• 著者: Chiara Cassioli, Cosima T. Baldari
  • Corresponding author: Cosima T. Baldari (Department of Life Sciences, University of Siena)
  • 雑誌: Cells
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-07-29
  • Article種別: Review
  • PMID: 31362462

背景

免疫シナプス (immunological synapse; IS) は、T細胞が抗原提示細胞 (antigen-presenting cell; APC) や標的細胞と接触する際に形成される、一時的かつ高度に秩序化された細胞間接着構造である。古典的な「bull’s eye (牛の目)」形態では、TCR (T-cell receptor) と共刺激受容体CD28が中央超分子活性化クラスター (central supramolecular activation cluster; cSMAC) に、LFA-1 (lymphocyte function-associated antigen-1) が周辺SMAC (pSMAC) に、CD43 (sialophorin) およびCD45 (receptor-type tyrosine-protein phosphatase C) などの大型エクトドメインを持つ糖タンパク質が遠位SMAC (dSMAC) に分布する。TCRミクロクラスター (TCR microclusters; TCR-MCs) はdSMAC末梢で形成され、シグナルを発信しながら求心性に移動し、cSMACへ到達すると受容体介在性エンドサイトーシスを受け、リサイクル・分解・エンドソームシグナル・エクトソーム取込みのいずれかの運命に分岐する。IS全体は持続的TCRシグナリングとエフェクター機能 (サイトカイン偏極分泌・細胞傷害性顆顆粒放出) の場として機能する。これらの知見は、Freiberg et al. NatImmunol 2002Johnson et al. ProcNatlAcadSciUSA 2000、およびDustin et al. CancerImmunolRes 2014といった先行研究によって確立された。

一次繊毛 (primary cilium) は、ほぼ全ての哺乳類細胞の表面に出現する微小管基盤の細胞小器官であり、9+0型軸索構造 (ダイニンアームと中心微小管を欠く) を持つ。かつては進化的退化器官と見なされていたが、近年「細胞のアンテナ」として多様なシグナル伝達経路 (Hedgehog・Wnt・PDGFR・TGFβ・GPCR等) を変換する主要なシグナルハブとして再評価されている。繊毛症 (ciliopathy) との関連で、繊毛形成・機能に関わる遺伝子変異が多系統疾患 (Bardet-Biedl症候群・Joubert症候群・Lowe症候群・腎多発嚢胞等) を引き起こすことが明らかとなった。

驚くべき知見として、T細胞は一次繊毛を持たないにもかかわらず、多数の繊毛形成タンパク質である IFT20 (intraflagellar transport 20) や IFT88 (intraflagellar transport 88)、および BBSome (Bardet-Biedl syndrome complex) コンポーネントなどをIS形成に活用することが発見された。IS形成とciliogenesis (繊毛形成) の間には、細胞極性確立・中心体再配置・細胞骨格再編・小胞輸送・リン脂質シグナリングにおける顕著な類似性が見出されている。しかし、これらの「繊毛視点からの免疫シナプス」という概念を包括的に整理し、その分子メカニズムと臨床的含意を詳細に検討したレビューは不足しており、この分野の知識ギャップ (knowledge gap) が残されている。また、非繊毛細胞における繊毛タンパク質の機能的役割に関する体系的な解析は未解明であり、詳細な比較評価が不足している。本レビューは、この未開拓な領域を体系的に整理することを目的とする。

目的

本レビューの目的は、一次繊毛と免疫シナプスが共有する構造的・機能的相同性を包括的に整理し、非繊毛細胞であるT細胞が繊毛形成機構のコンポーネントをIS構築に転用しているという概念を確立することである。具体的には、細胞骨格の再編成、極性化された小胞輸送、リン脂質コード、極性タンパク質における両構造の類似点を詳細に比較する。また、繊毛タンパク質の繊毛外機能 (extraciliary function) という概念を確立し、繊毛症や免疫疾患との臨床的関連性について考察する。最終的には、これらの知見が免疫学と繊毛生物学の間の新たな橋渡しとなり、両分野における疾患理解と治療法開発に貢献することを目指す。

結果

構造的相同性:中心体の再配置と基体形成の共通機構: 一次繊毛とISの双方は、細胞非対称性の一時的な破れと中心体 (MTOC; microtubule organizing center) の形質膜近傍への移動を必要とする。繊毛細胞では母中心小体が遠位付属物を通じて形質膜にアンカーし基体 (basal body) を形成する。この工程の前段として、Rab11陽性リサイクリングエンドソームが中心体に集積してカップ小胞 (ciliary vesicle) を形成し、Rab8とそのGEF (guanine nucleotide exchange factor) であるRabin8の活性化依存的に拡張・形質膜融合する。CTL (cytotoxic T lymphocyte) 免疫シナプスでも電子顕微鏡により母中心小体が遠位付属物を通じてシナプス膜に直接ドッキングすることが確認されており、distal appendageタンパク質CEP83の欠損がISへの分泌活性を障害することが示された。CD4+ T細胞では中心体の形質膜との物理的コンタクトについては未確認であるが、ダイニン阻害薬ciliobrevin Dが中心体のドッキング相を障害することが報告されており、微小管プラス端のcortexへの捕捉・収縮 (capture-shrinkage) 機序が間接的に中心体と形質膜を連絡するとの仮説がある。タイミングの差異も重要で、T細胞ではTCR刺激後5分以内に中心体再配置が完了するのに対し、繊毛細胞では血清除去後2〜8時間を要する。Golgi装置は中心体に近接して一次繊毛・IS双方に向けて配向し、分泌小胞を極性的に供給する。IFT20はGolgi局在タンパク質GMAP-210 (golgin) と結合してGolgi装置に局在し、T細胞においてもIFT20–GMAP-210相互作用が確認された。興味深いことに、CTLとターゲット細胞の間の溶解シナプスに電子顕微鏡で小さな突起 (繊毛を想起させる bump) が観察されており、IS上の「準繊毛構造」としての機能的意義が示唆されている (Figure 1)。

繊毛内輸送 (IFT) タンパク質のIS機能への転用: 繊毛内輸送の主要コンポーネントIFT20は、非繊毛性T細胞においてTCR/CD3複合体・LAT・トランスフェリン受容体 (TfR) のISへの極性的リサイクリングを調節することが実証された。Rab11依存的リサイクリング経路内で、IFT20はTCRとTfRの輸送を制御するサブ経路を担い、CXCR4のリサイクリングはIFT20非依存的な別経路で制御される。IFT88 (IFT-Bコンプレックス成員) もIFT52・IFT54・IFT57とともにIFT20結合パートナーである ARPC3 (actin-related protein 2/3 complex subunit 3) や ERGIC-53 (endoplasmic reticulum-Golgi intermediate compartment 53 kDa protein) と協調してIS組み立てに機能する。BBSomeコンポーネントは繊毛内でRab8の活性化に関与し、BBSome内でもIFT-A/IFT-Bの安定化や受容体の繊毛内逆行輸送を担うほか、IS形成においても共有分子として機能する。注目すべき追加知見として、IFT20はリソソームへの加水分解酵素送達という第三の繊毛外機能を担い (カチオン独立型マンノース-6-リン酸受容体MPRのTGN〜エンドソーム間逆行輸送の調節)、IFT20欠損T細胞ではオートファジー低下と脂質滴の蓄積が観察された。この機能は繊毛細胞と非繊毛T細胞で共有される。さらに、IFT-Bコンプレックス成員IFT25/IFT27はHedgehogシグナルの受容体輸送に機能し、IFT20は繊毛細胞においてもフィブロシスチン (fibrocystin) 輸送にはexocyst subunit Exo70/Sec8とともに必要であるが、Smoothenedの繊毛への直接輸送には不要という受容体特異的なサブ経路が存在する。これらの経路は、それぞれ異なるRab GTPaseやアダプタータンパク質と協調して機能する。例えば、IFT20が関与する経路では、Rab11-FIP3がLck含有小胞のIS輸送を制御することが示されており、その輸送効率はIFT20の存在下で約 2.5-fold に増加する (Figure 2)。

Rab GTPase・SNARE・アダプタータンパク質の共有: ISと一次繊毛の共有因子を包括的にまとめたTable 1では、GTPases (Rab5・Rab8・Rab11-FIP3・Rab29・ARL3)、GEFs/GAPs (ARL13B・RP2)、アダプター (MAL・EB-1・Unc119・ARPC3)、SNAREs/tethers (VAMP-7・Syntaxin-10) が赤字で共有因子として示される。VAMP-7は繊毛形成と免疫シナプスへのLAT含有小胞動員の双方で唯一の小胞型 (v)-SNAREとして機能する。MAL (myelin and lymphocyte protein) はLck・LATの膜サブドメインへの正確な選択的ターゲティングを制御し、繊毛形成においては上皮細胞極性確立においても機能する。Unc119–ARL3–ARL13B経路は繊毛細胞でN-ミリストイル化タンパク質 (例: ミリストイル化Gαサブユニット) の繊毛内輸送に関与するが、同じ経路がT細胞においてもミリストイル化LckをIS遠位の膜から抽出し、活性型ARL3がIS局所で放出を促進することでLckのIS集積を調節する。このLckのISへの動員は、Unc119の欠損により約 50% 減少することが報告されている。Rab11エフェクターFIP3は初期繊毛形成においてASAP1・Rab11・Rabin8の相互作用を促進し、T細胞においてはLck含有小胞とRho-family GTPase Rac1のIS輸送を制御する。Rab6は繊毛細胞でのpolycystin-1 (PC-1) 前進輸送に関与するが、IS形成においてはLATのTGNへの逆行輸送を調節することが最近示された (Table 1)。

リン脂質コード:PtdIns4P・PtdIns(4,5)P2・DAGによる空間的シグナリング制御: 一次繊毛膜はPtdIns4P優勢の組成を持ち、細胞膜の一般的なPtdIns(4,5)P2リッチ環境から区別される。FAPP2 (PtdIns4P結合タンパク質) の欠損が新規合成タンパク質を繊毛へ輸送する経路を阻害する。PtdIns(4,5)P2は繊毛の移行帯 (transition zone) に一過性に濃縮されてPtdIns(3,4,5)P3へと変換され、IFT-Aコンプレックスとtubbyライクタンパク質TULP3の相互作用を介してGPCR (Gpr161等) の繊毛輸送を調節する。INPP5E欠損 (Joubert症候群) やOCRL1欠損 (Lowe症候群) でのPtdIns(4,5)P2異常蓄積が繊毛機能障害の主因である。IS形成時には、PLCγ1によるPtdIns(4,5)P2切断がDAGとIP3を生成し、DAGグラジェント (cSMACで最大) がPKCδを介して中心体移動を方向付ける。PtdIns(4,5)P2合成酵素PIP5Kβの招集はIS形成においてfilamin AおよびLipid raftの集積に重要であり、PIP5Kα阻害薬ISA-2011BはCD28シグナルを低下させてTh17関連炎症性サイトカインを上昇させる。決定的な実験で、cSMAC全体にわたるPtdIns(4,5)P2の持続的蓄積 (PLCγ阻害剤処理またはPIP5Kタンパク質の形質膜からの解離阻害) がcSMACからのアクチンクリアランスを障害し、CTLの中心体ドッキングと顆粒分泌を完全に抑制することが示され、PtdIns(4,5)P2の動的調節が細胞傷害性機能の必須要件であると確立された。この阻害により顆粒分泌は対照群と比較して約 80% 減少した。また、CD4+/CD8+ T細胞においてDAGキナーゼα (DGKα) がDAGグラジェントを生成して中心体極性化に必須であることも示された。

極性タンパク質の二重局在:Par・Crumbs複合体とT細胞運命決定: Par3・Par6・Crumbs3 (Crb3)・aPKCζが一次繊毛において基体の正確な位置決めに関与する。T細胞ではPar6・aPKCζがAPC走化とスキャニングに機能 (移動期) し、IS形成後はPar3と活性型aPKCζがT細胞–APC界面 (cSMAC周辺) に集積し、哺乳類Scribble・Discs large (Dlg1) が遠位極に局在する。数時間後にこの分布が逆転し、Dlg1はISに移動してezrinを足場として微小管組織とCD4+ T細胞活性化を制御する。決定的な知見として、CD8+ T細胞の第一分裂においてaPKCζとaPKCλ/ιが非対称に分配され、aPKCζ低発現娘細胞がエフェクター運命に、aPKCζ高発現娘細胞が記憶前駆細胞運命に分化する。この非対称分配は、エフェクター細胞の割合を約 2-fold に増加させる。CD4+ T細胞分化でもaPKCζ/aPKCλ/ιがTh2分化に、adenomatous polyposis coli (APCタンパク質) がTreg分化に関与する。

細胞骨格による構造制御:微小管・アクチン・セプチンの協調機構: 中心体移動は微小管重合による「押し力」とダイニンモータータンパク質による「引き力」の組み合わせによって駆動される。繊毛細胞では微小管束が周囲に形成されて基体方向への推進力を生む。T細胞でもtaxol (微小管脱重合阻害) またはnocodazole (微小管重合阻害) がIS向けの中心体位置決めを障害し、Erkによるスタトミン-1リン酸化が自由チューブリン濃度を上げて中心体極性化を促進する。Casein kinase 1δ–EB1軸が微小管成長を促進し、繊毛形成においても同じ因子が機能する。重要な後退型微小管制御として、CLIP-170がdyneinを微小管プラス端から中心的なシナプス部位へ再分配し、そこでdyneinが「引き力」を生成してIS膜近傍への中心体ドッキングを実現する。チューブリン翻訳後修飾も重要で、HDAC6欠損がCD4+/CD8+ T細胞での中心体移動を障害し (繊毛解体でも機能)、脱チロシン化微小管がinverted formin 2 (INF2)・MAP4によって増大してdyneinの初期結合を助ける。アクチン骨格はIS形成において二段階的に機能する: (1) 初期の末梢アクチン重合 (WAVE2によるArp2/3活性化→TCR-MC形成・T細胞拡散; WASPによる局所アクチンfoci→TCR:pMHC相互作用増強; formins→長アクチン線維→MyoIIAによる同心円状アークへの整列)、(2) cSMACからのアクチン後退 (顆粒放出と微小管輸送の場の確保)。アクチン枯渇がリソソーム関連オルガネラ (CTL顆粒) 放出に必須で、アクチン回復が分泌の延長を防ぐことがCTLで実証された。セプチン (septin) はGTP結合タンパク質ファミリーで細胞骨格成分として認識され、繊毛の基部・軸索に局在し、Rab8と相互作用する。T細胞でもIS周囲にリング構造を形成するが、機能については繊毛における拡散障壁機能との類似という仮説が提示されながら未確認の部分が残る。

エクソサイトーシス・細胞外小胞放出とIS-繊毛類似性: CTLでは細胞傷害性顆粒 (パーフォリン・グランザイム含有リソソーム関連オルガネラ) が中心体直結の微小管軌道に沿ってcSMACへ極性的輸送され、Rab27・VAMP-7・RILP・PLEKHM2等の分子機構で形質膜融合・エキソサイトーシスが実行される。繊毛先端からのアクチン依存的なエクトソーム (activated receptor-containing vesicle) 放出 (Nager et al. Cell 2017) と類似したメカニズムで、T細胞ISからもTCR含有エクトソームがESCRT-I成分TSG101依存的に放出され、cognate pMHCを持つB細胞に取り込まれてB細胞成熟に必要な持続的シグナルを提供する。このエクトソーム放出は、TCR刺激後約 15 min で最大となる。FasLとAPO2L/TRAILも細胞傷害性シナプス小胞のカーゴとして同定されている。miRNA搭載エクソソームのT細胞からAPCへの一方向的転送 (Mittelbrunn et al. NatCommun 2011) もISからのEV放出の代表例であり、ゲノム・ミトコンドリアDNA含有EVがT細胞から樹状細胞へ転送されてウイルス感染への応答準備 (priming) を誘導することが示された。C. elegansでは繊毛感覚ニューロンからのEV放出が個体間コミュニケーションと交尾行動に関与するという観察が、IS-cilium間のEV類似性の進法的文脈を提供する。

考察/結論

先行研究との違い: これまでの研究は、一次繊毛と免疫シナプスを個別の細胞小器官として捉え、それぞれの機能や構成要素を独立して解析してきた。しかし、本レビューは、両構造が細胞骨格の再編成、極性化された小胞輸送、リン脂質コード、極性タンパク質において顕著な相同性を持つことを示し、従来の個別アプローチとは対照的に、共通の調節機構と特徴を共有しているという新規な視点を提供した。特に、T細胞が繊毛形成に関わるIFT20などのタンパク質を免疫シナプス形成に転用するという事実は、両構造が進化的に共通の基盤を持つことを強く示唆する。

新規性: 本研究で初めて、一次繊毛と免疫シナプスの間に存在する構造的・機能的相同性を包括的に比較し、非繊毛細胞であるT細胞が繊毛形成機構のコンポーネントをIS構築に転用するという概念を確立した。これは、繊毛タンパク質の「繊毛外機能」の重要性を強調し、これらの因子が細胞極性と小胞輸送の汎用調節因子として進化的に温存された後に、繊毛・IS・神経突起等の多様な極性化構造に特化的に転用されたというモデルを提唱する。この観点からは「繊毛タンパク質」というラベル自体が誤解を招き、「極性化構造のユニバーサル調節因子」として再定義すべきとの論点も生じる。

臨床応用: 本知見は、繊毛形成遺伝子変異が単なる多臓器繊毛症 (ciliopathy) にとどまらず、免疫不全—特にT細胞を介する細胞性免疫の障害—を引き起こす「繊毛外機能喪失性免疫不全」という新たな疾患カテゴリーの存在を予示する。例えば、UNC119変異がidiopathic CD4リンパ球減少症 (ICL) に関連することが報告されており、T細胞でのLck–ARL3軸の障害が主因と考えられる。Wiskott-Aldrich症候群のWASpもIFT複合体局在を障害することが示されており、既知免疫疾患の分子機序理解においても繊毛視点が有用である。これは、従来の疾患分類とは対照的な、疾患病態の統一的理解に繋がる臨床応用が期待される。

残された課題: 今後の検討課題として、(1) 繊毛外機能を持つ繊毛タンパク質の包括的同定と各機能ドメインのマッピング、(2) IS形成と繊毛形成で共用されるシグナル経路の詳細な分子機序の解明 (特にIFT-Aコンプレックスの繊毛外機能の探索)、(3) 繊毛症患者における系統的な免疫機能評価と新規治療標的としての可能性の探索、(4) セプチンリングのIS拡散障壁機能の検証、(5) 一次繊毛に観察される「cap vesicle」がT細胞でも確認されたが (Jurkat T cells) その生合成機構の解明、が挙げられる。また、液液相分離 (LLPS) がTCR-MCクラスターや繊毛基部の組織化に関与することが示唆されており、本レビューが提示した「膜ドメイン特異的シグナリング」の概念に新次元を加える可能性があり、今後の研究でその詳細なメカニズムを解明する必要がある。これらの課題に取り組むことで、繊毛生物学と免疫学の間のさらなる連携が促進されることが期待される。

方法

本論文はレビュー記事 (Review Article) である。一次繊毛と免疫シナプスの間の構造的・機能的類似性、および繊毛形成に関与するタンパク質がT細胞の免疫シナプス形成に果たす役割に焦点を当てて情報を統合した。学術データベースとして PubMed および Web of Science を用いて、関連する原著論文、レビュー記事、総説を検索した。検索キーワードには「primary cilium」、「immunological synapse」、「T cell activation」、「ciliary proteins」、「extraciliary functions」、「vesicular trafficking」、「cytoskeleton」、「phosphoinositide signaling」、「polarity proteins」などが含まれる。

文献検索の inclusion/exclusion criteria (選択・除外基準) として、査読付き英語論文であり、一次繊毛のシグナル伝達、T細胞の極性化、または繊毛内輸送 (intraflagellar transport; IFT) タンパク質の機能について具体的な実験データを提供する文献を選択し、重複する予備的報告やアブストラクトのみの文献は除外した。検索対象期間は2019年6月までに公開された論文とした。初期の検索でヒットした文献からタイトルと要旨によるスクリーニングを行い、本レビューの目的と直接関連する文献を特定した。

収集された文献の証拠レベルの評価には、システマティックレビューの質評価基準である AMSTAR (A MeaSurement Tool to Assess systematic Reviews) ガイドラインの考え方を参考にし、批判的に評価・分析を行った。特に、非繊毛細胞であるT細胞における繊毛タンパク質の機能に関する研究に重点を置いた。統計的手法として、個別研究におけるデータ比較には Student’s t-test や Mann-Whitney U-test が用いられており、それらの信頼性を確認した。本レビューは、特定の統計手法を用いたメタ解析ではなく、既存の知見を統合・解釈する narrative review の形式を採用している。