• 著者: Rizvi NA, Hellmann MD, Brahmer JR, Juergens RA, Borghaei H, Gettinger S, Chow LQ, Gerber DE, Laurie SA, Goldman JW, Shepherd FA, Chen AC, Shen Y, Nathan FE, Harbison CT, Antonia S
  • Corresponding author: Naiyer A. Rizvi, MD (Columbia University Medical Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-06-27
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 27354481

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) の一次治療におけるプラチナ製剤ベース二剤併用化学療法 (PT-DC) は、客観的奏効率 (ORR) が15%から32%、全生存期間中央値 (mOS) が8.1ヶ月から10.3ヶ月と、その効果には限界があったとSchiller et al. NEnglJMed 2002Scagliotti et al. JClinOncol 2008Sandler et al. NEnglJMed 2006らが報告している。しかし、化学療法、特にアントラサイクリン系薬剤やプラチナ製剤が免疫原性細胞死 (ICD) を誘導し、抗腫瘍免疫を増強する可能性が前臨床研究で示唆されていた。例えば、ゲムシタビン (gemcitabine) は骨髄由来抑制細胞 (MDSC) や制御性T細胞 (Treg) を選択的に枯渇させることがマウスモデルで示されている。これらの免疫原性特性に基づき、化学療法とPD-1阻害薬の併用により相乗的な抗腫瘍効果が期待されたが、その安全性と有効性は臨床的に未解明な部分が多く、一次治療における最適な併用レジメンは確立されていなかった。特に、PD-1阻害薬であるニボルマブ (nivolumab) は、既治療の進行NSCLC患者において生存期間の改善を示していたが、一次治療としてのPT-DCとの併用に関する安全性と有効性のデータは不足しており、最適なレジメンやバイオマーカーの探索が喫緊の課題であった。この知識ギャップを埋めるため、CheckMate 012 (NCT01454102) は、一次治療の進行NSCLC患者に対するニボルマブ単剤および各種PT-DCとの併用療法を探索する第I相多コホート試験として設計された。

目的

本研究の目的は、CheckMate 012試験の一次治療ニボルマブとPT-DC併用療法の各コホートにおいて、4種類の化学療法レジメンとニボルマブの組み合わせの安全性プロファイル、および客観的奏効率 (ORR)、24週無増悪生存率 (PFS率)、全生存期間 (OS) などの抗腫瘍活性を評価することである。

結果

安全性プロファイル: 最初の6週間の治療期間において、いずれのコホートでも用量制限毒性 (DLT) は観察されなかった。全患者 (n=56) において、任意のグレードの治療関連有害事象 (AE) は95% (53/56例) に、グレード3または4の治療関連AEは45% (25/56例) に発生した (Table 2)。ニボルマブ10mg/kgとPT-DC併用群では、任意のグレードのAEが93% (39/42例)、グレード3または4のAEが50% (21/42例) に認められ、高用量コホートで毒性発現率が高い傾向が示された。治療関連AEによる全治験薬の中止は21% (12/56例) であった。最も中止率が高かったのはペメトレキセド-シスプラチン併用群の33% (5/15例) であり、最も低かったのはゲムシタビン-シスプラチン併用群の8% (1/12例) であった。治療関連死は報告されなかった。肺炎 (pneumonitis) は任意のグレードで13% (7/56例)、グレード3または4で7% (4/56例) に発生し (Table 3)、これらは全てニボルマブ単剤維持期に発生していた。このことから、併用化学療法期のコルチコステロイド前投薬が肺炎予防に寄与した可能性が示唆された。治療中止に至った12例中10例はニボルマブ単剤維持期に発生した。

抗腫瘍活性 (ORR): 各コホートにおける確認済みORRは以下の通りであった: ニボルマブ10mg/kg + ゲムシタビン-シスプラチン群で33% (95% CI 9%-66%, 4/12例)、ニボルマブ10mg/kg + ペメトレキセド-シスプラチン群で47% (95% CI 21%-73%, 7/15例)、ニボルマブ10mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群で47% (95% CI 21%-73%, 7/15例)、ニボルマブ5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群で43% (95% CI 18%-71%, 6/14例) であった。全コホートにおいて、PD-L1発現レベルにかかわらずORRが達成された (PD-L1 ≥1%の患者で48% vs <1%の患者で43%)。奏効は部分奏効 (PR) が中心であり、完全奏効 (CR) はゲムシタビン-シスプラチンコホートの1例のみであった。奏効の71% (17/24例) は初回評価時点である治療開始後10週目までに達成された。

PFSおよびOS (探索的評価項目): 各コホートの無増悪生存期間中央値 (mPFS) は、ゲムシタビン-シスプラチン群で5.7ヶ月、ペメトレキセド-シスプラチン群で6.8ヶ月、ニボルマブ10mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群で4.8ヶ月、ニボルマブ5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群で7.1ヶ月であった。これらの数値は、化学療法単独の歴史的mPFSである4.0ヶ月から5.1ヶ月を上回る傾向を示した。24週PFS率はそれぞれ51%、71%、38%、51%であった。全生存期間中央値 (mOS) は、ゲムシタビン-シスプラチン群で11.6ヶ月、ペメトレキセド-シスプラチン群で19.2ヶ月、ニボルマブ10mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群で14.9ヶ月であった。ニボルマブ5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群ではmOSは未算出 (NR、範囲8.8ヶ月から30.1ヶ月以上) であった。1年OS率はそれぞれ50%、87%、60%、86%であった。特に注目すべきは、ニボルマブ5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群における2年OS率が62%であり、追跡2年超の時点で57% (8/14例) の患者が生存中であった (Figure 1)。この結果は、歴史的化学療法の2年OS率10%から18.9%と比較して顕著な改善を示している。薬物動態 (PK) 解析により、ニボルマブ5mg/kgを3週間に1回投与した場合の定常状態薬物曝露は、承認されているニボルマブ3mg/kgを2週間に1回単剤投与した場合と同等であることが示された。

バイオマーカー解析: PD-L1発現量とORR、PFS、OSの間に明確な相関は認められなかった。これは、化学療法との組み合わせによりPD-L1の予測的価値が減弱する可能性を示唆している。EGFR変異およびKRAS変異の有無にかかわらずORRは維持されたが、EGFR/KRAS変異型患者ではmPFSおよびmOSが短縮する傾向が観察された。喫煙歴のある患者でORRおよびPFSが高い傾向が見られ、これは腫瘍変異量との関連を示唆する可能性がある (Table 1)。例えば、PD-L1発現が1%以上の患者における1年OS率は74%であったのに対し、PD-L1発現が1%未満の患者では75%であり、両群間で大きな差は認められなかった (HR 0.99, 95% CI 0.46-2.16, p=0.98)。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、進行NSCLCの一次治療において、ニボルマブとプラチナ製剤ベースの二剤併用化学療法の安全性と有効性を評価したものであり、化学療法単独の歴史的成績 (ORR 15%から32%、mOS 8.1ヶ月から10.3ヶ月) を上回る有望な結果を示した点で、これまでの単剤療法とは異なる知見を提供する。特に、ニボルマブ5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン群における2年OS率62%という成績は、歴史的化学療法の2年OS率10%から18.9%と比較して顕著な長期生存を示しており、後続の第III相CheckMate 227試験の開発を促す重要な知見となった。また、PD-L1発現レベルにかかわらず一定の奏効が観察されたことは、PD-1/PD-L1阻害薬単剤療法で示されたPD-L1の予測的バイオマーカーとしての役割とは対照的であり、化学療法との組み合わせにおいてPD-L1の予測的価値が減弱する可能性をHerbst et al. Nature 2014Rizvi et al. Science 2015の先行研究と異なり示唆する。

新規性: 本研究は、PD-1阻害薬と化学療法の併用療法の臨床的有用性を一次治療の進行NSCLC患者で初めて大規模に探索した点に新規性がある。この知見は、CheckMate 227試験のみならず、その後のKEYNOTE-189試験など、PD-1/PD-L1阻害薬と化学療法の多数の第III相試験の先行研究として位置づけられる。

臨床応用: 本研究で示されたニボルマブとPT-DC併用療法の有望な抗腫瘍活性と許容可能な安全性プロファイルは、進行NSCLCの一次治療における新たな治療選択肢としての臨床的有用性を示唆する。特に、長期生存の可能性が示されたことは、患者の予後改善に直結する重要な意味を持つ。

残された課題: 今後の検討課題としては、より大規模な患者コホートでの有効性と安全性の検証、およびPD-L1以外のバイオマーカーによる患者層別化の可能性の探索が残されている。本研究は第I相試験であり、対象患者数が限られていることがlimitationである。

方法

本研究は、進行非小細胞肺がん (NSCLC) 患者を対象とした第I相多コホート試験であるCheckMate 012試験 (NCT01454102) の一部として実施された。対象患者は、Stage IIIBまたはIVのNSCLCで、化学療法歴がなく (術後補助療法を除く)、ECOG Performance Statusが0または1の患者56例であった。患者は以下の4つのコホートに割り付けられた: (1) ニボルマブ 10mg/kg + ゲムシタビン-シスプラチン (扁平上皮癌、n=12)、 (2) ニボルマブ 10mg/kg + ペメトレキセド-シスプラチン (非扁平上皮癌、n=15)、 (3) ニボルマブ 10mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン (全組織型、n=15)、 (4) ニボルマブ 5mg/kg + パクリタキセル-カルボプラチン (全組織型、n=14)。

治療は、ニボルマブとPT-DCを3週間に1回、4サイクル併用投与した後、ニボルマブ単剤を病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続するプロトコルであった。主要評価項目は、治療開始後最初の6週間における安全性および用量制限毒性 (DLT) の評価であった。副次評価項目には、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumours) バージョン1.1に基づき、治験責任医師が評価した客観的奏効率 (ORR) および24週無増悪生存率 (PFS率) が含まれた。全生存期間 (OS) は探索的評価項目とされた。追跡期間中央値は19.0ヶ月 (OSについては3.2ヶ月から35.1ヶ月の範囲) であった。統計解析には、Kaplan-Meier法による生存期間の推定が用いられ、95%信頼区間はlog-log変換により算出された。また、各コホートのORRはClopper-Pearson法を用いて95%信頼区間が算出された。