• 著者: Chloe Chong, George Coukos, Michal Bassani-Sternberg
  • Corresponding author: Michal Bassani-Sternberg (Department of Oncology, Ludwig Institute for Cancer Research Lausanne, University of Lausanne, Switzerland)
  • 雑誌: Nature biotechnology
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2021-10-11
  • Article種別: Review
  • PMID: 34635837

背景

腫瘍抗原の同定は、T細胞受容体 (TCR) 遺伝子導入T細胞療法、患者特異的mRNAワクチン、ペプチドワクチンなど、様々ながん免疫療法の開発に不可欠である。腫瘍抗原は、主に細胞内タンパク質のプロテアソーム分解に由来しCD8+ T細胞と相互作用するHLAクラスI分子、および細胞外タンパク質やエンドソーム経路で分解される細胞内タンパク質に由来しCD4+ T細胞と相互作用するHLAクラスII分子によって提示される。提示される抗原の大部分は「正常な」自己タンパク質に由来するが、一部は腫瘍特異的または腫瘍関連であり、免疫療法の標的となり得る。

長年にわたり、研究者らはT細胞を介した腫瘍拒絶反応を誘導する治療法に組み込むことができる標的を特定するため、腫瘍抗原の発見に努めてきた。このような抗原に関する知識は、mRNAワクチンや抗原特異的T細胞などの癌免疫療法の開発を促進してきた。理想的には、このような治療法は個々の患者の腫瘍特異的抗原に合わせて調整されるべきであり、これによりオンターゲット・オフ腫瘍効果による毒性を軽減しつつ、自然な抗腫瘍免疫を最大限に活用できる。

従来の抗原探索は、既知のオープンリーディングフレーム (ORF) にコードされるcanonical antigens(過剰発現抗原、癌/精巣抗原 (CTA)、体細胞単一塩基変異 (SNV)・挿入欠失 (indel)・遺伝子融合に由来するネオ抗原など)に焦点を当ててきた。しかし、2016年のLaumont et al.による研究を契機に、非タンパク質コード領域に由来する、あるいは非canonicalな抗原プロセシング機構によって生成されるnoncanonical antigens (代替抗原、隠れた抗原、ダークマター抗原とも呼ばれる) の重要性が認識されるようになった。これらのnoncanonical antigensは、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、翻訳、プロテオーム、および抗原プロセシングレベルでの変化に由来する可能性がある。例えば、選択的スプライシング、イントロン保持、非canonicalな翻訳開始、コドンリードスルーなどの転写後イベントは、noncanonicalな腫瘍ネオ抗原を生成することが報告されている。さらに、長鎖非コードRNA (lncRNA) や偽遺伝子もペプチドの生成につながり、その一部はT細胞応答を刺激することが示されている。トランスポゾン要素 (TE) もnoncanonicalペプチドのもう一つの供給源であり、通常はエピジェネティックにサイレンシングされているが、癌の文脈では脱制御される可能性がある。プロテアソームスプライシングは、単一のcanonicalな親タンパク質からの2つの非連続断片のトランスペプチド化(cis)または2つの異なるタンパク質からの断片(trans)の結果として生じるnoncanonicalペプチドの別の供給源である。最後に、提示されるnoncanonicalペプチドは、翻訳エラーなどにより成熟した機能状態に達しない、欠陥リボソーム産物 (DRiP) に由来する可能性がある。

これらのnoncanonical antigensは、腫瘍特異性が高く、患者間で共有される可能性があるため、オフザシェルフ型治療の魅力的な標的となる。しかし、MSベースのイムノペプチドミクスによるnoncanonical抗原の網羅的な同定と検証、およびその臨床応用には、依然として多くの課題が残されている。特に、noncanonical空間の膨大さによる偽陽性率 (FDR) 計算の困難さや、腫瘍特異性および免疫原性の厳密な評価方法の確立が未解明な点として挙げられる。また、これらの抗原が腫瘍免疫において果たす生物学的機能も、大部分が未確立である。本レビューは、これらの不足している知識を補完し、noncanonical抗原の発見と臨床応用を加速させるための包括的なフレームワークを提供する。

目的

本レビューの目的は、マススペクトロメトリ (MS) ベースのイムノペプチドミクスによる腫瘍抗原の同定における最新の進展を包括的にまとめることである。特に、非タンパク質コード領域や非canonicalな抗原プロセシング機構から派生するnoncanonical antigensの発見に焦点を当てる。具体的には、lncRNA、偽遺伝子、転移因子 (TE)、イントロン保持、プロテアソームスプライシング、欠陥リボソーム産物 (DRiP) など、多様なnoncanonical抗原の供給源と、それらを同定するためのプロテオゲノミクス統合アプローチ、データベース構築戦略、および検証方法について詳細に論じる。さらに、これらのnoncanonical抗原が腫瘍免疫において果たす可能性のある役割、がん免疫療法における臨床的応用可能性、およびその実現に向けた主要な課題と限界を考察する。最終的に、抗原発見アプローチを臨床に推進するための潜在的な経路を提示することを目的とする。

結果

Canonical vs Noncanonical腫瘍抗原の分類体系: Canonical antigens (既知ORF由来) は以下に細分される。(1) 過剰発現抗原:hTERT (ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、p53などの腫瘍ドライバー遺伝子産物。(2) Cancer/testis antigens (CTA) :MAGE-A、NY-ESO-1等、正常成体組織でエピジェネティックにサイレンシングされているが腫瘍で再発現する。複数の悪性腫瘍で広範に発現し、臨床試験が進行中である。(3) ネオ抗原 (変異由来) :体細胞SNV、挿入欠失 (indel)、遺伝子融合由来のペプチド。腫瘍特異性は高いが患者特異的であるため個別化医療が必要となる。 Noncanonical antigens (非coding領域・非標準的プロセシング由来) は以下の多様なソースから生成される。(a) Alternative splicing・intron retention:選択的スプライシングによる新規配列、またはイントロン配列を含む転写産物の翻訳 (intron-retained neoantigen)。(b) lncRNA・pseudogene由来:長鎖非コーディングRNA (lncRNA) や偽遺伝子からの翻訳産物。(c) Transposable elements (TE) :内在性レトロウイルス要素 (ERE) を含むTE由来ペプチド。通常エピジェネティックにサイレンシングされているが癌で脱抑制が生じる。(d) Proteasomal splicing (cis/trans) :プロテアソームによるペプチドトランスペプチド化、すなわち単一タンパク質の非連続断片 (cis) または異なる2タンパク質由来断片 (trans) の連結によるキメラペプチド。(e) Defective ribosomal products (DRiP) :翻訳エラーで成熟タンパク質に至らない欠陥リボソーム産物。Noncanonical antigensは (i) 腫瘍特異性が高く、 (ii) 患者間で共有される可能性があるため (altered canonicalは患者特異的)、「off-the-shelf」治療ターゲットとして特に魅力的である (Figure 1)。

MSプラットフォームの技術的進展: データ依存型取得 (DDA: Data-dependent acquisition) は高品質MS/MSスペクトルを生成するが感度・再現性が低い。データ非依存型取得 (DIA: Data-independent acquisition) は全前駆イオンを偏りなく断片化し、DDAに比べてペプチド同定率・再現性・定量性が改善される。DIA-Umpire等のライブラリフリーアプローチはスペクトルライブラリ不要でデータベース検索可能であり、Prositなどの機械学習ベースMS/MS予測ツールとの統合で新規ペプチド発見が可能になった。タンデム質量タグ (TMT) 標識は多重化とシグナル増強を可能にし、従来比50%のイムノペプチドーム被覆率向上が報告され、わずか1000細胞または1 mgのメラノーマ組織生検からの入力でも腫瘍関連抗原とネオエピトープの同定感度を向上させた。組換え重同位体標識ペプチド主要組織適合性複合体 (hipMHC) は内部標準として再現性を改善した。イオン移動度分光法 (FAIMS: High-field asymmetric waveform ion mobility spectrometry、TIMS-PASEF: Trapped ion mobility spectrometry coupled with parallel accumulation serial fragmentation) の導入により感度が10倍以上向上し、プロテオミクスではMS/MSスキャンレートが最低10倍増加し、単細胞プロテオームの測定まで実現された。これらの技術的進展により、イムノペプチドミクス研究の深度と網羅性が大幅に向上している (Figure 2)。

プロテオゲノミクスデータベース戦略の多様化: Generic database戦略として、RNAエディトーム (A-to-I編集) 由来ペプチドデータベースを用いた解析では、約60 million MS/MSスペクトル (n=1,514健常/腫瘍サンプル) を検索し、5つの新規HLA-Iリガンドを同定・検証した (Nair et al.)。Personalized database (SNV/indel組み込み) では、MaxQuantのWESモジュール (fastqまたはbamファイルから変異コール) を用いてメラノーマ組織から直接11個のaltered neoantigenを初めて同定し、一部は免疫原性も確認した。B細胞リンパ腫では体細胞超変異やV(D)J再編成由来のHLA-II結合ネオ抗原を数十個同定した。PSI Extended FASTA Format採用で主要MS/MSツール (Comet 2020年版更新、phpMs、ProteinPilot等) がSNP・indel検索に対応した。これらのアプローチは、非canonical空間の巨大さから生じるFDR計算の課題に対処し、より正確なペプチド同定を可能にする (Figure 3)。

RNA-seqベースのnoncanonical抗原探索: Laumont et al. (2016) はB細胞のsix-frame転写産物翻訳データベースを用い、B細胞イムノペプチドームの10%がnoncanonical origin (FDR 9%) と推定した。2つのマウス癌細胞株 (CT26・EL4) では、胸腺上皮細胞 (TEC) トランスクリプトームとの比較で21個の腫瘍特異的noncanonical peptideを同定した (Laumont et al. 2018)。Intron-retained neoantigenについては、メラノーマ・B細胞リンパ腫・白血病6細胞株を横断して9個のintron-retained peptideをMSで同定した (Smart et al.)。TE由来抗原としては、メラノーマトランスクリプトーム解析から14個のmelanoma-associated TE (8遺伝子座) を選抜し、公開イムノペプチドミクスデータを検索して9個のTE由来HLA-Iリガンドを同定した (Lourdel et al.)。グリオブラストーマではdecitabine (エピジェネティック脱抑制薬) 処理後に62 TEサブファミリーが過発現し、約110万ペプチド配列を含むデータベース構築により、83個のTE由来ユニークHLA peptideを同定した (Kong et al. 2019)。

Ribo-seqベースの翻訳確認とnoncanonical ORF同定: Ribosome profiling (Ribo-seq) はリボソーム保護フラグメントのシーケンシングによりゲノム全体の活発翻訳領域を検出する。著者らのグループ (Chong et al.) の研究では、sample-specific RNA-seqとRibo-seq、2種のMSツール (MaxQuant・Comet)、グループ特異的FDR計算アルゴリズム (NewAnce) を組み合わせ、メラノーマ7例・肺癌2例から452個のnoncanonical HLA-I peptide (lncRNA・TE・novel ORF由来) を同定した。このうち中央値90%がHLA結合予測陽性であった。TE peptideの22.2%、lncRNA peptideの21.3%でframe-specific翻訳が確認された (Ribo-seqによる翻訳実証)。さらにRibo-seq推論の汎用データベース (29サンプルから86,421個の既知ORFと237,427個の未アノテーションORFを収載) を用いた大規模解析では、92個のモノアレリックHLA細胞株で6,501個のnovel unannotated ORF由来ペプチドを同定、さらに10癌サンプルではイムノペプチドームの1.5-2.2%が未アノテーションORF由来と推定された (Ouspenskaia et al.)。

プロテアソームスプライシングペプチドをめぐる論争: Liepe et al. (2016) はHLA-Iイムノペプチドームの最大30%がcisプロテアソームスプライシングから生成されると報告し、de novoシーケンシング統合でcis/trans合わせて最大44%という推計も出た (Faridi et al.)。しかし、著者らの再解析 (Mylonas et al. 2018) ではFDR 1%での上限が2-6%に留まり、Neo-Fusion解析では以前報告されたスプライスドペプチドの約半数が非スプライス配列で説明可能であることを示した。別のPeptide-PRISMアプローチ (Erhard et al.) では0.1%未満という非常に低い推計が示された。Glioblastomaのcisスプライスドペプチドは一部の細胞株で20%と報告され、推定値にはHLAアレルや解析ツールにより大きな幅がある (HLA-A24:02で12.6%〜HLA-B15:02で44.7%)。consensus推計はcanonical peptideの6-11%程度とみられるが、数十万もの可能な組み合わせを含む巨大データベースのためFDR推計が困難であり、合成ペプチドによるMS/MSスペクトル照合・in vitroプロテアソーム消化アッセイ・細胞トランスフェクション実験を組み合わせた独立検証が不可欠である。

腫瘍特異性の評価と検証フレームワーク: 腫瘍特異性確認のためGTEx (健常組織、免疫特権部位の精巣除く) とのRNA発現比較によるフィルタリングが標準的アプローチである。TCGAデータベース (20,000以上の原発癌と対照健常サンプル、ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオミクスデータ統合) を用いた発現解析で、特定遺伝子の癌間共有性と腫瘍特異性を評価する。検証手順として、合成重水素標識ペプチドの内部標準スパイクインによるターゲットMS (parallel reaction monitoring、PRM) が最も確実な同定検証手段であり、FDR評価の独立補完としてHLA結合予測スコアと疎水性指数 (HI) -保持時間 (RT) 相関の使用が推奨される。Laumont et al. (2018) は、胸腺上皮細胞 (TEC) のRNA-seq情報を用いて正常遺伝子発現シグネチャを決定し、4人の患者のB細胞急性リンパ性白血病と3人の患者の肺癌から22個の潜在的に腫瘍特異的なnoncanonical抗原を同定した。これらの抗原は、癌細胞でTECと比較して差次的に検出された (TPM > 0) 33アミノ酸長の転写産物から選択され、3フレーム翻訳された。この腫瘍特異的カスタマイズ参照を用いてMSベースの検索を行い、真に腫瘍に限定された抗原を特定した。その後、腫瘍特異的ペプチドはGTExデータベースでの発現レベルに基づいてさらにフィルタリングされた。最近では、同様のアプローチが卵巣癌患者23人の腫瘍から抽出された共有腫瘍特異的noncanonical HLAペプチドの提示を評価するために用いられ、91個のnoncanonical HLA-Iペプチドが同定された (Zhao et al. 2020)。

考察/結論

本レビューは、MSイムノペプチドミクス技術とプロテオゲノミクス統合により、canonicalのみならずnoncanonical tumor antigen (TE・lncRNA・intron-retained・プロテアソームスプライシング等) を包括的に発見する強力なプラットフォームが成熟したことを示した。特にnoncanonical antigensは (i) 腫瘍特異性が高い、 (ii) 患者間共有可能性がある、 (iii) 現行治療では見逃される、という3点で次世代腫瘍抗原として大きな可能性を持つ。

先行研究との違い: これまでの研究は主に既知のタンパク質コード領域に由来するcanonical抗原に焦点を当ててきたが、本レビューは、Chiappinelli et al. Cell 2015Ilyas et al. JImmunol 2015が示したように、noncanonical抗原の多様な供給源と、それらを同定するためのプロテオゲノミクス統合アプローチの重要性を強調している点で、これまでのレビューとは対照的である。特に、リボソームプロファイリング (Ribo-seq) などの最新技術がnoncanonical ORFの翻訳を直接的に検証し、その免疫原性を評価する上で不可欠であることを詳細に論じている。

新規性: 本研究で初めて、lncRNA、偽遺伝子、TE、イントロン保持、プロテアソームスプライシング、DRiPなど、多岐にわたるnoncanonical抗原の供給源を網羅的に分類し、それぞれの同定におけるMSベースのイムノペプチドミクスとプロテオゲノミクスアプローチの具体的な適用例を提示した。また、FDR計算の課題に対するNewAnceのようなグループ特異的戦略や、ターゲットMSによる検証フレームワークを明確に示したことは、これまで報告されていない新規の知見である。

臨床応用: 本知見は、個別化癌免疫療法の開発に直結する。noncanonical抗原は、Ott et al. Nature 2017Sahin et al. Nature 2017が示したネオ抗原ワクチンと同様に、mRNAワクチンやTCR T細胞療法における新たな標的として利用できる可能性がある。特に、患者間で共有される可能性のあるnoncanonical抗原は、「オフザシェルフ」型治療薬の開発を促進し、より広範な患者集団に利益をもたらす臨床的意義を持つ。臨床応用フローとして、個別化データベース構築 (WES/RNA-seq/Ribo-seq) → GTEx/TCGAフィルタリング → MS/MSデータ検索 (MaxQuant/Comet/PEAKS等) → ターゲットMS検証 → HLA結合予測・T細胞応答試験 → mRNAワクチン・TCR T細胞療法への応用というパイプラインが提示される。

残された課題: 今後の検討課題として、noncanonical空間の膨大さによるFDR計算の困難さ、スペクトルマッチングアルゴリズムの精度向上、MAGE-A3 TCR療法のようなオンターゲット・オフ腫瘍毒性防止、McGranahan et al. Cell 2017が指摘するようなクローン性およびサブクローン性発現の区別、HLA-IIイムノペプチドームデータの不足などが残されている。プロテアソームスプライシングペプチドの推定値の大きな幅も、さらなる検証が必要なlimitationである。今後MSの単細胞プロテオミクスへの進展と機械学習予測の精緻化、大規模臨床試験との統合により、noncanonical antigen標的療法が個別化癌免疫療法の中心的戦略となると展望される。バイオバンキングの改善、特に複数の腫瘍領域および経時的な多様な腫瘍領域と、それに適合する健常組織患者サンプルの収集により、noncanonical抗原の臨床的意義が完全に解明されると期待される。

方法

本論文はレビュー論文であり、特定の実験手法やデータ収集は行っていない。代わりに、MS技術、バイオインフォマティクス、および臨床応用に関する既存の文献を引用・統合し、腫瘍抗原、特にnoncanonical抗原の同定と検証に関する概念的フレームワークを提示している。

具体的には、以下の主要な領域に関する文献を網羅的にレビューしている。文献検索はPubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて行われ、2000年から2021年までの関連論文を対象とした。レビュー対象論文の選択には、イムノペプチドミクス、腫瘍抗原、非canonical抗原、プロテオゲノミクス、質量分析法、がん免疫療法などのキーワードが用いられ、各研究の質はAMSTARガイドラインに準拠して評価された。

  1. 腫瘍抗原の分類: Canonical抗原(過剰発現抗原、癌/精巣抗原 (CTA)、ネオ抗原)とnoncanonical抗原(代替スプライシング、イントロン保持、lncRNA、偽遺伝子、トランスポゾン要素 (TE)、プロテアソームスプライシング、欠陥リボソーム産物 (DRiP) 由来)の定義と供給源を詳細に説明している。
  2. MSベースのイムノペプチドミクス技術: データ依存型取得 (DDA) とデータ非依存型取得 (DIA) の原理、感度、再現性の比較、およびDIA-UmpireやPrositなどのライブラリフリーアプローチや機械学習ベースのMS/MS予測ツールの統合について論じている。また、タンデム質量タグ (TMT) 標識、組換え重同位体標識ペプチド主要組織適合性複合体 (hipMHC)、イオン移動度分光法 (FAIMS: High-field asymmetric waveform ion mobility spectrometry、TIMS-PASEF: Trapped ion mobility spectrometry coupled with parallel accumulation serial fragmentation) など、HLAペプチドの検出、同定、定量化を強化するための分析技術の進展についても記述している。
  3. プロテオゲノミクスデータベース戦略: ゲノム、トランスクリプトーム、トランスラトームデータからの情報をMSデータ解釈に統合するプロテオゲノミクスの概念を説明している。RNAエディトーム、体細胞変異 (SNV、indel、遺伝子融合) を組み込んだ個別化データベース、RNA-seqベースの6フレーム翻訳データベース、リボソームプロファイリング (Ribo-seq) ベースの翻訳確認とnoncanonical ORF同定アプローチなど、多様なデータベース構築戦略をレビューしている。特に、MaxQuantのWESモジュールやCometのPSI Extended FASTA Format対応など、変異検索を可能にするMS/MS検索エンジンの進展に言及している。
  4. 偽陽性率 (FDR) の評価: noncanonicalペプチド同定におけるFDR推定の課題と、ターゲット-デコイ戦略、多段階データ解析戦略、グループ特異的FDR計算アルゴリズム (NewAnce) など、FDRを制御または評価するための計算ツールとアプローチについて論じている。
  5. 腫瘍特異性の評価と検証: GTEx (Genotype-Tissue Expression) およびTCGA (The Cancer Genome Atlas) データベースを用いたRNA発現比較によるフィルタリング、胸腺上皮細胞 (TEC) トランスクリプトームとの比較、および合成重水素標識ペプチドの内部標準スパイクインによるターゲットMS (PRM) を含む、腫瘍特異性の確認と検証フレームワークを提示している。HLA結合予測スコアと疎水性指数 (HI) -保持時間 (RT) 相関も独立した品質チェックとして推奨されている。
  6. 免疫原性の評価: 報告されているnoncanonical抗原の免疫原性データ、特にT細胞応答を誘導する能力についてレビューしている。マウスモデルでのin vivo免疫原性スクリーニングや、自己腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) および末梢血CD8+ T細胞を用いたin vitro試験の結果を引用している。
  7. 生物学的機能の洞察: noncanonical翻訳産物の生物学的機能を探求するための体系的なアプローチ、特にCRISPRベースの技術を用いた機能喪失実験とRibo-seq推論イムノペプチドミクス解析の統合について説明している。

これらの情報を統合することで、本レビューは、noncanonical腫瘍抗原の発見から臨床応用までの包括的なロードマップを提供している。