- 著者: D. Ross Camidge, Hye Ryun Kim, Myung-Ju Ahn, James C. H. Yang, Ji-Youn Han, Maximilian J. Hochmair, Ki Hyeong Lee, Angelo Delmonte, Maria Rosario Garcia Campelo, Dong-Wan Kim, Frank Griesinger, Enriqueta Felip, Raffaele Califano, Alexander I. Spira, Scott N. Gettinger, Marcello Tiseo, Huamao M. Lin, Yuyin Liu, Florin Vranceanu, Huifeng Niu, Pingkuan Zhang, Sanjay Popat
- Corresponding author: D. Ross Camidge (Department of Medicine, University of Colorado Cancer Center, Aurora, CO, USA)
- 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
- 発行年: 2021
- Epub日: 2021-09-16
- Article種別: Original Article
- PMID: 34537440
背景
ALK陽性非小細胞肺がん (NSCLC) は、EML4-ALK融合遺伝子によって駆動される特定の分子サブタイプであり、全NSCLCの3%から5%を占める。この融合遺伝子は、異常なチロシンキナーゼ活性を引き起こし、細胞増殖と生存を促進する。ALK阻害薬 (ALK-TKI) は、この分子異常を標的とする治療薬として開発され、ALK陽性NSCLC患者の治療成績を劇的に改善してきた。初期のALK-TKIであるクリゾチニブは、一次治療として承認され、ALK陽性NSCLC患者の無増悪生存期間 (PFS) を有意に延長した。しかし、クリゾチニブ治療後には、薬剤耐性がしばしば発生し、特に脳転移の制御が課題であった。
ブリガチニブは、ALKに対して高い親和性と強力な阻害活性を持つ第二世代の経口ALK-TKIであり、広範なALK耐性変異に対しても活性を示すことが報告されている (Huang et al. 2016)。これまでの研究では、ブリガチニブがクリゾチニブ耐性ALK陽性NSCLC患者において有効性を示すことが示されていた。未治療のALK-TKI未治療進行ALK陽性NSCLC患者を対象とした第3相ALTA-1L試験では、ブリガチニブとクリゾチニブの比較が行われた。これまでの2回の計画された中間解析において、ブリガチニブはクリゾチニブと比較して優れたPFSを示してきた。第1回中間解析(ブリガチニブ群の追跡期間中央値11ヶ月)では、盲検下独立中央判定委員会 (BIRC) 評価PFSのハザード比 (HR) が0.49 (95% CI: 0.33-0.74, p<0.001) であり、第2回中間解析(同25ヶ月)ではHR 0.49 (95% CI: 0.35-0.68, p<0.0001) と、一貫した優越性が示された (Camidge et al. NEnglJMed 2018, Camidge et al. JClinOncol 2020)。しかし、全生存期間 (OS) のデータはまだ未熟であり、最終的な結論には至っていなかった。
また、EML4-ALK融合遺伝子には15種類以上のバリアントが同定されており、特にV1、V2、V3a/b (V3) が主要なバリアントである (Sabir et al. 2017)。先行研究では、これらのEML4-ALKバリアントやTP53変異がALK-TKIの治療成績や薬剤耐性メカニズムに影響を与える可能性が示唆されているが、一次治療設定におけるブリガチニブの有効性に対するこれらのバイオマーカーの影響に関する臨床データは限定的であった。例えば、Lin et al. JClinOncol 2018はEML4-ALKバリアントが耐性メカニズムと臨床転帰に影響を与えることを報告している。さらに、Gainor et al. CancerDiscov 2016は、第一世代および第二世代ALK阻害薬に対する耐性メカニズムの分子機構を詳細に解析し、異なる耐性変異の発生パターンを示している。これらの研究は、ALK陽性NSCLCの治療戦略を最適化するために、より詳細な分子バイオマーカー解析の必要性を示唆しているが、特定の分子サブタイプにおけるブリガチニブの有効性に関する包括的なデータは不足しており、最適な治療戦略を確立するための知識ギャップが残されている。
本論文は、ALTA-1L試験の最終解析結果を報告するものであり、ブリガチニブ群の追跡期間中央値が40ヶ月に延長された時点での有効性、安全性、および探索的バイオマーカー解析の結果を提示する。これにより、ブリガチニブの一次治療としての長期的なベネフィットと、特定の分子サブタイプにおける治療成績への影響を明らかにすることが期待される。特に、脳転移を有する患者におけるOSの改善の可能性や、EML4-ALK融合バリアントおよびTP53変異が治療成績に与える影響について、より詳細な情報を提供することが求められていた。
目的
ALTA-1L試験の最終解析として、ALK阻害薬未治療の進行ALK陽性NSCLC患者に対するブリガチニブの一次治療における有効性、安全性、および患者報告アウトカム (PRO) を包括的に評価することを目的とした。具体的には、主要評価項目であるBIRC評価無増悪生存期間 (PFS) の最終結果、全生存期間 (OS)、頭蓋内PFS、奏効期間 (DoR) などの副次評価項目を詳細に解析した。
さらに、探索的解析として、ベースラインにおけるEML4-ALK融合バリアント (V1, V2, V3など) およびTP53変異の有無が、ブリガチニブとクリゾチニブそれぞれの治療成績 (PFS, OS, 客観的奏効率 (ORR)) に与える影響を評価した。これにより、特定の分子バイオマーカーを持つ患者群におけるブリガチニブの有効性を明らかにすることを目指した。また、治療中に発現する獲得変異のパターンを解析し、ブリガチニブに対する耐性メカニズムの理解を深めることも目的とした。安全性プロファイルについては、長期追跡期間における新たな懸念の有無を確認し、健康関連QoL (HRQoL) の変化も評価した。これらの結果を通じて、ブリガチニブの一次治療としての最適な位置付けを確立し、将来の治療戦略の最適化に資するエビデンスを提供することを目指した。
結果
更新されたPFS: 最終解析時点での追跡期間中央値は、ブリガチニブ群で40.4ヶ月、クリゾチニブ群で15.2ヶ月であった。PFSイベントは、ブリガチニブ群で137名中73名 (53%)、クリゾチニブ群で138名中93名 (67%) に発生した。BIRC評価による3年PFS率は、ブリガチニブ群で43% (95% CI: 34-51%)、クリゾチニブ群で19% (95% CI: 12-27%) であり、PFS中央値はそれぞれ24.0ヶ月 (95% CI: 18.5-43.2ヶ月) と11.1ヶ月 (95% CI: 9.1-13.0ヶ月) であった。ハザード比 (HR) は0.48 (95% CI: 0.35-0.66, p<0.0001) であり、ブリガチニブの優越性が統計学的に有意に示された (Fig. 1A)。治験責任医師評価によるPFSも一貫しており、HR 0.43 (95% CI: 0.31-0.58)、PFS中央値30.8ヶ月 vs 9.2ヶ月であった (Fig. 1B)。サブグループ解析では、全てのサブグループでブリガチニブの一貫したPFSベネフィットが認められた (Fig. 1C)。
奏効の持続性: BIRC評価による確認済みORRは、以前の報告と一貫していた。確認済み奏効例における奏効期間 (DoR) 中央値は、ブリガチニブ群で33.2ヶ月 (95% CI: 22.1ヶ月-未到達)、クリゾチニブ群で13.8ヶ月 (95% CI: 10.4-22.1ヶ月) と、ブリガチニブ群で大幅な延長が認められた (Fig. 1D)。
頭蓋内有効性: ベースラインで測定可能な脳転移を有する患者における確認済み頭蓋内ORRは、以前の報告と一貫していた。BIRC評価によるベースラインで測定可能な脳転移を有する患者における頭蓋内DoR中央値は、ブリガチニブ群で27.9ヶ月 (95% CI: 5.7ヶ月-推定不能)、クリゾチニブ群で9.2ヶ月 (95% CI: 3.9ヶ月-推定不能) であった。ベースラインで脳転移を有する患者 (BIRC評価) における3年頭蓋内PFS率は、ブリガチニブ群で31% (95% CI: 17-47%)、クリゾチニブ群で9% (95% CI: 2-25%) であり、HR 0.29 (95% CI: 0.17-0.51, p<0.0001) と、ブリガチニブが頭蓋内病変の制御において圧倒的な優位性を示した (Fig. 1E)。ITT集団全体における3年頭蓋内PFS率は、ブリガチニブ群で57% (95% CI: 47-66%)、クリゾチニブ群で38% (95% CI: 27-49%) であり、HR 0.44 (95% CI: 0.30-0.65) であった (Fig. 1F)。
クロスオーバー後の有効性: クリゾチニブ治療後に病勢進行し、ブリガチニブにクロスオーバーした患者は65名 (クリゾチニブ群全体の47%) であった。これらの患者におけるBIRC評価PFS中央値は16.8ヶ月 (95% CI: 10.1-23.9ヶ月) であり、ORRは57% (95% CI: 44-69%)、確認済み奏効例におけるDoR中央値は19.1ヶ月 (95% CI: 10.9-23.5ヶ月) であった。
全生存期間 (OS): 最終解析時点までに92名の死亡が確認された (ブリガチニブ群41名 (30%)、クリゾチニブ群51名 (37%))。クロスオーバー調整なしのITT集団における3年OS率は、ブリガチニブ群で71% (95% CI: 62-78%)、クリゾチニブ群で68% (95% CI: 59-75%) であり、HR 0.81 (95% CI: 0.53-1.22, p=0.331) と、統計学的な有意差は認められなかった (Fig. 2A)。しかし、クリゾチニブ群からのクロスオーバーを調整した感度分析では、MSM法でHR 0.54 (95% CI: 0.31-0.92, p=0.023)、逆確率打ち切り重み付け (IPCW) CoxモデルでHR 0.50 (95% CI: 0.28-0.87, p=0.014) と、ブリガチニブによるOSの有意な改善が示唆された (Fig. 2B, 2C)。事後解析として、ベースラインで脳転移を有する患者 (n=81) においては、死亡数がブリガチニブ群で40名中11名 (28%)、クリゾチニブ群で41名中22名 (54%) であり、HR 0.43 (95% CI: 0.21-0.89, p=0.020) と、ブリガチニブによるOSの明確なベネフィットが認められた (Fig. 2D)。このサブグループにおける3年OS率は、ブリガチニブ群で74% (95% CI: 57-85%)、クリゾチニブ群で55% (95% CI: 38-69%) であった。一方、ベースラインで脳転移のない患者では、OSに有意差は認められなかった (HR 1.16, 95% CI: 0.69-1.93) (Fig. 2E)。
バイオマーカー解析: ベースラインの血漿サンプルを用いたNGS解析では、250名の患者でALK融合遺伝子が検出されたのは54%であった。EML4-ALK融合遺伝子は、ブリガチニブ群の46% (57/123名) とクリゾチニブ群の50% (64/127名) で検出された。最も一般的なEML4-ALK融合バリアントはV1 (ブリガチニブ群44%、クリゾチニブ群47%) とV3 (ブリガチニブ群40%、クリゾチニブ群33%) であった (Table 1)。EML4-ALK V3を有する患者は、V1またはV2を有する患者と比較して、治療群にかかわらずPFSが有意に短かった (Table 1, Fig. 3A)。多変量解析では、V3がV1と比較してPFSに対する有意な独立した影響を持つことが確認された (ブリガチニブ群: HR 2.45 (95% CI: 1.07-5.60)、クリゾチニブ群: HR 3.42 (95% CI: 1.56-7.50)) (Fig. 3B)。しかし、いずれのバリアントサブグループにおいても、ブリガチニブはクリゾチニブと比較して高いORRと長いPFS中央値を示した (Table 1)。TP53変異は、EML4-ALK融合陽性患者の37% (ブリガチニブ群39%、クリゾチニブ群36%) で検出された。TP53変異を有する患者は、両治療群において、ORRの低下とPFSの短縮傾向を示した (Table 1, Fig. 3D)。多変量解析でもTP53変異はPFSの不良な予後因子としての強い傾向を維持した (ブリガチニブ群: HR 1.76 (95% CI: 0.81-3.83)、クリゾチニブ群: HR 1.77 (95% CI: 0.90-3.49)) (Fig. 3B)。OSについても、TP53変異を有する患者で不良な傾向が認められた (ブリガチニブ群: HR 2.36 (95% CI: 1.00-5.58)、クリゾチニブ群: HR 1.98 (95% CI: 0.91-4.27)) (Fig. 3E)。ブリガチニブは、TP53変異の有無にかかわらず、クリゾチニブと比較して優れたORRとPFSを示した (Table 1)。
出現する変異: ブリガチニブ治療後に病勢進行した患者において、明確な獲得変異パターンは特定されなかった。治療終了時の血漿サンプルが評価可能であった患者のうち、ブリガチニブ群では2名の患者でALK変異が検出されたのみであり、G1202R変異は認められなかった。非ALK変異としては、EGFR, FGFR2, FGFR3, KEAP1, KRAS, METなどが低頻度で検出された。一方、クリゾチニブ群では10名の患者でALK変異が検出された。
安全性: 全てのグレードの治療関連有害事象 (TEAE) は両群で100%の患者に発生した。グレード3-4のAEは、ブリガチニブ群で70% (95/136名)、クリゾチニブ群で56% (77/137名) であった (Table 2)。用量減量はブリガチニブ群で44%、クリゾチニブ群で25%の患者に発生した。治療中止に至ったAEは、ブリガチニブ群で13%、クリゾチニブ群で9%であった。主要なグレード3以上のAEとして、血中クレアチンホスホキナーゼ増加 (ブリガチニブ群26% vs クリゾチニブ群1%)、リパーゼ増加 (15% vs 8%)、高血圧 (14% vs 4%) がブリガチニブ群で高頻度であった。間質性肺疾患 (ILD)/肺炎は、ブリガチニブ群で6% (8/136名)、クリゾチニブ群で2% (3/137名) に発生し、グレード3以上はそれぞれ3% (4/136名) と1%未満 (1/137名) であった。クリゾチニブからブリガチニブにクロスオーバーした患者では、65名中4名 (6%) でILD/肺炎が認められた。筋痛/筋骨格痛は両群でグレード3以上の報告はなかった。
健康関連QoL (HRQoL): EORTC QLQ-C30 GHS/QoLの悪化までの期間中央値は、ブリガチニブ群で26.7ヶ月、クリゾチニブ群で8.3ヶ月であり、HR 0.69 (95% CI: 0.49-0.98, p=0.047) と、ブリガチニブ群で有意に遅延した (Fig. 4A)。ブリガチニブは、感情機能、社会機能、疲労、悪心/嘔吐、食欲不振、便秘といった複数のドメインで悪化までの期間を有意に遅延させた (p<0.05) (Fig. 4B)。クリゾチニブが有意に優位であったドメインはなかった。
考察/結論
ALTA-1L試験の最終解析結果は、ブリガチニブがALK阻害薬未治療の進行ALK陽性NSCLC患者において、クリゾチニブと比較して優れた有効性と忍容性を示すことを、長期追跡期間 (ブリガチニブ群の追跡期間中央値40ヶ月) を経て改めて確認した。ブリガチニブは、病勢進行または死亡のリスクを52%低減し (HR 0.48, 95% CI: 0.35-0.66, p<0.0001)、PFS中央値24.0ヶ月、奏効期間中央値33.2ヶ月と、クリゾチニブの11.1ヶ月および13.8ヶ月と比較して、より長期にわたる病勢制御と寛解をもたらした。
OSデータは最終解析時点でも未熟であり (イベント発生率30%)、ITT集団におけるHRは0.81と統計学的な有意差は認められなかった。しかし、クリゾチニブ群からのブリガチニブへのクロスオーバー率が高かったこと (47%) や、クリゾチニブ中止後の後続治療の不均衡がOSの結果に影響を与えている可能性が考えられる。クロスオーバーを調整した感度分析では、MSM法でHR 0.54 (95% CI: 0.31-0.92, p=0.023)、IPCW CoxモデルでHR 0.50 (95% CI: 0.28-0.87, p=0.014) と、ブリガチニブによるOSの有意な改善が示唆された。この結果は、ブリガチニブが一次治療としてOSベネフィットをもたらす可能性を強く示唆するものである。
新規性: 本研究で初めて、ベースラインで脳転移を有する患者集団において、ブリガチニブがOSの有意な改善を示唆する結果 (HR 0.43, 95% CI: 0.21-0.89, p=0.020) を示したことは特筆すべき新規所見である。これは、ブリガチニブが優れた頭蓋内有効性 (頭蓋内PFSのHR 0.29, 95% CI: 0.17-0.51、頭蓋内DoR中央値27.9ヶ月) を持つことと一貫しており、脳転移を有するALK陽性NSCLC患者に対する一次治療としてブリガチニブを選択する戦略を強く支持する。この知見は、ALK陽性NSCLCの治療における薬剤シーケンスの最適化に関する重要な仮説を生成するものであり、今後の研究でさらに検証されるべきである。
先行研究との違い: バイオマーカー解析では、EML4-ALK V3がV1やV2と比較して予後不良因子であること (PFSのHR 2.45-3.42) が確認された。また、TP53変異もORRの低下とPFSの短縮傾向に関連することが示された。これらの結果は、Lin et al. JClinOncol 2018などの先行研究で報告されたEML4-ALKバリアントやTP53変異の予後予測的意義と一致する。しかし、本研究では、これらの予後不良バイオマーカーの有無にかかわらず、ブリガチニブがクリゾチニブと比較して優れた有効性を示すことが明らかになった点で、これまでの報告と異なり、ブリガチニブの幅広い患者層における有用性を示唆する。
ブリガチニブ治療後の病勢進行時における獲得ALK変異 (特にG1202R) の検出が稀であったことは、クリゾチニブ治療後の耐性メカニズムとは異なる可能性を示唆する。これは、Gainor et al. CancerDiscov 2016が報告した第二世代ALK阻害薬後の耐性変異パターンとも一部異なる可能性があり、ブリガチニブの耐性メカニズムに関するさらなる研究の必要性を示している。
安全性プロファイルは既報と一貫しており、新たな懸念は認められなかった。特に、血中クレアチンホスホキナーゼの上昇は高頻度であったが、臨床的に診断された横紋筋融解症の報告はなかった。健康関連QoLの評価では、ブリガチニブがGHS/QoLの悪化までの期間を有意に遅延させ、複数の機能および症状ドメインでクリゾチニブよりも良好な結果を示した。これは、ブリガチニブが単に疾患制御だけでなく、患者の生活の質も改善することを示しており、臨床応用における重要な意義を持つ。
残された課題: 本研究の限界としては、OSデータがまだ未熟であること、およびベースライン脳転移を有する患者におけるOS解析が事後解析であったことが挙げられる。これらの結果は、今後の大規模な前向き研究やリアルワールドデータを用いた検証が必要である。また、ブリガチニブ治療後の耐性メカニズムについては、より詳細な分子解析と大規模なサンプルサイズでの検討が今後の課題として残されている。特に、非ALK変異の役割や、異なるALK-TKI間の最適なシーケンス戦略を確立するための研究が求められる。
方法
本研究は、国際多施設共同オープンラベル第3相無作為化比較試験 (ALTA-1L; ClinicalTrials.gov識別子: NCT02737501) の最終解析である。対象患者は、18歳以上の局所進行性または転移性ALK陽性NSCLC患者で、ALK標的療法を受けたことがない者であった。患者は、ブリガチニブ180 mg 1日1回 (7日間90 mg 1日1回導入期間あり; n=137) またはクリゾチニブ250 mg 1日2回 (n=138) のいずれかに1:1で無作為に割り付けられた。無作為化は、ベースラインでの脳転移の有無および局所進行性または転移性疾患に対する化学療法の既往の有無によって層別化された。無症候性または安定した中枢神経系 (CNS) 転移を有する患者も登録を許可された。クリゾチニブ群の患者は、BIRCによる病勢進行後、ブリガチニブへのクロスオーバーが許容された (クリゾチニブ中止後10日間のウォッシュアウト期間を設けた)。
主要評価項目は、Eisenhauer et al. EurJCancer 2009に基づきBIRCが評価したPFSであった。副次評価項目には、BIRC評価による客観的奏効率 (ORR)、頭蓋内ORR、頭蓋内PFS、OS、奏効期間 (DoR)、安全性、および欧州がん研究治療機構QoL質問票 (EORTC QLQ-C30 version 3.0) およびその肺がん特異的モジュール (QLQ-LC13 version 3.0) によるベースラインからの全般的健康状態 (GHS)/QoLの変化が含まれた。探索的評価項目として、クロスオーバー後のブリガチニブ治療におけるPFSおよびORR、ならびにベースラインのEML4-ALK融合バリアントおよびTP53変異ステータスと臨床的有効性との相関が評価された。
疾患評価は、スクリーニング時、サイクル14まで8週間ごと、その後治療中止まで12週間ごとに画像診断によって行われた。BIRCは2つあり、1つは全身疾患を評価し、もう1つは頭蓋内CNS疾患のみを評価した。客観的奏効は、初回観察から少なくとも4週間後に確認された。バイオマーカー研究のための血液サンプルは、スクリーニング時、サイクル3の2日目、および治療終了時に採取された。ALKおよびその他の癌遺伝子の変異ステータスは、血漿中のcell-free DNAの次世代シーケンシング (NGS) (Resolution Bioscience ctDx Lung panel) によって決定された。有害事象 (AE) は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準 (CTCAE) バージョン4.03に従ってグレード分類された。
統計解析は、SAS/STAT 15.1ソフトウェア (SAS Institute, Cary, NC) およびR (バージョン4.0.2, R Core Team, Vienna, Austria) を使用して行われた。主要評価項目は、ベースラインの脳転移の有無および先行化学療法の有無で層別化した両側ログランク検定を用いて比較された。OSの解析は、最終解析時に行われ、両側層別ログランク検定が用いられた。時間-イベント解析では、カプラン・マイヤー (KM) 法を用いて中央値および両側95%信頼区間 (CI) が推定された。ベースラインの脳転移ステータスによるOSの解析は、事後解析であった。クリゾチニブ群におけるクロスオーバーによる潜在的な時間依存性交絡効果を調整するため、周辺構造モデル (MSM) および逆確率打ち切り重み付け (IPCW) Coxモデルが構築された。最終モデルには、年齢、初回診断ステージ、ECOGパフォーマンスステータス、腫瘍組織病理学的分類、測定可能な頭蓋内CNS疾患の有無、人種 (アジア人対非アジア人)、性別、喫煙歴、無作為化時の層別因子、および時間依存性共変量として頭蓋内病勢進行、標的病変サイズ、ECOGパフォーマンスステータスが含まれた。データカットオフは2021年1月29日であった。