階的に増加した(Day 14 n=5 mice、Day 21 n=6 mice、Day 28 n=10 mice)(Figure 3c)。別のCHLA-136 NBモデルでも同様の時間的順序が再現された(Figure S3c)。これらの結果は、TEV捕捉が転移腫瘍細胞のホーミングに先行するというPMN仮説を支持する。

TEV捕捉の臓器特異性(オルガノトロピズム): MELモデルでは、Day 28に肺でF4/80+GFP+細胞(全細胞中0.68%±0.42、全F4/80+細胞中9.76%±5.33)および腫瘍細胞(全細胞中1.15%±1.28)が検出されたが、肝臓、腎臓、脳では免疫蛍光顕微鏡・フローサイトメトリーいずれでも検出されなかった(Figure 4a)。NBモデルでは、Day 28に肝臓でF4/80+GFP+細胞(全細胞中1.54%±0.91、全マクロファージ中10.28%±5.56)および腫瘍細胞(0.79%±0.44)が検出されたが、肺、腎臓、脳では検出されなかった(Figure 4b)。例外として、骨髄では低率のTEV捕捉骨髄系細胞が検出されたが、転移腫瘍細胞は実験期間内に検出されなかった(Figure S3d)。肝臓では、Kupffer細胞(F4/80+GFP+ 0.08%±0.13)のみならず、肝臓星細胞(desmin+GFP+ 0.11%±0.16)および肝細胞(albumin+GFP+ 0.11%±0.12)でもTEV捕捉が確認された(Day 21-28、n=8 mice)(Figure 3e)。

インテグリンの臓器向性への関与: LC-MS/MSプロテオーム解析により、M24met MEL TEVはITGB1、ITGA2、ITGA3、ITGA6(ラミニン結合インテグリン、肺ECMに豊富)を高発現し、SK-N-BE(2) Liv NB TEVはITGB1、ITGA1、ITGA4(ITGA4はフィブロネクチン結合、肝臓PMN形成時に増加)を発現することが示された(Figure S4)。これらのインテグリンサブセットの差異が、腫瘍種固有のオルガノトロピズムを規定するインテグリン「zip code」として機能する可能性が示唆された。

PMNからMN移行における炎症遺伝子発現の動的変化: TEV捕捉細胞(F4/80+GFP+)および非捕捉細胞をフローサイトメトリーでソートし、TaqManアレイ(マウス免疫96遺伝子パネル)で解析した(Figure 5a)。MEL PMNの捕捉マクロファージでは、Csf1、Il1α、Il6、Tnfα、Ski、Bcl2l1が上昇した。非捕捉マクロファージではCd38、Ccl3、Ccl5、Cxcl10が上昇した。MN段階では、Il1α、Il18、Skiを除くほとんどの遺伝子上昇が消失した。NB PMNの捕捉Kupffer細胞では、Cd4、Cd68、Cd86、Icos、Il10、Il18、Hmox1、Tfrc、Vcam1が上昇し、MN段階ではIl12、Bcl2、Edn1に代わりCxcr3、Il6、Vegfaが上昇した(Figure 5c)。miR-1246はGFP+マクロファージ、肝臓マクロファージ、星細胞のqRT-PCRで転移が確認された(Figure 5b)。これらの結果は、TEV捕捉がPMNにおいて炎症反応を誘導し、PMNからMNへの進行に伴いプロ腫瘍形成性反応へと変化することを示唆する。

考察/結論

新規性: 本研究は、ミリストイル化GFPタグ付きTEV(GFTEV)を内因性放出する腫瘍動物モデルを用いることで、外因性EV投与の技術的欠点(精製操作による構造・機能変化、脂溶性色素アーティファクト)を克服し、内因性放出されるTEVのin vivoでの挙動を忠実に追跡できることを初めて示した。この新規アプローチにより、TEV捕捉が転移腫瘍細胞の着床に先行するというPMN仮説の核心を、in vivoで直接的に検証することが可能となった。GFP+とGFP-細胞の比較においてmiR-1246をカーゴとして活用することで、TEV由来カーゴの宿主細胞への実質的な転移を確認した。

先行研究との違い: 第二に、TEV捕捉が転移腫瘍細胞の着床に時間的に先行するという結果(MELモデル: Day 10 vs Day 15以降、NBモデル: Day 14 vs Day 21以降)は、PMN仮説の核心的予測を内因性系で初めて支持するものである。これは、外因性EV投与では検証が不可能であった時系列的な関係性を明らかにした点で、これまでの研究とは対照的である。検出されたTEV捕捉細胞の割合(0.1-5%)は、GFPのタンパク質分解を考慮すると実際の捕捉量を過小評価している可能性がある。また、TEV捕捉の臓器特異性(メラノーマ→肺、神経芽腫→肝臓)は、腫瘍種ごとのオルガノトロピズムが内因性TEVにおいても成立することを示す。外因性投与EVでは肝臓が主要な捕捉臓器であることが報告されているが、本研究の内因性MELモデルで肝臓への捕捉が観察されなかったことは注目に値し、外因性・内因性投与の本質的な差異を示唆する。インテグリンzip code仮説(MEL: ITGA2/3/6β1、NB: ITGA4β1)との一致は、この仮説を支持する。

PMNからMNへの移行における炎症遺伝子発現の動的変化: TEV捕捉細胞の炎症遺伝子発現がPMNからMNへの移行で動的に変化し(炎症性サイトカイン・ケモカインが最初は亢進し、後に転移促進シグナルへ移行)、この分子的シフトがTEVによる積極的なニッチ形成推進を示す。これは、転移早期介入標的として転移前ニッチにおけるTEV捕捉シグナルが有望であることを示唆する。

残された課題と臨床応用: 今後の検討課題として、TEV捕捉マクロファージが組織常在性(胚原性)か単球由来かの同定、並びに肝臓での肝星細胞・肝細胞によるTEV捕捉の機能的意義の解明が挙げられる。また、本研究は免疫不全マウス(NSGマウス)を用いた異種移植モデルであるため、免疫担当マウスにおける同様のモデル開発が必要である。これらの知見は、転移前ニッチにおけるTEV捕捉を標的とした新規の臨床応用戦略の開発に繋がる可能性を秘めている。

方法

GFTEV産生細胞株の構築と動物モデル: ヒトメラノーマ細胞株M24metおよびヒト神経芽腫細胞株SK-N-BE(2)・CHLA-136に、XPack CMV-XP-GFP-EF1-Puroレンチウイルスを用いてミリストイル化GFP(Lynチロシンキナーゼのミリストイル化ドメインに連結したTurboGFP)を安定導入した。このGFPは膜内側面に固定される。安定発現細胞はGFP蛍光およびフローサイトメトリーによるソーティングで確認した。これらの細胞を免疫不全マウスであるNOD SCID Gamma (NSG) マウスに皮下(MELモデル:M24met 1.0 × 10⁶個)または副腎傍正所移植(NBモデル:SK-N-BE(2)/CHLA-136 1.5 × 10⁶個、Matrigel懸濁)し、GFTEVを内因性放出するモデルを構築した。マウスは3-5%イソフルラン麻酔下で手術を実施した。

EVの精製と特性評価: EV精製は差分超遠心(DUC: 2,000g→10,000g→100,000g)、OptiPrep密度勾配超遠心(ODGC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、Sephacryl S-300)の3法を比較し、Thery et al. JExtracellVesicles 2018に準拠した。EV特性評価はNanoSight NS300(NTA)による粒子径・濃度測定、TEMによる形態観察、Western blot(syntenin・ALIX・CD63・CD81・CD9陽性、GM130・calnexin陰性確認)、ExoView R100(CD9/CD63/CD81テトラスパニンキット)で実施した。

TEV特異的miRNAマーカーの同定とin vitro共培養: GFTEVに特異的なmiRNAマーカーを同定するため、ヒトTEVとマウス骨髄由来EVのmiRNAプロファイルをNanoString nCounter(800種miRNAスクリーニング)で比較し、miR-1246をTEV特異的onco-miRとして選定した。in vitroでは、XPack-GFP MEL/NB細胞とマウスRAW264.7マクロファージの接触共培養(1:1比、3日間)および非接触Transwell共培養(0.4 μmポア)でGFP・miR-1246の移行を確認した。アポトーシス細胞の割合はAnnexin V染色とフローサイトメトリーで評価した。

in vivoでのTEV動態と捕捉細胞の解析: MEL肺転移モデル(Day 5/10/15/20/25)およびNB肝臓転移モデル(Day 14/21/28)の2モデルで時系列解析を実施した。ルシフェラーゼ発光による腫瘍モニタリング後、臓器(肺・肝臓・腎臓・脳・骨髄)を回収し、凍結切片免疫蛍光顕微鏡(F4/80・desmin・albumin抗体)および酵素処理細胞懸濁液のフローサイトメトリー(F4/80・CD298・GD2マーカー)を実施した。TEV捕捉細胞はGFP+F4/80+(マウスマクロファージ)をGFP+CD298+(ヒト腫瘍細胞)から区別することで分離した。血漿EVはSEC精製後にmiR-1246 qRT-PCRで定量した(cel-miR-39スパイクイン正規化)。

遺伝子発現解析とプロテオーム解析: TEV捕捉細胞(PMN・MN期)をフローサイトメトリーで単離後、TaqMan低密度アレイ(マウス免疫パネル、96遺伝子)で遺伝子発現解析を実施した。インテグリンのプロテオーム解析はQ Exactive Fusion LumosによるLC-MS/MS(C18 nano-LC-MS/MS)で行い、M24met TEVとSK-N-BE(2) Liv TEVのインテグリンサブセットを比較した。

統計解析: 全てのデータは生物学的複製(biological replicates)の平均値±標準偏差で示された。統計解析にはPrism(GraphPad Software)を用い、片側Studentのt検定を実施した。