• 著者: Changhao Chen, Yuming Luo, Wang He, Yue Zhao, Yao Kong, Hongwei Liu, Guangzheng Zhong, Yuting Li, Jun Li, Jian Huang, Rufu Chen, Tianxin Lin
  • Corresponding author: Tianxin Lin; Jian Huang (Sun Yat-sen Memorial Hospital, Guangzhou, China); Rufu Chen (Guangdong Provincial People’s Hospital, Guangzhou, China)
  • 雑誌: The Journal of clinical investigation
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2019-12-03
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31593555

背景

膀胱がん (BCa) は世界的に最も多く診断される悪性腫瘍の一つであり、2018年には約55万人が新規診断され、男性のがん関連死の主要な原因となっている Bray et al. CACancerJClin 2018。BCa患者の予後はリンパ節 (LN) 転移の有無と密接に関連しており、LN転移を伴う場合、5年生存率は77.6%から18.6%へと大幅に低下する。LN転移ががんの予後に与える影響は大きいにもかかわらず、BCaにおけるLN転移を誘発する明確な分子メカニズムは未解明な点が多かった。

先行研究では、腫瘍細胞や腫瘍関連マクロファージ (TAM) から産生されるVEGF-CがBCaのリンパ管新生とLN転移に重要な役割を果たすことが示されてきた。しかし、LN転移を伴うBCaの約20%ではVEGF-Cの発現が低いことが報告されており、VEGF-C非依存的なリンパ管新生およびLN転移メカニズムの存在が強く示唆されていた。このVEGF-C非依存的な経路の分子実体は不明であり、その解明は臨床的課題であった。

エクソソームは30-150 nmのサイズの微小な細胞外小胞であり、mRNA、miRNA、長鎖非コードRNA (lncRNA) など多様な核酸を含有し、細胞間情報伝達の重要なメッセンジャーとして機能することが知られている Xu et al. NatRevClinOncol 2018。がん細胞由来エクソソームは、がん誘発性の血管透過性亢進 Zeng et al. NatCommun 2018、炎症、遠隔臓器への骨髄前駆細胞の動員など、腫瘍微小環境との相互作用を介して腫瘍の進行に寄与することが報告されている。例えば、EGFR含有エクソソームは肝臓の微小環境を調節して肝転移を促進し Zhang et al. NatCommun 2017、エクソソームmiR-25-3pは転移前ニッチ形成に関与する。しかし、がん細胞分泌エクソソームがリンパ管新生を誘導し、リンパ管系形成を調節するメカニズムは依然として不明であり、さらなる探索が必要であった。

また、RNA結合タンパク質 (RBP) であるhnRNPA2B1 (heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A2B1) が、特定のモチーフ (GGAG) を認識してmiRNAを選択的にエクソソームに搭載することが先行研究で示されていた Villarroya-Beltri et al. NatCommun 2013。しかし、lncRNAのエクソソームへの選択的搭載におけるhnRNPA2B1の役割、およびエクソソームに搭載されたlncRNAが受容細胞の遺伝子発現をエピジェネティックに制御する具体的なメカニズムは十分に理解されていなかった。特に、リンパ管内皮細胞 (HLEC) におけるPROX1 (prospero homeobox 1) 発現の調節機構は不明な点が多かった。これらの知識のギャップを埋めることが、BCaのLN転移の新たな診断・治療戦略開発に繋がると考えられた。

目的

本研究の目的は、膀胱がん (BCa) 細胞から分泌されるエクソソームに濃縮される新規長鎖非コードRNA (lncRNA) であるLNMAT2 (lymph node metastasis-associated transcript 2) を同定し、そのリンパ管内皮細胞 (HLEC) への転送、VEGF-C非依存的なリンパ管新生促進、およびリンパ節 (LN) 転移促進の分子メカニズムを解明することである。具体的には、以下の点を明らかにすることを目指した。

  1. LNMAT2がBCa組織および患者由来エクソソームにおいて過剰発現していることを確認し、その臨床的意義 (LN転移との相関、予後因子としての機能) を評価する。
  2. LNMAT2がhnRNPA2B1 (heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A2B1) と直接相互作用することでエクソソームに選択的に搭載されるメカニズムを解明する。
  3. エクソソームLNMAT2がHLECに取り込まれた後、核内でPROX1 (prospero homeobox 1) プロモーターとDNA-RNAトリプレックスを形成し、hnRNPA2B1をリクルートしてPROX1プロモーターのH3K4me3 (H3 lysine 4 trimethylation) レベルを増加させることでPROX1の発現を転写活性化する分子経路を詳細に解析する。
  4. エクソソームLNMAT2がin vitroおよびin vivoでVEGF-C非依存的にリンパ管新生とLN転移を促進することを実証する。
  5. 尿中エクソソームLNMAT2がBCa患者におけるLN転移の非侵襲的診断バイオマーカーおよび独立予後因子として機能する可能性を検証する。

これらの目的を達成することで、VEGF-C非依存的なLN転移の新規メカニズムを明らかにし、LNMAT2をBCaのLN転移に対する新たな診断・治療標的として確立することを目指した。

結果

LNMAT2過剰発現はBCaのリンパ節転移と相関し、独立予後因子である: 次世代シーケンシング (NGS) 解析により、筋層浸潤型BCa (MIBC) 組織におけるLNMAT2発現が隣接正常組織 (NAT) の3倍以上高く、LN陽性BCa組織でLN陰性組織よりも高値であることが確認された。266例のBCa患者コホートにおけるqRT-PCR解析では、LNMAT2発現がLN転移と有意に正の相関を示した (Mann-Whitney U検定、p<0.05)。Kaplan-Meier解析により、高LNMAT2発現は全生存期間 (OS) および無病生存期間 (DFS) の有意な短縮と関連することが示された (Figure 1, B and C)。多変量Cox比例ハザードモデル解析では、LNMAT2発現がOSおよびDFSの独立予後因子であることが確認された (Supplemental Tables 2 and 3)。in situハイブリダイゼーション (ISH) では、LN陽性BCa組織におけるLNMAT2発現がLN陰性組織よりも有意に高く、BCa細胞の細胞外空間でも高い発現が認められた (Figure 1, D and E)。LNMAT2発現はリンパ管内皮ヒアルロン酸受容体1 (LYVE-1) 陽性リンパ管密度と正相関したが、VEGF-C発現とは相関せず (Figure 1, F-H)、VEGF-C非依存的なLN転移促進機構の存在が強く示唆された。

LNMAT2はBCa細胞分泌エクソソームに濃縮され、LN転移と相関する: 206例のBCa患者の尿エクソソームにおけるLNMAT2発現は、120例の健常対照と比較して有意に高値であった (p<0.01、qRT-PCR、Figure 2A)。BCa細胞株5637およびUM-UC-3由来エクソソームでは、LNMAT2が細胞内よりも相対的に高く濃縮されていることが示された (Figure 2E)。FISHおよび細胞分画解析により、細胞内LNMAT2は主に細胞質に局在することが確認された。LNMAT2の過剰発現またはサイレンシングはエクソソームLNMAT2レベルを並行して変化させたが、細胞内LNMAT2レベルには影響を与えなかった (Figure 2, F-I)。これは、細胞外LNMAT2が主にエクソソームの形態で存在するという仮説を裏付けるものであった。

hnRNPA2B1がLNMAT2のエクソソームへの選択的搭載を媒介する: ビオチン標識LNMAT2 RNAを用いたRNAプルダウンアッセイと質量分析により、LNMAT2結合タンパク質としてhnRNPA2B1 (約35〜40 kDa) を同定した (Figure 6, A and B)。ウェスタンブロットおよびRIP (RNA免疫沈降) アッセイにより、LNMAT2とhnRNPA2B1の直接結合が確認された (Figure 6, C, D, and F)。連続欠失変異体解析により、LNMAT2の1900〜2100 nt領域がhnRNPA2B1との直接相互作用に必須であることが示された (Figure 6, G and H)。POSTAR2予測では、この領域の1930〜1960 ntにGGAGモチーフを含む安定な幹ループ構造が予測された (Figure 6, I and J)。この部位の特異的変異はRIP結合を消失させ、エクソソームLNMAT2の有意な減少を引き起こした (Figure 6K and Figure 7B)。hnRNPA2B1のノックダウン (KD) はエクソソームLNMAT2を有意に減少させたが、細胞内LNMAT2レベルには影響を与えなかった (Figure 7A)。LNMAT2は、細胞内に保持されるmiRNAであるmiR-18aと比較して、エクソソーム/細胞比が著しく高く (Figure 7C)、hnRNPA2B1依存的な選択的搭載の優先度が高いことが示された。hnRNPA2B1 KDはLNMAT2およびmiR-198のエクソソームへの濃縮を有意に減少させ、LNMAT2がhnRNPA2B1依存的にエクソソームに選択的に搭載されることを示した (Figure 7D)。

エクソソームLNMAT2はHLECに取り込まれ核内に移行しPROX1を転写活性化する: PKH67標識エクソソームをHLECに添加すると、12時間以内に細胞質内に取り込まれることが共焦点顕微鏡観察で確認された (Figure 7E)。エクソソーム取り込み後、LNMAT2-KO HLECの核分画解析により、LNMAT2の核内蓄積が検出された (Supplemental Figure 8, G and H)。ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、PROX1プロモーターの-650 bpから-350 bpの領域がLNMAT2依存的に転写活性化されることが示された (Figure 8C)。ChIRPアッセイにより、エクソソームLNMAT2がPROX1プロモーターのP3領域 (-607 bpから-597 bp) に生理的に結合することが確認された (Figure 8, D-F)。FRET解析では、LNMAT2 (+2058〜+2069 nt) とPROX1 TTS1 (-607〜-597 bp) 間で570〜580 nmでの蛍光シグナル増強と520 nmでの減弱が観察され、DNA-RNAトリプレックス形成が実証された (Figure 8G)。CDスペクトル解析でも、270〜280 nmの正ピークと210 nmの負ピークが検出され、トリプレックス形成の特徴と一致した (Figure 8H)。PROX1プロモーターの変異 (-607〜-597 bpの変異) は転写活性化効果を消失させた (Figure 8, I and J)。ChIP-qPCRにより、LNMAT2過剰発現エクソソーム処理HLECではPROX1プロモーター領域におけるhnRNPA2B1とH3K4me3の有意な濃縮が認められ、siLNMAT2処理エクソソームでは減少した (Figure 8, K-N)。これらの結果は、エクソソームLNMAT2がHLEC核内でPROX1プロモーターとトリプレックスを形成し、hnRNPA2B1を介してH3K4me3レベルを増加させることでPROX1の転写を活性化することを示唆する。

エクソソームLNMAT2はin vitroおよびin vivoでリンパ管新生とLN転移を促進する: BCa細胞分泌エクソソームは、HLECの管腔形成および遊走を有意に促進した (Figure 3, A-C)。LNMAT2過剰発現エクソソーム (UM-UC-3-EXO LNMAT2 ) はHLECの管腔形成と遊走をさらに増強し (Figure 3, D-F)、LNMAT2サイレンシングエクソソーム (5637-EXO siLNMAT2 ) では促進効果が消失した (Figure 3, G-I)。LNMAT2-KO HLECを用いた実験でも同様の応答が確認され、外来エクソソームLNMAT2がリンパ管新生を誘導することが示された (Figure 7, I-K)。in vivo膝窩LN転移モデルでは、UM-UC-3-EXO LNMAT2 群はIVISイメージングにより有意に多くの膝窩LN転移と大きなLN体積を示した (p<0.05、1方向ANOVA後Dunnett’s、Figure 4, B-E)。LN転移率もUM-UC-3-EXO LNMAT2 群で有意に高かった (χ²検定、Figure 4G)。VEGF-C中和抗体 (pV1006R-r) 投与後も、UM-UC-3-EXO LNMAT2 群は対照群よりも有意に高いLN転移促進効果を示し、VEGF-C非依存的なメカニズムが生体レベルで確認された (Figure 9, D-F)。UM-UC-3-EXO LNMAT2 群は腫瘍増殖も促進し、腫瘍サイズおよび重量が増加し、増殖マーカーKi67の発現も高かった (Figure 5, B-H)。

尿エクソソームLNMAT2の診断的有用性: 尿エクソソームLNMAT2発現は、LN転移を伴うBCa患者で有意に高値であった (Figure 10C)。ROC曲線解析では、尿エクソソームLNMAT2がBCaのLN転移診断において高い診断精度 (AUC) を示すことが示された (Figure 10G)。Kaplan-Meier解析により、高尿エクソソームLNMAT2レベルはBCa患者の不良な予後と関連することが示され (Figure 10, D and E)、多変量解析でも独立予後因子であることが確認された (Supplemental Tables 8 and 9)。これらの結果は、尿エクソソームLNMAT2がBCaのLN転移の非侵襲的診断バイオマーカーとして、また治療標的としての可能性を持つことを示唆する。

考察/結論

エクソソームlncRNAによるエピジェネティックリモートコントロールという新パラダイム: 本研究は、がん細胞がエクソソームを介して遠隔の非がん細胞 (HLEC) のエピゲノムを書き換え、特定の遺伝子発現を調節する新規メカニズムを明らかにした。LNMAT2はエクソソーム内で安定に保護された状態でHLECに転送され、受容細胞の核内でPROX1プロモーターとDNA-RNAトリプレックスを形成する。このトリプレックス形成によりhnRNPA2B1がリクルートされ、PROX1プロモーター上のH3K4me3 (活性化ヒストンマーク) レベルが増加し、PROX1の転写が活性化される。このエクソソームを介したlncRNA-DNA間のリモートエピジェネティック制御という概念は、これまでの非コードRNA生物学の知見を拡張し、新たなパラダイムを提供するものであり、本研究で初めて詳細に解明された。

VEGF-C非依存的リンパ管新生機構の解明: リンパ節転移を伴うBCa患者の約20%がVEGF-C低発現であるという臨床的観察は、VEGF-Cに依存しない代替的なLN転移促進機構の存在を示唆していた。本研究は、エクソソームLNMAT2がPROX1を介してVEGF-C非依存的にリンパ管新生とLN転移を促進することを生体レベルで実証した。この新規経路の同定は、既存のVEGF-C標的治療が無効な症例に対する新たな治療標的を提供する点で臨床的意義が大きい。PROX1はリンパ管分化に必須の転写因子であり、その活性化はHLECの増殖、管腔形成、移動を促進する。

hnRNPA2B1依存的選択的搭載の分子機序: 先行研究では、hnRNPA2B1がGGAGモチーフを認識してmiRNAを選択的にエクソソームに搭載することが示されていたが Villarroya-Beltri et al. NatCommun 2013、本研究はlncRNAであるLNMAT2にも同様の機構が適用されることを示した。LNMAT2の1930〜1960 nt領域に存在する幹ループ構造内のGGAGモチーフがhnRNPA2B1結合とエクソソーム搭載の両方に必須であるという発見は、エクソソームへの選択的RNA搭載における具体的な配列決定要因を同定した点で新規性が高い。

診断バイオマーカーとしての臨床的可能性: 尿中エクソソームLNMAT2は、非侵襲的なリキッドバイオプシーとして機能する可能性があり、BCaのLN転移の有無を術前に鑑別できれば、治療方針決定や手術範囲計画に有用である。尿での検出が可能であることは、BCaの監視戦略に特に適合しており、臨床現場での応用が期待される。血清エクソソームLNMAT2も同様にLN転移と関連し、不良予後と相関することが示された。

治療標的としての展望: LNMAT2-hnRNPA2B1相互作用の阻害、またはエクソソームLNMAT2のHLECへの取り込みや核移行の阻害は、新たな治療戦略となりうる。特に、既存のVEGF-C/VEGFR3標的治療と併用することで、LN転移全体をより包括的に抑制できる可能性がある。lncRNAを標的とした治療法として、LNA (locked nucleic acid) 修飾siRNAによるエクソソームLNMAT2機能阻害が、LN転移治療の新しい戦略となる可能性を秘めている。

残された課題: 今後の検討課題として、LNMAT2が他のがん種 (TCGAデータベースで発現上昇が示された肺がん、胃がん、肝がんなど) でも同様のLN転移促進機構を持つかどうかの検証が必要である。また、LNMAT2によるPROX1以外の転写標的遺伝子の同定、エクソソームLNMAT2の核移行を可能にするエンドソーム脱出機構のさらなる解明、そして診断マーカーとしての尿エクソソームLNMAT2の前向きコホートでの外部検証が重要である。これらの課題を解決することで、LNMAT2を基盤とした診断・治療法の開発がさらに進展すると考えられる。

方法

臨床検体および研究承認: 本研究では、Sun Yat-sen Memorial Hospitalで手術を受けたBCa患者266例から腫瘍組織および隣接正常組織 (NAT) のペア (コホート1) を取得した。さらに、別のBCa患者206例および健常対照120例から尿および血液サンプル (コホート2) を収集した。両コホートの患者は、病理学的にBCaと確定診断された症例を対象とした。すべての実験はSun Yat-sen Universityのヒト被験者研究倫理審査委員会の承認を得て実施され、すべての参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。

細胞株および細胞培養: ヒトBCa細胞株UM-UC-3 (CRL-1749)、5637 (HTB-9)、T24 (HTB-4)、および不死化ヒト尿路上皮細胞株SV-HUC-1 (CRL-9520) はAmerican Type Culture Collectionから購入した。UM-UC-3細胞およびT24細胞はDMEM (Gibco) に10% FBSを添加して培養した。5637細胞およびSV-HUC-1細胞はそれぞれRPMI 1640培地 (Gibco) に10% FBS、F-12K培地 (HyClone) に10% FBSを添加して培養した。HLEC (ヒトリンパ管内皮細胞、カタログ2500) はScienCell Research Laboratoriesから購入し、内皮細胞培地 (ECM) で培養した。細胞は37°C、5% CO2の加湿インキュベーターで培養した。

LNMAT2発現解析: NGS (次世代シーケンシング、Gene Expression Omnibus ID GSE106534) を用いて、5例のLN陽性/陰性BCaペアにおけるlncRNA発現プロファイルを解析した。qRT-PCR (定量的リアルタイムPCR)、FISH (蛍光in situハイブリダイゼーション)、ISH (in situハイブリダイゼーション)、IHC (免疫組織化学) を用いて、LNMAT2の組織、細胞、細胞外での発現を評価した。5’および3’ RACE (cDNA末端迅速増幅法) により、ヒトLNMAT2の全長 (3187 nt、染色体10q23.1) を決定した。

エクソソームの単離と特性評価: BCa細胞株 (5637、UM-UC-3) の培養上清から超遠心法によりエクソソームを単離した。単離されたエクソソームは、透過型電子顕微鏡 (TEM) による形態観察、NanoSightによる粒子径および濃度分析、およびウェスタンブロット (WB) によるエクソソームマーカー (CD9、CD63) の検出により特性評価した。qRT-PCRにより、LNMAT2の細胞内およびエクソソーム中の発現レベルを定量し、エクソソームへの濃縮度を評価した。

hnRNPA2B1との相互作用解析: ビオチン標識LNMAT2 RNAを用いたRNAプルダウンアッセイを実施し、結合タンパク質を質量分析 (MS) により同定した。hnRNPA2B1の同定後、WBおよびRIP (RNA免疫沈降) アッセイにより、LNMAT2とhnRNPA2B1の直接結合を確認した。LNMAT2の連続欠失変異体を用いたプルダウンアッセイにより、hnRNPA2B1との結合に必須な領域 (1900〜2100 nt) を特定した。POSTAR2予測とRNAalifoldを用いて、結合領域の二次構造 (幹ループ構造) を解析し、部位特異的変異導入により結合の特異性を検証した。

PROX1調節機序の解明: ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて、PROX1プロモーターの転写活性化に寄与する領域 (-650〜-350 bp) を同定した。ChIRP (クロマチン単離RNA精製) アッセイにより、LNMAT2がPROX1プロモーター上のP3領域 (-607〜-597 bp) に生理的に結合することを検証した。LongTarget予測ツールを用いてDNA-RNAトリプレックス形成部位を予測し、FRET (蛍光共鳴エネルギー移動) 解析およびCD (円二色性) 分光法により、LNMAT2とPROX1プロモーター間のDNA-RNAトリプレックス形成をin vitroで実証した。ChIP-qPCR (クロマチン免疫沈降-qPCR) により、hnRNPA2B1およびH3K4me3のPROX1プロモーター領域への濃縮を評価した。CRISPR-Cas9システムを用いてLNMAT2-KO HLECを作製し、エクソソームLNMAT2依存的なリンパ管新生誘導における内因性LNMAT2の役割を評価した。

in vivoモデル: BALB/cヌードマウス (4-5週齢、18-20 g) を用いて膝窩LN転移モデルを確立した。ルシフェラーゼ標識UM-UC-3細胞 (5 x 10^6 cells) をマウスの足底に接種した。腫瘍内PBS、対照EXO (ベクター導入UM-UC-3細胞由来エクソソーム)、LNMAT2-EXO (LNMAT2過剰発現UM-UC-3細胞由来エクソソーム、20 μg/dose) を3日おきに投与し、LN転移を評価した (各群n=12またはn=16 mice)。IVISイメージングシステムを用いて生物発光によるLN転移をモニタリングした。皮下異種移植モデルでも腫瘍増殖を評価した。VEGF-C中和抗体 (pV1006R-r) 併用実験により、VEGF-C非依存的なLN転移促進を検証した。

統計解析: 統計解析にはSPSS v.13.0を用いた。正規分布に従わないデータ群間の差はMann-Whitney U検定で評価し、パラメトリック変数には2標本t検定または1元配置ANOVAを適用した。ノンパラメトリック変数にはχ²検定を用いた。全生存期間 (OS) および無病生存期間 (DFS) はKaplan-Meier法を用いて評価した。すべての実験は3回繰り返し実施され、定量データは平均±SDで示された。p値が0.05未満を有意差とした。