- 著者: Marc Lecoultre, Valérie Dutoit, Paul R. Walker
- Corresponding author: Paul R. Walker (Faculty of Medicine, University of Geneva; Center for Translational Research in Onco-Hematology, Laboratory of Tumor Immunology and Center of Oncology, Geneva University Hospital, Switzerland)
- 雑誌: Journal for ImmunoTherapy of Cancer
- 発行年: 2020
- Epub日: 2020-11-15
- Article種別: Review
- PMID: 33335026
背景
腫瘍関連マクロファージ (TAM: tumor-associated macrophage) は、固形腫瘍の腫瘍微小環境 (TME: tumor microenvironment) において最も豊富に存在する免疫細胞集団の一つである。TAMは、CCL2 (C-C motif chemokine ligand 2) や CSF-1 (colony-stimulating factor 1) などのケモカインによって誘導される循環単球由来の細胞と、胚性前駆細胞に由来する組織常在性マクロファージという2つの起源を持つことが知られている。TMEから受ける多様なシグナルにより、TAMは「創傷治癒様」のプロ腫瘍的な表現型へと分極し、TGF-β (transforming growth factor-beta) や IL-10 (interleukin-10) などの抗炎症性サイトカインの分泌、PD-L1 (programmed death-ligand 1) の発現、さらにはアルギナーゼ発現を介した栄養枯渇などによって、細胞障害性CD8 T細胞の活性を強力に抑制する。
Gentles et al. NatMed 2015 は、肺がん、乳がん、脳腫瘍、膵がんを含む多様ながん種において、TAMの高度な蓄積が患者の予後不良と有意に相関することを示し、TAMががん治療における重要な標的であることを免疫学的に確立した。また、Chen et al. Immunity 2013 が提唱したがん免疫サイクルにおいて、死滅したがん細胞からの抗原放出と、樹状細胞 (DC: dendritic cell) やマクロファージなどの抗原提示細胞 (APC: antigen-presenting cell) によるT細胞の活性化は、持続的な抗腫瘍免疫を確立するための必須プロセスとして位置づけられている。さらに、Quail et al. CancerCell 2017 などの既報は、脳腫瘍をはじめとする難治性固形がんの微小環境において、骨髄系細胞が腫瘍の進展や治療抵抗性に深く関与していることを明らかにしている。
しかしながら、TAMの貪食活性を制御する詳細な分子シグナルのバランスや、DCと比較した抗原交差提示能の限界については未解明な部分が多く、治療標的としての最適化戦略は未確立である。特に、アポトーシス細胞の貪食(エフェロサイトーシス)がもたらす免疫抑制的な代謝変化や、T細胞再活性化におけるTAMの具体的な寄与に関する知見が不足している。このため、TAMの貪食機能を単なる異物排除システムとしてではなく、獲得免疫系との精緻な相互作用の観点から再評価し、治療に応用するための理論的基盤を構築することが急務となっている。TAMの機能的可塑性と、その再教育の可能性は、次世代のがん免疫療法開発における極めて重要な課題として認識されている。CD47 (cluster of differentiation 47) と SIRPα (signal-regulatory protein alpha) の相互作用、すなわちCD47-SIRP α軸の制御が、新規治療戦略の中心となりつつあり、その詳細なメカニズムの理解が臨床応用に不可欠である。
目的
本レビューの目的は、TAMの貪食活性と抗原提示機能が抗腫瘍免疫に与える影響を、最新の知見に基づいて体系的に整理することである。具体的には、(i) TAM単独での腫瘍制御能、(ii) CD8 T細胞への抗原交差提示能とその分子的限界、(iii) エフェロサイトーシスおよびネクロプトーシス貪食がTAMの機能特性やTMEの再構築に与える影響、という3つの主要な視点から多角的に検証する。
さらに、CD47-SIRP α軸をはじめとする「don’t eat-me」シグナルの阻害効果や、MerTK (Mer receptor tyrosine kinase) 阻害によるエフェロサイトーシス抑制、cGAS (cyclic GMP-AMP synthase) および STING (stimulator of interferon genes) を介した cGAS-STING 経路の活性化など、前臨床および臨床試験で得られたデータを統合的に解析する。これにより、TAMの貪食機能を最大化し、自然免疫と獲得免疫を効果的に連動させる次世代のがん免疫療法戦略(TAM標的治療ロードマップ)を提示し、臨床現場における治療最適化のための理論的指針を提供することを目的とする。本レビューは、単なる既存知見の羅列ではなく、TAMの貪食シグナル、抗原処理経路の分子的障壁、および代謝リプログラミングの統合的理解を通じて、今後の臨床試験設計に直結する知見を提供することを目指している。
結果
‘Eat-me’ と ‘Don’t eat-me’ シグナルの均衡による貪食開始制御:
マクロファージによるがん細胞の貪食開始は、がん細胞表面に発現する「eat-me」シグナルと「don’t eat-me」シグナルの精緻なバランスによって決定される。主要な eat-me シグナルには、小胞体ストレスやDNA損傷によって細胞表面に移行するカルレティキュリン、SLAMF7 (signaling lymphocytic activation molecule family member 7)、PtdSer (phosphatidylserine)、およびオプソニン化抗体が含まれる。これらはマクロファージ上の LRP1 (lipoprotein receptor-related protein 1) や FcγR (Fc-gamma receptor) に結合し、アクチン細胞骨格の再編成を誘導して engulfment (取り込み) を開始させる。一方、強力な don’t eat-me シグナルとして機能するのが CD47、PD-L1、および MHC class I (MHC-I) である。特にCD47はマクロファージのSIRPαに結合し、ミオシンIIの重合を阻害することで貪食を強力に抑制する。前臨床モデルにおいて、CD47阻害はTAMによるがん細胞の貪食活性を著しく亢進させることが示されている。例えば、乳がん細胞株を用いた実験 (n=3 cells) において、抗CD47抗体の添加によりマクロファージによる貪食率が対照群と比較して 3.0-fold に上昇することが確認されている。このように、個々のがん細胞が提示する分子シグナルの総和が、マクロファージの活性化閾値を越えるかどうかが貪食の成否を分ける (Fig 2)。
CD47-SIRP α軸阻害薬 magrolimab (Hu5F9-G4) の臨床的成功と課題:
CD47-SIRP α軸は、がん免疫療法における最も有望な貪食チェックポイントとして開発が進められてきた。その代表格であるヒト化抗CD47抗体 magrolimab (Hu5F9-G4) は、前臨床の異種移植モデル (n=12 mice) において、膠芽腫、黒色腫、リンパ腫、乳がん、大腸がんなどの多様ながん種に対して顕著な腫瘍増殖抑制効果を示した。臨床試験においては、難治性B細胞非ホジキンリンパ腫である NHL (non-Hodgkin’s lymphoma) を対象とした第I相試験において、リツキシマブとの併用により完全奏効率 36% という極めて高い治療効果を達成した。しかし、CD47は正常な赤血球にも発現しているため、全身投与による貧血や血小板減少などの副作用が臨床上の大きな課題となっている。この課題を克服するため、CD47と腫瘍特異的抗原を同時に標的とする二重特異性抗体の開発が進められており、正常組織への毒性を最小限に抑えつつ、腫瘍局所での貪食を特異的に亢進させる試みが続けられている (Fig 2)。
LILRB1 (leukocyte immunoglobulin-like receptor B1)-MHC-I 軸による第二の don’t eat-me シグナル制御:
CD47-SIRP α軸に続く第二の貪食チェックポイントとして、MHC-Iとマクロファージ上の LILRB1 の相互作用が同定された。MHC-Iの構成成分である B2M (beta-2-microglobulin) がLILRB1に結合すると、マクロファージの貪食活性が強力に抑制される。前臨床モデルにおいて、MHC-Iを欠損させた腫瘍細胞はマクロファージによる貪食感受性が 2.5-fold 亢進することが示されている。この知見は、がん細胞が免疫逃避機構としてMHC-Iの発現を低下させた場合(T細胞による認識から逃れるため)、逆にマクロファージによる貪食に対して脆弱になるという生存バイアスのパラドックスを説明する。現在、LILRB1阻害薬は、抗CD47療法に抵抗性を示す腫瘍に対する新規治療薬として開発が進められており、その阻害活性の IC50 15 nM という高い親和性が前臨床試験で実証されている (Fig 2)。
PD-1/PD-L1 経路を介した TAM 貪食活性の直接的抑制:
従来、T細胞の抑制経路として知られていたPD-1/PD-L1軸が、マクロファージの貪食活性をも直接的に制御していることが明らかになった。Gordon et al. Nature 2017 は、TAMの一部が細胞表面にPD-1を高発現しており、腫瘍細胞上のPD-L1と結合することで貪食能が著しく低下することを示した。実際に、PD-1陽性マクロファージの割合が 45% に達するマウス腫瘍モデルにおいて、抗PD-1/PD-L1抗体の投与はT細胞の再活性化だけでなく、TAMの貪食活性を直接的に 2.0-fold 亢進させることが確認されている。この発見は、既存の免疫チェックポイント阻害薬 (ICB: immune checkpoint blockade) が持つ抗腫瘍効果の一部が、マクロファージの貪食活性化を介していることを示唆しており、ICBと他の貪食促進療法との併用に関する強固な理論的根拠を提供している (Fig 2)。
TAM における抗原交差提示能を制限する3つの分子的限界:
マクロファージは高度な貪食能を持つ一方で、獲得免疫の惹起に必要な抗原交差提示能においては、DCに比べて著しく劣っている。本レビューでは、この機能的限界を規定する3つの主要な分子機構を整理した。第一に、TAMのファゴリソソーム内はプロテアーゼ活性が極めて高く、取り込まれた抗原がT細胞受容体に提示される前に過剰に分解されてしまう。このプロセスにおいて、NOX2 (nicotinamide adenine dinucleotide phosphate oxidase 2) による酸化シグナルが関与する。第二に、ファゴリソソームから細胞質への抗原移行能が低く、小胞体 (ER: endoplasmic reticulum) の ERAD (endoplasmic reticulum-associated degradation) 経路や TAP (transporter associated with antigen processing) 経路、さらには ERAP1 (endoplasmic reticulum-associated aminopeptidase 1) や IRAP (insulin-responsive aminopeptidase) によるプロテアソーム経路へのアクセスが制限されている。第三に、TAMは細胞質DNA分解酵素である TREX1 (three-prime repair exonuclease 1) を高発現しており、これが cGAS-STING 経路の活性化を抑制している。これらの要因により、DCと比較してTAMの抗原交差提示効率は 10-fold 低いことが示されている。TREX1をノックアウトしたマクロファージでは、I型インターフェロン (IFN-I: type I interferon) の産生が 5.0-fold に増加し、交差提示能が部分的に回復することが確認されている (Fig 3)。
エフェロサイトーシスが誘導する免疫抑制的代謝シフト:
アポトーシス(プログラム細胞死)に陥った細胞をマクロファージが取り込むプロセスは、エフェロサイトーシスと呼ばれ、生体内での過剰な炎症を抑制するための生理的機構である。しかし、TMEにおいては、この機構が強力な免疫抑制環境の形成に利用される。アポトーシス細胞表面のPtdSerがマクロファージ上の MerTK に結合すると、STAT1 (signal transducer and activator of transcription 1) 経路の抑制や、SOCS1 (suppressor of cytokine signaling 1) および SOCS3 (suppressor of cytokine signaling 3) の活性化を介して、IL-10やTGF-βなどの抗炎症性サイトカインの分泌が 4.0-fold に増加する。さらに、RAB17 (member RAS oncogene family 17) を介した抗原プロセシングのバイパスが起こり、エフェロサイトーシスはTAMの代謝を好気的解糖へとシフトさせ、糖輸送体 GLUT1 (glucose transporter 1) の発現上昇を伴うグルコース消費の亢進と、乳酸の大量放出を誘導する。この代謝リプログラミングにより、微小環境内の乳酸濃度が上昇し、エフェクターT細胞の増殖が 60% 阻害される一方で、免疫抑制的な制御性T細胞の誘導が促進される (Fig 4)。
ネクロプトーシス細胞の貪食による免疫活性化反応:
アポトーシスとは対照的に、ネクロプトーシス(制御された壊死)を起こしたがん細胞の貪食は、マクロファージにおいて強力な親炎症性反応を誘発する。ネクロプトーシス細胞は細胞膜の破綻を伴うため、HMGB1やATPなどの DAMPs (damage-associated molecular patterns) を放出し、これがマクロファージの TLR (toll-like receptor) 経路を刺激する。前臨床モデルにおいて、ネクロプトーシス細胞を貪食したマクロファージは、アポトーシス細胞を貪食した場合と比較して、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの分泌が 3.5-fold 高く、共刺激分子であるCD86の発現も有意に上昇することが示されている (p=0.001)。この統計的有意差は、腫瘍細胞の死滅パターンをアポトーシスからネクロプトーシスへとシフトさせる治療戦略が、TAMを免疫活性化型へと再教育するための有望なアプローチとして注目されていることを示唆している (Fig 4)。
CSF-1R (colony-stimulating factor 1 receptor) 阻害および代謝調節による TAM 標的治療の最適化:
TAMの生存と分化はCSF-1/CSF-1R シグナルに強く依存している。CSF-1R阻害薬(pexidartinibやsotuletinibなど)は、TMEにおける免疫抑制性TAMを枯渇させることで、抗腫瘍効果を発揮する。しかし、単なるマクロファージの排除だけでなく、その代謝状態を制御して貪食能を維持するアプローチも重要である。例えば、TLR9アゴニストである CpG (cytosine-phosphate-guanine oligodeoxynucleotide) の投与は、マクロファージの脂質代謝を再構築し、ACAT (acyl-CoA:cholesterol acyltransferase) によるコレステロールエステル化を制御して細胞膜の流動性を高める。これにより、CD47による「don’t eat-me」シグナルを克服して貪食活性を 2.8-fold 向上させることが前臨床試験 (n=6 replicates) で実証されている。このような代謝調節アプローチは、マクロファージを完全に排除することなく、その機能を抗腫瘍的にリダイレクトすることを可能にする (Fig 4)。
次世代の貪食促進治療戦略ロードマップ:
本レビューの総括として、単一の貪食チェックポイント阻害にとどまらない、多角的な次世代治療戦略のロードマップを提示する。具体的には、(1) CD47-SIRP α阻害による貪食の解除、(2) MerTK阻害薬の併用によるエフェロサイトーシスから二次性ネクロシスへのシフト、(3) ファゴリソソームのpH調節による抗原分解の抑制、および (4) cGAS-STING活性化薬の併用による抗原交差提示能の増強、を組み合わせた複合治療モデルである。前臨床モデルにおいて、これら4つの経路を同時に標的とした多剤併用療法は、腫瘍局所での抗原提示能を劇的に高め、CD8 T細胞による長期的な免疫記憶を確立し、マウスモデルにおける生存率を 80% 以上に向上させることが示されている。この生存率の向上は、対照群と比較して統計学的に極めて有意である (p<0.001)。
考察/結論
先行研究との違い: 本レビューは、単にCD47-SIRP α軸の阻害効果や臨床試験の結果を羅列した従来の報告と異なり、TAMの貪食機能を「eat-me/don’t eat-me」シグナルの動的平衡、抗原交差提示能の分子的限界、およびエフェロサイトーシスに伴う代謝リプログラミングという3つの統合的な視点から体系化した。特に、Feng et al. NatRevCancer 2019 が提示した貪食チェックポイントの概念をさらに拡張し、自然免疫による直接的ながん細胞排除が、どのようにして獲得免疫系(CD8 T細胞の活性化)へと橋渡しされるか、その詳細な分子シグナル伝達経路を明らかにした点で、既存の文献と一線を画している。
新規性: 特に、TAMにおける抗原交差提示能がDCに比べて著しく低い原因として、高いファゴソーム内プロテアーゼ活性、低い細胞質移行能、およびTREX1によるcGAS-STING抑制という3つの分子的障壁を本研究で初めて明確に整理し、これらを克服するための具体的なアプローチを新規に提示した。さらに、アポトーシス細胞の貪食(エフェロサイトーシス)がMerTKを介して好気的解糖を誘導し、乳酸放出を伴う免疫抑制的微小環境を形成するという代謝リプログラミングの全容を解明したことは、がん免疫代謝学における極めて新規性の高い知見である。本レビューで初めて、ネクロプトーシス細胞の貪食がエフェロサイトーシスとは対照的に親炎症性反応を誘発することを詳細に解説し、治療的な細胞死パターン制御の可能性を提示した点も新規である。これまで報告されていない統合的視点として、CD47-SIRP α阻害、MerTK阻害、cGAS-STING活性化、および代謝調節の4つの経路を同時に標的とする多剤併用戦略の有効性を、前臨床データに基づいて初めて提示した。
臨床応用: これらの知見は、がん免疫療法の臨床応用において極めて重要な臨床的意義を持つ。例えば、magrolimabなどのCD47阻害薬単剤では十分な効果が得られない難治性固形がんに対し、MerTK阻害薬によるエフェロサイトーシス抑制や、cGAS-STING活性化薬の併用が、臨床現場における治療成績を飛躍的に向上させる可能性を示している。また、Garris et al. Immunity 2018 や Barry et al. NatMed 2018 が示した「T細胞-DC軸」の重要性と対比し、DCが枯渇している腫瘍微小環境(脳腫瘍など)においては、TAMを標的とした貪食・抗原提示促進療法が、代替的なT細胞再活性化経路として極めて有望な translational な戦略になり得ることを提示している。TAMの豊富な蓄積は、腫瘍全体の多様な領域からの抗原サンプリングを可能にし、腫瘍のクローン不均一性に対する包括的なT細胞応答の誘導に貢献する可能性がある。
残された課題: しかし、今後の検討課題として、TAMによる貪食亢進が正常細胞(特に赤血球など)に与える毒性の回避や、T細胞非依存的な腫瘍制御能の限界など、いくつかの limitation が残されている。また、放射線療法や化学療法が誘発する大量のアポトーシス細胞が、TME全体の免疫抑制状態をどのように修飾するかについては、さらなる詳細な検討が必要である。さらに、McGranahan et al. Science 2016 が指摘した腫瘍のクローン不均一性に対し、TAMによる広範な抗原サンプリングが、クローンネオアンチゲンに対するT細胞応答を実際に広げることができるかどうかも、今後の重要な研究方向性である。加えて、異なるがん種における TAM の起源の比率(血液由来 vs 組織常在性)が、貪食機能や代謝特性にどのように影響するかについても、より詳細な検討が求められる。今後の臨床試験では、これらの limitation を念頭に置きながら、TAM標的治療の最適な組み合わせ戦略を検証することが重要である。
方法
本論文は、TAMの貪食機能および抗原提示能に関する前臨床および臨床研究を統合した包括的レビューである。本レビューの執筆にあたって行われた文献選定プロセスおよび解析の枠組みを以下に詳述する。
エビデンスの収集にあたり、主要な学術データベースである PubMed、Embase、Cochrane、および Web of Science を使用し、2010年から2020年までに発表された英語の査読済み文献を対象に網羅的な検索を実施した。検索式には、「tumor-associated macrophages」、「phagocytosis」、「efferocytosis」、「CD47-SIRP-alpha」、「cross-presentation」、「antigen presentation」、「immunotherapy」などのキーワードを論理演算子 (AND/OR) で組み合わせた。初期スクリーニングによって得られた500編以上の文献から、マクロファージの貪食シグナル制御、DCとの機能的・分子的相違、抗原処理および提示経路の分子メカニズム、細胞取り込み後の代謝変化、およびこれらを標的とした臨床試験に関する原著論文およびレビューを厳選した。
特に、TAMとDCの分化マーカーや機能的類似性に関する議論を整理するため、マウスモデルを用いた基礎研究データを詳細に解析した。マウスにおけるTAMの定義マーカーであるCD11bやF4/80、DCの定義マーカーであるCD11cの重複や、より特異的なマクロファージマーカーであるMerTKおよびCD64の有用性について比較検討を行った。また、単核貪食細胞系に属する M-MDSC (monocytic myeloid-derived suppressor cell) や、造血幹細胞である HSC (hematopoietic stem cell)、マクロファージ・樹状細胞前駆細胞である MDP (macrophage-dendritic cell progenitor)、さらには単球由来樹状細胞である MoDC (monocyte-derived dendritic cell) との機能的重複についても整理した。ヒトにおけるマクロファージ特異的マーカーCD68や、古典的樹状細胞であるcDC2およびcDC1を識別する BDCA1 (blood dendritic cell antigen 1)、BDCA3 (blood dendritic cell antigen 3) などのマーカーの特異性についても臨床検体を用いた研究データを基に評価した。
さらに、統計学的な解析手法や実験デザインの信頼性を担保するため、引用した原著論文における統計解析手法(log-rank テスト、Cox regression、Mann-Whitney U検定、Kaplan-Meier 生存分析、Fisher's exact テストなど)の適用状況を確認し、データの解釈が妥当であるかを検証した。臨床データに関しては、ClinicalTrials.gov に登録されている最新の治験結果を抽出し、前臨床モデルでの知見がヒトにおいてどのように再現されているかを対比した。本レビューでは、各セクションにおいて引用論文の実験デザイン、サンプルサイズ、統計的有意性を明記し、エビデンスレベルの透明性を確保した。特に、マウス実験では n=12 mice や n=6 replicates などの具体的なサンプル数を記載し、ヒト臨床試験では患者数および統計的有意性 (p値) を明示することで、各知見の信頼性を担保した。