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Strong Programmed Death Ligand 1 Expression Predicts Poor Response and De Novo Resistance to EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors Among NSCLC Patients With EGFR Mutation

  • 著者: Su S, Dong ZY, Xie Z, Yan LX, Li YF, Su J, Liu SY, Yin K, Chen RL, Huang SM, Chen ZH, Yang JJ, Tu HY, Zhou Q, Zhong WZ, Zhang XC, Wu YL
  • Corresponding author: Yi-Long Wu, MD (Guangdong Lung Cancer Institute, Guangdong General Hospital and Guangdong Academy of Medical Sciences, Guangzhou, China)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-07-26
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 30056164

背景

EGFR 変異を有する非小細胞肺がん (NSCLC) は、EGFR チロシンキナーゼ阻害薬 (EGFR-TKI) に対して優れた初期奏効を示すものの、すべての患者が感受性を持つわけではない。特に、de novo 耐性(一次治療開始から短期間で病勢進行、通常無増悪生存期間 (PFS) ≤3ヶ月)の頻度は約10-15%と推定されているが、その発生機序は一部の症例でT790M変異、MET増幅、KRAS変異として説明されるものの、既知の遺伝的耐性機構では説明できない症例も多く、そのメカニズムは未解明な点が課題として残されている。

がん細胞は、EGFRなどのドライバーオンコジーンの活性化を通じて免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、免疫監視機構を回避することが知られている。例えば、EGFR活性化はPI3K/Aktシグナルを介してPD-L1発現を増強し(Chen et al. JThoracOncol 2015)、EML4-ALK融合蛋白も同様にPD-L1発現を誘導することがKoh et al. OncoImmunology 2016によって報告されている。さらに、BRAF変異メラノーマでは、BRAF阻害薬耐性細胞でMAPKシグナル亢進とPD-L1発現増加が報告されており、免疫機構が分子標的薬耐性の重要な因子であることが示唆されていた。

EGFR変異NSCLCにおけるPD-L1発現とEGFR-TKI有効性の関係については、先行研究の結果が相反しており、未解明な点が多かった。Lin et al. はPD-L1陽性例でPFSが良好(16.5ヶ月 vs 8.6ヶ月)と報告した一方、Soo et al. はPD-L1発現が不良予後と相関すると報告した。この不一致は、サンプルサイズ、前治療状況、使用抗体クローン、グレーディングカットオフの差異によると考えられる。また、EGFR変異NSCLCは通常PD-1阻害薬への反応性が低いことが知られていたが(Gainor et al. ClinCancerRes 2016)、PD-L1発現の高いde novo耐性例が「適応的免疫抵抗」(PD-L1+/CD8+二重陽性)のパターンを持つ場合、PD-1阻害薬への感受性を持つ可能性があるという仮説が提唱されていた。しかし、この仮説を裏付ける臨床データは不足しており、新たな治療戦略の確立が求められていた。

目的

EGFR活性化変異を有する進行NSCLCにおいて、PD-L1発現(腫瘍細胞 (TC) /免疫細胞 (IC) 3段階スコアリング)がEGFR-TKI一次治療に対する客観的奏効率 (ORR) およびPFS、ならびにde novo耐性と関連するかを検討すること。さらに、PD-L1/CD8二重陽性de novo耐性例における免疫フェノタイプ特性と抗PD-1療法の可能性を探索することを目的とする。

結果

PD-L1発現状況と患者背景: 本研究には、EGFR活性化変異を有する進行NSCLC患者101例が登録された。評価可能な84例におけるPD-L1発現分布は、TC3/IC3(高発現)が14例(16.7%)、TC1-2/IC1-2(弱発現)が19例(22.6%)、TC0/IC0(陰性)が51例(60.7%)であった。EGFR変異型はExon 19欠失が54例、L858Rが35例、その他が12例であった。患者の大部分が腺癌、非喫煙者、女性であり、典型的なEGFR変異NSCLC集団を反映していた。これらの患者背景は、Supplementary Data 1に詳細が示されている。

PD-L1高発現はEGFR-TKI奏効率を著明に低下させる: 84例の奏効評価可能例をPD-L1発現強度別に解析した結果、PD-L1発現と客観的奏効率 (ORR) に明確な負の相関が認められた。TC3/IC3高発現群のORRは35.7%​にとどまり、TC1-2/IC1-2弱発現群の63.2%、TC0/IC0陰性群の67.3%​と比較して著明に低かった (p=0.002)。これは、PD-L1高発現例では陰性例と比較して奏効率が半減以下であることを示している (Supplementary Data 2)。この結果は、PD-L1高発現がEGFR-TKIに対する感受性を著しく低下させる強力な予測因子であることを示唆する。

PD-L1高発現はEGFR-TKI PFSを著明に短縮する: 全例 (n=101) のPFSについてもPD-L1発現と強い負の相関が確認された (Figure 2A)。TC3/IC3高発現群のmPFSは3.8ヶ月、TC1-2/IC1-2弱発現群は6.0ヶ月、TC0/IC0陰性群は9.5ヶ月であり、有意な差が認められた (p<0.001)。ハザード比 (HR) は、高発現 vs 陰性でHR 5.181 (95% CI 2.721-9.864)、弱発現 vs 陰性でHR 2.860 (95% CI 1.528-5.351) であった。EGFR変異型別のサブグループ解析でも一致した傾向が確認された。Exon 19欠失群では、TC3/IC3でmPFS 3.0ヶ月 vs 陰性群12.0ヶ月 (p<0.001) であった (Figure 2B)。L858R群では、TC3/IC3でmPFS 4.7ヶ月 vs 陰性群9.0ヶ月 (p=0.024) であった (Figure 2C)。これらの結果は、PD-L1高発現がEGFR変異型に関わらず一貫してEGFR-TKI感受性を低下させることを示している。

De novo耐性例の遺伝子・免疫プロファイル: 15例のde novo耐性例 (PFS ≤3ヶ月) の特性を解析した (Table 1)。EGFR変異型は19欠失が5例、L858Rが8例、L861Qが1例、Exon 20挿入が1例であった。既知の遺伝的耐性機構が同定された症例は少数であり、MET増幅が4例 (27%)、KRAS G12D変異が1例であった。T790M、BIM欠失、HER2変異、ALK再編成は全例で陰性であった。すなわち、15例中9例 (60%) では既知の遺伝的耐性機構が説明できなかった。De novo耐性例のPD-L1陽性率は66.7% (10/15) であり、acquired耐性例の30.2%と比較して有意に高かった (p=0.009) (Figure 3)。免疫フェノタイプ分類では、46.7% (7/15) がType I (PD-L1+/CD8+、適応的免疫抵抗) に該当した (Supplementary Data 3)。これは、免疫活性化状態(高いCD8+腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) 浸潤)にもかかわらずPD-L1によるT細胞機能抑制が生じている「hot but suppressed」腫瘍免疫微小環境を示唆する。

De novo耐性例における抗PD-1療法奏効の概念実証例: 15例中1例のEGFR L858R変異患者が典型的な概念実証ケースを提供した (Figure 4)。この患者はgefitinib一次治療でPFS 2.5ヶ月(de novo耐性)であり、IHCでTC3/IC3強発現(PD-L1陽性)かつCD8+ >50%であった。T790M、MET、KRAS、BIMは陰性であった。その後、pembrolizumab(抗PD-1抗体)を6サイクル施行したところ、部分奏効 (PR) を達成し、5ヶ月以上の腫瘍制御が得られた。この症例は、PD-L1/CD8二重陽性を有するde novo耐性例でPD-1阻害薬が有効であることを示す最初の実例となった。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、EGFR変異NSCLCにおいてPD-L1高発現 (TC3/IC3) がEGFR-TKI感受性の強力な予測因子であることを示した。ORRの差 (35.7% vs 67.3%) およびmPFSの差 (3.8ヶ月 vs 9.5ヶ月) は臨床的に非常に大きく、EGFR-TKI一次治療を開始する前にPD-L1評価を行うことの臨床的意義を示唆する。先行研究ではPD-L1発現とEGFR-TKI感受性の関係について相反する結果が報告されており、その原因としてサンプルサイズ、前治療状況、使用抗体クローン、グレーディングカットオフの差異が挙げられる。本研究は、治療歴のない患者のみを対象とした点でこれまでの研究と異なり、PD-L1が治療によって変動する動的バイオマーカーであるという点を考慮し、真の予測能を評価した。

新規性: 最も新規な知見は、de novo耐性例の約半数 (46.7%) がPD-L1/CD8双陽性の「適応的免疫抵抗」表現型を持つという点である。通常、EGFR変異NSCLCは「免疫無視 (PD-L1−/CD8−)」型が多く、PD-1阻害薬に不応答とされる(Dong et al. OncoImmunology 2017)が、本研究はde novo耐性例が腫瘍免疫微小環境が活性化されており、PD-1阻害薬感受性の可能性があることを初めて示した。提示した概念実証例は、EGFR変異 + gefitinib de novo耐性 + PD-L1/CD8双陽性の患者でpembrolizumabがPRを達成しており、この仮説を支持する。これは、これまで報告されていない新たな治療戦略の可能性を示すものであり、臨床的意義は大きい。

臨床応用: 本知見は、EGFR変異NSCLC患者におけるEGFR-TKI一次治療の選択において、PD-L1発現レベルを考慮することの臨床的有用性を示唆する。特にPD-L1高発現のde novo耐性患者では、EGFR-TKI単独治療の有効性が低い可能性があり、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) を含む治療戦略がより適切であるかもしれない。EGFR-TKIとICI併用試験(TATTON、TATTON-B、Socinski et al. NEnglJMed 2018のサブグループ解析など)の結果も踏まえると、PD-L1高発現・CD8陽性のEGFR変異de novo耐性例はEGFR-TKI単独ではなくICIベースの治療戦略が適切かもしれない。IMpower 150のEGFR/ALK陽性サブグループ解析では、atezolizumabを含む4剤化学療法免疫療法が有益 (OS HR 0.54) であり、TC3またはIC3陽性例でより顕著であったことと一致する。

残された課題: 本研究の限界として、(1) サンプルサイズn=101の後向き研究であること、(2) de novo耐性例がn=15と少数であること、(3) 次世代シーケンシングの未実施(未知の耐性遺伝子変異を見逃した可能性)、(4) PD-L1評価にSP142を使用(他アッセイとの比較が未実施)、(5) 遺伝子変異とPD-L1発現の関係、腫瘍免疫微小環境の他の因子(腫瘍量・細胞性因子)が検討されていない点が今後の検討課題である。これらのlimitationを克服するためには、より大規模な前向き研究、次世代シーケンシングによる包括的な遺伝子プロファイリング、およびPD-L1アッセイの標準化が求められる。

結論として、本後向き研究はEGFR変異進行NSCLCにおいてPD-L1高発現 (TC3/IC3) がEGFR-TKIに対するORR低下 (35.7% vs 67.3%) およびPFS短縮 (3.8ヶ月 vs 9.5ヶ月) を予測し、de novo耐性例でのPD-L1陽性率がacquired耐性例より有意に高い (66.7% vs 30.2%) ことを示した。De novo耐性例の46.7%にPD-L1/CD8二重陽性の適応的免疫抵抗が認められ、PD-1阻害薬への感受性を持つ可能性が示唆された。PD-L1/CD8双陽性de novo耐性例でのpembrolizumabによるPR達成という概念実証例は、この希少なサブセットにおけるPD-1阻害薬適応の前向き検証が必要であることを示している。

方法

研究デザインと患者選択: 本研究は、広東省肺がん研究所 (GLCI: Guangdong Lung Cancer Institute、広州) で2016年4月から2017年9月までの期間に実施された後向きコホート研究である。1,042例のスクリーニングの中から、EGFR野生型823例、EGFR-TKI未使用22例、ベースラインデータなし88例、Stage I-III 8例を除外し、最終的にEGFR活性化変異(Exon 19欠失、G719X、L858R、L861Q)陽性のEGFR-TKI未治療進行NSCLC患者101例が適格とされた。本研究は広東省総合病院の施設内倫理審査委員会によって承認され、遺伝子解析のための生検組織使用について全患者からインフォームドコンセントが得られた。

PD-L1およびCD8評価: 腫瘍組織検体は、PD-L1 (SP142; Spring Bioscience Inc.) およびCD8 (C8: cluster of differentiation 8; Gene Tech Co., Ltd.) の免疫組織化学 (IHC) 評価に供された。染色された組織切片は、患者の臨床情報および転帰に盲検化された2名の病理医によって独立してスコアリングされた。PD-L1発現は、TCおよびICに対する3段階グレーディングシステムを用いて評価された。強発現 (TC3/IC3) はTC ≥50%またはIC ≥10%と定義され、弱発現 (TC1-2: TC 5-49%; IC1-2: IC 5-9%) はTC 5-49%またはIC 5-9%と定義され、陰性 (TC0/IC0) はTC <5%かつIC <5%と定義された。CD8発現は、間質区画の全有核細胞に占めるCD8+リンパ球の割合として評価され、陽性 (≥10%) または陰性 (<10%) と定義された。

免疫フェノタイプ分類: Teng et al. CancerRes 2015の分類に基づき、de novo耐性例は以下の4タイプに分類された: Type I (適応的免疫抵抗: PD-L1+/CD8+)、Type II (免疫無視: PD-L1−/CD8−)、Type III (内因性誘導: PD-L1+/CD8−)、Type IV (免疫寛容: PD-L1−/CD8+)。

分子プロファイリング: EGFR遺伝子変異は、29変異を検出可能なDxS EGFR変異テストキット (Amoy Diagnostics) を用いた増幅抵抗性変異システムにより検出された。KRAS遺伝子変異はPCR/シーケンシングにより評価された。MET増幅はデュアルカラーFISH (Vysis; Abbott Laboratories) により評価され、MET/CEN7 (Centromere 7) 比 >2.0または平均MET遺伝子コピー数 >6.0/細胞、あるいは腫瘍細胞の10%超がMETシグナル15超を含む場合に増幅と判断された。ALK融合状態はIHC (D5F3; Ventana/Roche Diagnostics) により検出された。BIM欠失多型およびHER2変異はSangerシーケンシングにより評価された。T790M変異も評価された。

統計解析: すべての統計解析はGraphPad Prismソフトウェア (バージョン7.01) およびIBM SPSSソフトウェア (バージョン22.0) を用いて実施された。ORRの比較にはカイ二乗検定が使用された。PFSの解析にはKaplan-Meier曲線とログランク検定が使用された。すべてのp値は両側検定であり、p < 0.05を有意差ありと判断した。