• 著者: Paz-Ares LG, de Marinis F, Dediu M, Thomas M, Pujol JL, Bidoli P, Molinier O, Sahoo TP, Laack E, Reck M, Corral J, Melemed S, John W, Chouaki N, Zimmermann AH, Visseren-Grul C, Gridelli C
  • Corresponding author: Luis G. Paz-Ares, MD, PhD (Hospital Universitario Virgen del Rocio, Seville, Spain)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2013
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 23835707

背景

進行非扁平上皮非小細胞肺癌 (NSCLC) の1次治療において、プラチナ製剤併用化学療法は標準的な治療法として確立されている。特に、Scagliotti et al. JClinOncol 2008の第III相試験では、シスプラチンとペメトレキセドの併用療法が非扁平上皮NSCLC患者において、シスプラチンとゲムシタビンの併用療法と比較して優れた有効性を示し、このレジメンが標準的な1次治療の一つとして広く採用されるようになった。しかし、導入化学療法後の最適な治療戦略については、依然として議論の余地があり、特に維持療法が全生存期間 (OS) を改善するかどうかは未解明な点が多かった。

維持療法には大きく分けて2つの戦略が存在する。一つは、導入療法で使用しなかった薬剤に切り替える「スイッチ維持療法」であり、Ciuleanu et al. Lancet 2009のJMEN (JMEN試験) では、非ペメトレキセド含有導入療法後のペメトレキセドスイッチ維持療法が、プラセボと比較して無増悪生存期間 (PFS) の延長とOSの改善 (ハザード比 [HR] 0.79、95% CI 0.65-0.95、p=0.012) を示した。もう一つは、導入療法で使用した薬剤を継続する「継続維持療法」である。このアプローチは、すでに有効性と忍容性が確認された薬剤を、より毒性の高いプラチナ製剤なしで継続するという点で合理的であると考えられた。しかし、シスプラチンとペメトレキセドによる導入療法後に病勢制御を達成した患者において、ペメトレキセド継続維持療法がOSを改善するという明確なエビデンスは不足していた。

先行研究では、ゲムシタビン継続維持療法がPFSを延長するものの、OSの改善には至らないという報告もあり、継続維持療法のOSに対する効果は一貫していなかった。PARAMOUNT試験は、この臨床的ギャップを埋めるために設計された初の十分な統計的検出力を持つ第III相試験であり、シスプラチンとペメトレキセドによる導入療法後のペメトレキセド継続維持療法がOSを改善するかどうかを検証することを目的とした。2012年には、本試験の主要評価項目であるPFSの解析結果がPaz-Ares et al. LancetOncol 2012により報告され、ペメトレキセド群でPFSの有意な延長 (HR 0.62、95% CI 0.49-0.79、p<0.001) が示されていた。本報告は、PARAMOUNT試験の最終的なOS解析結果と更新された安全性データを提供するものである。

目的

本研究の目的は、進行非扁平上皮NSCLC患者を対象に、シスプラチンとペメトレキセドによる4サイクルの導入化学療法後に病勢制御を達成した患者において、ペメトレキセド継続維持療法と最良支持療法 (BSC) の併用が、プラセボとBSCの併用と比較して、最終的な全生存期間 (OS) を有意に延長するかどうかを評価することである。また、更新された無増悪生存期間 (PFS) データと安全性プロファイルを評価し、継続維持療法がOS改善をもたらす最初の第III相試験となるかを検証することも目的とした。これにより、非扁平上皮NSCLCにおけるペメトレキセド継続維持療法の臨床的有用性を確立することを目指した。

結果

OS (主要最終解析): 最終データカットオフ日 (2012年3月5日) 時点で、397例の死亡が確認された (ペメトレキセド群 256例 [71.3%]、プラセボ群 141例 [78.3%])。生存患者における追跡期間中央値は24.3ヶ月 (95% CI 23.2-25.1ヶ月) であった。ペメトレキセド継続維持療法群は、プラセボ群と比較して統計学的に有意なOS延長を示した。ペメトレキセド群のOS中央値は13.9ヶ月 (95% CI 12.8-16.0ヶ月) であったのに対し、プラセボ群では11.0ヶ月 (95% CI 10.0-12.5ヶ月) であった。ハザード比 (HR) は0.78 (95% CI 0.64-0.96、ログランク検定 p=0.0195) であり、死亡リスクを22%有意に低減した。これは、継続維持療法においてOS改善を示した最初の第III相試験である (Figure 2A, Table 1)。

長期OS率: 1年OS率は、ペメトレキセド群で58% (95% CI 53-63%)、プラセボ群で45% (95% CI 38-53%) であり、有意な差が認められた (p=0.0062)。2年OS率も同様に、ペメトレキセド群で32% (95% CI 27-37%)、プラセボ群で21% (95% CI 15-28%) と、ペメトレキセド群で有意に高かった (p=0.0103)。この結果は、ペメトレキセド群における生存優位性が長期にわたって持続することを示唆している。導入療法開始時からの総OSを評価した場合でも、ペメトレキセド群のOS中央値は16.9ヶ月 (95% CI 15.8-19.0ヶ月)、プラセボ群は14.0ヶ月 (95% CI 12.9-15.5ヶ月) であり、HRは0.78と維持療法開始からの解析結果と一致した (Figure 2B)。

PFS (最終更新解析): OSデータカットオフ時点でのPFSの再評価では、ハザード比 (HR) は0.60 (95% CI 0.50-0.73、p<0.001) であった (Figure 2C)。この結果は、2012年の主要解析報告時 (HR 0.62、95% CI 0.49-0.79、p<0.001) と一貫しており、ペメトレキセド維持療法によるPFSベネフィットの頑健性が再確認された。

サブグループ解析 (OSの一貫性): OSに対するペメトレキセド維持療法の効果は、全ての事前規定サブグループで一貫して優位性を示した (Figure 3)。導入療法に対する奏効別に見た場合、完全奏効/部分奏効 (CR/PR) サブグループ (n=234) ではOS HR 0.81 (95% CI 0.59-1.11)、OS中央値はペメトレキセド群15.5ヶ月 vs プラセボ群11.2ヶ月であった。病勢安定 (SD) サブグループ (n=285) ではOS HR 0.76 (95% CI 0.57-1.01)、OS中央値はペメトレキセド群13.7ヶ月 vs プラセボ群11.1ヶ月であった (Figure 4A, 4B)。これらのサブグループ解析は、統計的検出力は十分ではなかったものの、ペメトレキセド群に数値的な優位性を示した。治療と奏効の交互作用検定では有意差は認められなかった (p=0.731)。ECOG PS 0の患者ではOS HR 0.70、PS 1の患者ではOS HR 0.82であった。ステージIVの患者 (n=490) ではOS HR 0.79、ステージIIIBの患者 (n=49) ではOS HR 0.82であった。喫煙歴、性別、年齢、組織型 (腺癌) の全てのサブグループで、ペメトレキセド群のOS改善傾向が認められた。

維持療法投与状況: ペメトレキセド群の平均維持サイクル数は7.9サイクル (範囲1〜44) であったのに対し、プラセボ群では5.0サイクル (範囲1〜38) であった。6サイクルを超える維持療法を継続した患者の割合は、ペメトレキセド群で37.0%、プラセボ群で18.3%であった。これは、誘導療法を含めると最低10サイクルのペメトレキセド治療を継続したことを意味する。10サイクルを超える維持療法を継続した患者の割合は、ペメトレキセド群で27.6%、プラセボ群で11.7%であった。ペメトレキセドの平均週用量は156.11mg (計画平均用量の93.7%) であった。

後続治療: 維持療法中止後の後続治療を受けた患者の割合は、ペメトレキセド群で64.3% (n=231)、プラセボ群で71.7% (n=129) であり、統計的に有意な差は認められなかった (p=0.099)。後続治療の内訳は両群間で概ねバランスが取れていたが、ドセタキセルはペメトレキセド群で32.3%、プラセボ群で43.3%と、プラセボ群で有意に多く使用された (p=0.013)。プラセボ群からのペメトレキセド再投与は3.9%と少数であった。後続治療の均衡は、観察されたOS差がペメトレキセド維持療法の直接効果によるものであることを支持する。

安全性 (維持期、更新解析): 更新された安全性解析では、新たな安全性に関する所見は認められなかった。維持療法中のグレード3-4の薬剤関連有害事象は、ペメトレキセド群で貧血6.4% vs プラセボ群0.6% (p≤0.05)、好中球減少5.8% vs 0% (p≤0.05)、倦怠感4.7% vs 1.1% (p≤0.05) であり、ペメトレキセド群で有意に高頻度であった (Table 2)。しかし、いずれの事象も7%未満の患者に発生し、管理可能な範囲であった。グレード1-2の有害事象では、貧血、好中球減少、倦怠感、悪心、嘔吐、口内炎、食欲不振、流涙もペメトレキセド群で有意に高頻度であった。グレード5の薬剤関連有害事象は、ペメトレキセド群で1例 (肺炎)、プラセボ群で2例 (突然死、呼吸停止) であった。6サイクルを超える長期曝露と6サイクル以下の曝露を比較した場合、グレード3-4の毒性に有意差は認められなかった (好中球減少のみ9% vs 4%で数値的増加傾向、p=0.062)。感染率は長期曝露で増加しなかった (3.5% vs 1.5%、p=0.334)。治療中断に至った毒性の割合は、ペメトレキセド群で12.0%、プラセボ群で4.4%であった。

考察/結論

PARAMOUNT試験の最終OS解析は、シスプラチンとペメトレキセドによる導入療法後に病勢制御を達成した進行非扁平上皮NSCLC患者において、ペメトレキセド継続維持療法が統計学的に有意なOS改善をもたらすことを示した最初の第III相試験であり、非扁平上皮NSCLCの治療戦略においてマイルストーン的な意義を持つ。OSのハザード比 (HR) 0.78 (95% CI 0.64-0.96、p=0.0195) は、導入療法後も薬剤を変えずに継続するという戦略が、患者の長期生存に寄与することを実証した。

先行研究との違い: 本研究の知見は、Ciuleanu et al. Lancet 2009のJMEN試験の結果と概念的に相補的である。JMEN試験が「非ペメトレキセド含有導入療法後のペメトレキセドスイッチ維持療法」でOS HR 0.79 (95% CI 0.65-0.95、p=0.012) を示したのに対し、PARAMOUNT試験は「ペメトレキセド含有導入療法後のペメトレキセド継続維持療法」でOS HR 0.78 (95% CI 0.64-0.96、p=0.0195) を示した。これらの2つの試験は、ペメトレキセド維持療法の強固な有効性を示すエビデンスを構成し、導入レジメンの種類によらずペメトレキセド維持療法が非扁平上皮NSCLCにおいて効果的であることを示唆している点で、これまでの研究とは異なるアプローチを確立した。

新規性: 本研究で初めて、継続維持療法が全生存期間を有意に延長することを示した第III相無作為化試験であるという新規性を持つ。これにより、ペメトレキセド維持療法が非扁平上皮NSCLCの標準治療として確立される基盤が提供された。

後続治療率が両群間で均衡していたこと (ペメトレキセド群64.3% vs プラセボ群71.7%)、およびプラセボ群からペメトレキセドへの再投与が3.9%と少数であったことは、観察されたOS差がペメトレキセド維持療法の直接的な効果によるものであり、後続治療による交絡因子の影響が少ないことを支持する。長期的な安全性プロファイルも確認されており、グレード3-4の各毒性が7%以下と管理可能な水準であったことは、臨床応用における重要な側面である。

臨床応用: 本研究の臨床的意義は多岐にわたる。第一に、シスプラチンとペメトレキセドによる導入療法後にペメトレキセド維持療法を継続するという治療戦略が、進行非扁平上皮NSCLCの標準的な選択肢として確立されたことである。第二に、この枠組みは、その後の免疫化学療法戦略へと発展した。例えば、KEYNOTE-189試験 (Gandhi et al. NEJM 2018) では、ペムブロリズマブとカルボプラチン、ペメトレキセドによる導入療法後に、ペムブロリズマブとペメトレキセドによる維持療法がOS HR 0.49という劇的な改善を示した。これは、PARAMOUNT試験が確立したペメトレキセド維持療法の有効性を免疫療法が大幅に増強した形であり、現代の非扁平上皮NSCLCの1次治療の中心に位置するペムブロリズマブとペメトレキセドによる維持戦略は、PARAMOUNTの概念的基盤の上に成立している。

残された課題: 今後の検討課題としては、維持療法から最も利益を得る患者サブグループをさらに特定するための追加研究が必要である。全ての患者が維持療法を必要とするわけではない可能性があり、プラセボ群でも複数のサイクルにわたって病勢進行がなかった患者も存在した。また、導入療法で病勢進行がなかったものの、患者または医師の判断で治療中断があった患者において、2次治療としてペメトレキセドを再開することの利益についても検討が必要である。今後数年間で完了するいくつかの進行中の臨床試験によって、最適な維持療法の使用に関する理解がさらに深まることが期待される。維持療法の選択は、患者固有の要因と希望を含む個別化されたアプローチに基づいて行われるべきであり、PARAMOUNT試験の結果は、進行非扁平上皮NSCLC患者に対するペメトレキセド継続維持療法のベネフィットとリスクに関する新たなデータを提供し、これらの選択を導く強力なエビデンスとなる。

方法

本研究は、多施設共同二重盲検ランダム化第III相試験 (NCT00789373) として実施された。主に欧州の83施設で2009年2月から2010年7月にかけて患者のランダム化が行われた。

試験デザイン: 試験は2つの治療フェーズで構成された。

  1. 導入フェーズ: 進行非扁平上皮NSCLC患者939例が、シスプラチン75mg/m²とペメトレキセド500mg/m²を3週間に1回、計4サイクル投与された。導入フェーズの主要な適格基準は、進行非扁平上皮NSCLC (ステージIIIBからIV)、RECIST 1.0基準で測定可能な病変が少なくとも1つ存在すること、肺癌に対する全身化学療法歴がないこと、およびECOGパフォーマンスステータス (PS) 0または1であった。
  2. 維持フェーズ: 導入療法終了時に病勢進行がなく、ECOG PS 0または1を維持した539例が、2:1の比率でランダムに割り付けられた。
    • ペメトレキセド群: ペメトレキセド500mg/m²を3週間に1回、BSCと併用して投与 (n=359)。
    • プラセボ群: プラセボ (0.9%塩化ナトリウム) を3週間に1回、BSCと併用して投与 (n=180)。 維持療法は、病勢進行、患者または医師の判断、あるいは許容できない毒性が生じるまで継続された。全患者は、試験終了または死亡まで追跡された。

補助療法: 両フェーズを通じて、全患者に葉酸とビタミンB12の補充、および予防的デキサメタゾンがペメトレキセドの添付文書に従って投与された。サイクル遅延 (最大42日間) および用量調整は、毒性管理のために許可された。

患者背景: ランダム化された患者のベースライン特性は両群間でバランスが取れていた。年齢中央値は61歳、男性59%、白人94%、ECOG PS 0が32%、ステージIV NSCLCが91%、腺癌が86%、導入療法に対する奏効 (CR/PR) が43%、病勢安定 (SD) が53%であった (Appendix Table A1)。維持療法は、導入療法終了から中央値3日後 (範囲 -2〜30日) に開始され、68%の患者が7日以内に開始した。

評価項目: 主要評価項目は、ランダム化からのOSであった。副次評価項目には、PFSの更新解析および安全性プロファイルの評価が含まれた。腫瘍測定はRECIST 1.0基準に従って実施され、毒性はCommon Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) バージョン3.0を用いて評価された。

統計解析: OSは、調整なしのCox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比 (HR) と95%信頼区間 (CI) を推定し、Kaplan-Meier曲線を用いて生存期間を推定した。両群間の生存推定値の差は、両側ログランク検定を用いて評価された (α=0.0498)。事前に規定されたサブグループ解析も実施された。サンプルサイズは、真のOS HRが0.70、30%の打ち切りを仮定した場合に、390例の死亡で93%の検出力を確保できるよう、558例のランダム化患者を想定して算出された。SASバージョン9.1.3が全ての統計解析に使用された。毒性の群間比較にはFisherの正確検定が用いられた。