• 著者: Thierry Boon, Pierre G. Coulie, Benoît J. Van den Eynde, Pierre van der Bruggen
  • Corresponding author: Thierry Boon (Ludwig Institute for Cancer Research, Brussels Branch; Université de Louvain, Belgium)
  • 雑誌: Annual Review of Immunology
  • 発行年: 2006
  • Epub日: 2005-12-01
  • Article種別: Review
  • PMID: 16551247

背景

ヒトメラノーマは、他の固形腫瘍と比較して免疫原性が高いことが知られており、自己T細胞によって認識される多様な腫瘍抗原が同定されてきた。これらの抗原は、その遺伝的起源に基づいて主に3つのカテゴリに分類される。(1) 腫瘍特異的な点変異に由来する変異抗原(例: CDK4変異、B-RAF変異ペプチド)。特に、B-RAF遺伝子の活性化変異は、60%以上のメラノーマで共通して見られる重要な変異であるとDavies et al. Nature 2002で報告されている。(2) 正常な生殖細胞ではHLA分子を発現しないため、免疫寛容を回避できるがん生殖細胞遺伝子(cancer-germline genes)に由来する抗原(MAGEファミリー24遺伝子、BAGE、GAGE、NY-ESO-1/LAGE、SSXなど)。これらの遺伝子産物は、腫瘍細胞におけるDNA脱メチル化によって発現が誘導される。(3) 正常なメラノサイトと共有される分化抗原(チロシナーゼ、Melan-A/MART-1、gp100、TRP-1、TRP-2)。これらの抗原に対するT細胞応答は、自己寛容のメカニズムとの関連で興味深い。

2005年から2006年当時、メラノーマに対する抗原特異的ワクチン療法の客観的奏効率は依然として約5〜10%と低い水準にとどまっており、この低い奏効率の根本的な機序解明が喫緊の課題であった。Rosenbergらが報告した大量のTIL(tumor-infiltrating lymphocyte)養子移入療法(10^10〜10^11個のT細胞を移入)が約50%という高い客観的奏効率を示す一方で、特定の腫瘍抗原を用いたワクチン療法の奏効率が極めて低いという乖離は、腫瘍局所における免疫抑制が治療効果を妨げる主要な障壁であることを強く示唆していた。この時点では、腫瘍微小環境における免疫抑制機構の全体像はまだ未解明な部分が多く、特に、T細胞の機能不全やアネルギー状態がどのように誘導されるのか、またそれを克服するための戦略は不足していた。例えば、腫瘍細胞による抗原提示の喪失やTreg細胞の関与、IDOやB7-H1などの免疫抑制因子の役割については、個別の報告はあったものの、その全体像と相互作用に関する理解はまだ手薄であった。本レビューは、これらのギャップを埋めることを目指し、メラノーマにおけるT細胞応答と免疫回避機構に関する包括的な理解を深めることを目的としている。さらに、Rosenberg et al. NatMed 1998Dong et al. NatMed 2002といった先行研究が個別の側面を明らかにする一方で、それらを統合し、治療的ワクチン接種の課題と展望を包括的に示すレビューは不足していた。

目的

本レビューの目的は、ヒトメラノーマにおけるT細胞応答と免疫回避機構に関する2006年時点での知見を体系的に整理し、以下の主要な論点を包括的に考察することである。(1) 自発的な抗腫瘍T細胞応答の存在と、その定量的評価、および臨床的意義を明らかにすること。(2) 腫瘍抗原の分子多様性とその抗原提示経路の精緻なメカニズムを詳細に記述すること。(3) 治療的ワクチン接種後に誘導される抗原特異的T細胞応答の定量的評価法と、その応答の質的特性を分析すること。(4) ワクチン誘導T細胞応答と腫瘍退縮との相関関係を評価し、特に低頻度の抗ワクチンT細胞が腫瘍退縮を引き起こすメカニズムとしての「スパーク仮説」を提唱すること。(5) 腫瘍局所における免疫抑制機構、T細胞アネルギーのメカニズム、および腫瘍細胞による免疫回避戦略を詳細に分析し、治療成功のための課題を特定すること。最終的に、これらの知見に基づき、メラノーマに対するより効果的な免疫療法の開発に向けた今後の方向性を提示することを目的とする。

結果

腫瘍抗原の分子多様性と抗原提示経路の精緻な解析: MAGEファミリーは24遺伝子から構成され、MAGE-A、-B、-Cの3つのサブファミリーがX染色体の異なる3領域に分散している。メラノーマにおけるMAGE遺伝子の発現頻度は高く、MAGE-A3は74%、MAGE-A1は46%、MAGE-A10は47%、MAGE-A12は62%、MAGE-C2は59%の患者で発現が認められた。NY-ESO-1/LAGE-2は28%で発現し、チロシナーゼ、Melan-A、gp100はいずれも90%以上のメラノーマで発現が確認された。HLA-A2拘束性の主要ペプチドとして、Melan-A/MART-1のELAGIGILTV (26-35, A27L修飾版)、gp100のIMDQVPFSV (209-217, T210M修飾版)、MAGE-A3のEVDPIGHLY (168-176)、MAGE-C2のALKDVEERV (336-344) などが同定された(Table 1)。MAGE-A3ペプチドに対するナイーブCTL前駆細胞(CTLp)の頻度は健常人で約4×10^-7 CD8+ T細胞であり、TCRレパートリーの多様性は100以上のクロノタイプと推定された。これは、ヒトの全CD8+ T細胞数約4×10^10個の中に、約160細胞/クロノタイプ×100クロノタイプで合計約16,000個の抗MAGE-3.A1 CTLpが存在することを示唆する(Figure 1)。この多様性にもかかわらず、ワクチン応答が最終的にモノクローナル〜オリゴクローナルになりやすいことが示唆された。抗原プロセシング経路の複雑性も明らかになった。炎症性環境下(IFN-γ存在下)では、標準型プロテアソームが免疫プロテアソームに置換され、腫瘍細胞で提示される抗原のエピトープレパートリーが変化する。成熟樹状細胞は免疫プロテアソームを発現するため、標準プロテアソームのみで産生されるエピトープについては、ペプチド直接投与またはミニ遺伝子ベクター投与が全長タンパク投与よりも優れる可能性がある。さらに、腫瘍抗原の約20%は、クリプティックプロモーター、異常スプライシング、翻訳フレームシフト、プロテアソーム内ペプチドスプライシングなどの非典型的産生経路に由来することが判明した。特に、非連続アミノ酸配列がプロテアソーム内で再結合して新規エピトープを形成するペプチドスプライシング機構の発見は注目に値する。

自発的抗腫瘍T細胞応答の定量的実証: メラノーマ患者では自発的な抗腫瘍T細胞応答が明確に存在することが複数の研究で示された。限界希釈法により、転移性メラノーマ患者の血中に抗腫瘍CTLpが6×10^-5〜2×10^-3 CD8+ T細胞の頻度で確認された(n=6患者)。ELISPOT試験では、5例中4例の患者でIFN-γ産生抗腫瘍T細胞が5×10^-4〜10^-3 CD8+ T細胞の頻度で検出された。皮下転移巣ではこの頻度が血中の約10倍に達し、特定のT細胞クロノタイプが腫瘍部位に数百倍濃縮されることが示された。Melan-A/MART-1抗原に対しては特異的な状況が観察された。健常人でも血中CD8+ T細胞の約0.005%という異例に高い頻度でMelan-A特異的T細胞が存在し、これらのT細胞はCCR7+CD45RA+ナイーブ表現型を示した。メラノーマ患者ではこの頻度がさらに約20-fold高く、記憶エフェクター表現型(CCR7-CD45RO+)を示す細胞が増加した。これは胸腺でのMelan-Aペプチドとのクロス反応性選択がナイーブレパートリーを肥大化させている可能性を示唆する。一方、MAGE抗原に対するナイーブCTLp頻度は約4×10^-7と低く、NY-ESO-1については27例中10例(37%)の患者で自発的CTL応答が確認され、抗体応答との強い相関が示された。MAGE-C2抗原に対する自発的応答も複数の患者で確認され、血中CD8+ T細胞の2×10^-6〜4×10^-5の頻度で存在し、皮膚転移巣では0.1%に達する濃縮が認められた。

ワクチン誘導T細胞応答の定量的評価と腫瘍退縮との相関: MAGE-3.A1ペプチドをALVACベクターで投与した場合、腫瘍退縮を示した4例中3例でCTL応答が検出され(頻度3×10^-3〜7×10^-7)、退縮なし群では17例中1例のみ応答陽性であった。DCパルスワクチンではより強い応答が得られ、退縮全例(n=3)においてCTL応答が検出され(頻度3×10^-6〜10^-3)、退縮なし群の5例では全例未検出であった。全モダリティを合算した場合、退縮群20例中10例(50%)がCTL応答陽性、非退縮群30例中1例(3%)のみ陽性という明確な相関が示された。Melan-A/MART-1ペプチドをIFAとCpGオリゴヌクレオチドと組み合わせた接種(Rosenberg et al. NatMed 1998)は際立った結果を示した。8例中8例でMelan-A特異的CD8+ T細胞の増加が観察され、複数例でCD8+ T細胞全体の1%に達した。これは他のモダリティを上回る最高の応答率・応答強度であり、TLR9アゴニスト(CpG)の併用効果を示した。gp100209-217(210M) ペプチドとIL-2の組み合わせでは平均0.3%のCD8+ T細胞が抗原特異的となり、IL-12との組み合わせでは0.05〜2.5%の範囲で強いT細胞応答が誘導された。重要な知見として、ワクチン応答陽性(血中CTL頻度上昇)が腫瘍退縮の十分条件でないことも示された。MAGE-A3ワクチン(n=111例合計)で客観的臨床応答を示したのは8例(7%)のみであり、さらに12例に混合応答が観察されたが、大多数の患者では腫瘍制御が得られなかった。

「スパーク仮説」—抗ワクチンT細胞による既存抗腫瘍T細胞の再活性化: 最も重要な概念的貢献として、患者EB81の詳細解析から導かれた「ワクチン誘導T細胞はスパークとして機能する」仮説がある。MAGE-C2特異的抗腫瘍T細胞(ワクチン抗原MAGE-A3とは別の抗原に対するT細胞)は、ワクチン接種前からすでに血中頻度2×10^-6〜4×10^-5 CD8+ T細胞で存在し、皮膚転移巣では0.1%以上の高頻度で濃縮されていた。ワクチン後に完全退縮を達成した患者EB81では、腫瘍内のCD8+ T細胞の少なくとも50%がわずか数クロノタイプの抗腫瘍T細胞で占められ、抗MAGE-C2 T細胞クローンが腫瘍内で数百倍濃縮されていた。この知見から以下のシナリオが提唱された: ワクチン接種により誘導された少数の抗ワクチンT細胞が腫瘍部位へ遊走し、局所免疫抑制環境に一時的に抵抗してがん細胞を攻撃する。この局所的な腫瘍攻撃により免疫抑制が焦点的に解除され、以前から腫瘍内に存在しながら機能不全に陥っていた大量の抗腫瘍T細胞が再活性化される。再活性化された抗腫瘍T細胞が主要なエフェクターとなって腫瘍退縮を完遂する。すなわち、ワクチンの治療効果は抗ワクチンT細胞自身の直接的腫瘍殺傷ではなく、休眠状態の既存抗腫瘍免疫応答の「点火」に依存するというモデルである(Figure 2)。

局所免疫抑制と腫瘍逃避機構: Zippelius et al. の解析では、血中の抗Melan-A CCR7-CD8+ T細胞はIFN-γ産生能、パーフォリン、グランザイム発現を保持していたが、腫瘍内TILにおける同表現型の細胞は抗原刺激に対するIFN-γ産生が障害されていた。一方、同一転移巣内のCMV特異的T細胞は正常に活性化された。この対比から、抗腫瘍T細胞の機能不全は全身性アネルギーではなく腫瘍局所特異的なアネルギーであることが示された。腫瘍細胞が利用する免疫回避機構として複数が同定された。MHCクラスI発現消失(β2ミクログロブリン遺伝子変異や一方のHLAハプロタイプの欠失; HLA消失は一定割合の初発および転移メラノーマサンプルで確認)、抗原遺伝子の変異・欠失、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)によるトリプトファン枯渇、ガレクチン-1産生によるT細胞阻害、IL-10・TGF-β産生、B7-H1(PD-L1)発現によるT細胞アポトーシス誘導(IFN-γ存在下で増強、PD-1シグナルを介す)が挙げられた。Dong et al. NatMed 2002は、B7-H1がT細胞アポトーシスを促進するメカニズムを報告している。また、CD4+CD25+Treg細胞(TILから同定され、LAGE抗原・変異抗原を認識しながら抑制機能を発現する細胞)の関与も指摘された。腎細胞癌患者では、多核顆粒球がアルギナーゼを産生して血中アルギニン濃度を低下させ、T細胞機能を抑制するという全身性抑制機構も報告された(n=143患者)。これらの免疫抑制機構は、ワクチン接種後のT細胞応答が腫瘍退縮に繋がらない多くの患者において重要な障壁となっている可能性が示唆された。

考察/結論

本レビューは2006年時点でのヒトメラノーマ免疫学の体系的集大成であり、複数の概念的貢献を持つ。

先行研究との違い: 本研究は、自発的抗腫瘍T細胞応答が定量的に実証された点で、これまでの研究と異なる。転移性メラノーマ患者の多くで10^-4〜10^-3オーダーの高頻度抗腫瘍CTLpが血中に存在し、腫瘍部位ではさらに数百倍濃縮されているにもかかわらず機能不全に陥っているという「存在するが機能しない」逆説が確立された。この知見は、腫瘍免疫の問題が免疫応答の誘導ではなく、局所免疫抑制の克服にあることを明確化した点で、これまでの免疫応答誘導に焦点を当てた研究とは対照的である。

新規性: 最も重要な貢献は、ワクチンの治療効果の機序として「スパーク仮説」が新規に提唱された点である。抗ワクチンT細胞が腫瘍退縮の主要エフェクターではなく、既存の休眠状態にある抗腫瘍T細胞を再活性化する「触媒」として機能するというモデルは、(a) なぜ低頻度の抗ワクチンT細胞でも腫瘍退縮が生じるか、(b) なぜ退縮腫瘍内には多様な抗原特異性のT細胞が存在するか、(c) なぜ抗原消失による腫瘍逃避が完全退縮後にはまれにしか生じないか、という複数の疑問に統一的な説明を与える。これはこれまで報告されていない画期的な概念であった。

臨床応用: 本知見は、メラノーマ免疫療法の臨床応用に極めて重要な示唆を与える。特に、局所免疫抑制の克服が治療成功の鍵であるという指摘は先見的であった。シクロホスファミドによるTreg除去、抗CTLA-4抗体、IDO阻害剤の併用という方向性が提示されており、これはその後のイピリムマブ(抗CTLA-4)承認、PD-1/PD-L1抗体の成功、および組み合わせ免疫療法の発展を予見するものであった。本論文が発表されたのはPD-1/PD-L1軸の臨床的重要性が実証される前であるが、B7-H1(PD-L1)によるT細胞アポトーシス誘導が重要な局所免疫抑制機構として既に指摘されている点は、その後の臨床現場での成功を裏付ける基礎的知見であった。

残された課題: 今後の検討課題として、(1) 腫瘍退縮に必要な抗ワクチンT細胞の質的特性(TCRアフィニティー、局所免疫抑制への抵抗性)の同定、(2) 局所免疫抑制を克服するのに必要な抗ワクチンT細胞の閾値頻度・機能特性の定義、(3) 腫瘍種別の主要免疫抑制機構の同定、(4) IDO阻害、アルギナーゼ阻害、Treg除去とワクチンの最適組み合わせの検証が挙げられた。本論文が出版された時点(2006年)から20年が経過した現在、免疫チェックポイント阻害薬がメラノーマ治療を劇的に変えた事実は、本レビューで示された「局所免疫抑制の克服」という根本課題の正確な認識を裏付けている。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の実験方法は含まれない。しかし、引用された先行研究では、ヒトメラノーマ患者の末梢血単核細胞(PBMC)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、および腫瘍細胞株を用いた多岐にわたる免疫学的評価手法が採用されている。本レビューの文献検索は、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて行われた。検索期間は、ヒトメラノーマにおけるT細胞応答と腫瘍抗原の同定に関する初期の報告から2005年12月までの期間を対象とした。キーワードには「melanoma」「T cell」「tumor antigen」「vaccination」「immune evasion」「immunosuppression」などが含まれた。レビューの対象論文は、ヒトのメラノーマ患者を対象としたin vitroおよびin vivoの研究、ならびに臨床試験に限定された。動物モデルやin vitroの基礎研究であっても、ヒトメラノーマのT細胞応答に直接関連するものは含められた。

T細胞応答の定量的評価には、主に以下の手法が用いられた。

  1. 限界希釈法(Limiting Dilution Analysis, LDA): 抗腫瘍CTL前駆細胞(CTLp)の頻度を測定するために用いられ、特定の抗原に反応するT細胞の数を定量的に評価した。
  2. テトラマー染色: HLA分子と抗原ペプチドの複合体であるテトラマーを用いて、特定の抗原特異的T細胞を直接的に同定し、その頻度をフローサイトメトリーで測定した。ex vivoでのテトラマー検出の標準的な下限検出感度は、CD8+ T細胞中約3×10^-4である。
  3. ELISPOTアッセイ(IFN-γ): 抗原刺激後にT細胞が産生するIFN-γを検出することで、機能的な抗原特異的T細胞の頻度を評価した。このアッセイは、未分画PBMCを用いた場合、CD8+ T細胞中約5×10^-4の感度を持つ。
  4. 細胞内サイトカイン染色: 抗原刺激後に細胞内で産生されるサイトカイン(主にIFN-γ)を細胞内染色し、フローサイトメトリーで検出した。
  5. TCR Vβ配列解析およびクロノタイプPCR: T細胞受容体(TCR)の多様性を評価し、特定のT細胞クローンの増幅や腫瘍部位への濃縮を解析した。

ワクチン試験のモダリティとしては、以下のものが含まれる。

  1. ペプチドワクチン: 特定の腫瘍抗原ペプチドを、不完全フロイントアジュバント(IFA)やCpGオリゴデオキシヌクレオチドなどのアジュバントと組み合わせて投与した。
  2. 樹状細胞(DC)パルスワクチン: 患者由来のDCを腫瘍抗原ペプチドでパルスし、成熟させた後に投与した。
  3. 組換えウイルスベクターワクチン: ALVAC(カナリアポックスウイルス)などのウイルスベクターに腫瘍抗原遺伝子を組み込んで投与した。

抗原プロセシング経路の解析には、プロテアソームのサブユニット構成(標準型プロテアソームと免疫プロテアソーム)の変化、クリプティックプロモーター、異常スプライシング、翻訳フレームシフト、プロテアソーム内ペプチドスプライシングなどの非典型的経路が検討された。また、HLAクラスII分子による抗原提示経路の操作(LAMP-1などの標的化モチーフの利用)も評価された。

免疫抑制機構の解析には、腫瘍細胞におけるMHCクラスI発現の喪失、抗原遺伝子の変異・欠失、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)によるトリプトファン枯渇、ガレクチン-1産生、IL-10・TGF-β産生、B7-H1(PD-L1)発現によるT細胞アポトーシス誘導、CD4+CD25+Treg細胞の関与などが検討された。これらの手法により、腫瘍微小環境におけるT細胞の機能不全の原因が多角的に分析された。統計手法としては、T細胞頻度の比較にt検定が、臨床応答と免疫応答の相関分析にフィッシャーの正確確率検定が用いられた。