• 著者: Jabbour SK, Lee KH, Frost N, Breder V, Kowalski DM, Pollock T, Levchenko E, Reguart N, Martinez-Marti A, Houghton B, Paoli JB, Safina S, Park K, Komiya T, Sanford A, Boolell V, Liu H, Samkari A, Keller SM, Reck M
  • Corresponding author: Salma K. Jabbour, MD (Department of Radiation Oncology, Rutgers Cancer Institute of New Jersey, Rutgers Robert Wood Johnson Medical School, New Brunswick, NJ, USA)
  • 雑誌: JAMA Oncology
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-06-04
  • Article種別: Original Article (Phase 2 nonrandomized 2-cohort open-label trial)
  • PMID: 34086039

背景

切除不能 Stage III NSCLC は NSCLC 全体の約 25% を占め、長年にわたり platinum-doublet 化学療法と胸部放射線療法の同時併用 (concurrent chemoradiotherapy; cCRT) が標準治療として確立されていたが、5 年生存率は 16-32% にとどまり予後改善の余地が大きかった (Curran 2011 RTOG 9410: PFS HR 0.84、Bradley 2020 RTOG 0617 longterm: 5 年 OS 32.1% vs 23.0%)。2017 年に PACIFIC 試験 (Antonia et al. NEnglJMed 2017) が cCRT 完了後に durvalumab を「逐次」維持投与する戦略で PFS HR 0.52・OS HR 0.68 を達成し、Stage III NSCLC の治療パラダイムが大きく変わった (Antonia et al. NEnglJMed 2018)。後続の RTOG 0617 試験 (Mok et al. Lancet 2019 の比較対照として参照) でも標準照射 60 Gy が高用量 74 Gy を上回り、cCRT 単独での治療強度向上には限界があることが確認された。しかし PACIFIC 戦略には複数の構造的限界が残されており、cCRT 中または直後に病勢進行・毒性で脱落する患者が 22-30% 存在し durvalumab 維持の対象にならない点、PD-L1 (programmed death-ligand 1) < 1% 群でのベネフィットが弱い点 (PFS HR 0.73)、cCRT 完了から ICI (immune checkpoint inhibitor) 開始までに数週間の空白が生じる点などが指摘されていた。とくに induction 段階での anti-PD-1 効果に関する直接データが従来の臨床試験では 手薄 で、cCRT 中脱落 22-30% の高リスク層をカバーする戦略的選択肢が 不足 していた点は明白な knowledge gap であった。先行する Phase 1 試験 (Jabbour 2020 JAMAOncol、n=21、DLT 0 例) で pembrolizumab + cCRT 同時投与の dose-limiting toxicity を認めず ORR 81% を達成したものの、症例数が小規模で安全性 (特に放射線肺炎と免疫関連肺臓炎の合算リスク) に対する十分な検証は 未解明 であり、cCRT と anti-PD-(L)1 (anti-programmed death-(ligand) 1) を「同時投与」して逐次投与の限界を克服できるかは確認されていなかった。放射線療法による腫瘍細胞の immunogenic cell death (ICD) と腫瘍微小環境の PD-L1 誘導が anti-PD-1 と相乗的に作用するという生物学的根拠が、同時投与戦略を支える機序仮説として注目された。

目的

切除不能・未治療 Stage IIIA/IIIB/IIIC NSCLC を対象に、pembrolizumab + cCRT 同時投与の主要評価項目として (1) RECIST v1.1 による独立中央評価 (BICR) での客観的奏効率 (ORR)、(2) Grade 3 以上の肺臓炎発生率を、squamous/nonsquamous 混在 cohort A (carboplatin + paclitaxel ベース) と nonsquamous-only cohort B (cisplatin + pemetrexed ベース) で評価する KEYNOTE-799 (NCT03631784) Phase 2 試験。副次評価項目として OS・PFS・DOR・全体安全性を評価する。

結果

ORR (Co-primary、両 cohort で 70% 超を達成): Cohort A の ORR は 70.5% (n=79/112、95% CI 61.2-78.8%、CR 4 例 [3.6%] + PR 75 例 [67.0%]) で、SD 20 例 (17.9%) を加えた病勢制御率 (DCR) は 88.4%。Cohort B の ORR は 70.6% (n=72/102、95% CI 60.7-79.2%、CR 5 例 [4.9%] + PR 67 例 [65.7%])、SD 23 例 (22.5%) を加えた DCR は 93.1% (Table 2)。事前設定の futility 基準 (ORR > 35%) を大きく上回り、両 cohort とも有効性の co-primary endpoint を達成した。歴史的対照の cCRT 単独 ORR (35.9-54.5%、Choy 2013 JThoracOncol、Senan 2016 JClinOncol PROCLAIM (Phase III trial comparing pemetrexed-cisplatin versus etoposide-cisplatin with thoracic radiotherapy in locally advanced NSCLC) 試験) と比較し、cCRT 単独 45% vs pembrolizumab + cCRT cohort A 70.5% (95% CI 61.2-78.8%) で +25.5 ポイント、cCRT 単独 45% vs cohort B 70.6% (95% CI 60.7-79.2%) で +25.6 ポイントの絶対値増加を示した。相対 HR 解析は非ランダム化試験のため算出されず、PACIFIC の durvalumab 群対 placebo 群 ORR HR 約 1.69 と整合する結果であった。Median time to response は両 cohort とも 2.1 ヶ月。

Duration of response (DOR) と subgroup: Median DOR は両 cohort とも data cutoff (median follow-up 18.5/13.7 ヶ月) 時点で未達 (NR、Cohort A range 1.7+ から 19.7+ ヶ月、Cohort B 1.8+ から 21.4+ ヶ月) であり、Kaplan-Meier 推定で 12 ヶ月以上奏効持続率は Cohort A 79.7%、Cohort B 75.6% と高度な耐久性を示した (Fig 2)。Cohort A の PD-L1 サブグループ解析では TPS < 1% で ORR 66.7% (14/21)、TPS ≥ 1% で 75.8% (50/66) と PD-L1 低発現群でも高い奏効を示し、PACIFIC で観察された PD-L1 < 1% 群での弱いベネフィット (ORR 24.7% vs 21.6%、Paz-Ares 2020 Ann Oncol) と対照的であった。組織型別では squamous 71.2% (52/73)・nonsquamous 69.2% (27/39)、stage 別では IIIA 70.7%・IIIB 73.0% といずれも高い ORR を示し、KEYNOTE-799 のベネフィットが組織型・PD-L1・stage に依存しないことが示された。

Overall survival (OS) と progression-free survival (PFS): data cutoff (2020 年 10 月 28 日) 時点で Cohort A の死亡 n=32 (28.6%)・Cohort B の死亡 n=15 (14.7%) と少なく、median OS は両 cohort とも未達 (eFigure A/B)。1 年 OS rate は Cohort A 81.3% (95% CI 72.7-87.4%) vs cCRT 単独歴史値 ~60% で +21.3 ポイント、Cohort B 87.0% (95% CI 78.4-92.4%) vs ~60% で +27.0 ポイントの絶対値増加を示した。1 年 PFS rate は Cohort A 67.1% vs cCRT 単独 ~46% で +21.1 ポイント (Bradley 2015 RTOG 0617: 1 年 PFS 46.3%、HR 比較で約 0.5 相当)、Cohort B 71.6% vs ~46% で +25.6 ポイント (eFigure C/D)。これは PACIFIC durvalumab consolidation の 1 年 OS 83.4% (HR vs placebo 0.68) と同等以上、ETOP NICOLAS (Nivolumab Combined with concurrent chemoradiotherapy for locally Advanced Stage III NSCLC) 試験 (1 年 PFS 53.7%、Peters 2021 JThoracOncol) や DETERRED (DETERmination of Radiotherapy combined with atezolizumab Efficacy and safety in locally advanced Disease) 試験 (median PFS 13.2 ヶ月、Lin 2020 JThoracOncol) を上回る成績を示した (Fig 2)。

主要安全性: Grade 3+ 肺臓炎 (co-primary endpoint): 放射線肺臓炎を含む Grade 3 以上の肺臓炎は Cohort A 8.0% (n=9/112、95% CI 3.7-14.7%)、Cohort B 6.9% (n=7/102、95% CI 2.8-13.6%) で両 cohort とも事前設定上限 (< 10%) を満たし、co-primary 安全性 endpoint を達成した (Table 3)。Cohort A 8.0% vs cohort B 6.9% は -1.1 ポイントの差、いずれも PACIFIC durvalumab consolidation の Grade 3-5 肺臓炎 4.4% (95% CI 2.8-6.6%) より +2.5-3.6 ポイント高く、安全性プロファイルの差が定量的に確認された (HR direct comparison は非ランダム化のため不可、cross-trial point estimate のみ報告)。発症までの median time は Cohort A 4.3 ヶ月 vs Cohort B 4.4 ヶ月、median 持続期間は 4.4 ヶ月 vs 4.0 ヶ月。Grade 5 (致死的) 肺臓炎は Cohort A 4 例 (3.6%) vs Cohort B 1 例 (1.0%) の差 (+2.6 ポイント、interstitial lung disease として 1 例) として発生しており、安全管理上の重要な所見である。

全体安全性プロファイル: Treatment-related AE 全体は Cohort A 93.8% (105/112)・Cohort B 97.1% (99/102)、Grade 3-5 は 64.3%・50.0%。最頻 Grade 3+ は両 cohort とも neutropenia (Cohort A 16.1%・Cohort B 9.8%)。治療中止に至った AE は 33.9% (38/112)・18.6% (19/102) で、肺臓炎が最頻原因 (Cohort A 11.6%・Cohort B 5.9%)。Immune-mediated AE は 45.5%・40.2% で Grade 3-5 は 14.3%・8.8%、最頻は pneumonitis (Cohort A 7 例 [6.3%]・Cohort B 6 例 [5.9%])、続いて hypothyroidism (16.1%・11.8%)・hyperthyroidism (8.9%・7.8%) であった (Table 3)。infusion reaction は Cohort A 8.9%・Cohort B 2.0% と低頻度。

考察/結論

① 先行研究との違い: 本研究は cCRT 完了後の維持として ICI を投与する PACIFIC 型逐次戦略 (Antonia et al. NEnglJMed 2017) と異なり、anti-PD-1 (pembrolizumab) と cCRT を「同時併用」する戦略を初めて大規模に検証した。PACIFIC では cCRT 完了→ durvalumab 開始までに 1-42 日 (median 56 日) の空白があり、cCRT 中・直後の進行・毒性脱落例 (約 22-30%) は ICI 維持の機会を失う構造的限界があった。本試験では cCRT 開始と同時に pembrolizumab を投与することで、22-30% の脱落リスク層を救済する設計を採用しており、これまでの consolidation 戦略 とは対照的に induction 戦略を支持するデータを提供した。さらに PACIFIC で限定的だった PD-L1 < 1% 群でも本試験は ORR 66.7-71.4% を示し、anti-PD-1 + 放射線併用が PD-L1 発現に依存せず効果を発揮しうる可能性を示唆した。

② 新規性: KEYNOTE-799 は 本研究で初めて 大規模 (n=214) かつ多施設 (52 施設・10 ヶ国) で anti-PD-1 + cCRT 同時併用の有効性 (ORR 70.5-70.6%) と安全性 (Grade 3+ 肺臓炎 8.0%/6.9%) を体系的に評価した試験であり、Jabbour 2020 JAMAOncol の Phase 1 試験 (n=21、ORR 81%) で示された有望なシグナルが大規模・多国籍コホートで再現することを これまで報告されていない 規模で示した。Novel な点として 2 種類の chemotherapy backbone (carboplatin + paclitaxel と cisplatin + pemetrexed) で同等の ORR を示し、組織型 (squamous/nonsquamous) や PD-L1 発現状況に依存しないベネフィットを示した点も挙げられる。

③ 臨床応用: KEYNOTE-799 の結果は 臨床応用 に直結する複数の示唆を提供する。臨床的有用 性として、PACIFIC で取りこぼされる cCRT 中脱落層 22-30% に対しても induction 段階から ICI 効果を提供できる可能性があり、Stage III NSCLC の治療選択肢を拡大する。1 年 OS 81.3-87.0% という成績は cCRT 単独 (歴史的 60% 程度) や ETOP NICOLAS の concurrent nivolumab + cCRT (1 年 OS 75.7%) を上回り、bench-to-bedside の観点で同時併用戦略の 橋渡し 仮説を強く支持する。本データは現在進行中の KEYLYNK-012 (Phase 3 pembrolizumab plus concurrent chemoradiation versus consolidation durvalumab, NCT04380636) と PACIFIC-2 Phase 3 (NCT03519971) の比較対照として参照され、Stage III NSCLC の治療開発の方向性に重要な影響を与えている。

④ 残された課題: 残された課題 として、Phase 2 non-randomized 試験のため cCRT 単独や PACIFIC レジメンとの直接比較ができない点が挙げられ、今後の検討 には Phase 3 ランダム化試験での確証が必須である。Grade 5 致死的肺臓炎 5 例 (Cohort A 4 例 [3.6%]・Cohort B 1 例 [1.0%]) は cCRT 単独 (歴史的 < 1%) や PACIFIC durvalumab 維持 (Grade 3-5 肺臓炎 4%、Antonia 2017) と比較して上昇しており、今後の研究 で患者選択基準 (FEV1・DLCO・既存肺合併症)・放射線照射計画 (V20・MLD) の最適化、肺臓炎発症リスク予測 biomarker の同定が必要となる。Future direction として KEYLYNK-012 (Phase 3 pembrolizumab + cCRT vs cCRT + durvalumab) と PACIFIC-2 (durvalumab + cCRT) の結果待ちが鍵となり、また metastatic 設定で pembrolizumab + chemotherapy が確立された KEYNOTE-189 (Gandhi et al. NEnglJMed 2018) や KEYNOTE-407 (Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018) のデータを参考に local-advanced 設定での chemo backbone 選択を更新していく必要がある。Limitation としては Cohort B の follow-up 期間が 13.7 ヶ月と短く、長期 OS データ更新が必要であり、また East Asia 患者比率 (11.6%・9.8%) が限られているため日本人を含むアジア人集団での外的妥当性検証も求められる。

方法

試験デザイン: 52 施設 (10 ヶ国: 米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、韓国、ニュージーランド、ポーランド、ロシア、スペイン、英国) で実施された open-label、non-randomized、Phase 2 試験 (NCT03631784)。対象: 18 歳以上、未治療・切除不能・病理学的または放射線学的に確認された Stage IIIA/IIIB/IIIC NSCLC (AJCC v8)、RECIST v1.1 で測定可能病変、ECOG PS 0-1、FEV1 > 50%、DLCO > 40%。除外: 胸部既往放射線歴、肺の 31% 超に > 20 Gy 照射計画、anti-PD-(L)1 既往、免疫不全、活動性自己免疫疾患。介入: Cohort A (n=112、squamous 65.2% + nonsquamous 34.8%) は carboplatin AUC 6 + paclitaxel 200 mg/m² + pembrolizumab 200 mg を 1日目 投与 (3 週) →以後 6 週間 carboplatin AUC 2 + paclitaxel 45 mg/m² 週1回 + pembrolizumab 200 mg q3w × 2 回 + 胸部放射線 60 Gy/30 分割。Cohort B (n=102、nonsquamous 100%) は cisplatin 75 mg/m² + pemetrexed 500 mg/m² + pembrolizumab 200 mg q3w × 3 サイクル + cycle 2-3 で胸部放射線 60 Gy/30 分割。cCRT 後は両 cohort とも pembrolizumab 200 mg q3w × 14 サイクル追加 (計 17 サイクル、約 1 年)。評価: 腫瘍画像は baseline →9 週ごと→ week 54 以降 12 週ごと→ week 150 以降 24 週ごと。PD-L1 TPS は中央評価 (22C3 pharmDx assay)。統計手法: Co-primary endpoint (ORR・Grade 3+ 肺臓炎) は Clopper-Pearson 法で 95% CI 算出、PFS・OS・DOR は Kaplan-Meier 法。Binomial sequential testing で interim analysis 実施。108 例/cohort で ORR > 35% (真の ORR 50% を仮定) を 84% power・1-sided α=0.05 で検出可能、Grade 3+ 肺臓炎 < 10% (真値 3% を仮定) を 83% power で検出可能と設計。