- 著者: Barlesi F, Scherpereel A, Rittmeyer A, Pazzola A, Ferrer Tur N, Kim JH, Ahn MJ, Aerts JG, Gorbunova V, Vikström A, Wong EK, Perez X, Bravo-Vergel Y, Zalcman G
- Corresponding author: Fabrice Barlesi, MD, PhD (Aix-Marseille University/AP-HM, Marseille, France)
- 雑誌: Journal of Clinical Oncology
- 発行年: 2013
- Epub日: 2013-07-08
- Article種別: Original Article
- PMID: 23835708
背景
進行非扁平上皮非小細胞肺癌 (NSCLC) は予後不良であり、1年生存率は30%から40%にとどまる。1次治療としての細胞傷害性化学療法は10年以上前に有効性のプラトーに達しており、新たな治療戦略が求められていた。血管新生を標的とする抗VEGF抗体であるbevacizumabは、NSCLCの1次治療において生存期間の改善を示すことが期待された。ECOG 4599試験では、carboplatin+paclitaxel+bevacizumab導入後にbevacizumab継続維持療法を行うことで、化学療法単独と比較して無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) の有意な改善が報告された Sandler et al. NEnglJMed 2006。具体的には、PFS中央値は6.2ヶ月対4.5ヶ月 (HR 0.66, p<0.001)、OS中央値は12.3ヶ月対10.3ヶ月 (HR 0.79, p=0.003) であった。AVAiL試験では、cisplatin+gemcitabine+bevacizumabの併用がPFSを改善したものの Reck et al. JClinOncol 2009、OSの有意な改善は認められなかった Reck et al. AnnOncol 2010。
一方、葉酸代謝を阻害する抗腫瘍薬であるpemetrexedは、非扁平上皮NSCLCにおいて組織型依存的な有効性を示すことが知られている Scagliotti et al. JClinOncol 2008。JMEN試験では、プラチナ製剤ベースの化学療法4サイクル後のpemetrexedスイッチ維持療法が、プラセボと比較してPFSのみならずOSも改善することが示された Ciuleanu et al. Lancet 2009。PFS中央値は4.3ヶ月対2.6ヶ月 (HR 0.50, p<0.001)、OS中央値は13.4ヶ月対10.6ヶ月 (HR 0.79, p=0.012) であった。PARAMOUNT試験では、cisplatin+pemetrexed導入後のpemetrexed継続維持療法がプラセボと比較してPFSを有意に改善した (HR 0.62, 95% CI 0.49-0.79, p<0.001) Paz-Ares et al. LancetOncol 2012。
これらの先行研究により、bevacizumabおよびpemetrexedのいずれもが進行非扁平上皮NSCLCの維持療法において有効性を示すことが確立された。しかし、bevacizumab、cisplatin、pemetrexedの3剤併用導入療法後に病勢制御を達成した患者に対する維持療法として、bevacizumab単剤とbevacizumab+pemetrexed併用のどちらが優れるかについては、直接比較した第III相試験のデータが不足しており、その臨床的意義は未解明であった。AVAPERL (MO22089) 試験は、この重要な臨床的ギャップを埋めることを目的として、国際多施設共同ランダム化第III相試験として実施された。
目的
本研究の目的は、進行非扁平上皮NSCLC患者において、bevacizumab、cisplatin、pemetrexed (CPB) 導入療法4サイクル後に病勢制御 (完全奏効、部分奏効、または安定) を達成した症例を対象に、bevacizumab単剤維持療法とbevacizumab+pemetrexed併用維持療法の有効性および安全性を比較することである。主要評価項目はランダム化後の無増悪生存期間 (PFS) とし、副次評価項目として全生存期間 (OS)、最良奏効率 (ORR)、奏効持続期間、疾患制御持続期間、および患者の生活の質 (QOL) を評価した。本試験は、CPB導入後の最適な維持療法戦略を確立し、臨床現場における治療選択肢を明確にすることを意図している。
結果
患者背景と導入療法 (STEP 1) の結果: 導入療法を受けた376例中、71.9% (269/374例) が病勢制御 (CR+PR+SD) を達成した。内訳はPRが22.7% (85例)、SDが49.2% (184例) であり、CRは認められなかった。導入後に病勢制御を達成した253例 (67.3%) が維持療法にランダム化された (Figure 1)。ランダム化された患者の背景因子は、BEV単剤群 (n=125) とBEV+PEM併用群 (n=128) の間で均等であった。年齢中央値は両群ともに60歳であり、組織型 (腺癌85.6-91.7%)、ECOG PS、喫煙歴に有意差はなかった (Table 1)。導入療法終了からランダム化までの中央値期間は3週であった。導入開始からのbevacizumab治療サイクル数中央値は、BEV単剤群で9サイクル、BEV+PEM併用群で11サイクルであった。
主要エンドポイント:ランダム化後PFS: 主要評価項目であるランダム化後のPFS中央値は、BEV+PEM併用群で7.4ヶ月 (95% CI 6.4-8.8ヶ月) であったのに対し、BEV単剤群では3.7ヶ月 (95% CI 3.1-4.8ヶ月) であった。層別モデルによるハザード比 (HR) は0.48 (95% CI 0.35-0.66, p<0.001) であり、BEV+PEM併用群でPFSが有意に改善された (Figure 2A)。導入開始からのPFS中央値も、BEV+PEM併用群で10.2ヶ月 (95% CI 9.1-11.7ヶ月) と、BEV単剤群の6.6ヶ月 (95% CI 6.0-7.8ヶ月) と比較して有意に延長した (HR 0.50, 95% CI 0.37-0.69, p<0.001) (Figure 2C)。
PFSサブグループ解析: PFSの改善効果は、検討されたすべてのサブグループで一貫して認められた (Figure 3)。導入療法でPRを達成した患者群では、BEV+PEM併用群のPFS中央値が8.6ヶ月、BEV単剤群が3.9ヶ月 (HR 0.42, 95% CI 0.28-0.64, p<0.001) であった。SDを達成した患者群でも、BEV+PEM併用群のPFS中央値が6.8ヶ月、BEV単剤群が3.3ヶ月 (HR 0.63, 95% CI 0.41-0.97, p=0.036) と、併用群で優位性が示された。年齢 (<65歳 vs ≥65歳)、ECOG PS (0 vs 1)、喫煙歴 (非喫煙 vs 現在/過去喫煙) のいずれのサブグループにおいても、BEV+PEM併用維持療法の優位性が一貫して確認された。
OS (副次エンドポイント): OSイベントは、BEV単剤群で42例 (33.6%)、BEV+PEM併用群で34例 (26.6%) に発生した。ランダム化後のOS中央値は、BEV単剤群で12.8ヶ月 (範囲 0-16ヶ月) であったのに対し、BEV+PEM併用群では未到達 (範囲 0.1-16.2ヶ月) であった。OSのハザード比は0.75 (95% CI 0.47-1.19, p=0.219) であり、統計的に有意な差は認められなかった (Figure 2B)。ただし、本試験はOSの検出力を設定して設計されていなかったため、この結果は探索的なものと解釈される。導入開始からのOS中央値は、BEV単剤群で15.7ヶ月 (中央値追跡期間10.9ヶ月) であり、BEV+PEM併用群では未到達であった。両群における死亡原因の大多数 (BEV単剤群で88%、BEV+PEM併用群で79%) は疾患進行によるものであった。
奏効持続期間および疾患制御持続期間: 導入期および維持期を含む全期間における最良奏効率 (ORR、すべてPR) は、BEV単剤群で50.0% (95% CI 40.9-59.1%)、BEV+PEM併用群で55.5% (95% CI 46.4-64.3%) であり、両群間に有意差はなかった (差5.5%, 95% CI -7.3〜18.2%, p=0.878)。奏効持続期間中央値は、BEV+PEM併用群で9.2ヶ月 (95% CI 6.8-10.4ヶ月) と、BEV単剤群の5.7ヶ月 (95% CI 4.9-7.2ヶ月) と比較して有意に延長した (HR 0.53, 95% CI 0.34-0.84, p=0.006)。疾患制御持続期間中央値も、BEV+PEM併用群で7.8ヶ月、BEV単剤群で4.9ヶ月と、併用群で有意な延長が認められた (HR 0.52, 95% CI 0.38-0.70, p<0.001)。
安全性 (維持期): 維持期における有害事象のほとんどはGrade 1または2であった。Grade ≥3の有害事象は、BEV+PEM併用群で37.6% (47/125例) と、BEV単剤群の21.7% (26/120例) と比較して有意に高頻度で発生した (Table 2)。Grade ≥3の血液毒性は、BEV単剤群では維持期にほとんど認められなかった (0%) のに対し、BEV+PEM併用群では10.4%に発生した。最も頻度の高いGrade ≥3血液毒性は好中球減少 (BEV+PEM併用群5.6% vs BEV単剤群0%) および貧血 (BEV+PEM併用群3.2% vs BEV単剤群0%) であった。Grade ≥3高血圧は、BEV+PEM併用群で4.8%、BEV単剤群で2.5%に認められた。維持期において、Grade ≥3の肺出血はいずれの群でも発生しなかった。あらゆるGradeの血痰の発生率は、BEV単剤群で1.7%、BEV+PEM併用群で2.4%と差はなかった。維持期における治療関連死は報告されなかった。疾患進行後の後治療への移行率は、BEV単剤群で57%、BEV+PEM併用群で39%であり、BEV単剤群での早期の疾患進行を反映していると考えられた。最も一般的な後治療レジメンは、チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) (BEV単剤群33%、BEV+PEM併用群26%) およびタキサン系薬剤 (BEV単剤群28%、BEV+PEM併用群12%) であった。
考察/結論
主要知見の意義と新規性: AVAPERL試験は、bevacizumab、cisplatin、pemetrexed (CPB) 導入療法後に病勢制御を達成した進行非扁平上皮NSCLC患者において、bevacizumab+pemetrexed併用維持療法がbevacizumab単剤維持療法と比較して、PFSを大幅かつ有意に改善することを初めて第III相試験で示した。ランダム化後のPFS中央値は7.4ヶ月 vs 3.7ヶ月 (HR 0.48, 95% CI 0.35-0.66, p<0.001) であり、絶対値で約3.7ヶ月の延長が認められた。導入開始からのPFS中央値も10.2ヶ月 vs 6.6ヶ月 (HR 0.50) と一貫した結果であり、維持療法への移行が病勢制御達成例に限定されるという選択バイアスを考慮しても、その臨床的意義は大きい。奏効持続期間中央値も9.2ヶ月 vs 5.7ヶ月 (HR 0.53, 95% CI 0.34-0.84, p=0.006) と改善しており、腫瘍制御の質の観点からもBEV+PEM維持療法の優位性が裏付けられた。本研究は、CPB導入後の最適な維持療法戦略を確立する上で新規の知見を提供している。
先行研究との比較: 本試験の対照群であるbevacizumab単剤維持療法のPFS中央値3.7ヶ月は、同時期に実施された他の維持療法試験 (PARAMOUNT試験におけるpemetrexed単剤維持療法対プラセボの4.1ヶ月 vs 2.8ヶ月 Paz-Ares et al. LancetOncol 2012、JMEN試験におけるpemetrexedスイッチ維持療法対プラセボの4.3ヶ月 vs 2.6ヶ月 Ciuleanu et al. Lancet 2009) の結果と整合しており、本試験の対照群の妥当性を支持する。BEV+PEM併用群のPFS中央値7.4ヶ月は、PARAMOUNT試験のpemetrexed継続維持療法の4.1ヶ月を大きく上回るが、PARAMOUNT試験では扁平上皮癌患者や高齢者、低PS患者など、本試験の除外基準に該当する患者も含まれており、またbevacizumabの上乗せ効果が加算されているという構造的差異があるため、直接的な比較には注意が必要である。この点は、先行研究との比較において重要な相違点である。
OS非有意の解釈: OSのハザード比0.75 (95% CI 0.47-1.19, p=0.219) が統計的に有意でなかった主な理由は、本試験がOSの検出力を設定して設計されていなかったという設計上の制約にある。さらに、疾患進行後の後治療への移行率がBEV単剤群で57%、BEV+PEM併用群で39%と差があり、BEV単剤群でより多くの後治療が施行されたことが、OSの短縮を緩和した可能性も考えられる。PFSの改善がOSの改善に直結しない状況は、非小細胞肺癌の維持療法試験でしばしば見られる課題であり、二次治療以降の治療効果や交差投与による影響がOSの差を希薄化させることが多い。
臨床応用と残された課題: AVAPERL試験の結果は、cisplatin+pemetrexed+bevacizumab導入療法後に病勢制御を達成した非扁平上皮NSCLC患者において、忍容性が確認できれば、bevacizumab+pemetrexed継続維持療法を積極的に採用する強力な根拠を提供する。この知見は臨床現場における治療選択肢を広げるものであり、臨床的意義は大きい。毒性面では、Grade ≥3の有害事象がBEV+PEM併用群で37.6%と増加したが、肺出血などのbevacizumab特異的な致死的有害事象は維持期には観察されず、全体として管理可能な範囲と判断される。本試験の適用は導入療法で病勢制御を達成した患者に限られ、全体の約32%が維持療法に移行できなかった点は、実臨床での運用において考慮すべき重要な点である。PARAMOUNT試験とAVAPERL試験という2つの第III相試験により、pemetrexed含有プラチナ製剤導入後のpemetrexed継続維持療法というパラダイムが確立されたことは、非扁平上皮NSCLC治療における重要な歴史的エビデンスである。今後の検討課題として、本試験はOSを主要評価項目として設計されておらず、OS改善の有無は未解決の問いとして残されている。また、pemetrexed+bevacizumab維持療法とpemetrexed単剤維持療法を直接比較した試験はなく、bevacizumabの上乗せ価値の単独評価は今後の研究に委ねられる。免疫療法が標準治療に組み込まれた現在の臨床文脈では、bevacizumab+化学療法の維持療法戦略の位置付けは変化しており、本試験の結果をそのまま適用できる患者集団は限定的となっている。
方法
研究デザイン: AVAPERL (MO22089) は、国際多施設共同、オープンラベル、ランダム化第III相試験 (ClinicalTrials.gov識別子: NCT00961415) として実施された。本試験は2段階構成であり、まず導入療法を行い、その後維持療法に移行するデザインであった。
患者選択: 2009年8月から2010年7月にかけて、11カ国82施設で414例がスクリーニングされ、376例が導入療法に登録された。適格患者は、18歳以上の未治療の組織学的または細胞学的に確認された切除不能局所進行 (IIIB期で鎖骨上リンパ節転移または悪性胸水/心嚢液を伴う) または転移性非扁平上皮NSCLC患者であった。RECIST v1.1基準で測定可能な病変が1つ以上存在し、ECOG Performance Status (PS) が導入時0〜2、かつ十分な血液、肝臓、腎臓機能 (クレアチニンクリアランスがベースラインで50 mL/min以上、各サイクル開始前で45 mL/min以上) を有することが求められた。無症候性脳転移は許容された。主な除外基準は、扁平上皮癌、Grade ≥2の血痰既往、およびコントロール不良の高血圧であった。
治療プロトコル: STEP 1 (導入療法): 登録された376例の患者は、bevacizumab 7.5 mg/kg (静脈内投与)、cisplatin 75 mg/m² (静脈内投与)、およびpemetrexed 500 mg/m² (静脈内投与) を3週ごとに4サイクル投与された。pemetrexed投与患者には、葉酸 (350〜1000 μg/日経口)、ビタミンB12 (1000 μg筋注、3サイクルごと)、およびデキサメタゾン (4 mg 1日2回経口、サイクル前日、当日、翌日) の標準的な補充療法が実施された。
STEP 2 (維持療法): 導入療法後に完全奏効 (CR)、部分奏効 (PR)、または安定 (SD) を達成した253例 (導入療法を受けた患者の67.3%) が、性別、喫煙状況、および導入療法に対する奏効 (SD vs PR) で層別化され、1:1の比率で以下の2群にランダムに割り付けられた。
- BEV単剤群 (n=125): bevacizumab 7.5 mg/kgを3週ごとに投与。
- BEV+PEM併用群 (n=128): bevacizumab 7.5 mg/kgとpemetrexed 500 mg/m²を3週ごとに投与。 維持療法は、疾患進行、許容できない毒性、または同意撤回まで継続された。
評価項目: 主要評価項目は、ランダム化後から疾患進行またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義されるPFSであった。PFS解析は、210イベント、80%の検出力、HR 0.68を仮定して設計された。副次評価項目には、OS (ランダム化からあらゆる原因による死亡までの期間)、最良奏効率 (ORR)、奏効持続期間、疾患制御持続期間、およびQOLが含まれた。腫瘍評価はRECIST v1.1に従い、各施設で実施された。有害事象 (AE) はNCI Common Terminology Criteria v3.0を用いて評価された。
統計解析: 有効性解析対象集団は維持療法に割り付けられた全患者を含み、安全性解析対象集団は治験薬を少なくとも1回投与された全患者を含んだ。PFSの推定にはカプラン・マイヤー法が用いられ、ランダム化からのPFS解析は性別、喫煙状況、導入奏効で層別化された。ハザード比 (HR) の算出には層別Cox回帰モデルが使用された。OSについては、本試験は統計的検出力を設定していなかった。