• 著者: Paz-Ares L, de Marinis F, Dediu M, Thomas M, Pujol JL, Bidoli P, Molinier O, Sahoo TP, Laack E, Reck M, Corral J, Melemed S, John W, Chouaki N, Zimmermann AH, Visseren-Grul C, Gridelli C
  • Corresponding author: Luis Paz-Ares (University Hospital Virgen del Rocio, Seville, Spain)
  • 雑誌: The Lancet Oncology
  • 発行年: 2012
  • Epub日: 2012-02-16
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 22341744

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) 患者の約75%は、診断時に局所進行期 (ステージIIIB) または転移期 (ステージIV) にある。現在のガイドラインでは、適切な患者に対しプラチナ製剤ベースの併用療法が一次治療として推奨されており、これにより20-40%の奏効割合と7-12ヶ月の中央全生存期間 (OS) が得られると報告されている D’Addario et al. Ann Oncol 2010。しかし、治療成績をさらに改善するための取り組みの中で、腫瘍の組織型によって治療効果が異なることが明らかになってきた。特に、非扁平上皮NSCLC患者は、扁平上皮NSCLC患者とは異なり、pemetrexedがgemcitabine (cisplatinとの併用) やdocetaxel (単剤二次治療) と比較して、またプラセボ (維持療法) と比較して、より優れた有効性を示すことが示されている Scagliotti et al. Oncologist 2009

一次治療または誘導治療中に病勢進行がなかった患者において、忍容性の高い維持療法を投与することで、腫瘍奏効または安定病変の期間を延長する試みがなされてきた。維持療法は、病勢進行または許容できない有害事象が発生するまで継続され、最小限の副作用で無増悪生存期間 (PFS) とOSを改善することを具体的な目標としている。pemetrexedとcisplatinの併用療法は、非扁平上皮NSCLCの一次治療において有効であることがScagliotti et al. JClinOncol 2008によって示されている。また、非pemetrexed含有プラチナ併用療法による誘導療法後の単剤pemetrexed維持療法が、PFSとOSを改善することもCiuleanu et al. Lancet 2009によって報告されている。

しかし、pemetrexedとcisplatinによる誘導療法後に、pemetrexedを維持療法として継続投与すること(継続維持療法)の有効性は、これまで大規模な第III相試験で検証されていなかった。誘導療法中に有効性と忍容性が示された治療法を継続することは、有益な治療を継続する利点と、単剤治療による安全性の向上を両立させる可能性がある。この臨床的ギャップを埋めるため、pemetrexedとcisplatinによる誘導療法後に病勢進行がなかった進行非扁平上皮NSCLC患者において、pemetrexed継続維持療法がプラセボと比較してPFSを改善するかどうかを評価するPARAMOUNT試験が計画された。この領域におけるpemetrexed継続維持療法の有効性に関するデータは不足しており、本研究はその新規性を持つ。特に、同一の導入療法薬剤を継続する維持療法の有効性に関するエビデンスは未確立であり、この点が本研究の主要な課題であった。

目的

本研究の主目的は、pemetrexedとcisplatinの4サイクル誘導療法後に病勢進行がなかった進行非扁平上皮NSCLC患者において、pemetrexed継続維持療法がプラセボと比較して、治験責任医師評価による無増悪生存期間 (PFS) を有意に改善するかを検証することである。

副次目的は、腫瘍奏効割合 (ORR)、患者報告アウトカム (EuroQol 5次元尺度 [EQ-5D] を用いたQOL評価)、医療資源使用、有害事象プロファイル、および全生存期間 (OS) を評価することであった。特にOSについては、最終解析を別途実施することとし、PFS解析時点では中間解析として評価した。これらの評価を通じて、pemetrexed継続維持療法の全体的な有効性と安全性を確立し、臨床現場における新たな治療選択肢としての位置づけを検討することが本研究の目的である。また、維持療法におけるpemetrexedの忍容性、特に長期投与における安全性プロファイルを詳細に評価することも重要な目的の一つであった。

結果

PFS (主要評価項目): pemetrexed群 (n=359) とプラセボ群 (n=180) を比較した結果、治験責任医師評価によるPFSはpemetrexed群で有意に改善された。ランダム化からのPFS中央値は、pemetrexed群で4.1ヶ月 (95% CI 3.2-4.6) vs プラセボ群で2.8ヶ月 (95% CI 2.6-3.1) であった (HR 0.62, 95% CI 0.49-0.79; p<0.0001) (Figure 2A)。この結果は、pemetrexed継続維持療法が疾患進行のリスクを統計学的に有意に減少させることを明確に示した。独立中央評価によるPFSも同様の結果を示し、pemetrexed群で3.9ヶ月 (95% CI 3.0-4.2) vs プラセボ群で2.6ヶ月 (95% CI 2.2-2.9) であった (HR 0.64, 95% CI 0.51-0.81; p=0.00020) (Figure 2B)。誘導療法開始時からのPFS中央値は、pemetrexed群で6.9ヶ月 (95% CI 6.2-7.5) vs プラセボ群で5.6ヶ月 (95% CI 5.5-6.0) であり、ここでもpemetrexed群で有意な延長が認められた (HR 0.59, 95% CI 0.47-0.74; p<0.0001) (Figure 2C)。

サブグループ解析: ベースライン特性に基づくサブグループ解析では、全てのサブグループでpemetrexed維持療法の治療効果が一貫して認められた (Figure 3)。特に、誘導療法への奏効が完全奏効 (CR) または部分奏効 (PR) であった患者群では、PFSのHRが0.48 (95% CI 0.34-0.67) と、安定病変 (SD) であった患者群のHR 0.74 (95% CI 0.53-1.04) よりも良好な傾向が示された。年齢70歳以上 (HR 0.35, 95% CI 0.20-0.63)、女性 (HR 0.49, 95% CI 0.34-0.72)、非喫煙者 (HR 0.41, 95% CI 0.24-0.71) のサブグループで、より顕著なPFS延長効果が観察された。これらの結果は、pemetrexed継続維持療法が幅広い患者層にわたって有効であることを示唆している。

腫瘍奏効と疾患コントロール率 (独立評価): 独立中央評価による維持療法中の最良の腫瘍奏効割合 (ORR; CR/PR) は、pemetrexed群で3% (95% CI 1.3-5.3) vs プラセボ群で0.6% (95% CI 0.02-3.5) であり、統計的有意差は認められなかった (p=0.18)。しかし、安定病変の割合はpemetrexed群で69% (95% CI 63.6-74.1) vs プラセボ群で59% (95% CI 50.8-66.8) とpemetrexed群で有意に高かった (p=0.039)。疾患コントロール率 (CR/PR/SD) はpemetrexed群で72% (95% CI 66.5-76.7) vs プラセボ群で60% (95% CI 51.5-67.4) であり、pemetrexed群で有意に高かった (p=0.009)。病勢進行の割合はpemetrexed群で28% (95% CI 23.0-33.1) vs プラセボ群で39% (95% CI 31.4-47.2) であり、pemetrexed群で有意に低かった (p=0.015) (Table 2)。これらのデータは、pemetrexed維持療法が疾患の安定化に寄与することを示している。

OS中間解析: OSの中間解析は123件の死亡イベント (pemetrexed群 n=77、プラセボ群 n=46) が発生した時点で実施された。この時点での暫定的なOS解析結果は、事前に設定された統計的有意水準 (p>0.0001) に達しなかった。最終的なOS解析は、最低390件の死亡イベントが発生した後に別途実施される予定である。この中間解析では、pemetrexed群の死亡イベントがプラセボ群よりも多かったが、統計的有意差は認められなかった。

QOL (EQ-5D): 患者報告アウトカムであるEQ-5Dの評価では、pemetrexed群とプラセボ群の間で、EQ-5D index scoreおよび視覚アナログ尺度 (VAS) の評価値に有意な差は認められなかった。両群ともに80%を超える高いコンプライアンス率が維持された。この結果は、pemetrexed維持療法が患者のQOLに悪影響を与えないことを示唆している。ベースラインのEQ-5D index scoreはpemetrexed群で0.77、プラセボ群で0.79であり、VAS評価値はそれぞれ71.08と71.02であった。維持療法中のQOLは両群で同程度に維持された。

安全性: pemetrexed群では、プラセボ群と比較して、薬剤関連のGrade 3-4の検査値異常が有意に多く認められた (pemetrexed群 n=33 [9%] vs プラセボ群 n=1 [<1%]; p<0.0001)。主なGrade 3-4の有害事象は、貧血 (pemetrexed群 n=16 [4%])、好中球減少 (pemetrexed群 n=13 [4%])、および疲労 (pemetrexed群 n=15 [4%]) であった。非検査値のGrade 3-5の有害事象は、pemetrexed群でn=32 (9%)、プラセボ群でn=8 (4%) であり、統計的有意差は認められなかった (p=0.080)。薬剤関連の有害事象による治療中止は、pemetrexed群でn=19 (5%)、プラセbo群でn=6 (3%) であった。重篤な有害事象としては、貧血 (pemetrexed群 n=8 [2%] vs プラセボ群 n=0) および発熱性好中球減少症 (pemetrexed群 n=5 [1%] vs プラセボ群 n=0) がpemetrexed群で多く報告された。治療関連死は各群で1例ずつ報告された (pemetrexed群:肺炎、プラセボ群:突然死)。pemetrexedの用量強度は計画された平均用量の94.8%であった (Table 3)。長期間のpemetrexed投与 (>6サイクル vs ≤6サイクル) は、好中球減少を除き、Grade 3-4の有害事象の全体的な発生率増加とは関連しなかった (p=0.015)。

考察/結論

PARAMOUNT試験は、pemetrexedとcisplatinによる誘導療法後に病勢進行がなかった進行非扁平上皮NSCLC患者において、pemetrexed継続維持療法がプラセボと比較してPFSを有意に延長することを示した、最初の完全に検出力のある第III相試験である。

先行研究との違い: これまでの維持療法に関する研究では、誘導療法とは異なる薬剤を用いる「スイッチ維持療法」や、pemetrexedを含まないプラチナ併用療法後のpemetrexed維持療法が検討されてきた。例えば、Ciuleanu et al. Lancet 2009は、非pemetrexed含有プラチナ併用療法後のpemetrexedスイッチ維持療法がPFSとOSを改善することを示した。しかし、本研究は、誘導療法と同一のpemetrexed含有レジメン後の継続維持療法としてのpemetrexedの有効性を初めて実証した点で、これまでの研究とは異なる。この継続維持療法というアプローチは、導入療法で効果が確認された薬剤をそのまま継続することで、治療効果の最大化と安全性の維持を両立させる可能性を示した。

新規性: 本研究で初めて、pemetrexedとcisplatinによる誘導療法後に病勢進行がなかった進行非扁平上皮NSCLC患者において、pemetrexed継続維持療法がPFSを統計学的に有意に延長し、その効果が全てのサブグループで一貫していることを示した。これは、誘導療法で良好な効果を示した患者に対して、その治療を継続することが有効であるという新たなエビデンスを提供するものである。有害事象プロファイルは既報のpemetrexedの安全性プロファイルと一致しており、QOLへの悪影響も認められなかった点は、継続維持療法の忍容性を示す重要な知見である。

臨床応用: 本研究の結果は、進行非扁平上皮NSCLC患者において、pemetrexedとcisplatinによる誘導療法後に病勢進行がなかった場合、pemetrexed継続維持療法が標準的な治療選択肢として推奨されることを強く支持する臨床的意義を持つ。この治療戦略は、患者のPFSを延長し、疾患コントロールを改善する一方で、QOLを維持できる可能性を示唆している。これにより、臨床現場での治療選択肢が拡大し、患者の予後改善に貢献することが期待される。特に、良好なパフォーマンスステータスを維持している患者にとって、この継続維持療法は有効な選択肢となる。

残された課題: 本試験の限界として、良好なパフォーマンスステータス (PS 0-1) を持ち、pemetrexed-cisplatin誘導療法後に疾患コントロールが得られた患者のみが維持療法に組み入れられた点が挙げられる。PSが1より低い患者や、誘導療法4サイクル後に疾患コントロールが得られなかった患者が、pemetrexed継続維持療法から恩恵を受けるかどうかは未解明であり、今後の検討課題である。また、OSの最終解析はまだ実施されておらず、PFSの改善がOSの延長に繋がるかどうかの最終的な結論は、さらなるデータ成熟を待つ必要がある。この点については、今後の研究でより明確なエビデンスが求められる。

方法

PARAMOUNT試験 (ClinicalTrials.gov, NCT00789373) は、16カ国83施設で実施された二重盲検、多施設共同、第III相、ランダム化プラセボ対照試験である。本研究は2つのフェーズで構成された。(1) 非ランダム化誘導フェーズ、および (2) ランダム化維持フェーズである。

対象患者: 誘導フェーズの対象患者は、組織学的または細胞学的に進行非扁平上皮NSCLC (ステージIIIBまたはIV) と診断された18歳以上の患者で、肺がんに対する全身化学療法歴がなく、RECIST 1.0基準で測定可能病変が1つ以上あり、ECOGパフォーマンスステータス (PS) が0または1であった。主要な除外基準は、他の抗腫瘍療法との併用、主に扁平上皮がん、小細胞がん、または両組織型の混合であった。中枢神経系転移を有する患者は、転移が安定しており、局所療法で成功裏に治療され、少なくとも4週間コルチコステロイドを中止している場合に限り適格とされた。維持フェーズの対象患者は、誘導療法4サイクル完了後に病勢進行がなく、ECOG PSが0または1であった。

治療プロトコル: 誘導フェーズでは、pemetrexed 500 mg/m²とcisplatin 75 mg/m²を21日サイクルで4サイクル、静脈内投与した。維持フェーズでは、誘導療法後に病勢進行がなかった適格患者を、疾患ステージ (IIIB vs IV)、ECOG PS (0 vs 1)、および誘導療法への腫瘍応答 (完全奏効/部分奏効 vs 安定病変) で層別化し、2:1の割合でランダムに割り付けた。ランダム化はPocock and Simonの最小化法を用いて行われた。患者および治験責任医師は治療割り付けについて盲検化された。割り付けられた治療は、pemetrexed 500 mg/m²を21日ごとに静脈内投与する群と、プラセボ (0.9%塩化ナトリウム) を21日ごとに静脈内投与する群であり、いずれも最良の支持療法 (BSC) と併用された。維持療法は、病勢進行、許容できない有害事象、または患者・医師の判断による中止まで継続された。両フェーズを通じて、全ての患者は葉酸、ビタミンB12、およびデキサメタゾンを予防的に投与された。

評価項目: 主要評価項目は、治験責任医師評価による無増悪生存期間 (PFS) であり、intention-to-treat (ITT) 集団で解析された。副次評価項目には、腫瘍奏効割合 (ORR)、患者報告アウトカム (EuroQol 5次元尺度 [EQ-5D] を用いたQOL評価)、医療資源使用、有害事象、および全生存期間 (OS) が含まれた。腫瘍評価はRECIST 1.0ガイドラインに従い、ベースラインから4週間以内、その後は2サイクルごと (6週間±1日) に実施された。ランダム化された全患者の放射線画像データは、治療割り付けを盲検化された独立した放射線科医によって中央レビューされた。有害事象はCommon Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v3.0に従って評価された。QOL評価には、患者が自身の健康状態を評価する視覚アナログ尺度 (VAS) も含まれた。

統計解析: PFSの主要解析は、真のハザード比 (HR) が0.65であると仮定し、238イベント発生時に90%の検出力を持つように設計された (両側α=0.05)。OSとPFSの両方で全体的なタイプIエラー (0.05) を制御するため、統計的ゲートキーピングスキームが用いられた。PFSの主要解析時に、OSの中間解析がプロトコルに従って実施されたが、名目上の両側α水準は0.0001とされた。最終的なOS解析は、最低390イベント発生後に別途報告される予定である。PFSおよびOSの解析にはKaplan-Meier法が、ハザード比の推定にはCox proportional hazards modelが用いられた。腫瘍奏効割合および疾患コントロール割合の群間比較にはFisher’s exact testが用いられた。全ての統計解析にはSASバージョン9.1.3が使用された。