• 著者: Eckardt JR, von Pawel J, Pujol JL, Papai Z, Quoix E, Ardizzoni A, Poulin R, Preston AJ, Dane G, Ross G
  • Corresponding author: John R. Eckardt (Center for Cancer Care and Research, St Louis, MO)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2007
  • Epub日: 2007-05-01
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 17513814

背景

小細胞肺癌 (SCLC) は肺癌全体の約13%を占める侵攻性の高い腫瘍であり、再発後の予後は極めて不良で、未治療では生存期間中央値2〜3ヶ月とされる (Govindan et al. JClinOncol 2006)。一次化学療法後に感受性再発 (治療無効期間≥90日) した患者に対する二次治療として、静注 (IV) topotecan は複数の第II相試験で14〜38%の奏効率と中央値生存期間26〜28週が報告されており、3試験の pooled analysis では奏効率18%・生存期間中央値30週と集計されていた。また、IV topotecan 単独 vs CAV (cyclophosphamide + doxorubicin + vincristine) の第III相試験では両群で同等の有効性と良好な忍容性が確認され、IV topotecan が再発感受性SCLC二次治療の標準薬として位置づけられた (vonPawel et al. JClinOncol 1999)。

一方、静注製剤は頻繁な通院と静脈ライン確保を必要とし、緩和的治療を受けるSCLC患者のQOL (quality of life) に影響する。患者が経口治療を選好するデータも報告されており、同等の有効性を持つ経口製剤の開発が臨床的急務であった。先行する第II相比較試験 (von Pawel et al. 2001) では経口topotecan (奏効率23%) とIV topotecan (15%) の有効性がほぼ同等であることが示唆されたが、症例数が限られており第III相レベルでの大規模検証は行われていなかった。経口topotecanの報告バイオアベイラビリティは30〜40%であり、適切な用量設定 (2.3 mg/m²/日) は第I相試験から確立されていたものの、静注製剤との直接比較第III相データが不足しており、経口topotecanを二次治療標準として採用するための根拠が手薄な状況であった。以上の背景から、感受性再発SCLCに対して経口と静注topotecanを比較する第III相試験の実施というgap in knowledgeが存在した。

目的

一次化学療法に感受性を示し再発したSCLCを対象として、経口topotecan (2.3 mg/m²/日 day 1-5 q21d) と静注 (IV) topotecan (1.5 mg/m²/日 day 1-5 q21d) の有効性・安全性をランダム化オープンラベル第III相試験で直接比較し、主要評価項目である奏効率での同等性を検証すること。副次評価項目として奏効持続期間、病勢進行までの期間 (TTP)、全生存期間 (OS)、QOL、毒性を評価した。

結果

奏効率:経口・静注で同等の腫瘍縮小を確認 intent-to-treat (ITT) 解析において、奏効率は経口topotecan群18.3% (95% CI 12.2-24.4%、n=153) vs 静注topotecan群21.9% (95% CI 15.3-28.5%、n=151)。奏効率差 (oral - IV) は-3.6% (95% CI -12.6%〜5.5%) であった (Table 2)。完全奏効は経口群2例 (1.3%)、静注群0例。部分奏効は経口群26例 (17.0%)、静注群33例 (21.9%)。安定病態は経口群17.6%・静注群23.2%、病勢進行は経口群51.0%・静注群43.0%であった。奏効までの期間中央値は両群とも6.1週で一致した。奏効持続期間中央値は経口群18.3週 (range 9.0-65.4週) vs 静注群25.4週 (range 8.4-132.1週) と、静注群でやや長い傾向がみられた (Table 3)。なお、事前規定の非劣性限界 (oral - IV ≥ -10%) は、95% CI下限が-12.6%となり達成されなかった。ベースラインで脳・軟膜転移を有する43例 (経口群18例・静注群25例) のうち、奏効が確認されたのは静注群1例 (部分奏効) のみであった。

無増悪生存・全生存:両群で同等の生存を達成 TTP中央値は経口群11.9週 (95% CI 9.7-14.1) vs 静注群14.6週 (95% CI 13.3-18.9) で、Kaplan-Meier曲線は両群でほぼ重なるパターンを示した (Fig 2)。OS中央値は経口群33.0週 (95% CI 29.1-42.4) vs 静注群35.0週 (95% CI 31.0-37.4)。Cox比例ハザード回帰では両群間に生存差は認められず、HR=0.98 (95% CI 0.77-1.25) であり、生存曲線はKaplan-Meierプロットでほぼ完全に重なった (Table 3、Fig 3)。1年生存率は経口群32.6%・静注群29.2%、2年生存率は経口群12.4%・静注群7.1%で、長期にわたり両群は同等であった。試験後の三次化学療法受療割合も経口群33%・静注群35%と同等で、後治療による交絡はなかった。

血液毒性:経口群と静注群でプロファイルに差異 主要血液毒性である好中球減少症はグレード3が経口群26.2%・静注群23.6%、グレード4が経口群47.0%・静注群64.2%と、グレード4好中球減少症は静注群で明らかに高頻度であった (Table 4)。白血球減少症のグレード3/4も静注群でやや多く (グレード3: 49.3% vs 42.7%、グレード4: 26.0% vs 22.7%) あった。一方、血小板減少症のグレード4は経口群28.7%・静注群18.0%と経口群で多かったが、血小板輸血の施行割合は両群ほぼ同等 (経口群15%・静注群13%) であった。グレード3/4貧血は経口群22.6%・静注群30.7%と静注群に多く認められたが、赤血球輸血は経口群37%・静注群43%とこちらも大差なかった。治療関連死亡は経口群6例・静注群4例 (血液毒性・敗血症性ショックまたはtopotecanとの因果関係を除外できない死亡) で、両群ともSCLC二次治療試験での報告範囲 (0〜12%) 内であった。グレード4好中球減少症に伴う発熱/感染と敗血症の合計は両群とも全コースの5%に留まった。G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) 使用は経口群25%・静注群16%と経口群でやや多かったが、コース単位での使用割合は両群ほぼ同等 (9% vs 7%) であった。抗菌薬使用は静注群でやや高く、全身投与で56% vs 41%、静注投与で23% vs 14%であった。

非血液毒性および服薬コンプライアンス: 頻度の高い非血液毒性として、悪心は経口群42.5%・静注群42.4%、疲労は経口群30.7%・静注群36.4%、脱毛は経口群25.5%・静注群29.8%と両群でほぼ同等であった (Table 4)。下痢は経口群35.9% (グレード3/4: 7.9%) vs 静注群19.9% (グレード3/4: 2.7%) と経口群で明らかに多く、経口製剤特有の副作用として認識されたが、大部分はグレード1〜2で経口ロペラミドにより管理可能であった。全患者を通じて服薬不遵守による試験離脱例はなく、経口群のコンプライアンスは良好であった。各群の投与コース数中央値は4コースで、40%以上の患者が4コース超の治療継続を達成した。累積毒性の徴候は認められなかった。

QOL:両製剤で有意差なし 全登録患者がベースラインにFACT-L・LCSを記録し、88% (経口) 〜90% (静注) が少なくとも1コース以降のQOL評価を実施した。2コース後の問診票回収率は75% (経口)・78% (静注)。反復測定解析による最小二乗推定では、FACT-L合計スコア・TOI・各下位尺度のベースラインからの変化率について両群間に統計的有意差は認められなかった。両製剤とも最良支持療法単独と比較して症状進行を遅らせる可能性が示唆された (OBrien et al. JClinOncol 2006)。

考察/結論

本試験は先行する第II相比較試験 (von Pawel et al. 2001) の結果を大規模ランダム化試験で確認し、感受性再発SCLCにおける経口と静注topotecanの同等性を第III相レベルで実証した。奏効率18%・22%はこれまでの研究であるIV topotecan pooled analysis (18%)と一致しており、既報との整合性が高い。OS中央値8ヶ月超は文献値と同等であり、両製剤が再発SCLCに対して臨床的に有意義な効果を持つことが確認された (vonPawel et al. JClinOncol 1999)。

これまでの研究と異なり、本試験は経口topotecanの有効性を第III相レベルで初めて直接比較した点が新規な貢献である。本研究で初めて、経口topotecanが第III相試験において静注topotecanと同等の生存を達成することが大規模コホートで確認された。HR=0.98という結果はほぼ完全な生存同等性を示すが、事前規定した非劣性限界 (-10%) の達成には至らなかった (95% CI下限 -12.6%) という重要な限界がある点は認識が必要である。これは形式的な非劣性証明には不十分であるが、対照的に、臨床的観点からは両製剤の差は実質的に意味をなさない水準と解釈できる。血液毒性プロファイルは両群でこれまでの研究と同様の傾向を示し、グレード4好中球減少症は静注群に多く (64% vs 47%)、血小板減少症は経口群に多い (29% vs 18%) が、用量調整で許容範囲内に管理された点は既報のtopotecanプロファイルと一致する。

臨床的意義として、経口製剤の採用により患者は通院回数の削減・静脈ライン確保の回避・自宅での服薬継続が可能となる。これは緩和的治療を受けるSCLC患者の生活の質に直結する利点であり、臨床応用の観点から経口topotecanは感受性再発SCLC二次治療において静注topotecanの標準的代替選択肢として正当化される。臨床現場では通院が困難な患者に対しても治療継続を可能にするという意義も大きい。QOLが両群で同等であった結果は、経口投与への切り替えが症状コントロールを損なわないことを支持する。

残された課題として、本試験の対象は感受性再発SCLCに限定されており、難治性SCLCへの知見は得られていない。また、1999年開始の本試験以降にアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドなどの新規免疫療法が登場しており、現代の治療体系における経口topotecanの適切な位置づけの再評価が今後の課題である。脳・軟膜転移を有する患者への有効性についても本試験では不十分なデータしか得られておらず、BBB (blood-brain barrier) 浸透性を活かした脳転移治療としての可能性に関する更なる検討が求められる。limitationとして、本試験はオープンラベルデザインであること、非劣性の形式的証明に至らなかったこと、GlaxoSmithKline社員4名が著者に含まれる利益相反が存在することが挙げられる。これらを踏まえつつも、本試験が提示した活性・安全性・QOLデータの整合性は、経口topotecanが緩和的二次治療の有用な選択肢であることを支持している。

方法

本試験は無作為化オープンラベル第III相試験として、北米・欧州・東南アジア・豪州の83施設で実施された (1999年1月〜2001年10月)。適格基準は、限局型または進展型SCLCで一次化学療法後に完全または部分奏効を示し、治療無効期間≥90日の感受性再発例、Eastern Cooperative Oncology Group performance status (ECOG PS) ≤2、WHO基準による測定可能病変を有する患者。WBC≥3,500/μL、好中球≥1,500/μL、血小板≥100,000/μL、Hb≥9.0 g/dLを満たすことを要件とした。309例が1:1比で経口topotecan群 (n=153) または静注topotecan群 (n=151) に割り付けられ、一次治療への奏効期間 (≤6ヶ月または>6ヶ月)、性別、肝転移の有無で層別化した。

投与レジメンは、経口topotecan 2.3 mg/m²/日×5日 (カプセル剤。1コース目はday 1〜5を院内監督下投与、2コース目以降はday 1のみ院内投与、残り4日分は自宅服薬)、静注topotecan 1.5 mg/m²/日×5日 (30分点滴) を3週毎に繰り返した。奏効者は病勢進行まで、または最良奏効からさらに2コース投与し、安定病態患者には少なくとも4コース以上を推奨した。グレード2超の毒性がない場合はコース終了後に用量増量を許可した (経口: 最大3.1 mg/m²/日、静注: 最大2.0 mg/m²/日)。

評価として、腫瘍縮小はWHO基準で判定し、すべての奏効は治療に関与しない中央放射線科医による盲検下での確認を要した。毒性評価はNCI-CTC (National Cancer Institute Common Toxicity Criteria) に基づき、血液検査はday 8・15と各コース開始前に実施した。QOLはFACT-L (Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung) 44項目を用い、LCS (Lung Cancer Subscale) およびTOI (Trial Outcome Index) を算出して各コース前に評価した。

統計解析として、主要評価項目の奏効率はdifference (oral - IV) と95% CIを算出した。サンプルサイズは150例/群とし、IV topotecanを10%超上回ることを95% CIが除外する71%の検出力を想定した。時間-イベントデータはKaplan-Meier法で解析し、OSはCox比例ハザードモデル (共変量: 一次奏効期間・性別・肝転移) で評価した。QOLは反復測定解析 (repeated measures analysis) で両群の変化率を比較した。本試験の開始は1999年でClinicalTrials.gov登録義務化以前のためNCT番号は付与されておらず、各施設の倫理審査委員会の承認取得と全患者の書面同意取得が確認されている。