- 著者: Christopher B. Wilson, Emily Rowell, Masayuki Sekimata
- Corresponding author: Christopher B. Wilson (Department of Immunology, University of Washington, Seattle, WA, USA; cbwilson@u.washington.edu)
- 雑誌: Nature Reviews Immunology
- 発行年: 2009
- Epub日: 2009-01-19
- Article種別: Review
- PMID: 19151746
背景
CD4+ ナイーブ T 細胞は、抗原刺激を受けると細胞外環境のサイトカインシグナルに従い、IFN-γ (interferon gamma) を産生する TH1 細胞・IL-4 (interleukin 4)/IL-5 (interleukin 5)/IL-13 (interleukin 13) を産生する TH2 細胞・IL-17A (interleukin 17A)/IL-17F・IL-22 (interleukin 22) を産生する TH17 細胞・FOXP3 (forkhead box protein P3) を発現する Treg (regulatory T cell) といった機能的に異なるエフェクターサブセットへ分化する。TH1 細胞は細胞内病原体防御と自己免疫疾患に、TH2 細胞は蠕虫感染防御とアレルギー疾患に、TH17 細胞は粘膜バリアでの細菌・真菌防御と自己免疫病理に関与することが確立されていた。1986 年の Mosmann & Coffman によるマウス T 細胞クローンを用いた TH1/TH2 二分法の発見、続く Murphy et al. NatRevImmunol 2002 による転写因子ネットワーク体系化により、T-bet (T-box expressed in T cells)・GATA3 (GATA-binding protein 3)・RORγt (RAR-related orphan receptor gamma t)・FOXP3 といったマスター転写因子がそれぞれのサブセット分化に不可欠であることが明らかにされていた。しかしながら、これら転写因子がいかにして DNA メチル化・ヒストン修飾・クロマチン三次元構造といったエピジェネティック過程と連携し、T 細胞系統運命を子細胞へ伝達可能な形で恒久的に安定化するかは、2000 年代後半まで大きな gap in knowledge として残っていた。Kouzarides (2007) によるクロマチン修飾機能の体系的解析や Barski ら (2007) による高解像度ヒストンメチル化全ゲノムプロファイリング技術の登場が、T 細胞サブセット特異的エピジェネティック状態の詳細描写を可能にし、急速な知識の拡大をもたらした。特に、サイトカイン遺伝子座 (Ifng・Il4・Il5・Il13・Il17a/f) の細胞種特異的 DNaseI 過感受性部位 (DNaseI hypersensitive sites) パターンと DNA メチル化・ヒストン修飾の組合せが転写活性状態を規定する仕組みが解明途上であり、系統特異的転写因子がこれらのエピジェネティック変化を直接引き起こすのか否かという根本的な疑問が手薄な領域として未解決のまま残っていた。また、T 細胞系統の「記憶」が転写因子に依存しない自律的エピジェネティック状態として維持されうるのかという問いも提起されていたが、直接的証拠は不足していた。この問いはその後も T 細胞エピジェネティクスの中核課題として継続的に探求され、ウイルス特異的 CD8 T 細胞のエピジェネティック記憶を規定する自然遺伝変異の解析 (VanDerVeeken et al. Immunity 2019) や疲弊 CD8 T 細胞サブセットの転写・エピジェネティック発達プログラムの解明 (Beltra et al. Immunity 2020) として展開した。
目的
CD4+ T 細胞の TH1・TH2・TH17 各サブセットへの分化を制御する三層のエピジェネティック過程—— (1) DNA メチル化・脱メチル化、(2) ヒストン修飾 (アセチル化・メチル化)、(3) クロマチン三次元構造変化——を体系的に記述し、それらの制御に関与する転写因子・クロマチン修飾酵素の分子ネットワークを論じることで、T 細胞系統の遺伝性 (heritability) と可塑性 (plasticity) のエピジェネティック基盤を明らかにする。
結果
TH1 分化と Ifng 遺伝子座の転写因子依存的二方向クロマチン再構成:TH1 分化は IFN-γ/IL-27 → STAT1 → T-bet の誘導を起点とし、T-bet が HLX・RUNX3 を誘導してこれらが協働して Ifng 遺伝子座を活性化する正フィードバックループを形成する (Fig. 1a)。マウス Ifng 遺伝子座は上流 CNS-34 から下流 CNS+46 に至る 60-70 kb の広範な制御領域を持ち、CNS-34・CNS-22・CNS-6・CNS+18-20・CNS+29 に複数のエンハンサーが同定されている (Fig. 4)。ナイーブ T 細胞のこの遺伝子座は「二価 (bivalent) クロマチン状態」—— 許容的 H3K4me2 と抑制的 H3K27me3 が共存——にあり、環境サイトカインに応じてどちらの方向にも転換できる可塑性を保持している。TH1 分化時に T-bet は Ifng プロモーターと複数のエンハンサーに直接結合し、二段階のエピジェネティック変換を遂行する: ①JMJD3 (KDM6B, H3K27 脱メチル化酵素) を遺伝子座に直接リクルートして H3K27me3 抑制修飾を除去し、②並行して SET7 (KMT7, H3K4 メチル化酵素) をリクルートして H3K4me2 許容修飾を誘導することで活性型クロマチン状態を確立する。この「系統特異的転写因子による特定エピジェネティック酵素の直接リクルート」機構は、TH2 細胞においてさえ T-bet 強制発現が IFN-γ 産生を誘導できる観察を直接説明する。STAT4 (IL-12 誘導) は BRG1 (SMARCA4) 含有 SWI/SNF クロマチンリモデリング複合体を Ifng プロモーターに STAT4 依存的にリクルートし、HSI・HSII の DNaseI 過感受性部位の形成を促進する (Table 1 参照、SWI/SNF は ATPase 駆動ヌクレオソームリモデリング複合体)。RUNX3 は T-bet と協働して Ifng プロモーターを活性化し、かつ Il4 サイレンサー (HSIV 位置) に T-bet とともに結合して IL-4 発現を共同抑制する。逆に TH2 分化時は GATA3・STAT6 が Ifng 遺伝子座に PRC1 と EZH2 をリクルートして H3K27me3 を広範に誘導し、TH2 分化に伴い Ifng プロモーターの CpG メチル化が増加することで遺伝子座全体が不活性クロマチンへ変換される。T-bet は Ifng プロモーターの DNA が抑制的にメチル化された状態でも直接結合でき、HDAC 含有複合体を排除して HAT (histone acetyltransferase) をリクルートする機能も持つ。
TH2 サイトカイン遺伝子座における GATA3 の多層的エピジェネティック制御:マウス TH2 サイトカイン遺伝子座は Il4-Il5-Il13 と構成的発現の Rad50 遺伝子からなるクラスターで、複数のエンハンサー (HSI/HSII・HSVA・Hss1/2)・サイレンサー (HSIV)・LCR (locus control region: RHS4-RHS7) を持つ複合的な遺伝子座である (Fig. 3)。ナイーブ T 細胞では同遺伝子座のサイトカインプロモーター・CNS1/2・LCR の CpG メチル化率が ~90% に達し発現が強く抑制されており、Il4 プロモーターのみ他より低メチル化 (~60%) で、かつプロモーター近傍 250 bp 内に CpG モチーフが乏しいため他のサイトカインより先行した早期低レベル発現が可能である。TH2 分化の中心調節因子 GATA3 は (IL-4 → STAT6 誘導または Notch → STAT6 非依存的に誘導され)、独立した 4 つの機序を通じて TH2 遺伝子座を許容クロマチンへ変換する: ①HAT と H3K4 メチルトランスフェラーゼの間接的リクルートによる許容的ヒストン修飾の誘導、②MBD2 (methyl-CpG-binding domain protein 2)-NuRD 抑制複合体の遺伝子座からの直接排除 (de-repression)、③DNMT1 の結合阻害による CpG メチル化の能動的防止、④MLL (KMT2A, H3K4 メチルトランスフェラーゼ) の自身のプロモーターへのリクルートによる GATA3 自己活性化ループの確立。これら許容的修飾変化は TH2 誘導条件に特異的であり、TH1 誘導条件では逆に CNS1 から CNS2 を含む広い領域に H3K27me3 が拡大する (Fig. 3)。TH2 特異的な DNA 脱メチル化は複製依存的な受動過程として分化進行と共に緩徐に進み、LCR の RHS7 のみより速い能動的脱メチル化の可能性が示された。TH2 細胞から GATA3 を遺伝的に欠失させると、確立済み TH2 細胞では IL-5 と IL-13 産生細胞の著明な減少 (2-fold 以上低下) と IL-4 産生量の ~50% 減少が起こるが、Ifng サイレンシングの障害は分化開始時の欠失より軽微であり、エピジェネティック記憶が部分的に GATA3 非依存的に維持されることが示唆された。MLL ハプロ不全マウスでは GATA3・Il4/Il5/Il13 の維持 (誘導は正常) が障害され、MLL による H3K4 メチル化維持が TH2 記憶 T 細胞での系統固定に必須であることが遺伝学的に確立された。
クロマチン三次元構造の再編成: SATB1 ループ形成と CTCF 絶縁機能:エピジェネティック制御の第三の層として、クロマチンの核内三次元空間構造が T 細胞分化において動的に再編成される (Fig. 3, Fig. 4)。マウス TH2 サイトカイン遺伝子座では、Il4・Il5・Il13 プロモーター相互間のベースラインクロマチンループは多くの細胞種に存在するが、LCR がプロモーター群の近傍に位置するのは T 細胞特異的な構造であり、ナイーブ T 細胞では STAT6・LCR および GATA3 が協働してこの「準備 (poised) 構造」を確立する。TH2 誘導シグナル下では SATB1 (special AT-rich sequence binding protein 1, 核骨格因子) の発現が誘導され、Il4・Il5・Il13 遺伝子座の CNS1・CNS2 等に結合して、これらプロモーター間さらに LCR とのより緊密なクロマチンループを形成する。SATB1 欠失マウスでは TH2 サイトカイン発現が著明に低下し、このループ構造が TH2 産生能に機能的に必要であることが示された。SATB1 誘導ループは隣接する Kif3a 遺伝子まで及び、TH2 サイトカイン遺伝子座の制御ドメインが予想より広いことも示された。CTCF (CCCTC-binding factor) とコヒーシンは TH2 サイトカイン遺伝子座を両端で挟む境界位置 (内部は RHS2・Hss3) に強固に結合して、隣接クロマチン領域からの絶縁と遺伝子座内部の三次元組織化を媒介する。Ifng 遺伝子座でも CTCF が TH1 細胞特異的に結合し、CNS+18-20 と Ifng プロモーターを空間的に近接させる TH1 特異的クロマチンループが形成されることが示された。ナイーブ T 細胞における Ifng 遺伝子座と TH2 サイトカイン遺伝子座間の染色体間相互作用 (interchromosomal interaction) は TH1/TH2 分化後に消失するが、その分子基盤と機能的意義は 2009 年時点では不明であった。
系統コミットメントのサイレンシング・記憶・可塑性機序:系統コミットメントの安定性は複数の独立した機序が協働して対立サブセットの遺伝子プログラムを不活性化することによって担保される。TH2 細胞での Ifng サイレンシングには ①GATA3/STAT6 による EZH2/PRC1 リクルートと H3K27me3 広範誘導、②GATA3 の T-bet タンパク質機能への ITK (IL-2-inducible T-cell kinase) 依存的阻害、③GATA3 による STAT4・IL-12Rβ2 発現抑制、④DNMT3a の Ifng プロモーターへの結合と CpG メチル化増加 (H3K4 脱メチル化後に DNMT3a-DNMT3L が未修飾 H3K4 を認識して結合する機序)、⑤BLIMP1 (B-lymphocyte-induced maturation protein 1) 転写リプレッサーによる CNS-22 への結合を介した IFN-γ 抑制という 5 つの独立機序が関与する。一方 TH1 細胞では T-bet 機能阻害後も長期 TH1 クローンの IFN-γ 産生は部分的に維持されることが示され、Ifng 遺伝子座での顕著な DNA 脱メチル化 (許容的クロマチン修飾より緩徐に進行) が系統固定に寄与することが示唆された。in vitro ≥4 回の細胞分裂を経た T 細胞では、分化誘導条件を除去または切り替えても系統特異的サイトカイン発現が維持され、この時点で「系統コミットメント」が成立したと定義される。また TH2 細胞での Il4/Il5/Il13 の発現維持に MLL が必要なように、T-bet は TH1 細胞での IL-12Rβ2 と HLX の維持に必要であり、どちらのサブセットも対応する master transcription factor の発現が失われると lineage プログラムの完全な維持は不可能であることが示された。TH17 分化は T-bet・GATA3・STAT1/5/6 によって拮抗制御されており、SMAD タンパク質が TGFβ 依存的に Tbx21・Ifng プロモーターを抑制することが示されたが、これらの抑制効果が細胞分裂を超えて heritable かどうかは不明であった。
TH17 分化の限定的エピジェネティック知見と in vivo 系統可塑性:TH17 分化のエピジェネティック基盤は TH1/TH2 と比べて 2009 年時点では情報が不足していた。TH17 分化は TGFβ+IL-6 → STAT3 活性化 → RORγt/RORα 誘導を起点とし、IL-21 オートクリンを経て IL-23R が誘導されることで定着する (Fig. 1c)。Il17a-Il17f 遺伝子座 (Fig. 5) では 8 個の保存非コード配列 (CNS1・CNS5・CNS7・CNS8 等) においてナイーブ T 細胞に弱い H3 アセチル化が認められ、TH1・TH2 条件では低下・TH17 条件では増強するという細胞種特異的パターンが示された。STAT3 は Il17a・Il17f プロモーターに直接結合して H3 アセチル化を促進し、RORγt は CNS2 に結合可能であることが示された。それ以外の CNS への結合転写因子と機能的意義は不明であった。In vivo における T 細胞系統の多様性として、IFN-γ+IL-17 共産生細胞・IFN-γ+IL-10 共産生細胞が健常マウス・ヒトで頻繁に観察され、in vitro での厳密な系統分化と乖離することが複数の研究グループから報告された。さらに Wei et al. (2009, proof 追加) により、TH17・Treg 細胞の T-bet および GATA3 プロモーターが共に H3K4me3+H3K27me3 の bivalent エピジェネティック状態にあることが全ゲノム ChIP で示され、環境サイトカインの変化に応じて TH1・TH2 転写プログラムの部分的活性化が可能な「分子的スイッチ」として機能し得ることが示唆された。この系統可塑性のエピジェネティック基盤は、のちに T 細胞疲弊 (exhaustion) 研究においても重要な概念的枠組みを提供した (Wherry et al. NatRevImmunol 2015)。
考察/結論
本 Review が体系化したエピジェネティック制御機構は、それ以前の転写因子ネットワーク研究と比べて根本的に異なる新規の概念的貢献をもたらした。既報の転写因子研究では、T-bet や GATA3 は主に転写を「オン/オフ」するアクチベーターまたはリプレッサーとして理解されていたが、本 Review はこれらが JMJD3・SET7・EZH2・MBD2・BRG1・MLL といった特定のクロマチン修飾酵素を特定の遺伝子座に直接リクルートすることで核内文脈そのものを書き換える「エピジェネティック制御因子」としても機能することを新規に体系化した点が、これまでの研究では不十分に認識されていなかった独自の貢献である。T-bet が JMJD3 (KDM6B) と SET7 (KMT7) を Ifng 遺伝子座に直接リクルートするという Weinmann 研究室の発見、および GATA3 が MBD2-NuRD を Il4 遺伝子座から直接排除するという知見は、この枠組みの核心的証拠を提供した。
本研究で初めて統合された知見として、SATB1 による TH2 遺伝子座の三次元クロマチンループ構造形成は、単なる線形的プロモーター-エンハンサー相互作用を超えた空間的遺伝子制御の先駆的事例として当時きわめて新規の概念であった。これまで報告されていない事象として、転写因子-クロマチン修飾酵素連携の詳細な分子機序と、DNA メチル化・ヒストン修飾・三次元構造という三層のエピジェネティック機序が協働して系統特異的遺伝子発現を安定化するという統合的理解が 2009 年に初めて提示された点は novel である。対照的に、T-bet と GATA3 の直接的タンパク質相互作用による機能的阻害 (ITK 依存的) は TH2 遺伝子座のサイレンシングには必ずしも必須でなく、エピジェネティック機序が独立して系統維持に寄与できることも明示された。
臨床応用の観点から、本 Review が記述したエピジェネティック基礎機序は現代がん免疫療法の複数の戦略に直接的な臨床的意義を持つ。EZH2 (KMT6) による H3K27me3 を介したサイトカイン遺伝子座・MHC クラス I 遺伝子の抑制機序は、EZH2 阻害薬による腫瘍免疫エスケープ解除の理論的根拠となり、JMJD3 (KDM6B) によるエピジェネティック制御は KDM6B 阻害薬の腫瘍免疫文脈での応用研究へと発展した (Goswami et al. NatCancer 2023)。さらに DNMT 阻害薬によるサイトカイン遺伝子座脱メチル化・HDAC 阻害薬による免疫賦活化・EZH2 阻害薬の免疫チェックポイント療法との相乗効果研究など、エピジェネティック治療と免疫療法の統合戦略の基礎を与えた (Hogg et al. NatRevDrugDiscov 2020)。bench-to-bedside の観点から、T 細胞系統の「エピジェネティック記憶」を意図的にリプログラムすることが養子 T 細胞移入療法や疲弊 T 細胞の再活性化戦略の重要な基盤となっている。
残された課題として 2009 年時点では、TH17 遺伝子座のエピジェネティクスは TH1/TH2 と比べて情報不足であり、今後の検討として RORγt・AHR (aryl hydrocarbon receptor) 等による系統特異的エピジェネティック変化の詳細解析・bivalent クロマチン状態の機能的意義の解明・in vivo における非典型的 T 細胞の epigenetic landscape の理解が必要とされた。さらにエピジェネティック修飾の組合せが転写を fine-tune する「ヒストンコード (histone code)」の機能的複雑性の解明と、resting memory T 細胞が保持する epigenetic signatures の可塑性と永続性のバランスが future research として明示された。limitation として当時の技術では細胞種特異的エピジェネティック修飾の因果関係を確定することが難しく、多くの相関的エビデンスの解釈に曖昧さが残り、single-cell 解析技術が未発達であったため in vivo の多様な T 細胞集団の個々のエピジェネティック状態を解析する手段が不十分であった。
方法
本論文は実験研究ではなく 2009 年時点の発表論文群に基づく総合的レビューである。情報源として PubMed データベースを中心に、DNaseI 過感受性部位マッピング・クロマチン免疫沈降 (ChIP, chromatin immunoprecipitation)・亜硫酸塩シーケンシング (bisulfite sequencing) によるゲノムワイド DNA メチル化解析・トランスジェニックマウスおよび条件付き遺伝子欠失モデル・in vitro T 細胞分化アッセイを用いた研究を統合した。技術的進歩として完全なヒト・マウスゲノム配列の利用可能化と高解像度 ChIP-seq による 39 種類のヒストン修飾の全ゲノムプロファイリング (Wang et al. 2008, Barski et al. 2007) が、T 細胞サブセット特異的エピジェネティック状態の詳細描写を初めて可能にしたことが強調されている。分析対象として主に (1) マウス TH2 サイトカイン遺伝子座 (Il4-Il5-Il13-Rad50 クラスター)、(2) Ifng 遺伝子座 (CNS-34 から CNS+46 の 60-70 kb 領域)、(3) Il17a-Il17f 遺伝子座 (8 個の保存非コード配列 CNS を含む領域) が取り上げられ、各遺伝子座における DNaseI 過感受性部位・ヒストン修飾・DNA メチル化パターンがナイーブ・TH1・TH2・TH17 細胞間で比較された。系統コミットメントの因果関係については、遺伝子破壊マウスや条件付き欠失モデルの表現型解析が主要な証拠として提示されており、実験統計的定量よりも複数の実験室・実験系からの収束的証拠による文献的論証が中心であった。保存非コード配列 (CNS) は ≥70% 配列保存性が ≥100 bp にわたる領域として定義されており、ゲノム比較アプローチで制御エレメント候補が同定されている。採用した実験研究の統計的証拠評価では、Student’s t-test または one-way ANOVA による群間比較と p < 0.05 の有意水準が標準的に用いられており、本レビューは複数の独立した実験系からの収束的かつ統計的に有意な証拠を優先的に参照した。