- 著者: Sattva S. Neelapu, Frederick L. Locke, Nancy L. Bartlett, Lazaros J. Lekakis, David B. Miklos, Caron A. Jacobson, Ira Braunschweig, Olalekan O. Oluwole, Tanya Siddiqi, Yi Lin, John M. Timmerman, Patrick J. Stiff, Jonathan W. Friedberg, Ian W. Flinn, Andre Goy, Brian T. Hill, Mitchell R. Smith, Abhinav Deol, Umar Farooq, Peter McSweeney, Javier Munoz, Irit Avivi, Januario E. Castro, Jason R. Westin, Julio C. Chavez, Armin Ghobadi, Krishna V. Komanduri, Ronald Levy, Eric D. Jacobsen, Thomas E. Witzig, Patrick Reagan, Adrian Bot, John Rossi, Lynn Navale, Yizhou Jiang, Jeff Aycock, Meg Elias, David Chang, Jeff Wiezorek, William Y. Go
- Corresponding author: Sattva S. Neelapu (University of Texas M.D. Anderson Cancer Center, Houston, TX, USA)
- 雑誌: New England Journal of Medicine
- 発行年: 2017
- Epub日: 2017-12-10
- Article種別: Original Article
- PMID: 29226797
背景
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫 (PMBCL)、形質転換濾胞性リンパ腫 (TFL) を含む大細胞型B細胞リンパ腫は、診断時に化学免疫療法 (R-CHOP等) が施行されるが、chemosensitiveな再発例に対する高用量化学療法+自家幹細胞移植 (ASCT) 後またはsalvage化学免疫療法にrefractoryの症例は極めて予後不良である。SCHOLAR-1国際後方視的研究では、化学療法抵抗性または自家移植後12ヶ月以内再発のaggressive B細胞リンパ腫患者で客観的奏効率 (ORR) 26%、完全奏効率 (CR) 7%、中央値全生存期間 (mOS) 6.3ヶ月と報告され、有効な治療選択肢がほぼ皆無であった。この状況は、治療抵抗性B細胞リンパ腫患者にとって大きなアンメットニーズであり、新たな治療法の開発が強く求められていた。
NCIで開発されたanti-CD19 キメラ抗原受容体 (CAR) T細胞療法 (CD3ζ/CD28シグナル) の単施設研究では、治療抵抗性B細胞リンパ腫で高奏効率と4年超の持続寛解が報告され、潜在的な根治的治療法として期待された。例えば、Kochenderfer et al. JClinOncol 2015 や Kochenderfer et al. Blood 2012 は、CAR T細胞療法の有効性と安全性プロファイルに関する初期の重要な知見を提供した。しかし、これらの研究は単施設での実施であり、多施設共同試験における再現性や安全性プロファイルの確立が未解明であった。さらに、Maude et al. NEnglJMed 2014 や Davila et al. SciTranslMed 2014 といった先行研究が主に急性リンパ性白血病 (ALL) を対象としており、治療抵抗性B細胞リンパ腫における大規模なデータが不足していた。
Axicabtagene ciloleucel (axi-cel, Kite Pharma) はNCI構築のCARを用いた自家anti-CD19 CAR-T製品であり、第1相ZUMA-1試験 (7例) で中央製造の実現可能性・安全性・5/7例の奏効と3例の1年以上持続CRを示していた。しかし、大規模な患者集団における有効性と安全性、特に重篤な有害事象であるサイトカイン放出症候群 (CRS) や神経学的イベントの管理に関する詳細なデータが不足しており、多施設での標準的な治療としての位置づけは確立されていなかった。本論文は、初の多施設第2相試験で治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫に対するaxi-celの有効性と安全性を確立し、この治療ギャップを埋めることを目指す。
目的
治療抵抗性DLBCL、PMBCL (原発性縦隔B細胞リンパ腫)、TFL (形質転換濾胞性リンパ腫) 患者におけるaxi-cel (2×10^6 CAR+細胞/kg単回静注) の有効性 (主要評価項目:ORR) と安全性 (副次評価項目:奏効期間、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、有害事象、CRS、神経学的イベント、CAR-T血中expansion、バイオマーカー) を第2相多施設試験ZUMA-1で検証する。治療抵抗性は「最新化学療法への進行性疾患 (PD)/安定疾患 (SD) が最良反応」または「自家移植後12ヶ月以内再発」と定義された。
結果
患者登録とaxi-cel輸注: 111例が登録され、110例 (99%) でaxi-celの製造が成功し、101例 (91%) に投与された。投与されなかった10例の内訳は、製造失敗1例、有害事象5例、疾患進行による死亡1例、測定不能病変2例、レジメン完了前の敗血症/合併症による死亡1例であった。投与された患者の内訳はDLBCLが77例、PMBCLが8例、TFLが16例であった (Table 1)。患者年齢中央値は58歳 (範囲23-76歳) であり、Stage III-IVが85%、3ライン以上の前治療歴が69%、自家移植後再発が21%、原発性治療抵抗性 (primary refractory disease) が26%、2連続ライン以上の治療抵抗性が53%を占めた。
主要解析における有効性 (6ヶ月最短フォローアップ): プロトコル解析対象の92例において、ORRは82% (95% CI 72-89, p<0.001 vs 歴史的対照20%) であり、CR率は52%であった。modified ITT解析対象の101例では、ORRは82% (95% CI 73-89)、CR率は54%であった (Figure 1A)。奏効までの期間中央値は1.0ヶ月 (範囲0.8-6.0ヶ月) と迅速であった。
アップデート解析における持続性と生存 (中央値追跡15.4ヶ月): 中央値追跡期間15.4ヶ月のアップデート解析では、ORRは82%、CR率は58%であった。初回評価 (輸注後1ヶ月) で部分奏効 (PR) だった35例中11例 (31%) と、安定疾患 (SD) だった25例中12例 (48%) が、追加治療なしで遅発的にCRへ転換し、最遅で15ヶ月後にCRに達した。データカットオフ時、42%の患者が奏効を維持しており、そのうち40%がCRを維持していた。奏効期間中央値は11.1ヶ月 (95% CI 3.9-推定不能) であった (Figure 2A)。無増悪生存期間 (PFS) 中央値は5.8ヶ月 (95% CI 3.3-推定不能) であり (Figure 2B)、PFS率は6ヶ月で49% (95% CI 39-58)、12ヶ月で44% (95% CI 34-53)、15ヶ月で41% (95% CI 31-50) であった。全生存期間 (OS) 中央値は未到達 (95% CI 12.0-推定不能) であり (Figure 2C)、OS率は6ヶ月で78% (95% CI 69-85)、12ヶ月で59% (95% CI 49-68)、18ヶ月で52% (95% CI 41-62) であった。データカットオフ時点で56%の患者が生存していた。
サブグループ解析のconsistency: ORRは、年齢 (<65歳 79%, ≥65歳 92%)、病期、国際予後指標 (IPI) スコア (0-2: 87%, 3-4: 77%)、bulky diseaseの有無 (あり71%, なし85%)、細胞起源 (GCB-like 88%, ABC-like 76%)、CD4:CD8比、トシリズマブ/グルココルチコイドの使用にかかわらず一貫して高かった (Figure 1B)。特に、原発性治療抵抗性患者 (88%) や自家移植後再発患者 (76%) といった予後不良因子を持つ集団でも高奏効率が維持された。これらの結果は、axi-celの効果が幅広い患者層に及ぶことを示唆している。
有害事象プロファイル: 治療中にaxi-celを投与された全101例で有害事象が発生し、95%でグレード3以上の有害事象が認められた (Table 2)。最も一般的なグレード3以上の有害事象は、好中球減少症 (78%)、貧血 (43%)、血小板減少症 (38%) であった。グレード3以上のCRSは13%の患者に発生し、神経学的イベントは28%の患者に発生した。治療関連死は3例であった。CRSの発生中央値は輸注後2日 (範囲1-12日)、神経学的イベントの発生中央値は輸注後5日 (範囲1-17日) であった。これらのイベントは、トシリズマブやグルココルチコイドなどの支持療法により管理可能であった。
バイオマーカー: CAR-T細胞の血中ピークレベルは輸注後14日以内に達し、奏効と有意に相関した (p<0.001)。特に、奏効患者では非奏効患者と比較して、治療後28日以内の曲線下面積 (AUC) が5.4倍高かった (Figure 3B)。CD19抗原の消失は、疾患進行した11例中3例 (27%) で認められ、抗原陰性化による抵抗性メカニズムの可能性が示唆された。また、血清中のインターロイキン-6、-10、-15、-2Rα、グランザイムBなどのバイオマーカーがCRSや神経学的イベントのグレード3以上と有意に関連することが示された (Figure 3C)。
考察/結論
ZUMA-1第2相試験は、治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫という極めて予後不良な集団 (歴史的ORR 26%、CR 7%、mOS 6.3ヶ月) において、axi-cel単回輸注がORR 82%・CR率54%・18ヶ月OS率52%を達成し、中央製造anti-CD19 CAR-T療法が歴史的に再現されてきた転帰を根本的に変革し得ることを決定的に示した画期的な臨床試験である。本結果は米国FDA (2017年10月) および欧州EMA (2018年6月) によるCAR-T製品承認の基盤となり、再発難治DLBCLの治療パラダイムを永久に変えた。
先行研究との違い: 本研究は、これまでの単施設研究や小規模なコホート研究とは異なり、多施設共同試験として大規模な患者集団におけるaxi-celの有効性と安全性を検証した点で新規性がある。特に、Maude et al. NEnglJMed 2014 や Davila et al. SciTranslMed 2014 といった先行研究が主に急性リンパ性白血病 (ALL) を対象としていたのに対し、本研究は治療抵抗性B細胞リンパ腫に焦点を当て、その有効性と安全性を確立した。
新規性: 本研究で初めて、初回評価でPRやSDであった患者の23例が追加治療なしで遅発性CRへ進展する現象が観察され、CAR-T由来のT細胞エフェクター機能が経時的に深化する生物学的特徴を新規に示した。また、奏効が年齢、IPI (国際予後指標)、cell-of-origin、CD19発現強度、bulky diseaseなど従来の予後因子に一貫して頑健であったことも重要な知見である。
臨床応用: 本知見は、治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫患者に対するaxi-celの臨床応用を強力に支持する。主要な毒性 (グレード3以上CRS 13%、神経学的イベント28%、好中球減少78%) は、トシリズマブ、グルココルチコイド、および支持療法で管理可能であることが示され、CAR-T細胞療法を移植施設で安全に実施できる可能性が示された。これは、CAR-T細胞療法がより多くの臨床現場で利用可能となるための重要なステップである。
残された課題: 今後の検討課題として、CAR-T関連神経毒性 (ICANS) の病態解明と予防、ブリッジング療法の許容性検討、CD19陰性化進行への対応 (CD22 CAR、CD20/CD19二重CAR等)、CAR-T前のリンパ球除去療法最適化、BITE (bispecific T-cell engager) 製剤 (blinatumomab) や新規抗体薬物複合体 (ADC) (polatuzumab) との併用・逐次戦略、アウトペイシェント管理の実現、および社会経済的持続可能性などが残されている。また、Zhao et al. CancerCell 2015 が示唆するように、CAR構築の最適化も今後の課題である。
方法
ZUMA-1第2相試験 (NCT02348216) は、米国の21施設とイスラエルの1施設を含む22施設で実施された。2015年11月から2016年9月にかけて、組織診断でDLBCL (コホート1) またはPMBCL/TFL (コホート2) の治療抵抗性例111例が登録された。患者は白血球アフェレーシス後、フルダラビン30 mg/m²/日とシクロホスファミド500 mg/m²/日をday -5、-4、-3に条件付け化学療法として投与され、day 0にaxi-cel 2×10^6 CAR-T細胞/kgを単回静注された。白血球アフェレーシス後のブリッジング化学療法は許容されなかった。
主要解析は、92例がaxi-cel輸注後6ヶ月の評価を完了した時点で行われた。有効性および安全性は、axi-celを輸注された101例のmodified intention-to-treat (ITT) 集団で評価された。統計解析では、歴史的奏効率20%に対して真の奏効率40%を検出するため、片側α=0.025、検出力90%の設計が用いられ、正確二項検定が適用された。CRS (サイトカイン放出症候群) はLeeらの基準により、その他の有害事象はNCI Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v4.03によりグレード評価された。細胞起源の判定はNanoString Lymphoma Subtyping Testにより行われた。CAR-T細胞の血中動態と血清サイトカインの測定、および臨床転帰との関連性もWilcoxon rank-sum testを用いて評価された。