• 著者: Matthew D. Hellmann, Tavi Nathanson, Hira Rizvi, Benjamin C. Creelan, Francisco Sanchez-Vega, et al.
  • Corresponding author: Matthew D. Hellmann (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: Cancer cell
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-04-12
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 29657128

背景

抗PD-1抗体nivolumabや抗PD-L1抗体を用いた免疫チェックポイント阻害療法は複数のがん種で有効性が確認されているが、奏効率は一部の患者に限られることが知られている Borghaei et al. NEnglJMed 2015Reck et al. NEnglJMed 2016。PD-L1発現は感度・特異度ともに不十分なバイオマーカーであり、追加の予測因子が求められていた。腫瘍変異量 (TMB) はPD-1単剤に対する反応性を予測することが複数の報告で示されていた Rizvi et al. Science 2015LeDung et al. Science 2017

CTLA-4阻害薬ipilimumabとPD-1阻害薬nivolumabの併用療法 (CheckMate-012試験) は単剤を上回る抗腫瘍活性を示していたが、この併用療法においてTMBが有効性を予測するかは不明であった。先行研究では、melanoma患者への抗CTLA-4+抗PD-1併用療法ではTMBが有効性と相関しないとの報告もあり、非小細胞肺癌 (NSCLC) 固有の解析が必要とされていた。このため、併用免疫療法におけるTMBの予測的意義については未解明な点が残されていた。

目的

NSCLC患者へのnivolumab+ipilimumab併用免疫チェックポイント阻害療法において、TMBをはじめとするゲノム特徴 (PD-L1発現、遺伝子変異プロファイル等) が治療効果 (客観的奏効率 (ORR)・持続的臨床的ベネフィット (DCB)・無増悪生存期間 (PFS)) と関連するかを全エクソームシーケンス (WES) により検討する。

結果

コホートの基本特徴とTMB分布: CheckMate-012試験に登録された進行NSCLC患者75例のTMBの分布は、The Cancer Genome Atlas (TCGA) NSCLCコホートと類似しており、喫煙歴のある患者でTMBが高値であった (TMB高値群の97%が喫煙者)。ベースラインの臨床特徴は、喫煙歴を除き、TMB高値群と低値群の間で有意差は認められなかった (Table 1)。本研究コホートの臨床的特徴と有効性アウトカムは、CheckMate-012試験全体の患者群と類似していた (Figure S1; Tables S1 and S2)。

TMBと客観的奏効率の強い関連: 奏効例 (CR/PR) は非奏効例 (SD/PD) と比較してTMBが有意に高かった (中央値 273 vs 114 mutations, Mann-Whitney p=0.0004) (Figure 1A)。同様に、DCB例はNDB例に比べTMBが高値であった (中央値 210 vs 113 mutations, Mann-Whitney p=0.0071)。これらの結果は、TMBが高い患者群で治療効果が高いことを明確に示唆している。TMBとORRのAUCは0.75 (95%CI 0.62-0.88, p=0.0006)、TMBとDCBのAUCは0.68 (95%CI 0.56-0.8, p=0.0076) であった (Figure 1D)。

高TMBと低TMBにおける治療効果の比較: TMB中央値 (158 mutations) をカットオフとして高TMB群と低TMB群を比較すると、高TMB群ではORRが51%であったのに対し、低TMB群では13%と有意に高かった (OR 6.97 [95%CI 2.19-19.0], Fisher’s exact p=0.0005) (Figure 1B)。DCBも高TMB群で65% vs 低TMB群で34%と有意に高かった (OR 3.55 [95%CI 1.3-8.64], Fisher’s exact p=0.011)。PFS中央値は高TMB群で17.1ヶ月、低TMB群で3.7ヶ月であり、高TMB群で有意な改善が認められた (HR=0.41 [95%CI 0.23-0.73], log-rank p=0.0024) (Figure 1C)。TCGA NSCLCコホートのTMBパーセンタイルランクで層別化した場合も、パーセンタイル閾値の連続的な増加に伴いPFSが改善することを示した (log rank for trend p=0.01) (Figure 1E)。

ネオアンチゲン負荷とTMBの相関: 非同義変異として定義されるTMBは、サイレント変異を含む変異量よりもORRおよびPFSと強く関連していた (Figure S2E)。これは、ネオアンチゲンが体細胞非同義変異から生成されるというメカニズム的仮説を支持するものである Schumacher et al. Science 2015。計算によって予測されたネオアンチゲン負荷は、TMBよりも臨床的ベネフィットの予測能が高いわけではなかった (Figure S2F)。しかし、TMBと計算によって予測されたネオアンチゲン負荷は強く相関していた (Spearman r 0.92, p < 0.0001) (Figure S2G)。

TMBとPD-L1発現の独立性: PD-L1発現とTMBの間に相関は認められなかった (Spearman r=-0.087, p=0.48) (Figure 3A)。PD-L1陽性 (≥1%発現) 群と陰性群の間でTMB分布に差はなかった (中央値 162 vs 135 mutations, Mann-Whitney p=0.89)。PD-L1陰性の奏効例5人中4人が高TMB (絶対変異量範囲307-1175, TCGAパーセンタイルランク72-98th) であり、TMBがPD-L1陰性奏効例を説明する可能性が示唆された (Figure S4C)。

多変量解析におけるTMBの優位性: PD-L1発現、組織型、喫煙歴、パフォーマンスステータス (PS)、腫瘍負荷を共変量とした多変量解析でも、TMBはORR (p=0.001) およびPFS (p=0.002) と独立して有意に関連した (Figure 3B, 3C)。複合的に考慮すると、高TMBかつPD-L1陽性の複合陽性例が、いずれか一方または両方陰性の腫瘍と比較して、有意に改善されたORRとPFSを示した (ORR chi-square for trend p < 0.0001) (Figure 3D)。

特定の遺伝子変異と治療反応性の関連: 特定の遺伝子変異と治療反応性の関連も探索された (Figure 2)。STK11変異 (7例) は全例非奏効 (奏効率0%) であり、PTEN変異 (4例) でも奏効は認められなかった。これらの結果は以前の報告と一致するが、症例数が少ないため統計的有意性には達しなかった (Table S4)。IFNGR1変異 (3例) は奏効例のみで検出された。MutSigCVによって同定された反復変異遺伝子のうち、TP53変異は奏効例で富化傾向が認められた (OR 2.9, Fisher’s exact p=0.048) (Figures S3A and S3B)。TP53変異は、本コホートおよびTCGA NSCLCコホートの両方でTMB増加と相関していた (Figures S3C-S3F and Table S4)。

標的NGSパネルによるTMB推定の適用可能性: WESによるTMB測定は実臨床での迅速な適用が困難であるため、標的次世代シーケンス (NGS) パネルによるTMB推定の可能性も検討された。MSK-IMPACT (468遺伝子) やFoundationOne (315遺伝子) パネルに含まれる遺伝子に限定してTMBを推定した場合、WES由来TMBと同様の予測性能を示した (Figures S3G-S3H)。これは、既存の臨床ゲノミクス検査がTMB評価に利用できる可能性を示唆する。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、NSCLC患者へのPD-1+CTLA-4併用阻害療法においてTMBが最も強力な有効性予測因子であることを本研究で初めて示した。これまでmelanomaへの同レジメンではTMBと反応性が相関しないとの報告があったが、NSCLCでは明確な相関が確認された点は対照的である。この結果は小細胞肺癌 (SCLC) 患者でのnivolumab+ipilimumabデータとも一致しており、肺がんにおけるTMBの普遍的重要性を示唆する。また、低TMBのNSCLC患者では併用免疫療法でも奏効率が低いままであり、併用療法が低TMBの負の予測的影響を克服できないことを示している。

新規性: TMBはPD-L1発現と独立した因子であり、両者を組み合わせることで予測精度がさらに向上する (複合陽性例で最良のORR・PFS) ことを新規に示した。特にPD-L1陰性であっても高TMBの場合は奏効する可能性があるため、PD-L1陰性患者の免疫療法選択においてTMBが重要な補完情報となる。本研究は、TMBとPD-L1発現の組み合わせが、単独のバイオマーカーよりも優れた予測能を持つことを明確に示した点で新規性が高い。

臨床応用: 臨床応用の観点から、WESは実臨床への実装が困難であるが、FDA承認の標的NGSパネル (MSK-IMPACT、FoundationOne) でのTMB推定が同等の予測性能を持つことが示され、既存の臨床ゲノミクス検査でのTMB実装が現実的であることが示唆された。これは、臨床現場でのTMB評価の障壁を低減し、より多くの患者にTMBに基づく治療選択の機会を提供する臨床的有用性を持つ。さらに、ctDNA (circulating tumor DNA) 由来TMB (bTMB) の可能性も示されており、侵襲性の少ない液体生検によるTMB評価も将来的に有望である。

残された課題: 残された課題としては、TMBの最適閾値の前向き検証、STK11/PTEN等の抵抗性遺伝子変異との組み合わせ解析、そして本研究のCheckMate227試験での前向き検証がある。実際にCheckMate227には本データを受けTMB評価が組み込まれた。本研究はレトロスペクティブな性質であり、全患者の組織が利用可能でなかった点、追加の発現解析を行うには組織が不十分であった点がlimitationとして挙げられる。今後の研究では、TMBとネオアンチゲンの関係性、特にネオアンチゲンのクローン性、フィットネス、T細胞受容体との相互作用をより詳細に理解することが今後の方向性として重要である。

方法

CheckMate-012試験 (nivolumab+ipilimumab) に登録された進行NSCLC患者75例の腫瘍組織と末梢血ペアに対してWESを実施した。腫瘍組織は治療前に入手された。WESライブラリはAgilent Sure-Select Human All Exon v2.0 (44Mb)、v4.0 (51Mb)、またはIlluminaのRapid Capture Exome (38Mb) キットを用いて作製され、HiSeq 2000、2500、または4000プラットフォーム (Illumina) で2x76bpのペアエンドリードとしてシーケンスされた。目標平均ターゲットカバレッジは150xであった。平均カバレッジは腫瘍148x (IQR 116-182x)、正常81x (IQR 70-98x) であった。

シーケンスリードはBWA (Burrows-Wheeler Aligner) version 0.5.9-tpxを用いてhg19ヒトゲノムビルドにアライメントされ Li et al. Bioinformatics 2009、GATK (Genome Analysis Toolkit) version nightly-2015-07-31-g3c929b0を用いてindelの再アライメント、ベースクオリティスコアの再キャリブレーション、重複リードの除去が行われた DePristo et al. NatGenet 2011。品質管理にはBroad Institute Picardソフトウェアが用いられ、ContEstによるコンタミネーション推定、OxoG3フィルターによる酸化DNA損傷アーチファクトの除去が行われた。腫瘍カバレッジが60x未満または正常カバレッジが30x未満のサンプルは除外された。

SNV (single nucleotide variant) コールはMuTect version v1.1.6を用いて生成され Cibulskis et al. NatBiotechnol 2013、Indelocatorを用いてIndel (insertion/deletion) コールが生成された。変異アレル頻度0.05未満の変異は除外された。TMBは非同義SNVおよびIndelの総数として算出された。

PD-L1発現は免疫組織化学 (IHC) (クローン28-8, Dako) で評価され、75例中70例でPD-L1スコアリングが可能であった。客観的奏効はRECIST v1.1 (Response Evaluation Criteria in Solid Tumours version 1.1) に基づき、治験責任医師によって評価された Eisenhauer et al. EurJCancer 2009。DCBは6ヵ月以上持続する部分奏効 (PR) または安定病変 (SD) と定義され、それ以外の患者は非持続的ベネフィット (NDB) とされた。

HLA (human leukocyte antigen) クラスIアレルはOptiTypeを用いて推定された。ネオアンチゲン予測パイプラインでは、Topiaryを用いて変異DNA配列から変異ペプチド配列を仮想的に翻訳し、NetMHCcons (v. 1.1) を実行してMHCクラスI結合親和性を予測した。候補ネオアンチゲンは、患者特異的HLAアレルへの結合親和性IC50が500 nM以下のペプチドとされた。クローン性ネオアンチゲン負荷は、変異アレル頻度、局所コピー数、腫瘍純度、倍数性推定値から癌細胞分画 (CCF) を統合して決定された。

統計解析はMann-Whitney検定、Fisher’s exact test、log-rank検定、Cox比例ハザードモデル、Spearman相関分析、ROC (receiver operating characteristic) 曲線下の面積 (AUC) を使用した。MutSigCV (version 1.4) を用いて、反復的に変異した遺伝子を同定した Lawrence et al. Nature 2013