• 著者: Tony Mok, D. Ross Camidge, Shirish M. Gadgeel, Rafael Rosell, Rafal Dziadziuszko, Dong-Wan Kim, Mathieu Pérol, Sai-Hong I. Ou, Jin Seok Ahn, Alice T. Shaw, Willi Bordogna, Vlada Smoljanovic, Michael Hilton, Thomas Ruf, Joachim Noé, Solange Peters
  • Corresponding author: Solange Peters (Lausanne University Hospital, CHUV, Switzerland)
  • 雑誌: Annals of Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-05-11
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 32418886

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) 患者の5年相対生存率は依然として低いが、EML4-ALK転座を有するALK陽性NSCLC患者においては、標的療法により生存期間が延長している。第一世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) であるクリゾチニブは、ALK陽性NSCLCの治療に革命をもたらしたが、その後の次世代ALK TKI(アレクチニブ、セリチニブ、ブリガチニブ)は、より優れた薬理学的特性、すなわち高い効力と選択性、中枢神経系 (CNS) への浸透性、および耐性変異への対応能力により、一次治療としてクリゾチニブに取って代わった。現在、次世代ALK TKIは進行ALK陽性NSCLCの一次治療として推奨されており、特にアレクチニブは推奨される選択肢の一つであると、Planchard et al. AnnOncol 2018らが報告している。

ALEX試験 (第III相) の主解析 (データカットオフ: 2017年2月9日、追跡期間中央値約18ヶ月) では、アレクチニブがクリゾチニブと比較して、未治療ALK陽性NSCLC患者において有意な無増悪生存期間 (PFS) の改善を示したことが報告された (Peters et al. NEnglJMed 2017)。この時点でのinvestigator評価PFSのハザード比 (HR) は0.47、独立評価委員会 (IRC) 評価PFSのHRは0.50であった。その後の更新解析 (データカットオフ: 2017年12月1日) でも、investigator評価PFSのHRは0.43 (95% CI 0.32-0.58) と同様の傾向が維持されたが、全生存期間 (OS) の解析はいずれのカットオフ時点でも未熟であった(アレクチニブ群で23%、クリゾチニブ群で26%のイベント発生率)。

これまでのところ、次世代ALK TKIとクリゾチニブを比較した無作為化試験で、OSの統計的に有意な改善を示したものはなかった。例えば、クリゾチニブと化学療法を比較したPROFILE 1014試験の最終OS解析では、クリゾチニブ群と化学療法群の間でOSに統計的有意差は認められなかった (HR 0.76, 95% CI 0.55-1.05, p=0.0978) と、Solomon et al. JClinOncol 2018が報告している。これは、病勢進行 (PD) 時に80%以上の患者がクリゾチニブ群にクロスオーバーしたことが原因とされている。このようなクロスオーバーは、ALK陽性NSCLCの治療において、次世代ALK TKIが一次治療として確立されたにもかかわらず、OSの真のベネフィットを評価する上で大きな課題となっていた。この点に関して、次世代ALK TKIがOSを改善するかどうかは依然として未解明な部分が残されており、長期的なデータが不足していた。

本報告は、ALEX試験における最終的なPFSデータ (データカットオフ: 2018年11月30日) と、5年間の追跡期間を含むOSの更新データ (データカットオフ: 2019年11月29日) を提供する。これにより、アレクチニブの長期的な有効性と安全性をより詳細に評価し、次世代ALK TKIがクリゾチニブと比較してOSを改善するかどうかという、これまでの研究で未解明であった重要な臨床的ギャップを埋めることを目指す。特に、クリゾチニブ群における後治療としての次世代ALK TKIの使用がOS解析に与える影響についても考察し、長期的な治療戦略の最適化に資する情報を提供することが期待される。

目的

本研究の目的は、ALEX試験の最終的なPFSデータと、5年間の追跡期間を含むOSの更新データを報告することである。具体的には、未治療の進行ALK陽性NSCLC患者において、アレクチニブがクリゾチニブと比較してPFSおよびOSをどの程度改善するかを評価する。また、治療後の後治療パターン、特に次世代ALK TKIへのクロスオーバーがOS解析に与える影響を分析する。さらに、アレクチニブの長期投与における安全性プロファイルを評価し、新たな安全性シグナルがないことを確認する。これらのデータを通じて、ALK陽性NSCLCの一次治療におけるアレクチニブの長期的な有効性と安全性を確立し、臨床現場での最適な治療選択に貢献することを目指す。本解析は、これまでの報告でOSデータが未熟であったという課題に対し、より成熟したデータを提供することで、次世代ALK TKIがクリゾチニブと比較してOSの臨床的意義のある改善を示すか否かという重要な問いに答えることを意図している。

結果

最終PFSデータ: 最終PFSデータは、アレクチニブ群におけるPFSの顕著な延長を明確に示した (データカットオフ: 2018年11月30日)。治験責任医師評価によるPFSの追跡期間中央値は、アレクチニブ群で37.8ヶ月 (範囲 0.5-50.7)、クリゾチニブ群で23.0ヶ月 (範囲 0.3-49.8) であった。病勢進行または死亡イベントは、アレクチニブ群で81/152例 (53.3%)、クリゾチニブ群で122/151例 (80.8%) に発生した。Investigator評価PFS中央値は、アレクチニブ群で34.8ヶ月 (95% CI 17.7-NE) vs クリゾチニブ群で10.9ヶ月 (95% CI 9.1-12.9) であり、アレクチニブ群で有意な延長が認められた (層別HR 0.43, 95% CI 0.32-0.58)。この結果は、ALEX試験の以前の解析 (Camidge et al. JThoracOncol 2019)と一致しており、アレクチニブがクリゾチニブと比較してPFSを大幅に改善することを最終的に確認した。4年PFS率は、アレクチニブ群で43.7%であったのに対し、クリゾチニブ群ではほぼ0%であり、アレクチニブの長期的な効果が示唆された (Figure 1A)。

ベースラインCNS転移の有無によるPFSのサブグループ解析: アレクチニブのPFSベネフィットは、ベースライン時のCNS転移の有無にかかわらず一貫して維持された。ベースラインCNS転移ありの患者では、アレクチニブ群 (n=64) のPFS中央値は25.4ヶ月 (95% CI 9.2-NE) vs クリゾチニブ群 (n=58) では7.4ヶ月 (95% CI 6.6-9.6) であった (HR 0.37, 95% CI 0.23-0.58)。ベースラインCNS転移なしの患者では、アレクチニブ群 (n=88) のPFS中央値は38.6ヶ月 (95% CI 22.4-NE) vs クリゾチニブ群 (n=93) では14.8ヶ月 (95% CI 10.8-20.3) であった (HR 0.46, 95% CI 0.31-0.68)。これらの結果は、アレクチニブがCNS転移を有する患者においても優れた効果を発揮し、脳転移を有するALK陽性NSCLCの一次治療として特に重要であることを示している (Figure 1B, C)。

OS更新データ (データカットオフ: 2019年11月29日): OSの追跡期間中央値は、アレクチニブ群で48.2ヶ月 (範囲 0.5-62.7)、クリゾチニブ群で23.3ヶ月 (範囲 0.3-60.6) であった。死亡イベントは、アレクチニブ群で51/152例 (33.6%)、クリゾチニブ群で62/151例 (41.1%) の合計113例であった。OSデータは、プロトコルで目標とされた50%のイベント成熟度に対し37%のイベント発生率であり、依然として未熟な段階であった。しかしながら、OS中央値はアレクチニブ群で未到達であったのに対し、クリゾチニブ群では57.4ヶ月 (95% CI 34.6-NR) であった (層別HR 0.67, 95% CI 0.46-0.98)。5年OS率は、アレクチニブ群で62.5% (95% CI 54.3-70.8)、クリゾチニブ群で45.5% (95% CI 33.6-57.4) であり、両群間で17.0%の差が認められた (Table 1)。OSの改善傾向は、ベースラインCNS転移ありの患者 (HR 0.58, 95% CI 0.34-1.00) およびなしの患者 (HR 0.76, 95% CI 0.45-1.26) の両サブグループで一貫して観察された (Figure 2A, B)。

後治療パターンとクロスオーバーの影響: 病勢進行を経験した患者のうち、次治療としてALK TKIを受けた患者の割合は、クリゾチニブ群 (53.5%) がアレクチニブ群 (38.1%) よりも高かった。クリゾチニブ群では、セリチニブ (21.1%) およびアレクチニブ (21.1%) が最も頻繁に用いられた次世代ALK TKIであった。一方、アレクチニブ群では、クリゾチニブ (13.1%) およびロルラチニブ (13.1%) が多く用いられた。ペメトレキセドベースの化学療法は、アレクチニブ群で26.2%、クリゾチニブ群で11.4%と、アレクチニブ群でより多く使用された。クリゾチニブ群の患者の53.5%が病勢進行後に次世代ALK TKIを後治療として受けたことは、OS解析における交絡要因となり、OSの統計的有意差到達を妨げた可能性が示唆される (Table 2)。

安全性の長期プロファイル: 2019年11月29日のデータカットオフ時点での治療期間中央値は、アレクチニブ群で28.1ヶ月、クリゾチニブ群で10.8ヶ月であった。グレード3-5の有害事象 (AE) の発生率は、アレクチニブ群で52.0%、クリゾチニブ群で56.3%と両群で同程度であった。しかし、アレクチニブ群の治療期間がクリゾチニブ群の約2.6倍長かったことを考慮すると、アレクチニブの安全性プロファイルは優れていると評価できる。AEによる用量減量 (アレクチニブ群20.4% vs クリゾチニブ群19.9%)、用量中断 (アレクチニブ群26.3% vs クリゾチニブ群26.5%)、治療中止 (アレクチニブ群14.5% vs クリゾチニブ群14.6%) の割合も両群で類似していた。アレクチニブ群で最も頻繁に報告されたグレード3以上のAEは、貧血 (5.9%)、AST上昇 (5.3%)、ALT上昇 (4.6%)、肺炎 (4.6%) であった。クリゾチニブ群では、ALT上昇 (15.9%)、AST上昇 (10.6%)、好中球減少 (5.3%) が主なグレード3以上のAEであった。本更新解析において、アレクチニブの新たな安全性シグナルは認められず、長期投与における安全性が確認された (Table 3, 4)。

考察/結論

ALEX試験の最終解析は、未治療ALK陽性NSCLC患者において、アレクチニブ600 mg BIDがクリゾチニブと比較してPFS中央値34.8ヶ月 (HR 0.43, 95% CI 0.32-0.58) と劇的な延長を達成したことを最終的に確認した。この結果は、次世代ALK阻害薬が未治療ALK陽性NSCLCの標準治療であるべきことを強固に支持するものであり、複数の国の治療ガイドラインにおいてアレクチニブが推奨される選択肢として挙げられている現状を裏付けるものである。

OS解析は、プロトコルで設定されたイベント成熟度 (50%) には未到達であり探索的ではあるが、5年OS率においてアレクチニブ群で62.5% (95% CI 54.3-70.8)、クリゾチニブ群で45.5% (95% CI 33.6-57.4) という臨床的に意義のある差が観察された。層別HRは0.67 (95% CI 0.46-0.98) と点推定で改善傾向を示しており、このOSベネフィットはベースラインCNS転移の有無にかかわらず一貫して認められた。本研究は、次世代ALK TKIがクリゾチニブと比較してOSの臨床的意義ある改善を示した初のグローバル無作為化試験として、歴史的意義を持つ。

先行研究との違い: これまでのPROFILE 1014試験の最終OS解析では、クリゾチニブと化学療法の比較において、80%以上のクロスオーバーがOSの統計的有意差到達を妨げたことが報告されている (Solomon et al. JClinOncol 2018)。本研究でも、クリゾチニブ群の患者の53.5%が病勢進行後に次世代ALK TKIを後治療として受けたことがOS解析の交絡要因となり、OSの統計的有意差到達を妨げた可能性が考えられる。この点は、クロスオーバーが多い試験設計下でのOSエンドポイントの限界を再確認するものであり、これまでの研究と同様の課題が認められた。

新規性: 本研究で初めて、アレクチニブがクリゾチニブと比較して、未治療ALK陽性NSCLC患者において5年OS率で臨床的に意義のある差を示したことが報告された。これは、次世代ALK TKIの長期的な生存ベネフィットを裏付ける新規の知見である。また、アレクチニブのPFS中央値34.8ヶ月は、ALTA-1L試験におけるブリガチニブの中間解析PFS中央値29.4ヶ月と比較しても、現時点で最長のPFSを示しており、その優位性が確認された。

臨床応用: 本知見は、未治療ALK陽性NSCLC患者に対するアレクチニブの臨床応用をさらに強固に支持するものである。特に、CNS転移を有する患者においても一貫したPFSおよびOSの改善傾向が認められたことは、脳転移が高頻度に発生するALK陽性NSCLCにおいて、アレクチニブが優れたCNS浸透性と効果を持つことを示唆し、臨床現場での第一選択薬としての価値を一層高める。治療期間中央値が約2.6倍長かったにもかかわらず、安全性プロファイルに新たなシグナルが認められなかったことは、アレクチニブの長期投与の可能性と良好な忍容性を示しており、患者のQOL維持にも貢献すると考えられる。

残された課題: 今後の検討課題として、第3世代ALK TKIであるロルラチニブとの位置づけの明確化が残されている。また、アレクチニブ治療後の病勢進行に対する最適な後治療戦略、特にアレクチニブ後にロルラチニブを投与した場合の有効性についても、さらなる研究が必要である。本試験では、オリゴ進行や多発進行の区別、局所アブレーション療法の使用、後治療の恩恵の期間などの詳細な情報は収集されておらず、これらの要因がOSに与える影響をより詳細に評価することも今後の課題である。

方法

ALEX試験 (NCT02075840) は、未治療のStage III/IV ALK陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験である。患者は1:1の比率で、アレクチニブ600 mg 1日2回投与群 (n=152) またはクリゾチニブ250 mg 1日2回投与群 (n=151) に無作為に割り付けられた。治療は病勢進行、許容できない毒性、患者の同意撤回、または死亡まで継続された。無作為化は、ECOGパフォーマンスステータス (0/1 vs 2)、人種 (アジア人 vs 非アジア人)、およびベースライン時のCNS転移の有無によって層別化された。無作為化前の治療群間でのクロスオーバーは許可されなかった。

主要評価項目は、治験責任医師評価によるPFSであった。副次評価項目には、IRC評価によるPFS、客観的奏効率 (ORR)、OS、および安全性が含まれた。IRC評価によるエンドポイントは、主解析でのみ実施され、その後のデータカットオフでは繰り返されなかった。PFSは、無作為化から確認されたPDまたは死亡のいずれか早い方までの期間と定義された。OSは、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。有害事象 (AE) は、NCI-CTCAE v4.0に従ってグレード分類され、MedDRAに従って分類された。

統計解析では、PFSの主要評価項目に対して、ログランク検定を用いて治療群間の比較が行われた (両側α水準5%)。PFSおよびOSの中央値は、カプラン・マイヤー法を用いて95%信頼区間 (CI) とともに推定された。治療効果は、層別Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、ハザード比 (HR) と95% CIで表現された。OSデータの評価は探索的解析として実施された。本解析におけるPFSの最終データカットオフは2018年11月30日、OSの更新データカットオフは2019年11月29日であった。OSの追跡期間中央値は、アレクチニブ群で48.2ヶ月、クリゾチニブ群で23.3ヶ月であった。

後治療に関する情報は、PDまたは症候性悪化を経験した患者、および死亡した患者において収集された。これは、OS解析における後治療の影響を評価するために重要であった。安全性プロファイルは、治療期間中央値、グレード3-5のAE発生率、AEによる用量減量、中断、中止の割合を比較することで評価された。