• 著者: Nakagawa K, Garon EB, Seto T, Nishio M, Ponce Aix S, Paz-Ares L, et al. (RELAY Study Investigators)
  • Corresponding author: Kazuhiko Nakagawa (Kindai University Faculty of Medicine, Osaka, Japan)
  • 雑誌: Lancet Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-10-04
  • Article種別: Original Article (Phase 3 RCT)
  • PMID: 31591063

背景

EGFR変異陽性NSCLC (世界の肺癌の85%を占めるNSCLCのうち白人で10-20%、アジア人で40-60%) に対する第1世代EGFR-TKI (erlotinib/gefitinib) は標準治療として確立しているが、先行の複数の第3相試験 (Mok 2009, Maemondo 2010, Mitsudomi 2010, Zhou 2011) のいずれもPFS中央値は約9-13ヶ月にとどまり、30-60%でEGFR T790Mを介する獲得耐性が出現することが知られていた。第2世代afatinibはPFS 11.0ヶ月 (Sequist 2013)、dacomitinibはPFS 14.7ヶ月 (Wu 2017)、第3世代osimertinibはPFS 18.9ヶ月 (Soria et al. NEnglJMed 2018) へと段階的に延長したが、いずれも耐性出現が不可避であり初回治療の選択肢拡大が求められていた。前臨床ではEGFR経路とVEGF経路が相互に活性化することが示され (Naumov 2009, Viloria-Petit 2001)、抗VEGF阻害との併用が合理的とされた。臨床面では第3相試験 (Herbst 2011、EGFR wild-typeで陰性だがEGFR変異陽性サブグループでOSベネフィット示唆)、bevacizumab維持±erlotinib試験 (Johnson 2013)、日本人154例の第2相試験でbevacizumab+erlotinibがerlotinib単独に対しPFS中央値16.0 vs 9.7ヶ月の延長を示し、続く第3相NEJ026試験 (Saito 2019) でも16.9 vs 13.3ヶ月で再現された。先行研究のギャップ (何が足りなかったか):(a) いずれも小規模 (n=154-228)、(b) アジア・日本人限定で人種多様性を欠く、(c) オープンラベル設計で評価者バイアスが排除されていない、(d) 抗VEGF薬がbevacizumabに限定されVEGFR2選択的阻害薬での効果は未検証、という4つの研究ギャップである。Ramucirumabは選択的VEGFR2阻害ヒトIgG1抗体で、VEGFA/VEGFC/VEGFD全てのリガンド結合を遮断するためbevacizumab (anti-VEGFA) より広範な抗腫瘍活性が期待されていた。本研究はこの未解決のギャップを埋めるため、グローバル・二重盲検・第3相RCTによるエビデンスレベル1検証を目指した。

目的

未治療EGFR変異 (ex19delまたはL858R) 陽性転移性NSCLCにおいて、ramucirumab+erlotinib併用療法がプラセボ+erlotinib単独に対し、担当医評価PFSを有意に延長するか検証することを主要目的とした。副次評価項目は安全性、OS、ORR、DCR、奏効期間 (DoR)、薬物動態、免疫原性、患者報告アウトカムであった。

結果

主要評価項目PFSの優越性達成:2016年1月28日〜2018年2月1日に611例をスクリーニングし449例をITT集団として登録した (ramucirumab+erlotinib群224例 vs プラセボ+erlotinib群225例)。両群のベースライン特性は均衡しており (Table 1)、アジア人77% (335/441)、女性63% (283/449)、never smoker 61% (273/449)、ex19del 54% (243/447)、L858R 46% (204/447) であった。追跡期間中央値20.7ヶ月 (IQR 15.8-27.2) で、担当医評価PFS中央値は19.4ヶ月 (95% CI, 15.4-21.6) vs 12.4ヶ月 (95% CI, 11.0-13.5)、層別HR 0.59 (95% CI, 0.46-0.76; p<0.0001) で主要評価項目を達成した (Fig 2)。1年PFS率は71.9% (95% CI, 65.1-77.6) vs 50.7% (43.7-57.3) であった。盲検下独立画像評価では16.5ヶ月 vs 11.1ヶ月 (HR 0.671, 95% CI 0.518-0.869)、per-protocol解析では19.4ヶ月 vs 12.3ヶ月 (HR 0.580, 95% CI 0.450-0.747) と一貫した結果が得られた。

Subgroup解析でのPFS benefit一貫性:事前規定サブグループ全てでramucirumab群有利の方向を示した (Fig 3)。EGFR変異型別ではex19del HR 0.65 (95% CI, 0.47-0.90)、L858R HR 0.62 (95% CI, 0.44-0.87) とほぼ同等のbenefitが得られ、L858R集団でこれまで報告された中で最長のPFS中央値が達成された。地域別では東アジア HR 0.64 (0.49-0.83)、非東アジア HR 0.61 (0.36-1.01)。男性 HR 0.51 (0.34-0.75) は女性 HR 0.73 (0.54-0.99) より明確だが信頼区間は重複。EGFR検査方法別のtherascreen/cobas群 HR 0.40 vs その他PCR群 HR 0.87の差は中央検査で局所検査が検証されており明確な説明は困難と報告された。

ORR・DoR・OSプロファイル:ORRは両群とも同等であった (ramucirumab群76% vs プラセボ群75%、CRはそれぞれ1%, 1%、PRはそれぞれ75%, 74%、Table 2)。DCRも同等で約94-96%。DoR中央値はramucirumab+erlotinib群で有意に延長した (詳細はTable 2)。OSデータは未成熟 (449例中370例 [82%] が打切り)、両群とも中央値未到達であり最終解析は300 OSイベント蓄積時に予定。

安全性プロファイル:Grade 3-4治療関連有害事象 (TEAE) はramucirumab+erlotinib群72% (159/221) vsプラセボ+erlotinib群54% (121/225) であった (Table 3)。Ramucirumab群で最多のGrade 3-4 TEAEは高血圧24% (52/221、全例Grade 3) とざ瘡様皮膚炎15% (33/221)、対照群ではざ瘡様皮膚炎9% (20/225) とALT上昇8% (17/225) であった。重篤TEAEはramucirumab群29% (65/221) vs対照群21% (47/225)。ramucirumab群で多かった重篤TEAEは肺炎3% (7例)、蜂窩織炎・気胸各2% (4例ずつ)。Ramucirumabの用量減量は10% (23/221、主因はproteinuria 8% [18/221]) に発生。治療関連死は両群ともramucirumab+erlotinib群の1例 (胸水ドレナージ後の血胸) のみであった。

T790M獲得頻度の同等性:探索的解析として進行後の液体生検 (Guardant360 NGS) でT790M頻度は両群間で同等であり、ramucirumab併用がerlotinib関連T790M獲得頻度に影響しないことが示唆された。これによりosimertinib等の後治療TKI選択肢を制約しないという臨床的合理性が支持された。CNS転移発生はベースラインで全例除外したこともあり、追跡中の新規CNS転移はramucirumab群2例 vs対照群8例とイベント数が極端に少なく統計解析対象外であった。PFS2 (二次進行までの期間) もramucirumab群有利 (両群中央値未到達、censoring率69%) で、初回治療における一次PFS延長が後治療効果を毀損していないことが確認された。ramucirumabまたはプラセボの曝露期間中央値はramucirumab群11.0ヶ月 vs プラセボ群9.7ヶ月、治療中止率はramucirumab群13% (28/221) vs プラセボ群11% (24/225) と同等であり、治療強度の維持可能性が示された。

考察/結論

RELAYは未治療EGFR変異陽性転移性NSCLCにおいてramucirumab+erlotinib併用がerlotinib単独に比して担当医評価PFSを有意に延長すること (HR 0.59) を、グローバル・二重盲検・第3相デザインで初めて示した。これまでのbevacizumab+erlotinib試験 (JO25567, NEJ026) と異なり、本試験は二重盲検でかつ非アジア集団も含むデザインで、これまでアジア限定・非盲検という方法論的限界で議論されてきたEGFR+VEGF二重阻害戦略にレベル1のエビデンスを与えた点で新規である。これまで報告されていないL858R集団でのPFS中央値達成と、これまでの先行研究と対照的に多人種・大規模 (n=449) での再現性確認が本研究の独自貢献である。Anti-VEGFR2抗体ramucirumabはanti-VEGFA抗体bevacizumabより広範なVEGFC/Dシグナル阻害効果を持ち、本研究で初めて第3相RCTでerlotinib併用の有効性を確認したことが本領域の重要な進展である。臨床応用としては、CNS転移なし・ECOG PS 0-1・ex19del/L858R変異陽性のNSCLC患者で、osimertinib単剤 (Soria et al. NEnglJMed 2018; Ramalingam et al. NEnglJMed 2020) と並ぶ初回治療選択肢として位置付けられる。特に進行後T790M頻度が温存されることから (Mok et al. NEnglJMed 2017 で示されたT790M変異への後治療osimertinibが利用可能)、sequential EGFR-TKI戦略との親和性が高い。一方残された課題として、(1) OSベネフィットの確認 (本解析時点で82%がcensored、最終解析待ち)、(2) CNS転移除外集団のためCNS発生防止効果の前向き検証が困難、(3) osimertinib単剤との直接比較データの欠落、(4) ramucirumab併用群でGrade 3高血圧24%・重篤TEAE 29%への管理体制、が挙げられる。今後の検討課題として第3世代TKIとの併用 (RAMOSE [Ramucirumab plus Osimertinib in EGFR-mutant NSCLC] 試験等) やimmune checkpoint inhibitor併用との戦略的比較が必要である。

方法

本試験RELAY (RamucirumaB plus ErLotinib in EGFR-mutated NSCLC, A double-blind phase III studY) は13カ国 (韓国、香港、日本、台湾、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ルーマニア、スペイン、トルコ、米国、英国) 100施設で実施されたグローバル二重盲検プラセボ対照第3相試験である (NCT02411448)。適格基準は (1) 18歳以上 (日本・台湾では20歳以上)、(2) AJCC StageIV NSCLC、(3) ex19delまたはL858R変異 (現地検査で確認)、(4) ECOG PS 0-1、(5) RECIST 1.1で測定可能病変あり、(6) CNS転移なし (ベースラインのgadolinium造影MRIで全例除外)、(7) EGFR T790M変異既知例は除外、であった。患者を1:1でramucirumab 10mg/kg静注2週毎+erlotinib 150mg/日経口、またはプラセボ静注+erlotinib 150mg/日経口に無作為割付した。割付はinteractive web-response system (IWRS、対話型ウェブ応答システム) を用い、性別 (男vs女)、地域 (東アジアvsその他)、EGFR変異型 (ex19delvsL858R)、EGFR検査方法 (therascreen/cobasvsその他PCR/sequencing) で層別化した。腫瘍評価はCT/MRIにて治療開始後72週まで6週毎、その後12週毎に実施。有害事象はCTCAE v4.0で評価した。中央EGFR検査はtherascreen、T790M液体生検はGuardant360 NGSで実施した。統計解析は事前計画で約450例登録・270 PFSイベント蓄積時に主要解析を実施 (HR 0.71想定で80%検出力、両側α=0.05)。主要解析は層別log-rank検定 (層別Cox proportional hazards modelでHR/95% CI推定)、PFS sensitivity解析は盲検下独立画像評価とper-protocol解析、subgroup解析は非層別Cox model (交互作用の両側α=0.1)、ORRはMiettinen-Nurminen法とCochran-Mantel-Haenszel検定、DoRは非層別log-rank検定で評価した。SAS 9.4を使用。