• 著者: Mingye Feng, Wen Jiang, Betty Y.S. Kim, Cheng Cheng Zhang, Yang-Xin Fu, Irving L. Weissman
  • Corresponding author: Mingye Feng (City of Hope), Wen Jiang (UT Southwestern)
  • 雑誌: Nature Reviews Cancer
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-08-28
  • Article種別: Review
  • PMID: 31462760

背景

がん細胞は、T細胞による適応免疫応答の回避機構(PD-1/CTLA-4チェックポイント)に加え、マクロファージや樹状細胞(DC)などの食細胞による自然免疫応答も回避することが知られている。食細胞はがん細胞を直接貪食することに加え、貪食した抗原をT細胞に提示する交差提示(cross-presentation)を通じて適応免疫を誘導する重要な役割を担う。しかし、がん細胞は「私を食べるな(don’t eat me)」シグナルを発現することにより食細胞チェックポイントを活性化し、貪食を回避する。このメカニズムは、がんの免疫回避における重要な側面として認識されている。

CD47-SIRPα軸は、代表的な食細胞チェックポイントとして20年以上前から認識されてきた。この軸は、正常細胞が自己を非貪食として識別するための重要な機構であり、がん細胞はこの機構を悪用して免疫監視から逃れている。2011年のイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)の米国食品医薬品局(FDA)承認以降、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は複数のがん種で持続的奏効をもたらしたが、多くの患者は初期応答後に進行し、治療抵抗性を示す症例も少なくない。このため、新たな治療標的の探索が喫緊の課題となっている。Hodi et al. NEnglJMed 2010Topalian et al. NEnglJMed 2012Pardoll et al. NatRevCancer 2012などの先行研究により、ICIの有効性が確立されてきたが、その限界も指摘されている。

近年、PD-1経路がマクロファージにおいても食細胞チェックポイントとして機能することや、MHC-I-LILRB1軸などの新規食細胞チェックポイントの発見が相次ぎ、免疫療法の新たな標的として注目されるようになった。これらの発見は、がん免疫療法の効果を向上させるための新たな戦略的アプローチを提供する可能性を秘めている。特に、自然免疫細胞が適応免疫応答をプライミングする役割を考慮すると、食作用と自然免疫感知を阻害する腫瘍内在性プロセスを理解することが、自然免疫と適応免疫の両方を調節する効果的な併用免疫療法戦略の開発に不可欠である。これまでの研究では、T細胞を標的とした免疫チェックポイント阻害薬が主に注目されてきたが、食細胞チェックポイントの役割は依然として未解明な部分が多く、その治療的応用は手薄である。本レビューは、これらの新たな知見を統合し、がん免疫療法における食細胞チェックポイントの可能性を体系的に考察することを目的としている。

目的

本レビューの目的は、がん免疫療法の新たな標的として浮上している食細胞チェックポイント分子群(CD47-SIRPα、PD-1 on TAM、MHC-I-LILRB1、LILRB2、LILRB4)の分子機構を体系化し、「食べてくれ(eat me)」シグナルとの協調、cGAS-STING経路を通じた自然免疫と獲得免疫の連携、および臨床開発中の組み合わせ戦略を包括的に論じることである。具体的には、がん細胞が食作用を回避するメカニズムと、食細胞チェックポイント阻害が抗腫瘍免疫応答を誘導する効果に焦点を当て、特にCD47-SIRPα軸の阻害が前臨床および初期臨床試験で有望な結果を示していることを強調する。また、自然免疫細胞が適応免疫応答をプライミングする役割を踏まえ、食作用と自然免疫感知を阻害する腫瘍内在性プロセスを理解することが、自然免疫と適応免疫の両方を調節する効果的な併用免疫療法戦略の開発に不可欠であることを示す。

結果

CD47-SIRPα軸:主要食細胞チェックポイントの分子機構と臨床開発: CD47は多くのがん細胞で過剰発現するGPIアンカー型タンパク質であり、マクロファージ・DC上のSIRPα(signal regulatory protein alpha)に結合してITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)を介したシグナルを活性化する。この結合によりSHP-1/SHP-2リン酸化が誘導され、ミオシンIIA脱リン酸化・開口収縮阻害を招き、食細胞のアクチン細胞骨格再編成を阻害して貪食を抑制する。SIRPαはSIRPβ・SIRPγと同じSIRPファミリーに属し、SIRPβはDAP12(DNAX-activation protein 12)と結合して活性化シグナルを伝達するのに対し、SIRPαはITIMによる抑制シグナルを担う。CD47は正常造血幹細胞(HSC)にも発現するため、治療ウィンドウの確保が重要課題であり、Hu5F9-G4(magrolimab)の「プライミング低用量→維持用量」戦略では赤血球損失を20%未満に抑えた。転写調節としてはHIF1(hypoxia-inducible factor 1)、NF-κB(nuclear factor-kappa B)、MYC、ERK-NRF1(extracellular signal-regulated kinase-nuclear respiratory factor 1)が腫瘍型に応じてCD47プロモーターを活性化する多様な経路が同定されている。臨床開発中の製剤としてHu5F9-G4、TTI-621(SIRPα-IgG1 Fc融合タンパク質)、ALX148(SIRPα-IgG4 Fc融合タンパク質)、SRF231、CC-90002、IBI188が複数のフェーズI-II試験中である。Hu5F9-G4とリツキシマブの併用療法に関するフェーズIb試験(NCT02953509)では、CD20陽性再発難治性非ホジキンリンパ腫患者において50%の客観的奏効率(ORR)と36%の完全奏効率(CR)が報告された。特にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)サブセットでは30%を超える完全奏効が認められた (Table 1)。

マクロファージ上のPD-1:食細胞チェックポイントとしての新規役割: PD-1(programmed cell death protein 1)はT細胞での適応免疫チェックポイントとして知られてきたが、2017年の研究で腫瘍関連マクロファージ(TAM)にも発現することが明らかになった。マウスおよびヒト早期腫瘍のTAMではPD-1発現は最小限だが、腫瘍増殖とともに指数関数的に増加する。PD-1陽性TAMのほとんどはM2様マクロファージであり、腫瘍後期ではPD-1陽性TAMが優勢となる。PD-1陰性TAM集団はPD-1陽性TAMより高い食細胞能を示し、PD-L1(programmed cell death 1 ligand 1)欠損腫瘍細胞への食細胞貪食はPD-1陽性TAMで顕著に増加した。T細胞、B細胞、NK細胞を欠くRag2-/-マウスでも抗PD-1抗体または抗PD-L1阻害薬(Fcドメイン沈黙化製剤)が抗腫瘍効果を示し、TAMを介した食細胞機能回復が機序として確認された。これはT細胞チェックポイント遮断とは独立した機序であり、抗PD-1療法がデュアル機序(T細胞回復 + 食細胞活性化)を持つことを示唆する。この研究では、PD-1陽性TAMにおけるPD-L1欠損腫瘍細胞の貪食が約2.5倍増加したと報告されている。

MHC-I-LILRB1軸:「don’t eat me」と「don’t find me」の逆説的相互依存: 2018年に明らかになったように、がん細胞表面のMHC class I(major histocompatibility complex class I)(HLA-A/B/C、β2-ミクログロブリン-B2M複合体)がマクロファージ上のLILRB1(leukocyte immunoglobulin-like receptor B1)(CD85j/ILT2)に結合することで食細胞による貪食を回避する。B2Mが種特異的にLILRB1との相互作用を決定し、LILRB1はTAMで特に豊富に発現する。遺伝子操作でMHC-I-LILRB1相互作用を阻害すると、in vitroおよびin vivoでがん細胞の食細胞貪食への感受性が増大した。免疫不全マウス(適応免疫細胞なし・機能的マクロファージ保持)へのMHC-I発現あり・なしがん細胞の混合移植では、MHC-I欠損細胞に対する選択的淘汰圧が確認された。B2M/MHC-I・CD47の二重欠損は免疫担全マウスで相乗的に腫瘍増殖を抑制し(マクロファージ依存性)、T細胞非依存的な免疫サーベイランスの重要性を示した。一方でB2M欠損はMHC-I低下によりT細胞認識障害を招く逆説を生じ、「LILRB1遮断による食細胞貪食促進」が抗PD-1耐性機序への代替制御戦略となりうる。MHC-I欠損細胞の貪食は、野生型細胞と比較して約3倍増加した。

LILRB2(leukocyte immunoglobulin-like receptor B2)(ILT4)とLILRB4(leukocyte immunoglobulin-like receptor B4):TAM再プログラム化と白血病: LILRB2はMHC-Iおよびアンジオポエチンlikeタンパク(ANGPTL)と結合してTAMのM2様分化・免疫抑制機能を促進する。抗LILRB2抗体投与でSHP1/SHP2脱リン酸化抑制→ERK/p38 MAPKs(mitogen-activated protein kinases)活性化→NF-κB/STAT1(signal transducer and activator of transcription 1)活性化・PI3K-AKT抑制によりTAMがM1様に再プログラム化され、ヒトLILRB2をCD11b+細胞上に発現するトランスジェニックマウスで抗LILRB2+抗PD-L1の相乗効果が確認された。LILRB4は急性骨髄性白血病(AML)で高発現し、アポリポタンパク質E(ApoE)分泌を介してT細胞移動障害・Treg誘導を招くことが2018年に判明した(LILRB4-SHP2-NF-κBシグナル)。抗LILRB4抗体でマウスAMLモデルの腫瘍排除が有効であった。LILRB1・LILRB2とは異なりLILRB4はMHC-Iと結合せず、CD166との相互作用が腫瘍増殖抑制効果を媒介する。AML細胞におけるLILRB4発現は、健常ドナー骨髄細胞と比較して約10倍高かった。

「食べてくれ」シグナル(Pro-phagocytic signals):eat meとdon’t eat meのバランス: がん細胞は「don’t eat me」シグナルの発現増強と同時に「eat me」シグナルの対抗として機能する。カルレティキュリン(calreticulin)はアントラサイクリン、オキサリプラチン、放射線などで小胞体から細胞表面へ移動し(免疫原性細胞死、ICD)、LRP1(low-density lipoprotein receptor-related protein 1)受容体を介した食細胞受容体活性化を誘導する。カルレティキュリンは生きた腫瘍細胞上でも腫瘍細胞表面の異常グリカン(tri-antennary N-linked glycan、Tri/m-II epitope)と結合して食細胞による貪食を媒介し、マクロファージが分泌したカルレティキュリンが腫瘍細胞をオプソニン化する間接経路も存在する。TLR3/4/7(Toll-like receptor 3/4/7)活性化→BTK(Bruton’s tyrosine kinase)リン酸化→カルレティキュリン細胞表面移動の経路がTLRアゴニストとCD47遮断の相乗効果の基盤となる。SLAMF7(signalling lymphocytic activation molecule family member 7)(CD319)はMAC1(macrophage-1 antigen)(CD11b/CD18複合体)と相互作用し、FcRγ・DAP12を介したSrc/SYK/BTKシグナルで食細胞を活性化する。FcγRファミリーでは活性化受容体(FcγRI・FcγRIIA・FcγRIIIA・FcγRIIIB)がITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)介在食細胞化を促進し、唯一の抑制受容体FcγRIIBのITIMが拮抗する。リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブなど治療用抗体のFc部位はFcγR介在抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘発し、抗CD47との組み合わせで相乗効果を発揮する。MAC1欠損マウスでは、SLAMF7介在性貪食が約80%減少した。

cGAS-STING経路:貪食から自然-獲得免疫連携へ: マクロファージががん細胞を貪食すると、腫瘍細胞由来のミトコンドリアDNA(mtDNA)がファゴリソソームから細胞質に漏出しcGAS(cyclic GMP-AMP synthase)に認識される。cGAS→cGAMP(cyclic GMP-AMP)→STING(stimulator of interferon genes)→IRF3(interferon regulatory factor 3)/NF-κB→IFN-β(interferon-beta)・TNF(tumor necrosis factor)・IL-1β・IL-6産生という経路でDC成熟・T細胞クロスプライミングが誘導される。注目すべきは、CD47遮断後にDC内で増加するのはmtDNAであり核DNAではなく(mtDNAの円形構造が酵素分解耐性)、CD47遮断によりNADPH oxidase 2(NOX2)がDCで活性化されファゴソーム酸性化が抑制されるためmtDNA分解が減少する機序が特定された。STING欠損(Tmem173gt)マウスではCD47遮断の治療効果・IFN産生・CD8+ T細胞プライミングが著明に低下し、DC(マクロファージではなく)でのcGAS-STINGがCD47遮断の適応免疫活性化に必須と確認された。一方でIFNγ刺激でマクロファージにTREX1(three-prime repair exonuclease 1)(cytosolic exonuclease)が誘導されcGAS-STING活性化が抑制されるという負のフィードバックも存在し、DCとマクロファージのNOX2・TREX1活性の差異が自然免疫センシング経路の相違を規定する。STING欠損マウスでは、CD47遮断によるIFN-β産生が野生型マウスと比較して約90%減少した。

食細胞チェックポイント阻害の組み合わせ戦略:前臨床・早期臨床エビデンス: 最も期待される相乗効果は (1) 抗CD47 + 抗CD20(リツキシマブ)→ フォスファチジルセリン曝露+Fcγ受容体活性化でADCP増強である。フェーズIb試験(NCT02953509)で再発難治性非ホジキンリンパ腫の50% ORR、36% CRが達成され、多くの有害事象はGrade 1-2であり、最多Grade 3はプライミング初回の貧血のみであった (Table 1)。(2) 抗CD47 + 抗HER2(トラスツズマブ)→ HER2陽性乳がん前臨床で有効性確認。(3) 抗CD47 + 抗EGFR(セツキシマブ)→ フェーズI/II試験中(NCT02953782、n=112)。(4) 抗CD47 + 抗PD-L1 → B16F10メラノーマシンジェニックマウスで持続的奏効、免疫不全マウスでも相乗効果確認(マクロファージ食細胞活性化を介した機序)。(5) 抗LILRB2 + 抗PD-L1 → TAM再プログラム化+T細胞回復の相補効果。食細胞チェックポイント阻害はT細胞チェックポイントに依存しないため、PD-1/PD-L1療法無効例・低変異負荷腫瘍(AML等)への救済治療戦略となりうることが強調される。セザリー症候群(皮膚T細胞リンパ腫白血病型)でも、TTI-621投与で循環セザリー細胞のCD47高発現が確認され、フェーズIパイロット試験(n=5)で乳酸脱水素酵素、絶対リンパ球数、皮膚紅斑の顕著な減少が示された。

考察/結論

本レビューは、食細胞チェックポイント分子群を体系的に分類し、CD47-SIRPα、PD-1 on TAM、MHC-I-LILRB1、LILRB2、LILRB4の分子機構を解説するとともに、食細胞チェックポイント遮断を免疫療法の新たな柱として位置付けた先駆的論文である。

先行研究との違い: これまでの免疫チェックポイント研究が主にT細胞を介した適応免疫応答に焦点を当ててきたのと異なり、本研究は自然免疫系、特に食細胞によるがん細胞のクリアランス機構に深く踏み込み、その治療標的としての可能性を体系的に提示した点で新規性が高い。特に、PD-1がT細胞だけでなくマクロファージにおいても食細胞チェックポイントとして機能するという発見は、抗PD-1療法の効果機序の解釈を大きく変えるものであり、T細胞依存性とT細胞非依存性(食細胞直接活性化)の両側面を持つことを示唆する。この二元性は、治療反応予測の難しさにも通じる。

新規性: 本研究で初めて、MHC-I-LILRB1軸ががん細胞の食細胞貪食回避に寄与する新規メカニズムとして同定された。B2M欠損(MHC-I低下)によってT細胞応答が失われるがん細胞では、LILRB1遮断による食細胞貪食促進が代替的免疫制御機序となりうる点は特に重要で、抗PD-1耐性機序への対応戦略として注目される。「T細胞から逃れるためにMHC-Iを下げると、今度はマクロファージに食べられやすくなる」という逆説は、免疫編集(cancer immunoediting)の新たな側面を示す。また、cGAS-STING経路を通じた自然免疫-適応免疫連携は、食細胞チェックポイント阻害の作用がT細胞プライミング増強にまで波及することを示し、免疫療法効果の増幅器として機能する。特にmtDNA(核DNAではなく)がcGAS活性化の主要トリガーであるという特異性、およびDCとマクロファージのNOX2活性の差異が自然免疫センシング経路の細胞種特異性を規定するという機序は、組み合わせ療法の合理的設計に重要な示唆を与える。

臨床応用: 本知見は、がん免疫療法の新たな治療戦略の開発に直結する臨床的意義を持つ。CD47-SIRPα軸の阻害剤は、前臨床および初期臨床試験で有望な結果を示しており、特にリツキシマブとの併用療法では、再発難治性非ホジキンリンパ腫において50%のORRと36%のCRを達成した。これは、既存の治療法に抵抗性を示す患者に対する新たな選択肢となる可能性を示唆する。食細胞チェックポイント阻害はT細胞チェックポイントに依存しないため、PD-1/PD-L1療法無効例や低変異負荷腫瘍(例:AML)への救済治療戦略となりうることが強調される。

残された課題: 今後の検討課題として、どのがん種でどの食細胞チェックポイントの組み合わせが有効かを予測するバイオマーカー開発が残されている。腫瘍ステージ別の食細胞チェックポイント発現変化の解明、および適応免疫チェックポイント阻害との最適な組み合わせ、順序、投与量の確立も重要である。臨床上の課題として、CD47は正常HSCや赤血球にも発現するため貧血・血小板減少の懸念があるが、多くの正常CD47+細胞は「eat me」シグナル(カルレティキュリン等)を欠くため選択的毒性は限定的であることが示されている。プライミング低用量戦略でGrade 3貧血を管理可能な水準に維持しつつ、新しいRBCの産生(reticulocytosis)で補填できる。長期的な安全性プロファイルと、他の免疫調節療法(TLR/STINGアゴニスト、サイトカイン、化学療法など)との併用における毒性のバランスも慎重に評価する必要がある。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の前向き研究や実験プロトコルは実施していない。本レビューの執筆にあたり、過去20年間にわたる食細胞チェックポイントおよび関連する免疫療法に関する主要な科学文献が体系的に調査された。文献検索は、PubMed、Embase、Cochrane Libraryなどの主要な医学データベースを用いて実施された。検索キーワードには、「phagocytosis checkpoints」、「CD47-SIRPα」、「PD-1 on macrophages」、「MHC-I-LILRB1」、「LILRB2」、「LILRB4」、「calreticulin」、「cGAS-STING pathway」、「innate immunity」、「cancer immunotherapy」、「combination therapy」などが含まれた。検索期間は1999年から2019年8月までとし、関連性の高い原著論文、レビュー記事、臨床試験報告書を対象とした。

レビューの焦点は、がん細胞が食作用を回避する分子メカニズム、食細胞チェックポイント阻害が抗腫瘍免疫応答を誘導する効果、および自然免疫と獲得免疫の連携を促進する治療戦略に置かれた。特に、前臨床研究および初期臨床試験で有望な結果を示しているCD47-SIRPα軸の阻害に関するデータが詳細に分析された。また、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床的成功と限界を踏まえ、食細胞チェックポイント阻害がICI非奏効患者や低変異負荷腫瘍に対する代替または補完的な治療戦略となりうる可能性が検討された。

さらに、食細胞チェックポイント阻害と他の治療モダリティ(治療用抗体、サイトカイン療法、化学療法、放射線療法、適応免疫チェックポイント阻害)との組み合わせ戦略に関する前臨床および臨床エビデンスも評価された。特に、cGAS-STING経路を介した自然免疫感知と適応免疫応答の連携が、食細胞チェックポイント阻害の抗腫瘍効果を増強するメカニズムとして詳細に議論された。

本レビューでは、各食細胞チェックポイント分子の構造、リガンド結合、下流シグナル伝達経路、およびがん免疫回避における役割が個別に解説された。また、正常組織におけるCD47発現に起因する潜在的な毒性(例:貧血)とその管理戦略(例:プライミング低用量戦略)についても考察された。臨床試験情報は、ClinicalTrials.govなどの公開データベースから収集され、進行中の試験の概要と初期結果がまとめられた。本レビューは、既存の知識を統合し、新たな治療標的と併用療法戦略の合理的設計に資する知見を提供することを目的としている。エビデンスレベルの評価は、各研究デザインに基づき定性的に行われた。