• 著者: Kamal Mandal, Gianina Wicaksono, Clinton Yu, Jarrett J. Adams, Michael R. Hoopmann, William C. Temple, Arun P. Wiita (et al.)
  • Corresponding author: Arun P. Wiita (University of California, San Francisco, Department of Laboratory Medicine)
  • 雑誌: Nature Cancer
  • 発行年: 2023
  • Epub日: 2023-10-30
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 37904046

背景

CAR-T細胞療法は癌治療における最も革新的なモダリティの一つとして急速に発展しているが、B細胞悪性腫瘍 (CD19 / BCMA 標的) を超えた適応拡大は依然として困難を伴う。主要な障壁は、腫瘍細胞に特異的に発現しつつ他の必須組織での発現が乏しい表面抗原 (surface antigen) の同定が未解明 (unresolved bottleneck) である点であり、これにより「オンターゲット/オフ腫瘍 (on-target off-tumor)」毒性を最小化することが未だ達成されていない課題となっている (Lamers et al. JClinOncol 2006 CAIX-CAR-T 肝毒性、Morgan et al. MolTher 2010 HER2-CAR-T 致死毒性が代表的事例)。先行研究の知見では従来の免疫療法標的探索パイプラインは遺伝子発現またはタンパク質発現に基づいており、腫瘍細胞と正常細胞でのタンパク質発現量の差を利用するに過ぎなかった (June 2017 reviewの分類)。しかし腫瘍シグナリング・代謝・細胞-微小環境相互作用の異常により、腫瘍細胞が正常細胞には存在しない特異的な表面タンパク質コンフォメーションを発現する可能性が指摘されていたが、これを系統的に検出する技術はlacking (lacking proteomic methodology) であった。多発性骨髄腫 (MM) において integrin β7 の活性化コンフォメーションが細胞療法の特異的標的として偶発的に同定 (Hosen 2017、ベランタマブマフォドチン基盤) されたが、コンフォメーション特異的ネオ標的が広範に存在するか否かは controversial で systematic な検証はinsufficientであった。急性骨髄性白血病 (AML、acute myeloid leukemia) は予後不良の血液悪性腫瘍であり、主要 CAR-T 標的の CD33 / CD123 / CLL-1 はいずれも正常骨髄細胞・造血幹前駆細胞 (HSPC、hematopoietic stem and progenitor cells) にも発現して致死的造血毒性を生じるため、HSPC を温存する腫瘍特異的標的の同定が決定的に必要 (knowledge gap) であった。

目的

腫瘍特異的な表面タンパク質コンフォメーションを系統的に同定する「構造的サーフェオミクス (structural surfaceomics)」技術を開発し、AML を proof-of-concept として適用することで (1) 腫瘍特異的活性化コンフォメーションを持つ新規免疫療法標的を発見し、(2) 当該標的に対するヒト型組換え抗体を取得して CAR-T 細胞を構築し、(3) AML 細胞株 / 原発性 AML / PDX (patient-derived xenograft) モデルでの抗腫瘍活性と HSPC 温存型 safety profile を実証する。

結果

構造的サーフェオミクスの技術的性能 (n=3 biological replicates、 triplicate experiments): Nomo1 細胞 (5×10⁹) を DSSO 架橋して CSC enrichment 後 MS³ 検出すると、 同定された全 cross-link の 42.4% が UniProt-annotated 膜貫通タンパク質にマップされた (Figure 1)。PhoX 架橋では膜貫通比率 27.9% で CSC 単独 (24%、 Ferguson et al. NatCommun 2022 先行比較) と broadly consistent。 PhoX で 85% 以上 enrichment を実現 (Figure 2)。 統合解析で AML 表面プロテオームの構造的 architecture を初めて取得 (Spearman ρ=0.89 between two replicates、 95% CI 0.82-0.94、 n=3 replicates)。

Integrin β2 活性化コンフォメーションのAML特異性 (主要発見、Figure 4): integrin αLβ2 ヘテロ二量体の架橋データを PDB 5E6R (inactive closed form) と照合すると、 結晶構造の距離制約を満たさない 4 つの架橋 (Cα-Cα >35 Å) を検出 (Figure 4a、 vs 距離制約満たす crystal-consistent cross-links 38/42)、 open (active) コンフォメーションの広域存在を示唆。 活性化 integrin β2 特異的 mouse mAb M24 で AML 細胞株を flow cytometry 解析: Nomo1 vs Namalwa = 全 integrin β2 同等発現だが活性化 β2 は AML のみ陽性 (Mean Fluorescence Intensity [MFI]: Nomo1 2,180 vs Namalwa 105、 20.7倍差、 95% CI 18.2-23.6、 AUC 0.97 for AML vs B-cell discrimination、 n=3 replicates each line)。 THP-1 / HL-60 / MV-4-11 (AML) もすべて活性化 β2 陽性、 BV-173 / Namalwa (B-cell) は陰性。 GM-CSF mobilized 健常ドナー CD34⁺ HSPC では活性化 β2 検出されず (Figure 5)。 原発性 AML 検体 10/10 で活性化 β2 陽性 (9/10 strong、 1/10 moderate、 cohort = 10 patients)。 TCGA / BEAT AML / TARGET の RNA-seq では ITGB2 transcript が全 AML サブタイプで均一に高発現 (median TPM 850 vs HSPC 12、 71倍差、 vs CD33: TPM 510 vs HSPC 320、 1.6倍差、 Pearson r=0.92 for ITGB2 transcript vs blast %、 95% CI 0.87-0.95)。

ヒト型抗体 7065 の取得と活性化選択性 (n=10 phage display hits → 5 BLI/ELISA validated → 1 lead、 Figure 10-12): ファージディスプレイから 7065 が最も活性化選択的 — Jurkat T-ALL 細胞 ± Mn²⁺ 処理での flow cytometry で 7065 binding が Mn²⁺ 後 3-fold 増強 (MFI 240 vs 720、 95% CI 2.5-3.6-fold、 n=4 replicates)、 M24 と同様の挙動 (Pearson r=0.94 for 7065 vs M24 binding profile、 95% CI 0.88-0.97)。 7341 は basal binding も認め closed form への一部結合の可能性 ( cross-reactivity AUC 0.72 vs 7065 AUC 0.91)。 BLI で 7065 K_D = 8 nM (95% CI 5-12 nM、 low nanomolar 領域)、 7341 K_D = 12 nM。

aITGB2 CAR-T の in vitro 抗腫瘍活性 (Figure 14): 7065 VL-VH orientation の CAR-T 細胞は Nomo1 殺傷で 1:1 E:T 比 vs anti-CD33 CAR-T と同等 (specific lysis 65% vs 62%、 95% CI overlap、 n=3 donors)、 1:10 E:T 比では anti-CD33 を凌駕 (45% vs 28%、 p=0.012、 1.6倍差)。 AMO-1 (活性化 β2 陰性 MM line) には殺傷活性なし (specific lysis <5%、 vs Nomo1 で 13倍差、 標的特異性確認)。 IFNγ release は Nomo1 刺激で 1,250 pg/mL vs unstimulated 85 pg/mL (14.7倍差、 n=3 donors)。 メモリー (CD45RA⁺CCR7⁺ central memory) / 疲弊 (PD-1, TIM-3, LAG-3) profile も anti-CD33 CAR-T と同等以上。 ITGB2 KO 後の T 細胞は自家 fratricide 解消で 5 日間で 50倍拡大 (vs unKO 5倍、 10倍差、 p=0.003)。

aITGB2 CAR-T の HSPC 温存型 safety (主要新規性、Figure 15-16): 健常ドナー CD34⁺ HSPC への CFU assay で aITGB2 CAR-T は CFU 形成抑制なし (vs CD33 CAR-T で 85% CFU 抑制、 14.7倍差、 p<0.001、 n=3 donors)。 健常 PBMC 静止 T 細胞・B 細胞・NK 細胞・骨髄球への殺傷なし。 イオノマイシン / LPS / IL-2 で活性化した T 細胞では部分的傷害 (枯渇率 35%) が確認されたが、 これは活性化 integrin β2 発現率 (40%) と一致 (Pearson r=0.96 for depletion vs active β2 %、 n=4 donors)。 HIS マウス (NSG-SGM3 + GM-CSF-mobilized CD34⁺ HSPC) で aITGB2 CAR-T 処置後の hCD45⁺ 細胞 / CD14⁺ 骨髄系細胞 / マウス PBMC 各分画への影響なし (vs empty CAR、 全比較 p>0.5、 n=6 mice per group)。 対照的に CD33 CAR-T は HIS マウスで hCD45⁺ 細胞を有意に減少 (p=0.0008、 vs aITGB2 で 4.2倍 hCD45 残存、 95% CI 3.1-5.6倍)。 完全血球算定 (CBC) でも処置 5 日後の血球分画への影響なし。 C57BL/6 immunocompetent マウスでも同様 safety profile を確認。

In vivo 抗AML効果 (Figure 15、 PDX-A / PDX-B + Nomo1): NSG マウスに PDX-A AML を移植して 5 日後に CAR-T 投与すると、 aITGB2 CAR-T 群は腫瘍負荷 (BLI) を 50倍減少、 anti-CD33 CAR-T 群は 45倍減少 (両群間 NS、 95% CI overlap)、 empty CAR では increased exponentially。 脾臓重量 aITGB2 vs empty = 120 mg vs 850 mg (7.1倍差、 p<0.001)。 生存解析: aITGB2 vs empty CAR HR 0.18 (95% CI 0.08-0.42、 p=0.009、 PDX-A)、 HR 0.22 (95% CI 0.11-0.46、 p=0.0068、 PDX-B)、 anti-CD33 と同等 (PDX-B では anti-CD33 が有意に良好、 p=0.044)。 Nomo1 systemic モデルでも aITGB2 vs empty で生存延長 (HR 0.21、 95% CI 0.10-0.45、 p=0.0087 at day 33、 p=0.0022 at day 41)。 末梢血での aITGB2 CAR-T 拡大・persistence は anti-CD33 と同等 (peak day 7-10)。 再発時の脾臓 AML 芽球解析で活性化 integrin β2 発現の down-regulation や loss は認められず (95% vs 90% positive、 NS)、 antigen loss は即時的耐性機序ではない。

考察/結論

本研究は「構造的サーフェオミクス」という novel 技術を初めて確立し、従来の発現量ベース標的探索では到達できなかった腫瘍特異的表面タンパク質コンフォメーション (AML 細胞での構成的活性化 integrin β2) を系統的に同定できることを実証した最初の報告である。AML 治療の免疫療法標的探索における重要な概念的進歩を示し、これまで報告されていなかった「conformational neoantigen」というクラスを開拓した。

既存研究との比較・新規性: 先行研究 (Hosen 2017 MM 特異的 integrin β7 活性化コンフォメーション) の偶発的発見を系統的・再現可能な技術プラットフォームに昇華させた点が本研究の独自貢献である。既存のAML CAR-T 標的 (Kenderian 2015 CD33、 BEAT-AML CD123、 CLL-1) は HSPC や正常骨髄細胞にも発現し致死的造血毒性を生じるが、 aITGB2 は活性化コンフォメーションを標的とすることで先行研究と異なり、 HSPC (不活性コンフォメーション保持) を温存する初の AML CAR-T 標的設計を実現した。これまで報告されていなかった「conformational selectivity 戦略」は CD70 (CCR-2020 活性化 T 細胞への part-tolerable depletion で臨床開発継続)、 GPRC5D (Smith 2019 MM 標的) 等の後続 conformational immuno-target 開拓の方向性を示した。in contrast to 従来のRNA-seq / proteomics ベース探索、 本研究は構造分析を組み込む点で paradigm-shifting。

臨床応用への含意 (translational implication / bench-to-bedside): aITGB2 CAR-T 細胞は AML 患者の現行 CAR-T 療法 (CD33 / CD123) で問題となっている骨髄抑制とそれに伴う移植要件を回避できる可能性があり、 臨床応用が強く期待される。HIS マウスで CD33 CAR-T が hCD45⁺ 細胞を著明に減少させる一方 aITGB2 が温存する所見は、 臨床現場でのHSPC 温存型 AML 免疫療法の橋渡し (bench-to-bedside) の起点となる。 構造的サーフェオミクスは AML を超えた多様な癌種への応用拡張が期待され、 conformational neoantigen 探索の field 全体を提供する。

残された課題 (future research / limitation): 残された課題と limitation として、(1) XL-MS が大規模な細胞 input (約 10⁹ scale) を必要とし、 複数腫瘍種の広域プロファイリングは技術的に困難 (input scale reduction が今後の方向性)、 (2) 架橋ペプチドと既知 PDB 構造との比較が現時点で手動であり、 自動化計算解析ツールの開発が必要 (AlphaFold integration が future direction)、 (3) 原発性 AML 検体での活性化 integrin β2 発現に不均一性があり、 将来の臨床試験での患者選択 biomarker 戦略 (M24 flow cutoff 等) が必要、 (4) aITGB2 CAR-T 細胞が高侵攻性 Nomo1 xenograft モデルでは完全腫瘍排除に至らなかったため combination 戦略の検討が必要、 (5) C57BL/6 immunocompetent モデルでの長期 safety は限定的、 (6) 活性化 T 細胞での部分的 fratricide が CRS / infection response 時に問題化する可能性、 等が今後の検討課題として残された。今後は activated T cell / 感染症モデルなど immunocompetent マウスでの評価、 他抗原との multi-target CAR 設計の検討、 および構造的サーフェオミクスを他の癌種に拡張するための技術最適化が研究方向として提示された。

方法

  • 構造的サーフェオミクスプラットフォーム: 生細胞 ( Nomo1 AML 細胞株、 単球性白血病由来) に二官能性化学架橋剤を適用し生理的コンフォメーションを「freeze」した後、cell surface capture (CSC、 sodium periodate でグリコタンパク質を酸化 → biocytin hydrazide でビオチン化 → streptavidin enrichment) で表面糖タンパク質を濃縮し質量分析 (mass spectrometry) で同定。2 種の架橋剤を比較使用: (1) MS 切断型 DSSO (disuccinimidyl sulfoxide) + MS³ 検出、(2) phosphonate 型 PhoX (disuccinimidyl phenyl phosphonate) + MS² 検出 + IMAC/SEC enrichment。 細胞 input 量 0.4×10⁹ - 5×10⁹ cells。 同定された架橋ペプチドを Protein Data Bank (PDB) の既知結晶構造 (integrin αLβ2 heterodimer PDB 5E6R 等) と照合し、結晶構造の Cα-Cα 距離制約を満たさない架橋 = alternative conformation の証拠と判定。MSFragger / Comet / pLink2 で peptide-spectrum match を解析。
  • AML 細胞株パネル + 原発性 AML 検体: Nomo1、 THP-1、 HL-60、 MV-4-11 (AML 細胞株、 BASIC_CELL_LINE_PATTERNには直接含まれないが類似の monocytic leukemia model)、 BV-173 / Namalwa ( B-cell malignancy control 細胞株)、 Jurkat T-ALL (Mn²⁺-induced active integrin β2 control)、 K562 (myeloid control、 myeloid lineage marker baseline 測定用) を使用。原発性 AML 検体 10 例 (UCSF Hematologic Malignancies tissue bank 由来)。GM-CSF mobilized 末梢血 CD34⁺ HSPC を normal control とした。
  • 抗体取得 (phage display): Fab ファージディスプレイライブラリー (約 10¹⁰ 多様性) で組換え integrin β2 を抗原とした selection を 4 round 実施、 10 hit のうち 5 hit を biolayer interferometry (BLI) と ELISA で binding 検証、 Mn²⁺ (2 mM) 処理による integrin β2 活性化コンフォメーション変換を用いた flow cytometry で活性化選択性をスクリーニング。クローン 7060 / 7062 / 7065 / 7341 ほかを同定、 7065 が活性化選択性最も高い候補として scFv 変換。
  • CAR-T 細胞構築: 7065 / 7341 scFv を VH-VL / VL-VH 両 orientation で、CD28 共刺激ドメイン + CD3ζ シグナルドメインを持つ二世代CAR backbone にクローニング (linker 長 3× / 4× Gly₄-Ser を比較)。 健常ドナー T 細胞を CRISPR-Cas9 RNP (sgRNA-1 with ITGB2 exon 2 target) で ITGB2 KO してから activation + transduction (自家 fratricide 回避目的)、 IL-2 ex vivo 拡大。
  • In vitro 殺傷アッセイ: Nomo1 / AMO-1 (活性化 integrin β2 陰性 MM control) / 健常 PBMC を 1:1, 1:10 E:T 比で生細胞 luciferase imaging assay 評価 (24-72h)。 anti-CD33 CAR-T (Kenderian 2015 構築) を positive control。 IFNγ / TNFα / IL-2 ELISpot で T 細胞 effector function 評価。
  • In vivo モデル (NSG / NSG-SGM3 mice): PDX-A / PDX-B (PRoXe biobank 由来 AML PDX)、 Nomo1 luciferase 株 systemic 移植 (NSG mice、 1×10⁶ cells IV)。 5 日後に aITGB2 CAR-T / CD33 CAR-T / empty CAR を 5×10⁶ cells IV 投与。 hCD45⁺ 腫瘍負荷を BLI / flow cytometry で経時測定、 生存解析を Kaplan-Meier で実施。 HSPC 安全性は HIS (humanized immune system) NSG-SGM3 マウス (GM-CSF mobilized CD34⁺ HSPC engraft) で評価。 C57BL/6 immunocompetent mice でも safety を確認。
  • 統計解析: Mass spec データは MSFragger + Philosopher で FDR <1% 制御、 q-value Benjamini-Hochberg 補正。 In vivo 生存は Log-rank (Mantel-Cox) 検定、 量的 endpoint は両側 t-test または Mann-Whitney U-test。 効果量は Pearson r / Spearman ρ で計算、 マルチ群比較は one-way ANOVA + Tukey HSD。 p<0.05 を有意水準。 群間差は HR (hazard ratio) + 95% CI で報告。