• 著者: Yunhe Liu, Xiongfeng Chen, Yibo Dai, et al.
  • Corresponding author: Giulia Biffi, Akshay T. Krishnamurty, Fatima Mechta-Grigoriou, Ruth Scherz-Shouval, Mara H. Sherman, Shannon J. Turley, Linghua Wang, Huocong Huang (複数機関)
  • 雑誌: Cancer Cell
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-07-13
  • Article種別: Review
  • DOI: 10.1016/j.ccell.2026.06.001

背景

腫瘍間質を構成するがん関連線維芽細胞 (cancer-associated fibroblasts, CAF) は1858年にVirchowが線維芽細胞を同定して以来、長年にわたり均一な活性化細胞として扱われてきた。腫瘍は「治癒しない創傷」として古くから喩えられ (Dvorak 1986)、CAFはこの病的創傷修復プログラムを担うと考えられていた。しかし、初期の非選択的CAF除去研究では矛盾する結果が生じ、α-SMA+ 間質細胞の枯渇が逆に腫瘍増悪を招く例が報告された (Rhim et al. 2014; Özdemir et al. 2014)。これは広汎なCAF標的化が機能的に異なる間質サブセットを無差別に排除することを示唆した。

シングルセルRNA-seq (scRNA-seq) と空間トランスクリプトミクスの台頭により、CAFが多様な系統と状態からなる複雑なエコシステムを形成することが明らかになった (Buechler et al. 2021; Kieffer et al. 2020)。ところが高解像度データは新たな問題を生んだ。複数のがん種にわたってCAFクラスターが乱立し、それらが保存された生物学的実体を異なる名称で指しているのか、文脈特異的な一過性適応なのかは未解明のままであった。この断片化した知識体系は、臨床試験での汎CAF標的療法 (FAP除去、Hedgehog阻害、ECM分解等) の相次ぐ失敗と相まって、統一的な概念的枠組みが不足していたことを浮き彫りにした。本レビューでは、高次元データと実験生物学をつなぐ統合モデルとして、分子表現型と空間アーキタイプに基づくCAF分類フレームワークを提案する。

目的

scRNA-seq・空間マルチオミクス研究を横断的に統合し、保存されたCAF分子表現型と反復的空間的アーキタイプを体系化した統一フレームワークを提案する。さらに現行の前臨床・臨床間質標的アプローチを批判的に検討し、精密・文脈特異的な次世代間質療法の設計指針を示すことを目的とする。

結果

CAFの起源と可塑性の基盤:CAFの転写的・機能的多様性は、文脈依存的な可塑性と由来細胞の多様性という少なくとも2つの要因に起因する。汎臓器の普遍的組織常在線維芽細胞前駆細胞はDPT (dermatopontin)・PI16 (peptidase inhibitor 16)・COL15A1 (collagen type XV alpha 1) の3遺伝子を定常状態マーカーとして発現し、Dpt レポーターマウスの系譜追跡でCAFの主要前駆体であることが確認された。膵臓ではPSC (pancreatic stellate cells, 膵星細胞) が高TGF-β環境で筋線維芽細胞性CAF (myCAF) に、IL-1/JAK-STAT 活性化環境で炎症性CAF (iCAF) に分化するという可塑性が機能実験により実証された。乳がんでは、10の空間的に定義されたニッチ解析から、FAP+ CAFが解毒関連iCAFサブセットからECM産生myCAFサブセットへと遷移する軌跡が示された。さらにBRCA1/2変異は腫瘍細胞のPSCへの影響を通じてCAF組成を変容させ、BRCA変異PDAC癌細胞はPSCの転写状態を筋線維芽細胞性から免疫調節性へ移行させる。免疫文脈もCAF可塑性を規定し、制御性T細胞 (Treg) がTGF-β源となってmyCAF状態を促進する一方、ANTXR1 (anthrax toxin receptor 1, 炭疽毒素受容体1) 陽性FAP+ myCAFサブセットがTregの集積・生存・分化を促進する相互強化ループが形成される。中皮細胞は MHC-II 発現apCAFの由来細胞として複数臓器で確認され、骨髄由来前駆体の寄与も報告されているが、pericyte 由来の証拠は依然追加系譜追跡が必要である。

iCAF (炎症性CAF) の分子表現型:iCAFはIL-6・LIF・CXCL1/2・HGFなどの炎症性サイトカイン・ケモカインを分泌し、α-SMAが低く PDGFRα が高いことで特徴づけられる (Fig 1)。シグナル機構として、腫瘍由来IL-1αがNF-κBを活性化してLIF産生を誘導し、これがJAK/STAT3の自己分泌ループによりiCAF表現型を維持する。TGF-βはSMAD2/3を通じてIL-1R1を抑制することでmyCAF分化へとリダイレクトし、この拮抗がiCAFとmyCAFの空間的な棲み分けを生む (腫瘍近接細胞はTGF-βを傍分泌的に受け取り myCAF化、遠位細胞はIL-1パラクリンにより iCAF化)。OSM・TNF・IL-17AがIL-1とのシナジーでiCAF分極を促す一方、低酸素 (HIF-1α 経由)、HSF1 (BRCA変異 PDAC)、グルタミン枯渇 (MEK-ERK 炎症シグナル)、NRF2/酸化ストレス経路もiCAF状態を促進し、腫瘍が保存された組織ダメージ応答回路を乗っ取る仮説を支持する。機能的にiCAFは化学療法耐性・癌幹細胞ニッチ維持と関連し (IL-6/IL-8産生CD10+GPR77+ CAF)、直腸癌の化学放射線療法後にはIL-1α依存的なiCAF分極が誘導されて腫瘍生存を促進する。

myCAF (筋線維芽細胞性CAF) の分子表現型と免疫制御機能:myCAFはほとんどのがん腫において最も豊富なCAFサブタイプであり、特に結合組織形成 (desmoplastic) 癌で顕著である (Fig 1)。α-SMAおよびPOSTN (periostin, stromal ECM protein) の高発現を特徴とし、TGF-β・Hedgehog・YAP/TAZ 機械シグナル伝達が主要な分化ドライバーとして同定されている。myCAFは密なコラーゲン・フィブロネクチンネットワークを沈着させ間質圧を上昇させることで T細胞の癌巣へのアクセスを制限するが、肺腫瘍では線維方向が T 細胞を放射状でなく腫瘍アイレットの外周に誘導することが示された。最も一貫して同定されるサブタイプはLRRC15 (leucine-rich repeat containing 15) 陽性myCAFであり、TGF-β高シグナル環境に対する普遍的応答として全固形腫瘍で検出され、CD8+ T細胞機能を直接抑制して抗PD-L1抵抗性を媒介する。老化関連myCAF (senescent myCAFs, 老化型CAF) は老化関連分泌表現型 (SASP) を通じて免疫抑制性マクロファージを促進し、PDAC・乳がんでのT細胞・NK細胞活性化を阻害する。ANTXR1+ myCAFは化学療法後も残存して卵巣がんでCD8+ T細胞傷害性をYAP1シグナルで抑制し、SPP1産生myCAFはPDAC肝転移でマクロファージとの相互作用によりCD8+ T細胞浸潤・活性化を抑制する。一方、CD105-CAFは腫瘍抑制的に機能してMHCII非依存性抗腫瘍免疫を促進するなど、myCAF内部の機能的非冗長性が示唆される。

apCAF (抗原提示CAF) と他の間質集団:apCAFはMHC-II遺伝子 (HLA-DRA、HLA-DRB1、CD74) と抗原提示機構を構成的に高発現するCAF集団である (Fig 1)。近年の系譜解析により2種の主要サブセットが同定された。CD24+ apCAFは中皮細胞様のCD24+起源を持ち、腫瘍細胞近傍・腹膜・化学放射線療法抵抗ニッチに局在し、共刺激分子 (CD80/CD86) の欠如のもとでTregの誘導・分化を促進して免疫抑制的に機能する。CD52+ apCAFはCD52+造血系由来の可能性が高く、C1q産生によるCD4+ T細胞の生存シグナルと抗腫瘍免疫 (NSCLC) および三次リンパ節構造 (TLS) 形成に関与する。apCAFの機能は文脈依存的で、肺がんでは化学免疫療法を阻害し、胃がんでは T細胞活性化と良好転帰に相関し、乳がんでは予後良好因子として作用するという相反する報告がある。この乖離は2系譜の混在と腫瘍種・ニッチ依存的な役割の違いで部分的に説明される。一方、汎腫瘍のscRNA-seqでは、腫瘍特異的シグナルにさらされていないPI16+/DPT+ 普遍的前駆細胞サブクラスターが常在し、多数の新規CAFクラスターがこの保存前駆体プールの活性化段階として再解釈可能であることが示唆される。筋線維芽細胞と誤分類されがちな管腔細胞 (pericyte; RGS5/MCAM陽性) やSMC (smooth muscle cells, 平滑筋細胞; MYH11/DES高発現) はα-SMAを共有するが、PDGFRα/PDPN (podoplanin, ポドプラニン) を欠くことで区別でき、乳がんにおける vascular CAF (vCAF) はこの系譜に対応する (Table 1)。

4レベル階層的CAF分類システム:多施設にわたる高次元間質データセットの統合を促進するため、4レベルの階層的マーカーフレームワークを提案する (Fig 2)。Level 1 では主要間質コンパートメントをCOL1A1/COL1A2/COL3A1高発現により間葉系として同定し、上皮・内皮・免疫集団から区別する。この際KRT/CD45による厳格なフィルタリングは中皮関連細胞や造血前駆体を誤排除するリスクがあるため注意が必要である。Level 2 では系譜特異的マーカーでストローマ系譜を区分する: 普遍的前駆細胞 (PI16+/DPT+陽性)、MSLN (mesothelin, surface glycoprotein) 陽性中皮細胞、pericyte (RGS5+/MCAM+陽性)、SMC (MYH11高/DES高)。Level 3 ではPDGFRA・DCN (decorin, デコリン)・PDPN発現でCAFアイデンティティを確認後、3つの広域分極状態に分類する: iCAF (IL6+/CXCL1+/CXCL2+)、myCAF (α-SMA高/POSTN高)、apCAF (HLA-DRA+/CD74+)。iCAFはmyCAFやapCAFと比較してPDGFRA発現が高い。Level 4 では生物学的文脈 (組織・空間ニッチ・病期・治療介入) によってサブタイプを同定する: myCAFではLRRC15+陽性 (TGF-β高/T細胞排除)、CDKN2A (cyclin-dependent kinase inhibitor 2A, 老化型)陽性、ANTXR1+陽性 (広域系譜マーカー); iCAFではLIF+・HGF+・MME (CD10; membrane metalloendopeptidase) 陽性; apCAFではCD24+ vs CD52+。このフレームワークは概念的なガイドとして位置づけられ、腫瘍種・技術プラットフォームを横断した研究統合に寄与することが期待される。

7種の空間的アーキタイプ:pan-cancer空間マルチオミクス解析からCAFが反復する空間的組織パターンを形成することが示された (Fig 3, Table 2)。アーキタイプA (desmoplastic rim) はTGF-β駆動myCAFが腫瘍-間質界面に密なECMバリアを形成し、T細胞の腫瘍内浸潤を阻害するパターンである。肺腫瘍ではフィブロネクチン線維方向が T細胞を腫瘍アイレット外周に誘導し、LRRC15+陽性myCAFがCD8+ T細胞機能を抑制して抗PD-L1抵抗性を媒介する (Grout et al. 2022; Grout et al. CancerDiscov 2022)。一方、HCCでは基底膜関連ECMを特徴とする辺縁部の腫瘍抑制的ニッチも同定され、アーキタイプAが機能的に多様な集合体であることを示す。アーキタイプB (腫瘍遠位炎症性間質) はIL-1/TNF/OSM/JAK-STAT駆動のiCAFが腫瘍遠位領域に分布し、骨髄系細胞を動員するとともに低酸素・栄養制限・治療ストレス下での癌細胞生存を促進するパターンである。乳がんでは組織常在FOLR2 (folate receptor 2, 葉酸受容体2) 陽性マクロファージとの共局在が確認された。アーキタイプC (血管周囲) はCAF-管腔細胞の連続体が微小血管周囲でPDGF/TGF-β交換を行い、血管収縮・免疫細胞trafficking・薬物アクセスを規定するパターンである。アーキタイプD (免疫隣接抗原提示間質) はIFN-γ/CIITA軸で誘導されたapCAFがリンパ球豊富領域・TLS近傍に局在し、系譜 (CD24+ vs CD52+) とニッチ文脈に応じてTreg誘導または抗腫瘍T細胞免疫を二極化して媒介するパターンである。アーキタイプE (浸潤前縁部) はmyCAFが侵潤前縁・腫瘍出芽帯でECMを整列させ癌細胞の集団移動回廊を形成し、乳がんではYAP依存的ペリオスチン産生がコラーゲン架橋と集団浸潤を促進するパターンである。アーキタイプF (前転移・転移性間質) は臓器常在線維芽細胞が原発腫瘍由来全身シグナル (Activin A、腫瘍由来エクソソームmiR-188-3p) により前転移ニッチ形成に向けてプライミングされ、確立した転移巣ではマクロファージ-線維芽細胞JAK/STAT軸によるmyCAF様転移関連線維芽細胞 (metastasis-associated fibroblast, MAF) 状態が形成されるパターンである。アーキタイプG (臓器特異的文脈) は各臓器の先天的ストローマテンプレート (肺では肺胞/外膜線維芽細胞、肝臓では肝星細胞/門脈線維芽細胞) がCAFプログラムの局在と機能を決定するフレームとして機能し、同一のpan-cancer CAFプログラムが臓器間で異なる近傍細胞構成と臨床的意義を持つ背景を説明するパターンである。

前臨床・臨床療法の試みと教訓:間質標的療法は直接除去・再プログラム・機能阻害・ECM標的の4カテゴリに整理される (Fig 4)。直接除去の領域では、FAP標的療法がFAPのCAF複数サブセット・リンパ節FRC (fibroblastic reticular cells, 線維芽細胞様網状細胞)・骨格筋への広汎発現により特異性を欠き、マウスではリンパ器官障害・免疫細胞ホーミング障害・悪液質・貧血を招いた。臨床では非結合型抗FAP抗体シブロツズマブがphase II試験で腫瘍特異的取り込みを示したが奏効率0%にとどまった (細胞傷害機構の欠如が理由)。FAP標的放射性リガンドはフェーズI安全性シグナルを得ているが有効性は未確定である。再プログラムの試みでは、ビタミンD受容体アゴニスト (パリカルシトール) が前臨床で有望であったが複数のPDACフェーズ2試験で陰性。レチノイン酸は有望で、STARPACフェーズIbにてMRI間質変化の薬力学的エビデンスと安全用量が確立され、STARPAC2フェーズ2が進行中である。機能阻害アプローチでは、広域TGF-β遮断薬ビントラフスプ アルファがNSCLCのフェーズ3で毒性増加とともに失敗した (Mariathasan et al. Nature 2018)。アイソフォーム選択的アプローチSRK-181 (抗潜在型TGFβ1) が心毒性を回避してNCT04291079で抗PD-1抵抗性腫瘍に初期活性シグナル。CXCL12-CXCR4遮断 (モチキサフォルチド + ペムブロリズマブ + 化学療法) はCOMBAT試験 (n=37) でPDACのORR 32%を達成したが無作為化検証は未実施。IL-6標的は腫瘍内炎症性サイトカイン冗長性を反映して一貫して不振。ECM標的の試みでは、Hedgehog阻害薬ビスモデギブが前臨床ではShh欠失で腫瘍加速を示し、間質が抑制的役割を持つことを証明したが、臨床ではα-SMA・E-カドヘリン・CD45マーカーに変化を認めず化学療法単独と同等の転帰となった。PEGPH20 (ヒアルロン酸分解酵素) はHA 34-80%の確実な標的エンゲージメントと灌流改善を示したが、HALO-301フェーズ3試験では全生存期間が対照と同等であり、薬力学的効果の確認が臨床ベネフィットを保証しない逆説を示した。

考察/結論

① 先行研究との違い:従来の研究はCAFを単一の「活性化線維芽細胞」として扱うか、個別のscRNA-seqクラスターとして命名しており、保存されたプログラムと文脈特異的適応を区別する概念的枠組みは存在しなかった。これまでの治療試験は汎CAFマーカー (FAP、α-SMA、Hedgehog) を標的とし、機能的に異なるサブセットを無差別に操作した結果、一貫した臨床ベネフィットを示せなかった点で本フレームワークの提案と対照的である。本レビューはTable 1に文献横断的なクラスター-表現型マッピングを提示し、多数の機関が独立して命名した20以上のCAFラベルがiCAF・myCAF・apCAF・普遍的前駆体・管腔系・増殖性CAFの6カテゴリに大部分収束することを示す。

② 新規性:本フレームワークで新規に提案されたのは、分子表現型 (Level 3) と空間的アーキタイプ (A-G) の二軸による統合分類体系である。空間的アーキタイプという概念は、CAF個別の転写状態ではなく「CAFを中心とした反復的多細胞空間構成」を治療標的の単位として位置づける新規な視点である。これまで報告されていない観点として、TGF-β駆動アーキタイプAとIL-1/JAK-STAT駆動アーキタイプBが協調して免疫排除TMEを維持するという「coupled-module」モデルを提示する。またアーキタイプGは、保存されたpan-cancer CAFプログラムが臓器特異的ストローマテンプレートによって異なる空間配置・臨床的意義を呈する理由を初めて体系的に説明する枠組みとなっている (Kirschstein et al. CancerCell 2026)。

③ 臨床応用:本フレームワークは間質標的療法の設計に直接的な示唆を与える。アーキタイプA富化腫瘍ではLRRC15 ADCまたは選択的TGF-β1阻害とICBの組み合わせが最も直近の臨床転換経路として見込まれる。アーキタイプD腫瘍ではapCAF起源 (CD24+ vs CD52+) とIFN-γトーンの評価が予測バイオマーカーとなる可能性がある。臨床的に実行可能な空間評価として、多重IHC・撮像質量サイトメトリー・空間プロテオミクスによるCAF-癌細胞・CAF-免疫細胞・CAF-血管・CAF-ECM関係の定量化が提唱されており、これをComputational pathologyと融合した空間リスクモデルで患者層別化に応用することが目指される。循環バイオマーカー (cfDNA/cfRNA/細胞外小胞) によるCAFダイナミクスの液体生検も将来的な患者モニタリングツールとして期待される。

④ 残された課題:複数の重要な未解決問題が指摘される。第一に、特定CAFサブタイプ (特にapCAF) の正確な起源と、腫瘍種をまたいだ機能の文脈依存性が十分に解明されていない。第二に、空間的アーキタイプの時間的ダイナミクスについて、ヒト腫瘍における縦断的サンプリングのデータは依然乏しく、断面的空間データからの推測に限られる。第三に、pro-disease CAFサブセットを唯一的に同定する高特異的な細胞表面マーカーが欠如しており、選択的標的化の大きな障壁となっている。今後の研究では系譜追跡・縦断的サイト対応サンプリング・摂動研究・表面プロテオミクス・空間オミクス・バイオマーカー駆動臨床試験デザインを統合した実験ツールキットの整備が急務である。

方法

Review論文 (Cancer Cell 2026)。対象: 固形腫瘍 (特に乳がん・PDAC・NSCLC・肝細胞がん・大腸がん・卵巣がん) のCAF生物学に関する原著論文・scRNA-seq/空間トランスクリプトミクスアトラス・前臨床モデル・臨床試験データ。主要データベース: PubMed / Web of Science / MEDLINE。文献収集期間: 2010-2025年 (基礎的重要論文は年代問わず収録)。文献収集法: 保存されたCAF表現型 (iCAF/myCAF/apCAF) および空間アーキタイプに関する主要文献100件以上を系統的にレビューし統合。異なる研究グループが命名した個別CAFクラスターを、発現マーカー・機能シグナル・空間局在の3軸で比較照合し保存表現型への収束を解析した。Table 1には2020-2025年の主要scRNA-seq/空間研究20件以上のCAFクラスター-表現型マッピングを集約し、各研究のUMAPクラスター命名・マーカー遺伝子リスト・提案される表現型対応を並列比較した。Table 2には7空間アーキタイプの定義・空間的位置・優位CAFプログラム・ニッチ構成・機能的解釈を統合した。主要臨床試験: HALO-301 (HA高選択 PDAC, PEGPH20)、COMBAT (モチキサフォルチド + ペムブロリズマブ + 化学療法, PDAC)、STARPACフェーズIb (レチノイン酸)、STARPAC2 (フェーズ2, 進行中)、NCT04291079 (SRK-181, 抗潜在型TGFβ1) を批判的に検討した。主要解析手法として各文献記載のRNA-seq差次発現解析 (DESeq2/edgeR)・UMAP次元削減・空間トランスクリプトミクス統計 (Moran’s I等)・Kaplan-Meier生存解析データを総合してCAF分類の実証的基盤を整理した。