• 著者: Asao T, Nokihara H, Yoh K, Niho S, Goto K, Ohmatsu H, Kubota K, Yamamoto N, Sekine I, Kunitoh H, Fujiwara Y, Ohe Y
  • Corresponding author: Yutaka Fujiwara, Department of Thoracic Oncology, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan
  • 雑誌: Japanese Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2015
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 26232449

背景

小細胞肺癌 (SCLC: small-cell lung cancer) は全肺癌の約15%を占め、急速な増殖を特徴とする極めて悪性度の高い疾患であると報告されている Govindan et al. JClinOncol 2006。SCLCは化学療法および放射線療法に高い感受性を示すものの、ほとんどの患者は初回化学療法後に再発または進行を経験し、最終的には再発疾患により死亡に至る。このため、初回化学療法だけでなく、効果的なサルベージ化学療法の開発が不可欠である。

サルベージ化学療法は、多くの患者において症状緩和に重要な役割を果たす。初回化学療法完了後8週間以内に疾患が進行した場合は難治性再発SCLC、8週間を超えて再発した場合は感性再発SCLCと定義される。トポテカンは、再発または難治性SCLCに対するサルベージ化学療法薬として広く評価されており、再発SCLC患者を対象とした最良支持療法との比較第III相試験では、生存期間の延長が示された OBrien et al. JClinOncol 2006。しかし、特に難治性SCLC患者における予後は依然として不十分であり、トポテカン治療が標準とされているものの、その有効性には限界がある。

アムルビシンは、合成9-アミノアントラサイクリン系薬剤であり、強力なトポイソメラーゼII阻害剤である。その活性代謝物であるアムルビシノールは、親化合物よりも10〜100倍高い抗腫瘍効果を示すことが報告されている。非小細胞肺癌患者を対象とした第I/II相試験では、アムルビシン45 mg/m2が第II相試験の推奨用量として設定された Sugiura et al. InvestNewDrugs 2005。しかし、既治療SCLC患者を対象としたその後の研究では、重篤な血液毒性の可能性を考慮し、40 mg/m2の用量で実施されることが多かった。アムルビシン40 mg/m2を用いた第II相試験では、難治性および感性再発SCLC患者においてそれぞれ50%および52%の奏効率 (RR: response rate) が報告され、有望な結果が示された Onoda et al. JClinOncol 2006。しかし、アムルビシン45 mg/m2の用量における有効性と安全性に関する包括的なデータは不足しており、その臨床的有用性は未解明である。

目的

本研究の目的は、既治療の再発または難治性小細胞肺癌 (SCLC) 患者を対象に、アムルビシン45 mg/m2の有効性および安全性を評価することである。主要評価項目は奏効率 (RR) とし、副次評価項目として毒性および全生存期間 (OS) を評価した。

結果

患者特性と治療背景: 2003年6月から2005年1月にかけて、合計35例の患者が本研究に登録された。そのうち1例は登録後に治療を要する不整脈を発症し不適格と判断されたため、残りの34例が本研究治療を受け、有効性および安全性評価の対象となった。患者の内訳は男性25例 (74%)、女性9例 (26%) であり、年齢中央値は64歳 (範囲: 30-74歳) であった。感性再発患者が24例 (71%)、難治性疾患患者が10例 (29%) を占めた。先行化学療法レジメン数は、1レジメンが21例 (62%)、2レジメンが13例 (38%) であった。全34例が初回治療としてプラチナ製剤ベースの化学療法を受けており、24例がエトポシド含有レジメン、24例がイリノテカン含有レジメンを受けていた (Table 1)。これらの患者特性は、既治療SCLC患者の一般的な集団を反映していると考えられる。ECOG PS 0の患者は11例 (32%)、PS 1は19例 (56%)、PS 2は4例 (12%) であった。

治療実施状況と用量強度: 治療実施状況を見ると、全患者34例中21例 (62%) が4サイクル以上の治療を受けることができた (Table 2)。2サイクル以上治療を受けた29例のうち、15例 (52%) でアムルビシンの減量が必要となった。アムルビシンの平均用量強度 (dose intensity) は12.9 mg/m2/週 (95% CI, 12.3-13.4%) であり、平均相対用量強度 (relative dose intensity) は86.0% (95% CI, 82.0-90.0%) であった。治療期間中にG-CSFの使用を必要とした患者は24例 (71%) に上り、血液学的毒性管理の必要性が高かったことを示唆している。赤血球輸血は8例 (24%)、血小板輸血は8例 (24%)、エリスロポエチン注射は1例 (3%) で行われた。

抗腫瘍効果と奏効率: 治療を受けた34例中、完全奏効 (CR) が3例、部分奏効 (PR) が15例観察され、客観的奏効率 (RR) は53% (95% CI, 35-71%) であった (Table 3)。この高い奏効率は、アムルビシン45 mg/m2が既治療SCLC患者に対して顕著な抗腫瘍活性を有することを示す。感性再発患者24例におけるRRは50% (95% CI, 30-70%) であり、難治性疾患患者10例におけるRRは60% (95% CI, 23-97%) であった。特に、イリノテカン難治性の8例中、CR 1例、PR 4例が認められた。先行化学療法レジメン数別のRRは、1レジメンの場合48% (95% CI, 27-68%)、2レジメンの場合62% (95% CI, 28-95%) であった。

生存期間の評価: 全患者の全生存期間中央値 (MST) は8.2か月 (95% CI, 6.6-10.0か月) であり、1年生存率は24% (95% CI, 9-39%) であった (Fig. 1)。感性再発患者24例のMSTは9.7か月 (95% CI, 7.6-11.4か月) であったのに対し、難治性疾患患者10例のMSTは6.1か月 (95% CI, 1.6-7.0か月) であった。全患者の無増悪生存期間中央値 (PFS) は4.4か月 (95% CI, 2.4-5.1か月) であった (Fig. 2)。奏効例18例のPFS中央値は5.0か月 (95% CI, 4.4-5.9か月) であった。感性再発患者のPFS中央値は4.5か月 (95% CI, 2.4-5.6か月)、難治性疾患患者のPFS中央値は3.5か月 (95% CI, 0.8-4.7か月) であった。本研究では、生存期間に関するHRは算出されていない。

安全性プロファイルと治療関連死: Grade 3または4の重篤な有害事象は、Table 4に示される通り、白血球減少症が76%、好中球減少症が97%、血小板減少症が38%の患者で観察された。特に、発熱性好中球減少症は12例 (35%) で発生した。1例の治療関連死が報告され、この患者は2サイクル目の9日目にG-CSFの予防的投与にもかかわらず発熱性好中球減少症を発症し、その後重症肺炎を合併し、適切な抗菌薬治療にもかかわらず22日目に呼吸不全により死亡した。非血液学的毒性は全患者で軽度かつ一過性であった。狭心症が1例、不整脈が3例で観察されたが、心筋毒性は認められなかった。Grade 3/4の非血液学的有害事象としては、疲労/倦怠感 (6%)、食欲不振 (9%)、下痢 (3%)、狭心症 (3%)、肺炎 (9%)、低ナトリウム血症 (9%)、低カリウム血症 (3%) が報告された。

考察/結論

先行研究との違い: 本第II相試験は、既治療の再発または難治性SCLC患者において、アムルビシン45 mg/m2の高い奏効率 (53%) を示した。これは、アムルビシン40 mg/m2を用いたこれまでの研究(例: Onoda et al. JClinOncol 2006で報告されたRR 50-52%)と比較して同等かやや高い有効性を示すものである。しかし、本研究における発熱性好中球減少症の発生率 (35%) は、アムルビシン40 mg/m2を用いた先行研究で報告された発生率 (5%) と対照的に著しく高かった。この毒性の頻度の違いは、用量増加に伴う安全性プロファイルの悪化を明確に示唆している。

新規性: 既治療SCLC患者においてアムルビシン45 mg/m2の有効性と安全性を評価した本研究は、この用量での包括的な臨床データを提供するものであり、これまで報告されていない高用量アムルビシンの毒性プロファイルを明確にした点で新規性がある。特に、感性再発および難治性再発の両群で高い奏効率が確認されたことは、アムルビシンが幅広い再発SCLC患者に有効である可能性を示唆する。

臨床応用: アムルビシン45 mg/m2は高い奏効率を示し、感性再発および難治性再発SCLCの両方で有望な結果をもたらしたが、高頻度のGrade 3/4血液毒性、特に発熱性好中球減少症 (35%) および1例の治療関連死は、その臨床応用における安全性上の重大な懸念を提起する。現在の標準治療であるトポテカンと比較して、アムルビシン40 mg/m2が生存期間の優位性を示せなかった第III相試験の結果(vonPawel et al. JClinOncol 2014)を考慮すると、本用量での高い有効性にもかかわらず、その臨床的有用性は限定的であると考えられる。

残された課題: 今後の検討課題として、SCLCの難治性再発患者に対する標準治療が依然として確立されていないことから、アムルビシンの最適な用量設定や、他の薬剤との併用療法、あるいはバイオマーカーによる患者層別化に関するさらなる研究が残されている。本研究のlimitationとして、単施設での実施であること、サンプルサイズが比較的小さいことが挙げられる。これらの課題を克服し、より安全かつ効果的な治療戦略を確立するためには、多施設共同研究やより大規模な臨床試験が必要である。

方法

本第II相試験は、組織学的または細胞学的にSCLCと診断された患者を対象とした。本試験は単施設共同研究として実施され、NCT番号は付与されていない。適格基準は、1または2レジメンの化学療法歴を有する再発または難治性SCLC、年齢20〜74歳、ECOG PS (Eastern Cooperative Oncology Group performance status) 0〜2、測定可能病変、および十分な臓器機能(白血球数 >4000/µl、ヘモグロビン >9.0 g/dl、血小板数 >100,000/µl、血清クレアチニン <1.5 mg/dl、トランスアミナーゼ <2×施設基準上限値、総ビリルビン <1.5 mg/dl)であった。無症状の脳転移患者も適格とされた。主要な除外基準には、重篤な既存疾患(重度心疾患、間質性肺疾患、未制御の糖尿病、未制御の高血圧、活動性感染症など)、活動性胃潰瘍、ドレナージを要する心嚢液または胸水、妊娠または授乳が含まれた。

治療レジメンとして、アムルビシン45 mg/m2をDay 1〜3にわたり毎日静脈内投与し、3週間ごとに繰り返して4〜6サイクル実施した。5-HT3受容体拮抗薬 (5-hydroxytryptamine 3 receptor antagonist) およびデキサメタゾンによる制吐剤の予防的投与は許可された。G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) の一次予防的投与は禁止されたが、Grade 4好中球減少症またはGrade 3発熱性好中球減少症を発症した患者にはG-CSFの使用が許可された。次サイクルは、Day 1に白血球数 <3000/µl、好中球数 <1500/µl、血小板数 <100,000/µl、感染を伴う発熱、Grade 3または4の非血液学的有害事象、PS 3または4のいずれかの毒性が認められた場合に延期された。アムルビシンの用量は、白血球数 <1000/µlまたは好中球数 <500/µlが5日以上持続した場合、血小板数 <20,000/µl、または発熱性好中球減少症が認められた場合に、次サイクルで5 mg/m2/日減量された。

研究評価には、病歴聴取、身体診察、血算、血液生化学検査、尿検査、胸部X線、胸部CTスキャン、脳CTまたはMRI、腹部超音波検査および/またはCTスキャン、心電図が含まれた。腫瘍の客観的奏効は、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) version 1.0に従って評価された。毒性はNCI-CTC (National Cancer Institute Common Toxicity Criteria) version 2.0に従ってグレード分類された。

統計解析の主要評価項目は奏効率 (RR) であり、完全奏効 (CR: complete response) または部分奏効 (PR: partial response) を示した患者の割合と定義された。信頼区間 (CI: confidence interval) は正確二項分布に基づいて算出された。サンプルサイズおよび決定基準はSimonの二段階ミニマックスデザインによって決定された。RR 40%がレジメンの潜在的有用性を示し、20%が関心の下限であると仮定し、α=0.05、β=0.20で、必要な患者数は33例と推定された。最終的に、11例 (33%) 以上の患者が客観的奏効を示した場合、このレジメンはさらなる試験に値すると判断された。副次評価項目は毒性および全生存期間 (OS: overall survival) であった。OSは登録日からあらゆる原因による死亡日または最終追跡調査日までと定義された。無増悪生存期間 (PFS: progression-free survival) は登録日から病勢進行の証拠が出現するまでと定義された。生存分布はKaplan-Meier法により推定された。