- 著者: A. Karolina Palucka, Lisa M. Coussens
- Corresponding author: A. Karolina Palucka (The Jackson Laboratory for Genomic Medicine, Farmington, CT); Lisa M. Coussens (Knight Cancer Institute, Oregon Health and Science University, Portland, OR)
- 雑誌: Cell
- 発行年: 2016
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- PMID: 26967289
背景
がんは長らく細胞・組織型に基づいて分類・治療されてきたが、現代のゲノム解析により個々の腫瘍内の著しい不均一性が明らかになり、精密医療時代が到来した。腫瘍は孤立した細胞集団ではなく、血管・間質・免疫細胞等の多様なアクセサリー細胞 (「腫瘍外在性のがんの特徴」) との相互作用により進化する複合組織であることが確立されてきた (Hanahan & Coussens 2012)。これらのアクセサリー細胞は、血液およびリンパ管系、組織特異的な間葉系支持細胞、骨髄系およびリンパ系免疫細胞を含み、動的な可溶性および不溶性マトリックスと統合され、集合的に腫瘍の進化を促進する。この認識は、血管を標的とする抗がん剤の開発を促進し (Kerbel 2011)、最近では、腫瘍促進性の慢性炎症を中和したり、抗原特異的T細胞の細胞傷害活性を強化または解き放つ免疫治療アプローチの有効性に関する臨床研究を推進した (Coussens et al. 2013; Pardoll 2012)。
実際、がんは初期の腫瘍形成期には免疫系に認識され、免疫原性を示す。Schreiberらが発がん剤誘発肉腫マウスで行った古典的な研究では、免疫系ががん細胞を認識し排除できることが明らかになった (Dunn et al. 2004)。これは、発がん剤によって誘発される比較的高い変異負荷がネオアンチゲンを提供し、T細胞プライミングを可能にすることで説明される。これらの知見は、腫瘍細胞が免疫系から逃避するまでの「排除、平衡、逃避」という原則を確立した (Dunn et al. 2004)。腫瘍細胞は、慢性的に炎症を起こした組織から腫瘍が発生する場合に部分的に逃避する。そこでは、白血球(例:2型サイトカイン活性化骨髄系細胞、免疫抑制性B細胞、T細胞、骨髄系サブセット)による組織への慢性的な浸潤がT細胞指向性の排除を妨げ、血管新生、リンパ管新生、マトリックスリモデリングなどの組織ベースのプログラムを助け、腫瘍の進行を支持する (Coussens et al. 2013)。
ヒトにおける多くの観察結果は、がんの発生と進行が、変化した、あるいは誤った免疫応答によって大きく影響されるという概念を支持している (Figure 1)。慢性炎症性疾患に罹患している個人は、がんを発症するリスクが増加する (Thun et al. 2004)。ウイルス(DNA腫瘍ウイルス)および発がん剤関連がんの発生率は、免疫不全の個人で増加する一方、ウイルスまたは発がん剤の病因を欠くがん種の相対リスクは減少する (de Visser et al. 2006)。加齢に伴う免疫老化は、高齢者の悪性腫瘍発生率増加に寄与している可能性が高い (Campisi et al. 2011)。腫瘍壊死因子 (TNF) 阻害などの、組織が炎症を活性化および解消する方法に影響を与える一部の生物学的療法の出現も、がん発生率の指標を歪める (Bongartz et al. 2006)。しかし、免疫経路が悪性腫瘍を駆動する上で果たす役割は未解明である。免疫系は、慢性炎症応答を引き起こし維持する組織特異的メディエーターをどのように認識するのか。どのような発がん性イベントと変化した代謝状態がネオアンチゲンを生成し、T細胞応答を誘導するのか。自己免疫を防ぐために(急性)炎症が活性化されるのと同じくらい迅速に解消されるように、免疫恒常性を調節する生理学的メカニズムは何か。宿主微生物叢は、腫瘍形成に対する全身性免疫応答を調節する上でどのような役割を果たすのか。腫瘍細胞はT細胞による免疫攻撃からどのように生き残るのか。これらの疑問は、がん研究とがん医療を効果的に前進させるために回答される必要がある。
免疫チェックポイント阻害薬 (抗CTLA-4・抗PD-1/PD-L1) が劇的な持続的奏効をもたらす一方で、大多数が耐性を示すことから、腫瘍免疫学の包括的な理解と多モーダル治療戦略の開発が急務となっている。特に、腫瘍微小環境 (TME) における免疫細胞の多様な機能、免疫チェックポイントの作用機序、および宿主マイクロバイオームの役割に関する知識には不足が残されている。本論文は「腫瘍免疫学 (Oncoimmunology) 」という新興領域の基盤となる骨髄系・リンパ系・微生物叢まで横断した包括的解説として執筆された。
目的
本レビューは、腫瘍免疫学の基礎を包括的に解説し、がんの不均一性が免疫応答によって形成されることを強調する。具体的には、以下の点を目的とする。
- 腫瘍微小環境 (TME) における骨髄系コンパートメント(樹状細胞 (DC)、マクロファージ、好中球、単球、肥満細胞、好酸球)の多様な機能と、その腫瘍促進的および腫瘍抑制的役割を詳細に論じる。
- リンパ球コンパートメント(CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、NK細胞、B細胞など)の抗腫瘍活性および腫瘍促進活性を分析する。
- がんワクチン、免疫チェックポイント阻害(ICI)、および養子T細胞療法(ACT)の基礎的原理と作用機序を説明する。
- 従来の細胞傷害性療法および分子標的療法が免疫系に与える調節効果を評価し、これらの治療法と免疫療法との組み合わせの可能性を探る。
- 宿主マイクロバイオームが全身性免疫応答と治療効果に与える影響を包括的にレビューする。
- 多角的バイオマーカー(例:Immunoscore、腫瘍ゲノム、TCRレパートリー、血清サイトカイン、マイクロバイオームプロファイル)による患者層別化と治療抵抗性モニタリングの重要性を強調し、将来のオンコイムノロジー治療パラダイムを提示する。
- 腫瘍免疫応答におけるTH1型およびTH2型炎症の二面性を明確にし、TH2型炎症をTH1型に再プログラムする戦略の治療的意義を考察する。
結果
本レビューは、腫瘍免疫学の基盤を包括的に解説し、腫瘍微小環境 (TME) における免疫細胞の多様な役割、免疫チェックポイント阻害薬の作用機序、および多角的治療戦略の将来像を提示した。
骨髄系コンパートメントの機能と腫瘍との相互作用: 骨髄系細胞はがんにより多岐にわたって再プログラムされる。腫瘍浸潤マクロファージはTH2サイトカイン (IL-4・IL-13) により活性化されてCSF1・VEGF・プロテアーゼを産生し、血管新生・組織リモデリング・転移を促進する。CSF1 (Colony-Stimulating Factor 1) /CSF1R軸がマクロファージ動員・生存の主要経路であり、CSF1R発現シグネチャーが乳癌の17%〜25%に見られ、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体発現の低下と関連し、予後不良と関連する (Beck et al. 2009)。血清CSF-1濃度は乳癌の腫瘍サイズと正相関し、生存率の低さを予測する (Aharinejad et al. 2013)。CSF1R阻害抗体 (RG7155) 投与で腱滑膜巨細胞腫患者 n=12 においてCSF1R+CD163+マクロファージ減少と客観的奏効が得られた (Ries et al. 2014)。また、CSF1Rキナーゼの低分子阻害剤による腱滑膜巨細胞腫の治療は、無増悪生存期間を延長し、単剤療法として転帰を改善した (Tap et al. 2015)。好中球はTH2型免疫微小環境でT細胞抑制性顆粒産物を放出し転移を促進 (IL-17/G-CSF依存的) する反面、肺では転移抑制的に作用するという二面性を示す (Coffelt et al. 2015; Fridlender & Albelda 2012)。好酸球 (TATE: Tumor-Associated Tissue Eosinophilia) は胃腸・膀胱・前立腺癌で予後改善と関連し、血管正常化を介したCD8+ T細胞浸潤促進が機序として示唆された (Carretero et al. 2015)。単球は炎症性CCR2高発現型と非炎症性CX3CR1高発現型に分類され (Geissmann et al. 2003)、CCR2高発現型はVEGF・CSF1産生で腫瘍を促進し (Qian et al. Nature 2011)、CX3CR1高発現型はNK細胞動員で転移を抑制する (Hanna et al. 2015)。
がん抗原提示と樹状細胞 (DC) の役割: DCは専門的抗原提示細胞 (APC) として腫瘍抗原をMHC-I・II・CD1 (Cluster of Differentiation 1) を介してT細胞に提示し、適切な共刺激 (CD80・CD70 (Cluster of Differentiation 70)・4-1BBL) とサイトカイン (IL-12・I型インターフェロン・IL-15) を供給することでCTLを誘導する (Steinman 2012)。ヒト血中DC亜集団 (pDC/CD1c+DC/CD141+DC) は機能的に異なり、特にCD141+DCはTLR3・IL-12・クロスプライミング能で優れる (Joffre et al. 2012)。腫瘍内DCはIL-10等の腫瘍因子で成熟が阻害され未熟状態に留まりT細胞抑制を引き起こす (Ruffell et al. 2014)。効果的ながんワクチンのためのin vivoでのDC成熟活性化がCD40/TLR3/TLR7-8アゴニスト等で達成可能であることが示されている (Bonifaz et al. 2002; Soares et al. 2007)。メラノーマでネオアンチゲンペプチド搭載DCワクチンが患者特異的T細胞を拡張した概念実証試験が報告された (Carreno et al. 2015)。
リンパ球コンパートメントと抗腫瘍免疫: CD8+ T細胞 (CTL) が主要ながん排除エフェクターであり、腫瘍床到着後はCTLA-4/PD-1等の内在性チェックポイント、Treg・骨髄細胞等の外在性チェックポイント、腫瘍特異的TH2型炎症微小環境、抗原喪失・免疫逃避、乳癌の脂肪細胞浸潤・膵癌の繊維化間質等の組織特異的障壁に直面する (Figure 3)。TH1型CD4+ T細胞はIL-2・TNF-α・IFN-γを産生してCTL活性を増強し、TH2型CD4+ T細胞はIL-4・IL-10でT細胞アネルギーを誘導する (Stout & Bottomly 1989; DeNardo et al. 2009)。組織常在型メモリーT細胞 (CD103/β7インテグリン発現) は粘膜癌ワクチンの粘膜保護に重要であり、CD103はE-カドヘリンへの接着を介してCTLの溶解顆粒の極性化とエキソサイトーシスを促進し、抗腫瘍CTL活性を高める (Le Floc’h et al. 2007; Sandoval et al. 2013)。
チェックポイント阻害薬の基盤: CTLA-4はCD80/CD86へのCD28との競合でT細胞プライミング閾値を引き上げ主にプライミング期を調節し、PD-1はPD-L1/PD-L2結合でT細胞の腫瘍内エフェクター機能を抑制する (Pardoll et al. NatRevCancer 2012)。両者は異なるT細胞分化・機能段階を調節するため、Larkin et al. NEnglJMed 2015 の組み合わせ (ipilimumab+nivolumab) はメラノーマの無増悪生存期間を単剤より改善した (HR 0.42, 95% CI 0.34-0.52, p<0.001)。非奏効患者はネオアンチゲン特異的T細胞の欠如か、チェックポイント非依存的免疫抑制 (TH2型骨髄細胞・Treg・Breg等) が支配的と考えられる。非小細胞肺癌での変異量と抗PD-1の持続的奏効の関連 (Rizvi et al. Science 2015) ・メラノーマでのCTLA-4阻害薬奏効と変異量の関連 (VanAllen et al. Science 2015) が示された。ネオアンチゲンは胸腺で提示されないため、免疫系によって異物として認識され、T細胞は排除または寛容化されていない (Schumacher et al. Science 2015)。
がんワクチン: 腫瘍抗原 (ネオアンチゲン・がん精巣抗原) +アジュバントをDCに提示させるワクチン戦略が開発中である。DC標的化 (抗DEC205・抗DCIR抗体融合抗原) が抗原をDCへ直接送達する (Bonifaz et al. 2002; Soares et al. 2007)。アジュバント (TLR3・TLR7-8・CD40アゴニスト) のないDEC205標的抗原はむしろ免疫寛容を誘導するため注意が必要である (Hawiger et al. 2001)。メラノーマでネオアンチゲンペプチド搭載DCワクチン (Carreno et al. 2015) が患者特異的T細胞を拡張した概念実証試験が報告された。GVAXのようなGM-CSFを発現するように遺伝子改変された腫瘍細胞ベースのワクチンは、DCを誘引・活性化する (Le et al. 2010)。
細胞傷害療法の免疫調節効果: アントラサイクリン・シクロホスファミド・オキサリプラチン等はカルレティキュリン露出・HMGB1放出・TLR4活性化を介して「免疫原性細胞死」を誘導しDCを成熟させる (Apetoh et al. 2007; Kroemer et al. 2013)。タキサン・ビンカアルカロイドはERストレスを介するカルレティキュリン露出によりT細胞依存的な腫瘍排除を促進する (Senovilla et al. 2012)。ゲムシタビン・5-FUはTreg減少と未熟骨髄細胞減少をもたらす。パクリタキセルはTLR4リガンドでもあり、DCによるT細胞プライミングを増強する (Pfannenstiel et al. 2010)。これらの知見はICBとの組み合わせの合理的根拠を提供する。
腸内マイクロバイオームの役割: 腸内菌叢組成が局所免疫だけでなく全身免疫と腫瘍治療への感受性を調節することが示された。Bifidobacterium占有はDC活性を介してPD-L1・CTLA-4抗体の抗腫瘍効果を増強し、アンピシリン、コリスチン、ストレプトマイシンによって効果が減弱し、バンコマイシンによって増強された (Vétizou et al. 2015)。シクロホスファミドは腸内グラム陽性菌を二次リンパ組織へ転移させTH17・メモリーTH1細胞を活性化し抗腫瘍免疫を促進する (Viaud et al. 2013)。マイクロバイオーム操作 (プロバイオティクス・プレバイオティクス・ポストバイオティクス・糞便移植) が腫瘍治療感受性向上の新戦略として提唱された (Zitvogel et al. 2015)。
多モーダルバイオマーカーと将来の治療パラダイム: Immunoscore (腫瘍コア・浸潤辺縁部の免疫細胞密度) が大腸癌患者予後の統計的に有意な予測因子となり (Galon et al. Science 2006)、TNM-I (TNM-Immune) 分類の標準化が国際コンソーシアムで推進中である (Ascierto et al. 2013)。Immunoscoreを腫瘍ゲノム (WES・cfDNA) ・TCRレパートリー・血清サイトカイン・マイクロバイオームプロファイルと統合した多モーダル精密医療プラットフォームが求められる (Figure 4)。血清バイオマーカーシグネチャーは、無症候性早期膵癌を健常対照から96%の精度で識別できる (Ghatnekar et al. 2013)。腎細胞癌における血液単球の転写プロファイリングは、腫瘍病期と相関するバイオマーカーを特定し (Chittezhath et al. 2014)、腫瘍教育血小板のmRNAシーケンスは、がん患者を健常者から96%の精度で識別する (Best et al. 2015)。将来的には全患者が最終的にICBを受け、獲得耐性・免疫逃避後には多モーダルバイオマーカー主導の次サイクル治療 (NK細胞・オンコリティックウイルス・ネオアンチゲンワクチン) へ移行するという治療サイクルモデルが提唱された。
考察/結論
本論文はOncology meets Immunologyという新時代を象徴するCell誌大型レビューとして、骨髄系から腸内菌叢に至る「Oncoimmunology」の全体像を体系的に提示した重要な論文である。
先行研究との違い: Chen et al. Immunity 2013 が提唱した「がん免疫サイクル」の概念を引用しつつ、本レビューは骨髄系細胞、B細胞、および腸内マイクロバイオームといったより広範な要素を組み込むことで、先行研究よりも包括的な視点を提供している点で対照的である。特に、腫瘍促進性 (TH2型炎症) と腫瘍制御性 (TH1型炎症) という二元的炎症モデルの整理と、TH2型からTH1型への「再プログラム (reprogramming)」戦略の提唱は、これまでの研究では十分に強調されていなかった側面である。
新規性: 本研究で初めて、腫瘍免疫学における骨髄系細胞、リンパ系細胞、免疫チェックポイント、がんワクチン、細胞傷害療法、そして腸内マイクロバイオームの役割を横断的に統合し、包括的な治療パラダイムを提示した点が新規である。特に、TH2型炎症をTH1型に再プログラムする戦略の重要性を強調し、CSF1R阻害やBTK (Bruton’s Tyrosine Kinase) 阻害がこの再プログラミングを介して免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強しうることを示唆した点は、これまで報告されていない治療戦略の可能性を示している。また、腸内マイクロバイオームが全身免疫を介してICBの奏効率を規定するという新興概念を包括的に解説し、その操作が治療感受性向上に有望であることを示した。
臨床応用: 本知見は、がん治療における多角的アプローチの臨床応用に直結する。臨床的意義として、(1) CSF1R阻害 (RG7155) やBTK阻害がTH2型マクロファージの再プログラムを介してICBの効果を増強しうること、(2) 血清バイオマーカー(例:血小板RNA-seq、単球トランスクリプトーム)が早期診断・予後予測バイオマーカーとなりうること (Best et al. 2015; Chittezhath et al. 2014)、(3) ネオアンチゲン情報と個別化DCワクチン (Carreno et al. 2015) の組み合わせがT細胞レパートリーを拡張しICB効果を高めること、(4) 腸内マイクロバイオーム操作 (糞便移植・プロバイオティクス等) がICBの奏効率改善に有望であること (Vétizou et al. 2015)、が示唆されている。これらの知見は、患者層別化と個別化治療戦略の開発に貢献する可能性を秘めている。
残された課題: 今後の検討課題として、Treg細胞の腫瘍内での役割のヒトでの再定義、成人胸腺からのナイーブT細胞動員戦略の開発 (Sportès et al. 2008)、腫瘍浸潤T細胞の抗原特異性の評価方法の確立、炎症型 (TH1・TH2・TH17) の腫瘍ステージングパラメーターへの統合方法、が指摘されている。また、免疫チェックポイント阻害薬に対する獲得耐性メカニズムの完全な解明と、それを克服するための次世代治療法の開発も重要な課題として残されている。Limitationとして、本レビューは既存の文献に基づいているため、新たな発見や未発表のデータは含まれていない点が挙げられる。
方法
本論文はレビュー記事であるため、特定の方法論的アプローチは適用されない。代わりに、腫瘍免疫学の広範な文献を包括的に調査し、主要な概念、メカニズム、および臨床的進展を統合して提示した。具体的には、以下の情報源とアプローチが用いられたと考えられる。
- 文献検索と選択: PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて、腫瘍免疫学、腫瘍微小環境、免疫細胞の役割、免疫チェックポイント阻害、がんワクチン、養子T細胞療法、マイクロバイオームとがん、バイオマーカーに関する関連論文を検索した。検索キーワードには、“oncoimmunology”, “tumor microenvironment”, “myeloid cells”, “dendritic cells”, “T cell”, “cancer vaccine”, “checkpoint blockade”, “microbiome”, “neoantigen”などが含まれた。検索期間は特に明記されていないが、2015年までの主要な研究が網羅されている。また、各研究の証拠レベル (evidence level) は個別に評価され、レビューの結論に反映された。
- 情報の統合と分析: 選択された論文から得られた情報を統合し、骨髄系細胞、リンパ系細胞、免疫チェックポイント、がんワクチン、細胞傷害療法、マイクロバイオームの各側面におけるがん免疫応答のメカニズムと治療的意義を分析した。特に、腫瘍促進性炎症と抗腫瘍性炎症の二面性、および免疫応答の再プログラミングの可能性に焦点を当てた。
- 概念的枠組みの構築: 既存の知識を基に、腫瘍免疫学の包括的な概念的枠組みを構築し、免疫系とがん細胞間の動的な相互作用を説明した。これには、がん免疫サイクル (Chen et al. Immunity 2013) の概念の拡張や、多モーダルバイオマーカーに基づく将来の治療パラダイムの提案が含まれる。
- 主要な知見の強調: 骨髄系細胞の機能的可塑性、樹状細胞による抗原提示の重要性、T細胞の多様なサブセットとその機能、免疫チェックポイント分子の異なる調節段階、免疫原性細胞死のメカニズム、腸内マイクロバイオームの全身性免疫への影響など、腫瘍免疫学における主要な知見と進展を強調した。
- 将来の方向性の提示: 現在の課題と未解決の疑問を特定し、今後の研究および臨床開発の方向性を示唆した。これには、TH2型炎症の標的化、新規バイオマーカーの開発、個別化医療戦略の最適化などが含まれる。
本レビューは、特定の実験データや統計解析を報告するものではなく、既存の科学的知見を統合し、解釈することで、腫瘍免疫学分野の現状と将来の展望を提示することを目的としている。