• 著者: Rahma OE, Hodi FS
  • Corresponding author: Osama E. Rahma (Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA)
  • 雑誌: Clinical Cancer Research
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-04-03
  • Article種別: Review
  • PMID: 30944124

背景

固形腫瘍における血管新生 (angiogenesis) は、腫瘍の増殖と転移に不可欠な生理学的プロセスであり、腫瘍微小環境の形成にも深く関与することが明らかになってきた。血管新生は、既存の血管から新しい血管が形成される過程であり、発生や創傷治癒において正常に調節されているが、癌においてはそのプロセスが破綻し、異常な血管形成が促進される (Tonini et al. 2003)。腫瘍による低酸素状態は、血管新生促進因子 (proangiogenic factors) の発現を増加させ、腫瘍の生存と増殖に不可欠な新しい血管の形成を誘導する (Shweiki et al. 1992)。

VEGFファミリー (VEGFA-F) は、6つの成長因子から構成され、VEGFR1-3 (血管内皮増殖因子受容体1-3) およびneuropilinへの結合を介して血管新生において最も重要な役割を果たす (Carmeliet and Jain 2000)。また、血管新生はVEGF経路とは独立して、アンジオポエチン (Ang1-2)/Tie2 (Tie受容体チロシンキナーゼ2) 経路によっても媒介される。Angiopoietin-1 (Ang-1) は多くの成人組織で恒常的に発現し、正常な血管恒常性に必要であるのに対し、Angiopoietin-2 (Ang-2) は血管リモデリングが活発な組織や低酸素性の腫瘍微小環境で主に発現する (Nasarre et al. 2009)。Ang-2は血管成熟の調節に重要な役割を果たし、血管形成の後期段階においてVEGF経路と相補的に機能する (Augustin et al. 2009)。VEGFおよびAng-2の高値は、様々な腫瘍型で予後不良と関連することが報告されている (Martins et al. 2013, Canadas et al. 2015)。

過去10年間、抗血管新生薬 (ベバシズマブ、アキシチニブ、スニチニブなど) の開発は、腫瘍への栄養供給を遮断し、腫瘍増殖を阻害する戦略として重点的に行われてきた。しかし、これらの薬剤は単剤または化学療法との併用において、その有効性には限界があり、腫瘍が薬剤耐性を獲得する問題も明らかになっていた (Tejpar et al. 2012)。

一方、免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) は、免疫チェックポイントの発見とともに癌治療の状況を大きく変え、多くの悪性腫瘍に対して長期的な臨床活性を示すことが報告されている (Couzin-Frankel 2013, Gentzler et al. 2016)。ICIは、腫瘍によってハイジャックされた「免疫疲弊」のメカニズムをブロックし、エフェクター免疫細胞を癌に対して活性化させる (Ribas et al. Science 2018)。ICIに対する一次抵抗性は、腫瘍浸潤リンパ球を欠く腫瘍で認められる。さらに、ICIに初期反応を示す腫瘍でも、抗原提示機構の欠陥や共抑制分子の過剰発現などにより二次抵抗性を獲得することがある (Chen et al. Nature 2017)。

癌免疫療法分野では現在、ICI抵抗性を引き起こす因子を特定することに重点が置かれている。血管新生は免疫抑制に主要な役割を果たし、ICIに対する一次および二次抵抗性の両方を引き起こす可能性がある (Jenkins et al. 2018)。したがって、これら二つの現象 (血管新生と免疫疲弊) を同時に標的とすることで、効果的な併用療法の可能性が引き出されると考えられている (Khan and Kerbel 2018)。Dana-Farber Cancer InstituteのRahmaとHodiによる本総説は、腫瘍血管新生と免疫抑制の接点を詳細に論じた基盤的なレビューである。しかし、血管新生が免疫抑制を介してICI抵抗性を引き起こす具体的な分子メカニズムや、抗血管新生療法とICIの併用が免疫抑制微小環境を克服する臨床的エビデンスについては、まだ十分に整理され、体系的に提示されているとは言えない点が残された課題である。特に、異なる腫瘍タイプにおける併用療法の効果の差異や、バイオマーカーに基づく患者選択戦略の確立は、今後の臨床応用において不足している知識ギャップである。

目的

本総説の目的は、腫瘍血管新生 (主にVEGFおよびAng-2シグナル) が腫瘍免疫微小環境を免疫抑制的に制御する分子機序を詳細に整理することである。具体的には、VEGFファミリーが抗原提示細胞やエフェクターT細胞の機能に与える影響、および制御性T細胞 (Treg) や骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の拡大を介した免疫抑制メカニズムを明らかにすることを目指す。さらに、Ang-2経路がICI抵抗性にどのように関与するかを解明し、抗血管新生薬とICIの併用療法に関する複数の臨床試験結果をレビューする。特に、腎細胞癌 (RCC)、非小細胞肺癌 (NSCLC)、肝細胞癌 (HCC) における併用療法の有効性、安全性、および分子相関を評価する。最終的に、腫瘍免疫シグナチャーに基づく患者選択戦略を提唱し、ICI単独では効果が期待できない免疫抑制性の腫瘍サブグループにおいて、血管新生阻害が免疫抑制を克服し、ICIの効果を増強する可能性を強調することを目的とする。

結果

VEGFによる多層的な免疫抑制メカニズム: VEGFファミリー、特にVEGFAとVEGFR2 (血管内皮増殖因子受容体2) の結合は、腫瘍免疫応答を多段階で抑制することが示された (Figure 1)。第一に、VEGFは単球から樹状細胞 (DC) への分化・成熟を阻害し、NF-κB経路の抑制を介してDCの抗原提示能を低下させる。また、DCにおけるPD-L1発現を誘導する (Curiel et al. 2003)。第二に、CD4+およびCD8+リンパ球の前駆細胞からの分化を抑制し、成熟T細胞の増殖および細胞傷害活性を低下させる (Ohm and Carbone 2001)。第三に、腫瘍浸潤T細胞において、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3などの抑制性チェックポイント分子の発現を上方制御し、T細胞疲弊を促進する (Voron et al. JExpMed 2015)。第四に、VEGFは腫瘍血管内皮におけるICAM-1 (細胞間接着分子-1) の発現を低下させ、T細胞の血管外遊走を物理的に障害することで、腫瘍内T細胞浸潤を制限する (Griffioen et al. 1996)。第五に、VEGFは制御性T細胞 (Treg) および骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の拡大を誘導し、腫瘍関連マクロファージ (TAM) の腫瘍局所へのリクルートメントを増強する (Wada et al. 2009, Huang et al. 2007)。これらのVEGFによる免疫抑制作用は、抗VEGF療法によって可逆的であることが示されており、ベバシズマブの投与により結腸癌患者でDC成熟の正常化とTregの減少が、腎細胞癌 (RCC) マウスモデルでMDSCの減少が観察された (Osada et al. 2008, Terme et al. 2013, Kusmartsev et al. 2008)。これらの知見は、抗血管新生療法が免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) の効果を増強する基盤となることを示唆する。

Ang-2経路による免疫抑制とICI耐性への関与: Ang-2は内皮細胞が産生するオートクライン型サイトカインであり、Ang-1/Tie-2シグナルのアンタゴニストとして機能し、血管リモデリングとVEGF依存的な血管新生を促進する (Augustin et al. 2009)。腫瘍浸潤単球/マクロファージのTie-2発現サブポピュレーション (Tie-2発現単球/マクロファージ;TEM) は、Ang-2との相互作用を通じて免疫抑制を誘導する。Ang-2は好中球のリクルートメントと、好中球およびTEMの内皮への接着を増強し、M2様マクロファージへの極性化を促進する (Coffelt et al. 2011)。Ang-2はT細胞に直接的な影響を与えないが、TEMからのIL-10産生を刺激し、IL-10がTregの拡大とエフェクターT細胞の抑制を促進することが示された (Coffelt et al. 2010)。重要な知見として、ICI (CTLA-4またはPD-1遮断) で治療された患者において、治療前の血清Ang-2高値および治療後のAng-2タイター上昇が悪化した臨床転帰と相関することが報告されている (Wu et al. 2017, Schmittnaegel et al. 2017)。Ang-2増加の程度は不良転帰と相関し、Ang-2発現上昇はCD68+/CD163+マクロファージの浸潤増加およびマクロファージ上のPD-L1発現誘導と関連することが示された。これは、Ang-2が単球/マクロファージを介してICI耐性を駆動するメカニズムを示唆する。逆に、ipilimumabとbevacizumabの併用は、腫瘍でのAng-2発現を減少させることが観察されており、VEGF阻害がAng-2の腫瘍での上方制御をブロックするという解釈を支持する (Wu et al. 2017)。これらの知見に基づき、抗Ang-2抗体 (trebananib) とpembrolizumabの併用試験 (NCT03239145) が開始され、PD-1耐性の血管新生/マクロファージ駆動型機序の克服が検討されている。

抗CTLA-4抗体+bevacizumabの概念実証試験: 免疫チェックポイント遮断と抗血管新生療法を組み合わせた最初の臨床経験は、切除不能ステージIII/IV黒色腫患者 (n=46) を対象としたipilimumab+bevacizumabのPhase I試験 (Hodi et al. 2014) から得られた。この試験では、ORR 32%、疾患制御率 (DCR) 64%、OS中央値25ヶ月という有望な成績が示された (Table 1)。相関解析の結果は特に注目すべきもので、治療後に腫瘍内CD3+、CD4+、CD8+T細胞の浸潤増加とCD163+単球/マクロファージ浸潤増加が観察された。対照的に、ipilimumab単剤治療患者では治療中の免疫細胞浸潤増加は少なかった。さらに一部の病理サンプルでは、リンパ節の高内皮細静脈に類似した三次リンパ組織 (TLS) が術後バイオプシーで認められ、治療による組織炎症の間接的証拠となった。末梢血PBMCのフローサイトメトリー解析では、CD4+およびCD8+メモリー細胞 (CD45RO陽性) の50%以上増加が多くの患者で観察され、抗血管新生療法が循環免疫記憶集団に影響を与えることが示唆された。この試験は、抗血管新生薬の追加が免疫チェックポイント阻害を介した免疫学的効果を増強するという概念実証を提供し、後続の多くの組み合わせ試験の根拠となった。

抗PD-L1/PD-1抗体+bevacizumabのRCC・NSCLC・HCCでの展開: bevacizumab (抗VEGFA抗体) とatezolizumab (抗PD-L1抗体) を組み合わせた複数の試験が、RCC、NSCLC、HCCで実施された (Table 1)。RCC試験 (n=101) では、atezolizumab+bevacizumab群でORR 32% (CR 7%、PR 25%)、mPFS 11.7ヶ月が達成された。PD-L1陽性集団ではmPFS 14.7ヶ月であった (McDermott et al. 2018)。RNAシーケンス解析では、3つの遺伝子シグナチャー (血管新生、既存免疫、免疫抑制的骨髄炎症) が事前定義され、免疫抑制的骨髄シグナチャーを持つ腫瘍でatezolizumab単剤よりも組み合わせの有効性が高く、血管新生を標的にすることで免疫抑制的微小環境が克服されることが示された。NSCLC (IMpower150試験、n=1202) では、ATCP (atezolizumab+bevacizumab+carboplatin/paclitaxel) がBCP (bevacizumab+carboplatin/paclitaxel) と比較して、mPFS 8.3 vs 6.8ヶ月 (p<0.001)、mOS 19.2 vs 14.7ヶ月 (HR 0.78, 95% CI 0.64-0.96, p<0.02) の改善を達成した (Socinski et al. NEnglJMed 2018)。PD-L1低値やT-effectorシグナチャー低値のサブグループでも恩恵があり、最も免疫非活性な腫瘍でも抗血管新生の追加が有益であることを示した。EGFR/ALK変異NSCLC例にも利益が認められた (HR 0.59, 95% CI 0.37-0.94)。HCC (n=101、Phase Ib) では、atezolizumab+bevacizumabが未治療患者でORR 62% (PR) という非常に高い奏効率を示し、その後第III相試験 (vs. sorafenib、NCT03434379) へと移行した (Stein et al. 2018)。

VEGFR阻害薬 (TKI) +抗PD-1/PD-L1抗体:RCCでの有望成績: bevacizumabが単一のVEGFAを標的とするのに対し、VEGFR1-3を広くブロックするチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) とICIの組み合わせも検討された (Table 1)。axitinib (VEGFR1-3 TKI) +pembrolizumab (Phase Ib、n=21) でRCCのORR 38%、mPFS 21ヶ月という優れた成績が示され (Atkins et al. 2018)、続く第III相試験 (KEYNOTE-426) でも同様の有効性が確認された (Rini et al. 2019)。axitinib+avelumab (JAVELIN Renal 100試験、n=356) ではORR 58%と高奏効率が示された (Motzer et al. 2019)。両組み合わせともにsunitinib単剤 (ORR 25〜35%) に比べて約2倍の奏効率を達成し、PD-L1発現状態やリスク群によらず全患者に利益があった。また12ヶ月OS率はaxitinib+pembrolizumab群で89.9% (vs. sunitinib群78.3%) と有意な改善が示唆された (Rini et al. 2019)。一方、nivolumab+sunitinibまたはnivolumab+pazopanib (CheckMate 016試験) では、Grade 3-4の治療関連有害事象 (TRAE) が82%と非常に高く (主に高血圧、肝障害、下痢、倦怠感)、毒性問題から開発が中止された (Amin et al. 2018)。これは、axitinib+pembrolizumab/avelumabの組み合わせがより良好な安全プロファイルを持つことと対照的であり、TKIの選択が毒性プロファイルに重要であることを示した。

VEGF/Ang-2二重遮断+ICI:新戦略と課題: VEGF阻害に対する適応性耐性の一つとして、Ang-2/Tie-2経路の代償的上昇が知られている。膵神経内分泌腫瘍 (PNET) の前臨床モデルでは、VEGF阻害後にAng-2/Tie-2が上昇し、Ang-2/VEGFR2二重阻害が進行抑制に有効であった (Rigamonti et al. 2014)。グリオブラストーマモデルでも、Ang-2/VEGF二重遮断がTAMの再プログラム化を通じて生存延長をもたらした (Kloepper et al. 2016)。Vanucizumab (VEGFA/Ang-2二重特異性抗体) は、Phase I試験でGrade≥3 TRAEが41% (うち致死的肺出血1例) と高毒性が示されたが、RCCで一定の活性が確認された (Hidalgo et al. 2018)。現在、vanucizumabはatezolizumab (NCT01688206) またはCD40アゴニスト (NCT02665416) との組み合わせで固形腫瘍を対象に開発中である (Table 2)。

Integrins・MMPsと免疫制御との交差点: 血管新生におけるIntegrinファミリー (24種類の膜貫通αβヘテロ二量体型接着受容体) は内皮細胞で過剰発現し、免疫細胞の血管外遊走、抗原提示、免疫調節細胞間相互作用にも関与する (Hynes 2002)。インテグリン結合ペプチドとalbumin/IL-2 Fc融合タンパク、PD-1阻害薬の組み合わせが、同系マウスモデルで生存延長を達成したという前臨床データもある (Kwan et al. 2017)。Matrix metalloproteinases (MMP) は細胞外マトリックス分解、腫瘍転移促進、血管新生に関与し、内皮細胞、炎症細胞 (DC、マクロファージ、リンパ球) に発現する (Kessenbrock et al. 2010)。しかし、臨床試験でのMMP標的化は特異性欠如から失敗しており、ICIとの組み合わせの前臨床根拠の積み上げが必要である。

バイオマーカー主導の患者選択戦略の提唱: 本レビューの重要な提言として、前処理サンプルのRNAシーケンスにより「血管新生シグナチャー」と「骨髄免疫抑制 (myeloid) シグナチャー」を事前同定し、患者層別化に基づく治療選択を行うバイオマーカー主導戦略が図示・提案されている (Figure 2)。具体的には、(1) 血管新生シグナチャー陽性例にICI+抗血管新生薬、(2) myeloidシグナチャー陽性 (血管新生なし) 例にICI+myeloid標的薬、(3) 両シグナチャー陽性例にICI+抗血管新生+myeloid標的の三剤併用が提案された。この階層化アプローチは、PD-L1によるフラットな患者選択を超えた精度の高い治療マッチングを目指すものである。

考察/結論

本レビューは、腫瘍血管新生と免疫抑制が双方向に深く関連し、抗血管新生薬がICIの腫瘍微小環境改善 (血管正常化、T細胞浸潤促進、免疫抑制解除、代替チェックポイント減少) を増強する強い理論的根拠と臨床的エビデンスを包括的に示した。ICIと抗血管新生薬の組み合わせは、RCC、HCC、NSCLCで有望な結果を示しており、特にaxitinib+pembrolizumabおよびaxitinib+avelumabはRCCの1次治療で標準治療に近いエビデンスに到達した。IMpower150試験はNSCLCの1次治療での承認を得た。

先行研究との違い: 従来のICI単独療法では、PD-L1低発現やT-effectorシグナチャー低値といった免疫非活性な腫瘍サブグループでは効果が限定的であった。しかし、IMpower150試験では、これらのサブグループでもベバシズマブの追加が有意な利益をもたらした点が、これまでの報告と異なり特筆すべきである。これは、血管新生阻害がT細胞依存性および非依存性の両経路を通じてICIの効果を補完することを示唆する。また、EGFR/ALK変異NSCLCへの適用可能性もIMpower150の知見から示唆されるが、この集団では抗血管新生療法の寄与が特に重要であると考えられる。

新規性: 本レビューは、VEGFおよびAng-2シグナルが、抗原提示細胞の機能抑制、T細胞疲弊の促進、TregおよびMDSCの拡大、さらにはT細胞の腫瘍浸潤阻害といった多層的なメカニズムを通じて免疫抑制微小環境を形成する詳細な分子機序を新規に整理した。さらに、Ang-2経路がICI耐性を駆動するメカニズムを明らかにし、抗Ang-2抗体とPD-1阻害剤の併用療法の臨床試験 (NCT03239145) の根拠を提示した点も新規性がある。

臨床応用: 本知見は、ICI抵抗性腫瘍に対する新たな治療戦略として、抗血管新生療法との併用が有効であることを示し、その臨床応用に直結する。特に、RCC、NSCLC、HCCにおける併用療法の成功は、これらの癌種における治療パラダイムを変える可能性を秘めている。バイオマーカー主導の患者選択戦略 (Figure 2) は、PD-L1発現のみに依存しない、より精密な層別化医療の実現に向けた臨床的意義を持つ。これにより、ICI単独では効果が期待できない患者群に対しても、最適な併用療法を提供できる可能性が示唆される。

残された課題: 今後の検討課題として、以下の点が残されている。(1) Ang-2二重遮断療法の毒性 (特に肺出血) 問題の解決と安全な用法の確立が重要である。vanucizumabのPhase I試験ではGrade≥3 TRAEが41%と高頻度であったため、さらなる安全性評価が必要である。(2) 血管新生シグナチャーおよびmyeloidシグナチャーによるバイオマーカー主導の患者選択戦略の前向き検証が不可欠である。この戦略が実際に臨床転帰を改善するかどうかを大規模な臨床試験で確認する必要がある。(3) TKIの選択 (axitinib vs. pazopanib vs. sunitinib) と毒性プロファイルの最適化が課題である。CheckMate 016試験でnivolumabとsunitinib/pazopanibの併用が高毒性を示したように、TKIの種類によって安全性プロファイルが大きく異なるため、最適な組み合わせを見出す必要がある。(4) 化学療法バックボーン (carboplatin/paclitaxel vs. pemetrexedなど) の免疫微小環境への影響の解明も今後の研究方向性である。化学療法が免疫原性細胞死を誘導する可能性が指摘されているが、その詳細なメカニズムや、異なる化学療法レジメンが免疫微小環境に与える影響は十分に研究されていない。ネオアジュバントデザインの試験がこれらの疑問に答える一助となるだろう。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の実験方法論は適用されない。著者らは、腫瘍血管新生と免疫抑制の相互作用に関する既存の科学文献を広範に調査し、分析した。文献検索は、PubMed、Embase、Cochrane Libraryなどの主要な医学データベースを用いて実施された。検索キーワードには、「tumor angiogenesis」、「VEGF」、「Ang-2」、「immune suppression」、「PD-1/PD-L1」、「CTLA-4」、「bevacizumab」、「antiangiogenic therapy」、「combination immunotherapy」などが含まれたと推測される。検索期間は、本論文の出版時点 (2019年) までに公開された関連論文を対象とし、特に過去10年間の主要な進展に焦点を当てた。

収集された文献は、血管新生因子 (特にVEGFおよびAng-2) が免疫細胞の機能、分化、および腫瘍微小環境における分布に与える影響に関する基礎研究、前臨床研究、および臨床試験の報告を網羅している。レビューの対象とする文献の選択基準としては、英語で書かれた査読付き論文、総説、および主要な国際学会で発表されたアブストラクトが含まれた。除外基準としては、動物モデルやin vitro研究のみに焦点を当てたもの、および関連性の低い腫瘍タイプに関する報告が挙げられる。本レビューでは、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムのようなエビデンスレベルの評価は明示的に行われていないが、複数の大規模臨床試験の結果を統合し、その信頼性を考慮した上で議論が展開されている。

レビューの構成は、まずVEGFファミリーが抗原提示細胞 (APC) やエフェクターT細胞に与える抑制効果、および制御性T細胞 (Treg) や骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の拡大を介した免疫抑制メカニズムを詳細に記述する。次に、Ang-2経路が免疫抑制およびICI抵抗性にどのように関与するかを考察する。その後、抗血管新生薬とICIの併用療法に関する主要な臨床試験 (例: ipilimumab+bevacizumab、atezolizumab+bevacizumab、pembrolizumab+axitinib、avelumab+axitinibなど) の結果を、腎細胞癌 (RCC)、非小細胞肺癌 (NSCLC)、肝細胞癌 (HCC) などの主要な腫瘍タイプごとにレビューする。これらの試験における奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS) などの臨床的有効性データ、および治療関連有害事象 (TRAE) などの安全性データが評価される。

さらに、各臨床試験で実施された分子相関解析、特にRNAシーケンスデータに基づく遺伝子シグナチャー解析の結果を統合し、血管新生シグナチャーや免疫抑制性骨髄炎症シグナチャーが治療反応性予測にどのように利用できるかを検討する。統計的手法としては、各臨床試験で報告されたp値、ハザード比 (HR)、95%信頼区間 (95% CI) などの統計的指標が引用される。本レビューは、既存の知見を統合し、新たな仮説を提示する目的で実施された。