• 著者: Malekzadeh P, Yossef R, Cafri G, Paria BC, Lowery FJ, Jafferji M, et al.
  • Corresponding author: Steven A. Rosenberg (National Cancer Institute, Bethesda, MD)
  • 雑誌: Clinical Cancer Research
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-01-29
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31996390

背景

TP53 はすべてのがん種にわたって最も頻繁に変異する腫瘍抑制遺伝子であり、転移性上皮がん患者の約25%がいずれかの TP53 変異を有する。変異の約30%は複数の無関係な患者間で共有される「ホットスポット変異」であり、共有ネオアンチゲンを標的とする既製品型免疫療法の基盤として注目される。養子免疫療法 (ACT; adoptive cell therapy) の文脈では、Tran らが変異ネオアンチゲン特異的 CD4+ T細胞移入による上皮がん患者の持続奏功を初めて報告し (Tran et al. Science 2014)、同グループは KRAS G12D 特異的 TIL による転移がんの完全奏功を実証した (Tran et al. NEnglJMed 2016)。さらに Robbins らはエクソーム解析で ACT 反応性腫瘍T細胞が認識する変異ネオアンチゲンを体系的に同定するパラダイムを確立し (Robbins et al. NatMed 2013)、本研究に先行する Malekzadeh らの TIL スクリーニング研究では TP53 ホットスポット12変異のうち患者の40%で TIL が p53 ネオエピトープを認識することが示されていた。

しかし末梢血リンパ球 (PBL; peripheral blood lymphocyte) 中に同様の TP53 変異反応性T細胞が存在するかどうかは手薄であり、ペプチドワクチン後の散発的報告や単例での in vitro stimulation (IVS) 報告が存在するにとどまり、TP53-TMG (tandem minigene) を用いた体系的検証は不足していた。さらに、ナイーブT細胞 (CD62L+CD45RO-) は effector 機能と TCR 親和性が低下しており、抗原経験T細胞サブセット (effector memory: CD62L-CD45RO+、central memory: CD62L+CD45RO+、effector: CD62L-CD45RO-) に TP53 変異反応性前駆体が濃縮されているとの仮説は検証されていなかった。PBL からの T細胞取得が可能であれば、TIL 採取が困難な手術不能患者や固形腫瘍 ACT の gap in knowledge を埋め、非侵襲的なネオアンチゲン標的細胞療法への道が開かれる。

目的

TP53 変異転移性上皮がん患者の末梢血中の抗原経験T細胞に p53 ホットスポット変異ネオアンチゲン反応性T細胞が存在することを IVS+41BB/OX40 enrichment プロトコールで実証し、取得した T細胞および TCR が腫瘍細胞上の自然処理提示 p53 ネオエピトープを認識して機能的に応答できることを確認する。

結果

末梢血とTILのp53ネオアンチゲン反応性は n=9 例で完全に一致し、TIL陽性 n=5 例すべてで末梢血にも特異的T細胞を同定:TIL スクリーニングで p53 ネオアンチゲン反応性が確認された n=5 例 (患者4141: p53 R175H/HLA-A02:01; 患者4285: p53 R175H/HLA-DRB113:01; 患者4149: p53 Y220C/HLA-DRB302:02; 患者4266: p53 R248W/HLA-A68:01; 患者4273: p53 R248W/HLA-DPB1*02:01) 全例で、IVS+41BB/OX40 enrichment 後の末梢血抗原経験T細胞に p53 変異特異的反応性が確認された (Table 1, Fig 1B)。TIL で陰性だった残り n=4 例 (患者4213, 4217, 4254, 4257) では末梢血T細胞も陰性で、TIL-PBL の congruence は 9/9 例 (100%) で成立した。最高反応性は患者4141の CD8 TP53-TMG-IVS 培養で p53 R175H に対し 78% が 41BB 陽性であった (Fig 1C)。患者4285-CD4 TP53-TMG-IVS では IFN-γ ELISPOT で mutant TMG-MUTTP53 および p53 R175H LP に強いスポット形成を示す一方、TMG-WTTP53、irrelevant TMG、DMSO、wild-type p53 R175 LP には反応せず厳密な変異特異性が実証された (Fig 1D)。ペプチド titration では 10 ng/mL まで特異的認識を維持した (Fig 1E)。IVS 後の細胞収量は 5 × 10^5〜3.6 × 10^7 cells、41BB/OX40 sort 分画は parent gate の 0.1〜6.9%、REP 後最終収量は 7 × 10^6〜4.2 × 10^8 cells に達した (Table 2)。

TCRB deep sequencing により p53 ネオアンチゲン特異的クロノタイプの指数関数的濃縮を確認し、合計 n=11 種の変異特異的 TCR をクローニング:IVS 前 PBL では p53 ネオアンチゲン特異的 TCRB クロノタイプは検出限界以下 (< 0.001%、2 × 10^5 reads) または rank 5,020 位以下であったが、IVS + 41BB/OX40 enrichment 後は rank 1〜167 位に上昇した。患者4266-CD8 TP53-TMG-IVS 培養では 7.5% (4266-PBL-TCR2) および 2.6% (4266-PBL-TCR3) まで濃縮され、患者4273の p53 R248W 特異的 PBL-TCR は 0.002% から 0.017% へ 8.5-fold の濃縮を示した (Fig 2D)。患者4285 では上位 10 CDR3B クロノタイプに 4 TCR がランク入りした。全患者で TCRB clonality と最頻クロノタイプ頻度が IVS 後に増大し、TP53 変異特異的クロノタイプのみでなくレパトア全体の偏向が確認された (Fig 2A, B)。患者4141、4266、4273 では TIL 由来 TCR と配列上同一の TCR が PBL IVS 培養から回収された。対照的に患者4285 では TIL には存在しなかった p53 R175H/HLA-DRB1*13:01 特異的 TCR が n=7 種 PBL 限定で同定された (TIL 由来 TCR は PBL に検出されず)。4285-PBL-TCR の機能的親和性は TIL 由来 TCR と同等で、p53 R175H LP を 10 ng/mL まで認識し野生型 p53 R175 LP には IFN-γ 応答を示さなかった (Fig 2C)。

PBL由来T細胞が腫瘍細胞上の自然処理提示p53ネオエピトープを認識し、TCR導入T細胞がp53 R175H + HLA-A*02:01 二重陽性腫瘍株を特異的に殺傷:4141-CD8 および 4266-CD8 TP53-TMG-IVS 培養の CD8 T細胞を Saos2-R175H (HLA-A02:01; p53 R175H 過剰発現) および TC#4266 (HLA-A68:01:02; p53 R248W) とそれぞれ overnight 共培養したところ、対応する細胞株で 41BB が上昇し、クロスマッチ細胞では minimal activation にとどまった (Fig 3E)。4141-PBL-TCR を transduction したドナーT細胞は TYKNU、KLE、Saos2-R175H (p53 R175H かつ HLA-A02:01 陽性の n=3 株) に対して特異的 41BB 上昇 (Fig 3F) と IFN-γ 分泌を示したが、HLA-A02:01 陰性の CEM/C1・HCC1395、p53 野生型の SKMEL5、Saos2 親株には無反応であり、p53 R175H と HLA-A*02:01 の二重要件を満たす厳密な特異性が確認された (Fig 3F, 3G)。mock 導入T細胞は全細胞株に無反応で TCR 特異性を裏付けた。

HLA 拘束性と minimal p53 ネオエピトープの同定:COS7 transfection assay (個別 HLA plasmid + LP パルスまたは TMG 共導入) で、患者4141-CD8 は HLA-A02:01 拘束性で最小ネオエピトープ HMTEVVRHC を認識し (Fig 3A)、患者4266-CD8 は HLA-A68:01 拘束性で SSCMGGMNWR を認識した (Fig 3B)。患者4285-CD4 TP53-TMG-IVS 培養中の 7 種 PBL 由来 TCR はすべて同一の HLA-DRB1*13:01 拘束性 (Fig 3C) を示し、15 mer オーバーラッピングペプチドアッセイ (14 aa overlap) でコアペプチド EVVRHCPHHER が共通認識配列として同定された (Fig 3D)。合計 n=11 種の TCR が p53 R175H (患者4141、4285) および p53 R248W (患者4266、4273) を標的として同定され、うち n=3 例で TIL-PBL TCR 配列同一性が確認された。

考察/結論

本研究は、転移性上皮がん患者の末梢血中に腫瘍浸潤リンパ球と同等の p53 ネオアンチゲン特異性を持つ抗原経験T細胞が循環していることを体系的に実証した。これまでの研究ではペプチドワクチン接種後の末梢血での散発的 p53 反応や単例での IVS 報告が存在したに過ぎず、12 種のホットスポット変異を包括する TMG プラットフォームと抗原経験T細胞 sort を組み合わせた本研究の手法とは規模と体系性において対照的である。Tran et al. NEnglJMed 2016 の KRAS G12D TIL 療法とは異なり、本手法は外科的 TIL 採取を必要とせず手術不能な進行がん患者にも応用可能な非侵襲的経路を確立した。Tran らの消化管がん TIL ネオアンチゲン研究 (Tran et al. Science 2015) とは異なり、本研究は末梢血からの同定を体系的に示し、これまで報告されていない PBL-TIL TCR clonotype identity を TCRB deep sequencing で証明した点が新規の発見である。

novel な知見として、患者4285 では TIL に存在しない n=7 種の PBL 固有 p53 R175H 特異的 TCR が新規に発見され、末梢血が腫瘍内とは異なる TCR レパトア多様性を保持し得ることが示唆された。これは本研究で初めて定量的に示された所見であり、PBL が TIL を補完する独立した TCR ライブラリーとして機能し得ることを意味する。技術的には、TP53-TMG が 12 変異を一括カバーすることで個々の変異同定なしに汎用スクリーニングが可能となり、10^5 PBL あたり 1個未満の前駆体でも IVS と 41BB/OX40 sort により最高 78% 反応性かつ最大 4.2 × 10^8 cells まで拡張できることが実証された。

臨床応用の観点では、同定された最小ネオエピトープ (HMTEVVRHC/HLA-A02:01; SSCMGGMNWR/HLA-A68:01; EVVRHCPHHER/HLA-DRB1*13:01) は TCR 遺伝子工学の template として直接利用可能であり、HLA-TP53 変異の組み合わせライブラリーを構築することで既製品型 TCR-T 細胞療法の臨床的意義は大きい。TP53 変異腫瘍では loss-of-heterozygosity (LOH; 野生型対立遺伝子の消失) が高頻度に生じ抗原消失耐性が低い点、また MDM2 経路阻害による変異 p53 蓄積が十分な neoepitope 提示量を保証する点も臨床現場での応用に有利である。さらに ctDNA (circulating tumor DNA) による液体生検との統合で PBL のみを用いた完全非侵襲的アプローチが実現でき、bench-to-bedside への橋渡しが加速する。

残された課題および limitation として、まず n=9 例の小規模コホートであり、より大規模な前向き検証が今後の検討として必要である。前駆体頻度が 10^5 PBL あたり 1個未満であることから白血球除去療法または大量採血が必要となる場合があり、進行がん患者での実施可能性は更なる検討が求められる。HLA ダウンレギュレーションによる免疫逃避の評価および in vivo での TCR 持続性・腫瘍応答の相関は future research の課題として残る。TP53 hotspot 以外の private 変異への汎化、マウス異種移植モデルでの前臨床有効性評価、および相対的前駆体頻度と臨床奏功の関連も今後の展望として挙げられる。

方法

NCI 単施設前向き解析 (NCT01174121、Investigational Review Board + U.S. Department of Health and Human Services 承認、米国共通ルール準拠) で、転移性大腸がん7例・直腸がん1例・卵巣がん1例の計 n=9 例を対象とした。全例で全エクソーム解析 (WES) により TP53 変異が確認されており、ACT 前に採取した凍結白血球除去血液 (leukapheresis) を解析した。フローサイトメトリー (FACS Aria II、BD Biosciences) で抗原経験T細胞 3 サブセット (effector memory: CD62L-CD45RO+、central memory: CD62L+CD45RO+、effector: CD62L-CD45RO-) を CD4 と CD8 に分離ソートし、1.75-2 × 10^8 viable cells を T175 flask で 90 分 monocyte 除去後に IVS に投入した。刺激ソースとして (1) 患者固有 TP53 変異に対応する long peptide (LP; Genscript 合成、HPLC 精製 >95%) または (2) 12 種のホットスポット変異 (R175H, Y220C, G245S, G245D, R248L, R248Q, R248W, R249S, R273C, R273H, R273L, R282W) を包含する tandem minigene (TMG; mMESSAGE mMACHINE T7 Ultra Kit で mRNA 化、LAMP-DCLAMP 局在シグナル融合) を使用し、自己樹状細胞 (DC; GM-CSF 800 IU/mL + IL4 200 U/mL で分化、5-6 日培養) との DC:T = 1:3-1:6 比で IL21 30 ng/mL 添加下に 12 日間 IVS した。IVS 後に変異 TP53 発現 DC と再共培養し、翌日に 41BB および OX40 発現で活性化T細胞を sort した。sort 細胞は irradiated PBL feeders + OKT3 30 ng/mL + IL2 3,000 IU/mL の rapid expansion protocol (REP) を 14 日間施行後、IFN-γ ELISPOT (EMD Millipore) と 41BB 発現フローサイトメトリーで反応性を評価した。TCR 同定は反応性 IVS 培養物から単細胞 RT-PCR で TCRα/β 鎖をクローニングし、IMGT/V-Quest で CDR3 + J/D/J 領域を解析、murine 定常鎖を P2A-RAKR リンカーで連結して MSGV1 retroviral vector に組込み、HEK293GP + RD114 エンベロープで retrovirus 産生後に健常ドナー PBL へ Retronectin 板 (Takara) で transduction した。HLA 拘束性は COS7 細胞 (HLA 欠失) への個別 HLA plasmid (class I 300 ng/well; class II α+β 各 150 ng/well) Lipofectamine2000 transfection と NetMHC v3.4 予測 9-11 mer minimal epitope、15 mer オーバーラッピングペプチドアッセイ (14 aa overlap) で同定した。TCRB deep sequencing は Adaptive Biotechnologies / ImmunoSEQ Analyzer 3.0 で clonality (オリゴクローナルほど 1 に近い正規化多様性指標) と変異特異的 TCRB クロノタイプ頻度を解析した。腫瘍認識試験には Saos2-R175H (HLA-A02:01 + 全長 p53 R175H 過剰発現)、TC#4266 PDX 大腸がん株 (HLA-A68:01:02; p53 R248W)、TYKNU、KLE、CEM/C1 (p53 R175H; HLA-A02:01 陰性)、HCC1395 (p53 R175H; HLA-A02:01 陰性)、SKMEL5 (p53 野生型; HLA-A*02:01 陽性)、Saos2 親株 (p53 欠失) を用いた。IFN-γ は ELISA (Thermo Fisher Scientific) で定量し、TMG-WTTP53 (wild-type)、irrelevant TMG、DMSO (ペプチド溶媒)、PMA/ionomycin (positive control) を対照とした。