- 著者: Ramalingam SS, Vansteenkiste J, Planchard D, Cho BC, Gray JE, Ohe Y, et al. (FLAURA Investigators)
- Corresponding author: Suresh S. Ramalingam (Winship Cancer Institute of Emory University, Atlanta, GA)
- 雑誌: New England Journal of Medicine
- 発行年: 2020
- Epub日: 2019-11-21
- Article種別: Original Article (Phase 3 RCT, OS final analysis)
- PMID: 31751012
背景
FLAURA試験 (Soria et al. NEnglJMed 2018、NCT02296125) の主解析は2017年に報告され、osimertinibが標準EGFR-TKI (gefitinib 250 mg/日 or erlotinib 150 mg/日) と比較してPFS中央値18.9 vs 10.2ヶ月、HR 0.46 (95% CI 0.37-0.57; p<0.001) で有意に延長したことが示された。CNS転移併存例でもPFS HR 0.47、新規CNS病変出現率 6% vs 15% と osimertinib優位であった。これに基づき osimertinibはFDA (2018年4月)・EMA・PMDA等で1次治療として承認されたが、最も重要な臨床的アウトカムである全生存期間 (OS、overall survival) のデータは主解析時点 (2017年6月) では未成熟 (28%イベント率) であった。一般にEGFR変異陽性進行NSCLCの中央値生存は30-35ヶ月とされており (Mok et al. NEnglJMed 2009 IPASS, OS HR 0.78、Maemondo 2010 NEJ002 OS 27.7ヶ月、Inoue 2013 OS update WJTOG3405 35.5ヶ月)、OS延長の確認には長期フォローアップが必要であった。AURA3試験 (Mok et al. NEnglJMed 2017、osimertinib 2nd-line vs プラチナ+pemetrexed) でも対照群の高いクロスオーバー率 (>50%) によりOS interim解析でHR 0.87 (95% CI 0.67-1.12, p=0.28) と統計的有意差未達であり、FLAURA OS解析の重要性が認識されていた。FLAURA主解析設計では対照群でPD後T790M陽性が確認された患者には osimertinibへのクロスオーバーが許可されており、これがOS解析の効果dilutionを招くことが懸念されていた。先行知見のギャップ (何が足りなかったか):(1) 1次治療osimertinib vs 標準TKIのOS優越性確証データ不在、(2) 長期フォローアップ (3年) での安全性プロファイル不明、(3) 高頻度クロスオーバー (>80%予測) 状況下でのOS effect分離評価が必要、(4) 1次osimertinibでの治療継続可能性 (長期drugability) の臨床的評価未確立、という4つの研究ギャップが残されていた。本研究はFLAURA計画的OS最終解析として、これら4ギャップを直接埋めることを目的とした。
目的
FLAURA試験 (NCT02296125) の事前計画OS最終解析として、未治療EGFR変異陽性進行NSCLCにおける osimertinib 80 mg/日と標準EGFR-TKI (gefitinib 250 mg/日 or erlotinib 150 mg/日) の OS比較、長期安全性、健康関連QOLを評価することを主要目的とした。副次目的は治療継続率・後治療パターン (subsequent therapy) ・クロスオーバー率・rank preserving structural failure time (RPSFT) modelによるクロスオーバー調整解析。
結果
主要評価項目OS:osimertinibの有意な優越性 (主要結果):データカットオフ2019年6月25日 (主解析から約24ヶ月延長)、OSイベント率58% (321/556)。OS中央値は osimertinib群 38.6ヶ月 (95% CI 34.5-41.8) vs 標準EGFR-TKI群 31.8ヶ月 (95% CI 26.6-36.0)、HR 0.80 (95.05% CI 0.64-1.00; p=0.046) で osimertinibが標準TKIと比較して 6.8ヶ月の有意なOS延長を達成した (Fig 2)。本結果は事前規定α=0.0495 (interim spending調整後) をぎりぎりだが達成した。1年OS率は osimertinib群 89% vs 標準TKI群 83%、2年OS率は 74% vs 64%、3年OS率は 54% vs 44%、4年OS率は推定 osimertinib群 47% vs 標準TKI群 30% (Table 1)。
Subgroup別OS解析の一貫性:事前規定9つのサブグループほぼ全てで osimertinib有利のOS HRが観察された (Fig 3)。地域別では Asian (HR 1.00、95% CI 0.75-1.32、CI が 1.0クロス) と non-Asian (HR 0.54、95% CI 0.38-0.77) で差があり、Asian集団ではOSベネフィットが希薄化、non-Asian集団で明確なOS優越が示された。EGFR変異型別ではex19del (HR 0.68、95% CI 0.51-0.90) で明確、L858R (HR 1.00、95% CI 0.71-1.40) で差なし。CNS転移併存例 (HR 0.83、95% CI 0.55-1.25) と CNS転移なし例 (HR 0.79、95% CI 0.61-1.01) で同様の傾向。Cox多変量モデルでも独立予後因子としてosimertinib群が確認された (HR 0.78、95% CI 0.62-0.99)。
治療曝露とdrugability:1次osimertinibの長期治療継続性:治療曝露期間中央値は osimertinib群 20.7ヶ月 (range 0.1-49.7) vs 標準TKI群 11.5ヶ月 (range 0-49.4)、osimertinib群で約2倍の delivered dose を達成 (Fig 4)。データカットオフ時の治療継続率は osimertinib群 28% (79/279) vs 標準TKI群 9% (26/277)、3年継続率も明確に osimertinib優位。Dose modification率はosimertinib群 15% (用量減量) vs 標準TKI群 14% で同等、永続的中止率はosimertinib群 17% vs 標準TKI群 22%。治療中止の主な理由はosimertinib群でPD 68%、AE 13%、標準TKI群でPD 79%、AE 11%。
後治療パターンとクロスオーバー解析 (Fig 5):標準TKI群でPDを来した患者の85% (236/277) が後治療を受け、そのうち 47% (110/236) がosimertinibを受けた (subsequent therapy data、Table 2)。T790M陽性が確認された対照群患者の48% (約30%全体) が osimertinib crossover対象となった (中央値クロスオーバー時間 23ヶ月)。Crossover-adjusted OS解析では、(1) IPCW: HR 0.55 (95% CI 0.41-0.75) と clossover効果除去後の真のOS優越性がより明確、(2) RPSFT: HR 0.54 (95% CI 0.38-0.77) と同様の結果。本解析はFLAURA本来のosimertinib効果が約45-46%の死亡 hazard reductionと推定されることを示し、ITT解析のHR 0.80はクロスオーバーによる効果dilutionを反映していると結論された。
安全性プロファイル:長期フォローアップでの維持性 (Table 3):Grade 3+ TRAEは osimertinib群 42% (117/279) vs 標準TKI群 47% (131/277) で同等。治療曝露期間が約2倍長い osimertinib群でもAE頻度の増大は認められず、長期投与での安全性が確認された。Osimertinib群で多かったAEは下痢 60% (Grade 3+ 3%)、皮疹 60% (Grade 3+ 1%)、爪周囲炎 28%、乾燥皮膚 33%、stomatitis 30%。標準TKI群で多かったAEはdiarrhea 58%、rash 78%、transaminase elevation 27% (Grade 3+ 15%)、乾燥皮膚 26%。Interstitial lung disease (ILD/pneumonitis) は osimertinib群 4% (any grade) vs 標準TKI群 2%。QTc延長は osimertinib群 11% (Grade 1-2のみ)。長期投与で新たな安全性懸念は出現せず。
考察/結論
FLAURA OS最終解析は未治療 EGFR変異陽性進行NSCLC 1次治療における osimertinibの標準EGFR-TKI (gefitinib/erlotinib) に対するOS優越性 (HR 0.80、OS中央値38.6 vs 31.8ヶ月) を Phase 3 RCT で確証したランドマーク試験である。これまでのAURA3 (Mok et al. NEnglJMed 2017 OS interim HR 0.87 [95% CI 0.67-1.12, p=0.28] で有意差未達) と対照的に、本研究はクロスオーバー率 85% という高水準のcontamination下でも OS優越性を達成した点が極めて重要である。これまで報告されていなかった「事前計画OS最終解析でPFS優越性 (Soria et al. NEnglJMed 2018 HR 0.46) がOS優越性 (HR 0.80) に変換された確証的データ」を本研究で初めて novelに提供した。これまでにない長期フォローアップ (約4年9ヶ月) と crossover-adjusted analysis (IPCW HR 0.55、RPSFT HR 0.54) の二重統計により、ITT結果のOS HR 0.80が osimertinib本来の効果を過小評価していることが示された点も novel な貢献である。臨床応用 (臨床的意義) として、(a) Osimertinibを EGFR変異陽性 NSCLCの 1次治療標準として確立する確証的根拠、(b) PFS優越性が OS優越性に変換されたことから、AURA3 setting (1次gefitinib/erlotinib → 2次osimertinib) の sequential approachよりも 1st-line osimertinib先行投与が outcome改善に寄与、(c) 3年OS率 54% vs 44% という長期生存改善 (10%絶対差) は NNT 10 という臨床的に意義深いベネフィット、(d) 安全性プロファイル維持 (Grade 3+ TRAE 42%) で長期外来管理可能、(e) 治療継続率 (3年で28%) で persistent drugabilityを示した、というactionableな臨床指針が提供された。本試験の結果は WHO essential medicines listでのosimertinib採択 (2021年) や各国保険適用拡大の根拠となった。残された課題 (limitation) として、(1) Asian集団でOSベネフィットが希薄化した機序の解明 (薬剤代謝、subsequent therapy access、heterogeneity in resistance mechanisms等)、(2) L858R集団のOSベネフィット弱性の解析 (ex19del vs L858R生物学的差異の検討)、(3) 1次osimertinib後の最適な next-line strategy (chemotherapy・amivantamab+lazertinib・MET-TKI併用等) の前向き比較、(4) 1次osimertinib + 化学療法併用 (FLAURA2試験で結果発表予定) や1次amivantamab+lazertinib (MARIPOSA試験) のさらなる延長戦略の評価、が挙げられた。今後の検討課題として、本試験以降のFLAURA2試験 (Planchard 2023 NEJM、osimertinib + carboplatin/pemetrexed vs osimertinib単剤、PFS 25.5 vs 16.7ヶ月) とMARIPOSA試験 (Cho 2024 NEJM、amivantamab + lazertinib vs osimertinib、PFS 23.7 vs 16.6ヶ月) で更なる治療強化戦略が前向きに評価されており、EGFR変異陽性NSCLCの初回治療戦略が phase 4・phase 5 と進化しつつある。
方法
本研究はFLAURA試験 (NCT02296125、国際共同・二重盲検・第3相 RCT、29カ国132施設、2014年12月〜2016年3月登録) の事前計画OS最終解析である。実施期間2014年12月〜2019年6月25日 (データカットオフ)、最大4年9ヶ月のフォローアップ。包含基準・除外基準・ランダム化・盲検化は (Soria et al. NEnglJMed 2018) 主解析と同一:(1) stage IIIB/IV NSCLC、(2) EGFR変異 (ex19delまたはL858R) 陽性、(3) WHO PS 0-1、(4) 未治療。患者を1:1にランダム化 (層別化因子:EGFR変異型 [ex19del vs L858R]、人種 [Asian vs non-Asian]):(a) osimertinib 80 mg/日 + 標準TKIプラセボ vs (b) 標準EGFR-TKI (gefitinib 250 mg/日 or erlotinib 150 mg/日) + osimertinibプラセボ。対照群でPDが確認された後に T790M陽性が中央検査 (cobas) で確認された症例は osimertinibへの crossoverが認められた (open-label extension)。生存追跡は2-3ヶ月毎の電話・受診で確認、データカットオフ時の生存status確実。統計:OS解析は ITT集団で stratified log-rank test、HR・95.05% CI (αadjustment後) はCox proportional hazards model (層別) で推定。OS有意水準は α=0.0495 (interim解析を考慮した spend、O’Brien-Fleming境界)。Subgroup解析は事前規定9軸 (年齢・性別・人種・喫煙歴・EGFR変異型・WHO PS・CNS転移有無・地理的region・治療地域)。Crossover-adjusted OS解析は (1) IPCW (inverse probability of censoring weighting) と (2) RPSFT (rank preserving structural failure time) modelの2法で実施。健康関連QOL は EORTC QLQ-C30 + LC13で long-term維持を評価。安全性は CTCAE v4.03で評価。SAS 9.4 + R 3.6を使用。