• 著者: Camidge DR, Dziadziuszko R, Peters S, Mok T, Noe J, Nowicka M, Gadgeel SM, Cheema P, Pavlakis N, de Marinis F, Cho BC, Zhang L, Moro-Sibilot D, Liu T, Bordogna W, Balas B, Müller B, Shaw AT
  • Corresponding author: Alice T. Shaw (Massachusetts General Hospital Cancer Center, Boston, MA)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-03-19
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 30902613

背景

ALEX試験 (BO28984;NCT02075840) は、未治療の未分化リンパ腫キナーゼ (ALK) 陽性進行非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に、アレクチニブとクリゾチニブの有効性および安全性を直接比較したグローバル第III相ランダム化比較試験である。Peters et al. NEnglJMed 2017 による初回解析において、主要評価項目である治験医師判定の無増悪生存期間 (PFS) でアレクチニブの圧倒的な優越性が示された。ALK陽性NSCLCは、染色体反転によって生じる EML4-ALK 融合遺伝子を特徴とするが、この融合遺伝子には複数のバリアントが存在することが知られている。具体的には、EML4のexon 13とALKのexon 20が融合したバリアント1、EML4のexon 20と融合したバリアント2、EML4のexon 6a/bと融合したバリアント3a/bなどが代表的である。先行研究である Soda et al. Nature 2007Rikova et al. Cell 2007 において、これらのバリアントの生物学的特性が報告されてきた。さらに、後方視的解析においては、バリアントの種類がALK阻害薬に対する感受性や耐性獲得機序に影響を与える可能性が示唆されていた。しかしながら、前向きランダム化比較試験における各バリアントに対するアレクチニブの治療効果への影響は未解明であり、臨床データが著しく不足していた。本研究は、ALEX試験の約10か月の追加フォローアップデータを提示するとともに、EML4-ALKバリアントがアレクチニブの治療効果に及ぼす影響を前向き試験の枠組みで初めて探索的に解析したものである。

目的

本研究の目的は、グローバル第III相ALEX試験の長期追跡データ (データカットオフ: 2017年12月1日) に基づき、未治療のALK陽性進行NSCLCにおけるアレクチニブの更新された有効性および安全性プロファイルを提示することである。さらに、ベースライン時に採取された血漿および腫瘍組織検体を用いて次世代シーケンシング (NGS: next-generation sequencing) 解析を行い、同定されたEML4-ALK融合バリアント (バリアント1、2、3a/b) の種類が、アレクチニブおよびクリゾチニブの治療効果 (PFS、客観的奏効率 [ORR: objective response rate]、奏効期間 [DOR: duration of response]) に与える影響を探索的に評価し、バリアントの違いによる治療選択の最適化に向けた臨床的エビデンスを構築することを目指す。

結果

主要評価項目におけるアレクチニブの長期的な無増悪生存期間改善効果: 更新解析 (フォローアップ期間中央値: アレクチニブ群27.8か月、クリゾチニブ群22.8か月) において、意図した治療による解析 (ITT: intent-to-treat) 集団 (n=303) における疾患進行または死亡はアレクチニブ群で72例 (47.4%)、クリゾチニブ群で116例 (76.8%) に発生した。治験医師判定によるPFS中央値は、アレクチニブ群で34.8か月 (95% CI 17.7-NE) であったのに対し、クリゾチニブ群では10.9か月 (95% CI 9.1-12.9) であり、アレクチニブ群において極めて有意なPFSの延長が確認された。ハザード比は HR 0.43 (95% CI 0.32-0.58, p<0.001) であり、クリゾチニブと比較して疾患進行または死亡のリスクを57%減少させた (Figure 1)。このPFS中央値34.8か月という数値は、進行NSCLCの一次治療における分子標的薬の試験として極めて優れた治療成績である。

中枢神経系転移の有無に応じたサブグループ解析結果: ベースライン時の中枢神経系 (CNS: central nervous system) 転移の有無別にPFSを解析した。CNS転移を有する患者群 (n=122) において、PFS中央値はアレクチニブ群で27.7か月 (95% CI 9.2-NE) であったのに対し、クリゾチニブ群では7.4か月 (95% CI 6.6-9.6) であり、ハザード比は HR 0.35 (95% CI 0.22-0.56, p<0.001) と劇的なリスク減少が示された (Figure 1)。一方、ベースライン時にCNS転移を有しない患者群 (n=181) においても、PFS中央値はアレクチニブ群で34.8か月 (95% CI 22.4-NE) vs クリゾチニブ群で14.7か月 (95% CI 10.8-20.3) であり、ハザード比は HR 0.47 (95% CI 0.32-0.71, p<0.001) と、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブの一貫した優越性が証明された。

奏効率および奏効持続期間の更新データ: ITT集団における客観的奏効率 (ORR) は、アレクチニブ群で82.9% (95% CI 75.95-88.51) であり、クリゾチニブ群の75.5% (95% CI 67.84-82.12) を上回った。アレクチニブ群では119例 (78.3%) が部分奏効 (PR: partial response) を達成し、クリゾチニブ群では111例 (73.5%) がPRを達成した (Figure 2)。さらに、奏効持続期間 (DOR) 中央値はアレクチニブ群で33.1か月 (95% CI 31.3-NE) であったのに対し、クリゾチニブ群では11.1か月 (95% CI 7.5-13.0) であり、アレクチニブによる奏効が極めて長期にわたり維持されることが示された。腫瘍縮小の深さに関しても、50%以上の腫瘍縮小を示した割合はアレクチニブ群で75.0% vs クリゾチニブ群で50.3%であり、アレクチニブ群でより深い治療効果が得られた。

EML4-ALK融合バリアント別の無増悪生存期間解析: バイオマーカー評価可能集団である BEP において、血漿および組織検体の双方でEML4-ALKバリアント別のPFSを解析した。血漿BEP (n=222) において、バリアント1、バリアント2、バリアント3a/bのいずれのサブグループでも、アレクチニブ群はクリゾチニブ群に対して一貫して優れたPFS延長効果を示した。血漿BEPにおけるPFS中央値は、バリアント1でアレクチニブ群34.8か月 vs クリゾチニブ群7.4か月、バリアント2で24.8か月 vs 8.8か月、バリアント3a/bで17.7か月 vs 9.1か月であった。また、組織BEP (n=203) においても同様の傾向が見られ、PFS中央値はバリアント1でアレクチニブ群未到達 vs クリゾチニブ群12.9か月、バリアント2で11.5か月 vs 8.8か月、バリアント3a/bで34.9か月 vs 14.6か月であった。バリアントの種類によるPFSの差異は、アレクチニブ群 (血漿 p=0.4226、組織 p=0.1114) およびクリゾチニブ群 (血漿 p=0.8504、組織 p=0.9623) のいずれにおいても統計学的に有意ではなかった (Figure 3)。

バリアント別の奏効率およびゲノムプロファイル: バリアント別のORR解析においても、アレクチニブの優れた効果が確認された。血漿BEPにおけるORRは、バリアント1でアレクチニブ群90.5% vs クリゾチニブ群66.7%、バリアント2で70.0% vs 63.6%、バリアント3a/bで83.3% vs 45.8%であった。組織BEPにおけるORRは、バリアント1で90.9% vs 70.4%、バリアント2で62.5% vs 100.0% (アレクチニブ群n=8、クリゾチニブ群n=5と極めて少数)、バリアント3a/bで66.7% vs 68.0%であった。バリアント間のORRの差は統計学的に有意ではなかった (血漿アレクチニブ群 p=0.3538、組織アレクチニブ群 p=0.1034) (Figure 4)。また、ベースライン時のALK単一塩基バリアント (SNV) 解析では、治療効果に影響を及ぼすような既知のALK阻害薬耐性変異は検出されなかった (Table 1)。

長期投与における安全性および忍容性の比較: 治療期間中央値は、アレクチニブ群で27.0か月、クリゾチニブ群で10.8か月であり、アレクチニブ群の曝露期間はクリゾチニブ群の約2.5倍に達した。それにもかかわらず、グレード3から5の有害事象 (AE: adverse event) の発現率は、アレクチニブ群で44.7%であり、クリゾチニブ群の51.0%と比較して低く抑えられていた (Table 2)。治療中止に至ったAEの発現率は両群ともに13.2%で同等であった。アレクチニブ群で頻度の高かったAEは貧血 (22.4%)、血中ビリルビン増加 (19.1%)、筋痛 (16.4%) などであり、クリゾチニブ群で頻度の高かった悪心 (49.7%)、下痢 (46.4%)、嘔吐 (41.1%) などの消化器毒性や肝機能障害、QT延長と比較して、異なる安全性プロファイルを示した。

考察/結論

本更新解析は、ALEX試験の初回解析からさらに約10か月の追加フォローアップを行うことで、アレクチニブの長期的な有効性と安全性の優越性をより強固に立証した。特に、初回解析時点で未到達であったアレクチニブ群のPFS中央値が34.8か月と確定したことは、ALK陽性進行NSCLCの一次治療における歴史的な成果である。

先行研究との違い: 本研究は、単一アームの臨床試験や後方視的な観察研究と異なり、大規模な第III相ランダム化比較試験の枠組みにおいて、客観的なNGS解析を用いてEML4-ALK融合バリアントがALK阻害薬の初回治療効果に与える影響を直接比較した点で決定的に異なる。これまでの後方視的解析では、特定のバリアントがALK阻害薬の感受性や耐性獲得パターンに影響を及ぼすことが示唆されていたが、前向き試験での検証はなされていなかった。

新規性: 本研究で初めて、前向きランダム化比較試験のデータを用いて、EML4-ALKバリアント1、2、3a/bのいずれのタイプにおいても、アレクチニブがクリゾチニブに対して一貫して優れたPFS、ORR、およびDORを示すことを新規に実証した。バリアントの種類がアレクチニブおよびクリゾチニブの治療効果に有意な影響を与えないことが示された意義は極めて大きい。

臨床応用: この知見の臨床応用における意義は非常に高い。日常の臨床現場において、次世代シーケンシング等による詳細なバリアント検査の結果を待つことなく、ALK陽性進行NSCLCの一次治療としてアレクチニブを自信を持って選択できることを強く支持するものである。

残された課題: 一方で、今後の検討課題として、バリアント別の長期的なOSへの影響や、治療後に生じる耐性変異のプロファイルの違いを明らかにすることが残されている。特に、Lin et al. JClinOncol 2018 などの先行研究では、バリアント3a/bにおいて特定の耐性変異 (ALK G1202R) が生じやすいことが報告されており、アレクチニブ治療後の耐性獲得機序の解明は極めて重要な今後の研究課題である。また、本解析におけるバリアント2などの一部のサブグループは症例数が限られており、さらなる症例の蓄積による検証が望まれる。

方法

本研究は、未治療のALK陽性進行NSCLC患者303例を対象とした、オープンラベル、ランダム化、グローバル第III相試験である (ALEX試験;NCT02075840)。患者はアレクチニブ群 (600 mgを1日2回経口投与、n=152) またはクリゾチニブ群 (250 mgを1日2回経口投与、n=151) に1:1の割合でランダムに割り付けられ、病勢進行、忍容できない毒性の発現、同意撤回、または死亡まで治療が継続された。主要評価項目は、治験医師判定によるRECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) version 1.1に基づくPFSであった。副次評価項目には、IRC (independent review committee: 独立中央判定委員会) 判定によるPFS、ORR、DOR、全生存期間 (OS: overall survival)、および安全性が含まれた。今回の更新解析のデータカットオフ日は2017年12月1日である。

バイオマーカー評価可能集団である BEP (biomarker-evaluable population) の解析として、ベースライン時に採取された血漿検体 (n=222、73%) および腫瘍組織検体 (n=203、67%) を用いて、ハイブリッドキャプチャー法に基づくNGS解析を実施した。血漿検体にはFoundationACTプラットフォーム、組織検体にはFoundationOneプラットフォームを用い、EML4-ALK融合バリアント (バリアント1、2、3a/b) およびALK遺伝子の単一塩基バリアント (SNV: single-nucleotide variant) を同定した。ゲノムプロファイリングテストの検証は Frampton et al. NatBiotechnol 2013 の報告に準拠した。

統計解析において、PFSおよびDORの生存曲線はカプラン・マイヤー (Kaplan-Meier) 法を用いて推定し、治療群間の比較は層別ログランク (log-rank) 検定を用いて実施した。ハザード比 (HR) およびその95%信頼区間 (CI) の算出には、層別コックス比例ハザード回帰 (Cox regression) モデルを用いた。バリアント間のPFSの比較には2側ログランク検定を用い、ORRの比較にはピアソンのカイ二乗検定を用いた。すべての統計学的解析は、有意水準5% (2側) で実施された。